2008年12月27日土曜日

Mississippi Heat / Hattiesburg Blues


『Mississippi Heat / Hattiesburg Blues』 (Delmark DE 795)
1. Tiger Man
2. Chicago Is My Home
3. Forgot You Had A Home
4. How Much Worse Can It Be?
5. Soft-Hearted Woman
6. Hattiesburg Blues
7. Gone So Long
8. Light from Within
9. Calypso In Blue
10. Hell And Back
11. Say Something Good
12. Foolish Man
13. Nature Is Cryin'

ミシシッピー・ヒートはソングライターでもあるハーピストのピエール・ラコックが中心となって活動しているブルース・バンド。
根本的にはモダンなシカゴ・ブルースなのですが、ピエール・ラコックの生まれがイスラエルで、育ちがヨーロッパを転々というのが影響してるのか、ヨーロピアン・テイストが随所に感じられる。

今回のアルバムではラテン・パーカッションを導入してる曲を何曲かやってて、カリビアンなファンキーなリズムに、ハーモニカも含めヨーロピアンな感じと恰幅のよい御婦人の迫力のあるボーカルが乗っかる。面白いんだけど好みが分かれるところでしょうね。

僕の好みでは、やっぱり、ノリの良いシャッフルのシカゴ・ブルース(1)かな。味のあるブルージーなハーモニカ、腹の底から吹き出すような迫力の歌声、シャッフルのリズム。一番しっくり来るな。ゆるいシャッフルの(5)も結構いいです。

そして、特筆すべきはルーリー・ベルが歌とギターでゲスト参加してる(2)と(7)。特にウォルター・ホートンを想わせる(7)は最高ですわ。

また、もう一人ゲスト参加してるカール・ウィザースビーもいいギター弾いてるんですよ。
なんやかんや言ってもミシシッピー・ヒートらしいアルバムだね。

2008年12月25日木曜日

Igor Prado Band / Upside Down


『Igor Prado Band / Upside Down』 (Chico Blues LMCD-0373)
1. Upsidedown Intro
2. Strange Things Happen
3. Hoo-Ray For Hoo-Raw
4. Dancing Senhorita
5. Bumble Bee
6. Tigerman Instrumental
7. Mary Jo
8. Whiskey, Cachaca & Wimmen'
9. Hey! Boogie
10. Lonesome Cabin
11. Give A Little
12. It Ain't No Man
13. My Blues After Hours
14. Mr King Collins Medley
15. Maceo's Groove

ブラジルのブルース・バンド ”Prado Blues Band” のギタリスト、イゴール・プラードのソロ・アルバムです。
このイゴール・プラード、テキサスやウエストコーストのスウィング&ジャンプ系のサウンドを出すギタリストで、やっぱこういう音好きだな。ギターの腕前も達者なもんですよ。

歌だって歌えるのにゲスト任せにしてギターに専念してます。そのゲストの中で圧倒的な存在感があるのがウエストコーストのハーピスト、R.J.ミショーだ。(4)と(8)、(10)でボーカルとハーモニカを演奏してますが、(4)はお得意のロッキン・ブルースで、まるで本人のアルバムの1曲を聴いているかような錯覚に陥っちゃう。ミショー節モロ出しだね。(8)はジョン・リー・フッカーのウィスキー・アンド・ウィミンだが、重たくでドロッとしたブギはやらないんだよね。比較的軽快でウエストコーストらしいサウンドだ。そして、ライス・ミラーの(10)。ハープのやわらかくて深みのあるトーンと黒っぽい歌声シビレるね。

もう一人(5)でボーカルとハープをやってるスティーヴ・ガイガー。得意とするオーソドックスなシカゴ・ブルースで、これまた渋い。

ボーカルではJ.J.ジャクソンという人が参加してますが、結構図太い声で上手いですね。パーシー・メイフィールドの(2)なかなかイケてます。イゴールのギターも生ギターに近い音で、タメを効かせてパキパキ弾いてます。これがいいんですよ。

