2008年2月21日木曜日

Roomful of Blues / Raisin' A Ruckus


『Roomful of Blues / Raisin' A Ruckus』 (Alligator ALCD 4919)
1. Every Dog Has Its Day
2. Lower On Your List Of Priorities
3. Talkin' To You Eye To Eye
4. Big Mamou
5. Round It Down
6. I Would Be A Sinner
7. Black Night
8. Boogie Woogie Country Girl
9. Solid Jam
10. Sweet Petite
11. While I Can
12. Raisin' A Ruckus
13. New Orleans
14. Life Has Been Good

ルームフル・オブ・ブルースは1967年にロードアイランド州のプロヴィデンスで結成されたバンドだが、当時の中心的人物はデューク・ロビラードやアル・コプリーで、地元のクラブやバーを回りブルース・ロックをやってたようですね。77年のデビュー以降メンバーの出入りが頻繁で、ロニー・アール、ロン・レヴィ、シュガー・レイ・ノーシア、ルー・アン・バートンなど有名になった人も多い。また、エディ"クリーンヘッド"ヴィンスンやビッグ・ジョー・ターナー、アール・キングなどのバックバンドを務め、その演奏能力の高さにも定評のあるところですね。そして、肝心の音楽的嗜好はブルースは勿論のこと、ジャズ、ジャンプ、ジャイヴ、スウィング、ブギ、ソウル、R&B、R&Rなどなど様々なルーツミュージックを内包しつつ、東海岸らしい洗練された都会的センスのあるサウンドを聴くことができます。

で、今回の新作も変わらないルームフル・オブ・ブルース・サウンドが堪能できるわけですが、ヴォーカルがデイヴ・ハワードという人に交代してます。比較的図太い声の持ち主で、いろんなタイプの曲をカッコ良く歌いこなしてます。僕は好きなヴォーカリストですね。このバンドはサックス2本にトランペット1本のホーンセクションを含む8人編成ですが、毎回思うのは本当にバンド・アンサンブルがカッコいいという事と、確立されたサウンドだなってことで、メンバーが交代しても変わらずに「ルームフル・オブ・ブルース」をやり続けてくれるんじゃないかなと思いますね。

最後に、このアルバムが発売される4日前にトランペット奏者のボブ・イノスが亡くなってしまいました。今のメンバーの中では一番の古株で、非常に残念です。

2008年2月17日日曜日

Flavio Guimaraes & Prado Blues Band


『Flavio Guimaraes & Prado Blues Band』 (Chico Blues LMCD0347)
1. I May Be Wrong (Basie/Rushing)
2. Missing Mr.Clarke (Flavio Guimaraes)
3. T-Bone Shuffle (T.Walker)
4. Riding with Ray (Flavio Guimaraes/Prado)
5. Please Send Her Home To Me (T.Braden)
6. Tin Pan Alley (Traditional)
7. George´s Boogie (Flavio Guimaraes)
8. Lazy Thing (Flavio Guimaraes/Prado)
9. Below´s Shuffle (Flavio Guimaraes/Prado)
10. Swing Me Baby (Igor Prado)
11. Put The Kettle On (Traditional)
12. Going Home Tomorrow (A.Young/Domino)
13. Boogie do Caue (Flavio Guimaraes)
14. Louise (Traditional)

2年程前、スウェーデン・ブルースのコンピレーション・アルバムを探してた時に偶然見つけたのが、プラード・ブルース・バンドの「Blues And Swing」というアルバムでした。

ブラジルのブルース・バンドというのも面白そうだったのですが、アルバム・ジャケットのカッコ良さといい、タイトルといい、こりゃいいもん見~けたってな感じでしたね。

30年代か40年代のスウィング・ジャズやウエストコースト・ブルース、ジャンプ・ブルースなどを演奏する結構スウィンギーなブルース・バンドで、聴いただけだとウエストコーストのバンドかと勘違いするほど。スウェーデンのブルース・バンドもこういうサウンドを出す人達多いですね。僕なんかは、この辺りのサウンドが大好物なんです。

それからサウスポーのギタリストIgor Pradoの、ハリウッド・ファッツを彷彿させるジャンピンなギターもなかなかイケてます。いや本当にカッコいいバンドですよ。

今回紹介する新作は、と言っても2006年に発表されたものなんですが、ゲストにこれまたブラジルのベテランハーピストFlavio Guimaraesという人を迎えて、前作同様、ブルース&スウィング路線のアルバムになってます。

Flavio Guimaraesのハーモニカを聴く限りでは、ジョージ・スミスからウイリアム・クラーク辺りの流れを汲むウエストコーストを感じさせるハーピストですね。(2)や(7)のハーモニカ・インスト曲でのクロマチックは、ウイリアム・クラークを思わせるくらい上手いですね。曲自体もP-Vineのコンピ「ファンキー・ハーモニカ」に収録せれてても全然引けをとらない程、ファンキーでカッコいい曲です。