ジョニー・ギター・ワトソンの(12)でもJ.J.ジャクソンの歌はソウルフルでいいです。イントロのギターからしてワトソン節が炸裂するもんだから、思わず顔がニヤついてしまいました。(14)はアルバート・コリンズのトリビュート曲ですね。当然ですがコリンズほど切れ込みが鋭くないですが、なかなか切れの良いギター弾いてます。途中でソローの曲に変わるのですが、そこから後のほうがいいギター弾いてるな。
ブラジルにもスウィンギーなギタリストがいるもんですね。将来有望ですよ。

2008年12月22日月曜日

Jackie Payne Steve Edmonson Band / Overnight Sensation


『Jackie Payne Steve Edmonson Band / Overnight Sensation』 (Delta Groove DGPCD-123)
1. Overnight Sensation
2. Can I Hit It Again
3. Mother-In-Law Blues
4. Take a Chance on Me
5. I Got a Mind to Go to Chicago
6. Uptown Woman Downtown Man
7. Midnight Friend
8. Your Good Thing (Is About to Come to an End)
9. No Money, No Honey
10. Bag Full of Doorknobs
11. She's Looking Good/I've Never Found a Girl
12. Bringin' Me Right Back
13. Feel Like Going Home

ジョニー・オーティス・ショウで長い間シンガーを務めていたジャッキー・ペイン。と、
ウエストコーストのR&Bバンド、ダイナトーンズの元ギタリストのスティーヴ・エドモンソン。二人がチームを組んでから早いもので通算3作目となりました。

ジャッキーは以前、ケニー”ブルー”レイと組んでましたが、その時はケニーがテキサスの熱~いブルース・ギタリストという事もあって、"Soulful Blues"だけれどもブルース色のほうが強いサウンドでしたね。僕はとても好きでしたが。

で、スティーヴ・エドモンソンは渋めのギターで、シンガーとしてのジャッキー・ペインを引き立てる役に終始してる感じ。クロッパーさんタイプちゅうところかな。サウンドもぐ~っとソウル寄りですね。こちらもなかなかいいんだな。

ジャッキーの歌は、ボビー”ブルー”ブランドとかO.V.ライトとかを想い起こさせるもので、最近の新録のブルース・シンガーの中でもダントツに上手い。

サザン・ソウルからファンキー・ソウル、ディープなブルースまで聴き込むほどに味が出てくる、スルメ的なアルバム。良いです。

2008年12月20日土曜日

The Mannish Boys / Lowdown Feelin'


『The Mannish Boys / Lowdown Feelin'』 (Delta Groove DGPCD-122)
1. These Kind Of Blues
2. Searchin' Blues
3. Lowdown Feeling
4. Chocolate Drop
5. If The Washing Don't Get You, The Rinsing Will
6. Need My Baby
7. The Same Thing
8. The Woodchuck
9. Fine Lookin' Woman
10. You Don't Love Me
11. Figure Head
12. Rude Groove
13. When I Leave
14. Good Times
15. Something's Wrong
16. Reet, Petite and Gone
17. Dead Letter Blues

西海岸の新興レーベル、デルタグルーヴが主催するコミュニティー的なバンド、マニッシュ・ボーイズ。

THE BAND
Bobby Jones: vocals
Finis Tasby: vocals
Johnny Dyer: vocals
Randy Chortkoff: harmonica & vocals
Frank “Paris Slim” Goldwasser: guitar & vocals
Kid Ramos: guitar
Kirk “Eli” Fletcher: guitar
Ronnie James Weber: upright bass & electric bass
Tom Leavey: electric bas
Richard “Big Foot” Innes: drums

SPECIAL GUESTS
Little Sammy Davis: vocals & harmonica
Fred Scribner: slide guitar
Junior Watson: guitar
Lynwood Slim: harmonica
Al Blake: harmonica
Fred Kaplan: piano & B-3
Scott Steen: trumpet
David “Woody” Woodford: tenor sax & baritone sax
Cynthia Manley: background vocals
Jessica Williams: background vocals

総勢20名。今回のアルバムもウエストコースト・ファンにはもうお馴染みの錚々たる面子が顔を揃えておりますね。こんだけ大勢の人達が入れ替り立ち替りで演奏してるわけですが、サウンドは決して散漫にはなってない。どの曲もマニッシュ・ボーイズの音を出してるのは、流石にベテランのなせる業なのかな。
ホントに完成度の高い良いアルバムなんだけど、もうちょっと刺激が欲しかったな。

2008年12月17日水曜日

JW-Jones / Bluelisted


『JW-Jones / Bluelisted』 (Northernblues NBM0046)
1. Double Eyed Whammy
2. Looking the World Straight in the Eye
3. Can't Play a Playbo
4. Mad About You
5. Wasted Life
6. Somebody's Got to Burn
7. Heavy Dosage
8. That's Wrong Little Mama
9. Waiting on You
10. Doctor
11. Out of Service Blues
12. Bogart Bounces Again
13. Silent Treatment
14. Tickets on Yourself

今日紹介するJW-ジョーンズという人は、カナディアンで弱冠27歳にして卓越したギタリストなんです。カナダの人なのにギターはテキサスやウエストコースト・スタイルで、B.B.キングやアルバート・コリンズのフレーズをもろに弾いちゃってたりするが、若さゆえの思いっきりの良さですよ、なんか気持ちのいいものです。

サウンド自体はファビュラス・サンダーバーズのロッキン・ブルース的なところもあるが、全体的にカラッとしたノリのウエストコースト・ブルースちゅう感じだね。

で、このアルバム、凄いんです。なんとゲストでリトル・チャーリー・ベイティとジュニア・ワトソンが参加してるんです。この二人が顔合わせてレコーディングするの初めてじゃないかな。そして、リズム隊がラリー・テイラーとリチャード・イネス。ウエストコースト最強のリズム隊がバックに付いてるんだもの、これでサウンドがショボイはずがない。

トミー・リッジリーの(1)。ノリがいいんだよね。しかも、3人のギタリストがギターソロを掛け合うこのスリリングさ。JWもベテランに負けない位ファットなギター弾いてるし、好きな人にとっては至福の一時ですわ。

リチャード・ベリーの(4)では、ファビュラス・サンダーバーズ的なロックンロール・ナンバー。やっぱ好きだな。こんな楽しい曲はライヴで見たい。サックスでリズム刻むのなんか何回聴いても顔がにやけちゃう。アグレッシブなギターソロもいいね。

オリジナルの(7)はジャジーでスウィンギーなインスト・ナンバー。ここでも3人のギタリストがやりあってます。特にジャジーなウッドベースのソロの後はたまらんです。こういう曲をやってくれると、将来が益々楽しみになりますね。

(11)シカゴ・スタイルのスロー・ブルース。リトル・チャーリー・ベイティがハーモニカ吹いてますが、これは驚き。吹けたんだね。ナイトキャッツはリック・エストリンが吹くしね、もしかしたら初物だったりして貴重かも。

(12)ではアルバート・コリンズが登場します(笑)。しかし、ここまで弾きこなすとメチャカッコいいわ。
JW-ジョーンズ、これからの活躍がホント楽しみ。

2008年12月14日日曜日

Little Freddie King / Messin' Around Tha House


『Little Freddie King / Messin' Around Tha House』 (MadeWright MWR44)
1. Messin' Around Tha House
2. Can't Do Nothing Babe
3. Dig Me A Hole
4. Goin Out Da Mountain
5. Sad Sad News
6. The Things I Use To Do
7. Kinghead Shuffle
8. Bad News
9. Goin' Upstairs
10. Washerteria Woman

リトル・フレディ・キングなんて名前なもんだから、どうもあのフレディ・キングと関係があるんじゃないかって思ってしまうのだが、実は全く関係ない。サウンドも違うしね。

ミシシッピ生まれで、ニューオリンズで活動してる今年68歳になるベテランのブルースマンです。サウンドはロンサム・サンダウンやライトニン・スリムあたりのルイジアナ・ブルースが基本で、ミシシッピのデルタ・ブルースも当然しっかりとその根底にある。