カウント・ベイシー&ジミー・ラッシングの(1)やT-ボーン・ウォーカーの(3)では、Igor PradoがT-ボーンばりのギターを弾いてますが、これがお得意なところなんでしょうね。(11)はウォルター・ホートンの曲を下敷きにしたトラディショナルなシカゴブルースで、ノリのよいシャッフルが心地よいです。(12)ではもろジョニー・ギター・ワトソンなギターが炸裂してるんでビックリ。へ~こんなアグレッシブなギターも弾くとは本当に面白い。これからも楽しみな人だ。最後の(14)は、ジーミー・リードを思わせるダウンホームなスローブルース。前作ではやらなかったタイプの曲だが、Flavio Guimaraesが参加したことで幅が広がったのかな。しかし、この人のハープ本当に上手い。10穴も沁みるな。

これからも注目していきたいバンドなんですが、昨年、ギターのIgor Pradoがソロアルバムを出したので、今年中にはなんとか手に入れたいな。

2008年2月7日木曜日

Nappy Brown / Long Time Coming


『Nappy Brown / Long Time Coming』 (Blind Pig BPCD-5119)
1. Keep On Pleasin' You
2. You Were A Long Time Coming
3. Don't Be Angry
4. Give Me Your Love
5. That Man
6. Right Time
7. Who
8. Cherry Red
9. Aw Shucks, Baby
10. Every Shut Eye Ain't Sleepin'
11. Bye Bye Baby
12. Take Care Of Me

ナッピー・ブラウンはサヴォイしか聴いた事がないんですが、ゴスペル・フレイバーのジャンピンなR&Bシンガーで、面白い歌い方をするのが印象的なシンガー。

このアルバムは80歳を前にして発売された新録のアルバムです。往年の迫力の低域や艶やかな高域など、幾分抜けが悪くなって衰えは感じさせるが、年季が入った深みのある渋い声で、こういうのを燻し銀の声というのだろう。そして何より元気だ。

サヴォイではエヴァレット・バークスデイルやミッキー・ベイカーといったニューヨークの名ギタリストが参加しておりましたが、このアルバムではアトランタ出身のジャンピンなギタリスト、ショーン・コステロがメインで弾いてます。まだ28歳の若者で、ナッピーにしてみれば孫みたいなものだ。世代を越えた競演が出来るのもブルースの良さですよね。

で、このショーン・コステロがまた良いギターを弾くんですよ。一曲目のジャンプ・ブルースあたりの溌剌としたサウンドは、若きギタリストによる所が大きいと思うのだが、ナッピーの存在感も圧倒的で、ほんとにノリの良いジャンプ・ナンバーですね。

(3)はサヴォイ時代の曲で、55年のビルボードR&Bチャート2位を記録したナッピーの代名詞的な曲。”リーリーリーリーリー”ってメリスマを使った歌い方も相変わらずで、歌やギターソロの途中で”リリー”だの”ピピー”だのオブリを入れるのも笑える位面白い。ギターは大好きなジュニア・ワトソンなんですが、ちょっと影が薄くなってしまったな。しかし、ついつい体が動き出してしまうようなノリノリで楽しい曲ですね。

(4)はソウルフルなスローバラードで、曲もいいし歌もめちゃ上手い。こちらが浸ってたらまた例の如く”ララレ・ララレ”だのやりやがって、とんだすっ呆け親爺だ。だけども、憎めない人の良さというのが歌に滲み出てるね。

(5)もサヴォイ時代の曲。原曲ほどのインパクトがないのが残念。

(6)はレイ・チャールズが歌ってヒットしたが、元々はナッピーのオリジナル。こちらはチャートインすらしなかったのである。

(7)はウィリー・ディクスンの曲で、ギターにジュニア・ワトソン、ハーモニカにジョン・ネメスというウエスト・コーストの連中が参加して、ジャンピンなシカゴ・ブルースになってます。アリゲーター録音よりもタイトなサウンドで、僕はこちらのほうが好きですね。

(8)はビッグ・ジョー・ターナーですね。アコースティク・セットによるスロー・ブルースで、ボブ・マーゴリンのアコギもめちゃ渋い。

(9)だけが2002年の録音のようで、ハーモニカがボブ・コリトア、ピアノにヘンリー・グレイ、ギターにキッド・ラモスなどが参加してのヴィンテージなシカゴ・ブルース。ボブ・コリトアはもろリトル・ウォルターを意識したハープだけど、結構良いノリしてますね。

ナッピー・ブラウンはプロ根性丸出しで、エンターテイナー抜群のステージを展開すると聞いたことがあります。若きギタリストやハーピストを引き連れて日本にやって来てくれないかなと思います。一度見てみたいな。