このアルバムでは、1曲目や(3)、(5)で打ち込みやスクラッチといったヒップホップの手法を融合させた曲をやってます。これはクリス・トーマス・キングなどもやってて、今となっては決して新しいとは言えなくなったが、このお年でこの試みをやろうという意欲には好感が持てるところだ。ビートがあるし悪くないな。

しかし、なんやかんや言っても本来の持ち味を発揮してる曲が一番いい。(2)や(4)はルイジアナのスワンプ・ブルースで、年季の入ったこのレイジーさはたまらんですね。また、ギター・スリムの(6)でのぶっきら棒な歌い方といい泥臭ささといい味わい深いものがあるな。そして、(9)では猥雑なデルタ・ブルース。このドロドロっとした感じ、ブルースだな。

2008年12月13日土曜日

Legendary Rhythm & Blues Revue / Command Performance


『Legendary Rhythm & Blues Revue / Command Performance』 (Delta Groove DGPCD-121)
1. Can't You See
2. I Feel That Old Feeling Coming On
3. Whammy Jammer
4. Still the Girl in the Band
5. See You Hurt No More
6. If It Ain't Me
7. If I Had a Nickel
8. Will It Go Round in Circles
9. She's Nineteen Years Old
10. Tell Me Mama
11. Looking for a Love
12. High on the Hog
13. Sea Cruise

カリブ海を航海する豪華客船の上で、”Legendary Rhythm & Blues Cruise”というブルースのライブイベントが毎年開催されてるそうです。毎回20組以上のバンドが参加してるみたいで、因みに2009年1月のイベントでは、タジ・マハールやアーマ・トーマス、デレック・トラックス、T-バーズ、ルーサー・ジョンソンなどなど沢山のバンドが出演するようですね。全くアメリカという国は何をやるにもスケールがでかいな。

このバンド名から察するに、イベントの為に結成された即席のバンドのように思われ、2007年10月のイベントの模様やその後のもろもろのライヴが収録されてるのがこのライブアルバムです。即席のバンドとは言え、纏まりのあるしっかりした演奏なので楽しく聴けるし、フロントが変わる度にバンドの感じがガラッと変わったりするので、そのあたりも聴き所の一つかな。

ロニー・ベイカー・ブルックスはT-バーズのような派手なロックンロール・ナンバーの(1)、ソウル・バラードの(5)、典型的なシカゴ・ブルースの(9)と、3曲とも異なったサウンドを出してるが、(1)のように仰け反りで派手なフレーズを弾いてるのが彼らしい気がする。(9)でのバディ・ガイ顔負けの感情的なギターもなかなかいいし、マジック・ディックもいい仕事してますね。そのマジック・ディックのハープはJ.ガイルズ・バンド時代から定評のあるところで、ハープ・インストの(3)、これはカッコいいです。

ディアナ・ボガートという女性ピアニストはよく知らないのですが、ロッキン・ブギウギの(4)なんか好きなノリだな。

そして、ロッキン・ブギウギといえばヒューイ・ピアノ・スミスで、(13)ではマーシャ・ボールがゲスト参加で歌ってます。声はいまひとつ出てないが、このブギウギ・ピアノとルイジアナなノリは最高だね。生ライブはもっと最高だろうな。

2008年12月9日火曜日

Big Daddy 'O' / What You Gotta Go Through


『Big Daddy 'O' / What You Gotta Go Through』 (Rabadash RAB-029)
1. What You Got To Go Through
2. Heavenly Joy
3. Angel
4. Don't Worry 'Bout It Baby
5. Doin' His Job
6. Sportin' Life
7. Ain't Gonna Worry
8. Sixteen Tons
9. Underneath It All
10. Down Here
11. Attitude
12. Gulf Coast At Dawn
13. GGT Ragtime
14. Got No Blues Today
15. If Only We Had Time
16. Vieux Carre Too
17. Shake Rattle And Roll
18. Mama Told Me So

ジャケットを見るとリゾネーターを弾いてたりして、なんとなくカントリー・ブルースをやりそうな雰囲気を持ってるビッグ・ダディ・オー。実際はブルースやカントリー、フォークなどをアコースティック・ギター一本で弾き語るシンガーソングライターで、ボブ・ディランを連想されると思いますが、彼とはまた違った、ルイジアナの人らしい独特の雰囲気を持ったシンガーです。ギター・サウンドからすると根本的にはフォーキーな人かなと思います。ダディ・オーの一番いい所はやはり心温まる歌声、これに尽きます。

通算3作目となる今回の作品では、全曲の内の約半分で本格的なバンド・サウンドを取り入れてます。ボブ・ディランがザ・バンドをバックにフォーク・ロックを演奏したような感じとも言えなくもないが、ダディ・オーは結構ストレートなブルースです。ライブの写真を見るとエレキ・ギターを弾いてたりしてますので、日頃からこういうのやってるんでしょうね。弾き語りからはガラリと雰囲気が変わりますが、板に付いた演奏です。

曲はカヴァー曲が多いのですが、人の曲を自分のものにするのが非常に上手い。圧巻だったのは(3)で、クレジットを見るまではこの曲がジミ・ヘンドリックスの曲とは気が付かなかったくらい。アコギとエレキのみの演奏で、正直参りました。ホント素晴らしいです。そういえば以前もストーンズやビートルズの曲をカヴァーしてましたし、ある意味親近感を持てる人でもありますな。

次の(4)はバンド・サウンドのオリジナル曲。出だしのバレルハウス調のピアノとアコギとの掛け合いが最高で、ルイジアナらしいノリのブルース。これもたまらんね。

素晴らしい曲が満載なのでどの曲も紹介したいのだが、夜も更けてきたので最後に(9)を聴いて寝よう。ダディ・オーの歌を聴いてると優しい気持ちになれる。これしか言えないがホント素晴らしい。途中入るテレサ・アンダーソンのヴァイオリンも見事。感動しました。いい夢が見れそうだ。

2008年12月6日土曜日

Sean Costello / We Can Get Together


『Sean Costello / We Can Get Together』 (Delta Groove DGPCD-120)
1. Anytime You Want
2. Same Old Game
3. Can't Let Go
4. Told Me A Lie
5. Hard Luck Woman
6. How In The Devil
7. Have You No Shame
8. Going Home
9. All This Time
10. Feel Like I Ain't Got A Home
11. Little Birds

去年、ナッピー・ブラウンのアルバムに参加して、凄くイケてるブルージーなギターを弾いたショーン・コステロ。
14歳でメンフィスのブルースのコンテストで優勝して、16歳でデビュー・アルバムをリリース。若くしてその才能を発揮させ、ブルース界ではかなり話題となり期待もされたようですね。

通算5作目となるこのアルバムは、今や西海岸では一番ノッてるレーベル”デルタ・グルーヴ”からのリリースとなりました。これは期待せざるおえないでしょうってことで、サンプルを聴くのもガマンしてCDが届くのを待ちましたよ。僕の頭の中ではスウィンギーなサウンドが鳴ってたもんだから、まさかここまでアタックの強いブルース・ロックだったとは、正直驚きでしたね。でも結構カッコいいサウンドですよ。ギターは骨太でいい感じに枯れたレスポール・サウンドだし、例えば(3)のイントロとか、シビレるね。歌声はしゃがれてるけれどロック調の時は凄みを利かせ、R&B調のバラードではとてもソウルフルでなかなかなものです。曲はオリジナル中心で曲作りの上手さもさることながら、やっぱバンド・アンサンブルの巧みさだね。これはリヴォン・ヘルムに鍛えられたのが利いてるのかな。(4)なんかはバンドを想わせるところあるしね。一転(5)では、これはツェッペリンかな。ギターのリフがカッコいい重心の低いブルース・ロック。結構タメも利かせてるリズムで、ライヴで聴いたら燃えてきちゃいそうなタイプだ。そして、意外とグッときたのがバラードの(7)。エモーショナルなギターと歌、涙腺に響いてきちゃいました。

ショーン・コステロは、4月16日で29歳になろうという一日前の15日に、滞在先のホテルで急逝してしまいました。死因はミュージシャンらしいといえば語弊があるが、そういうことらしい。素晴らしいギターを弾くブルース・ギタリスト。これからの人なのに残念ですね。

2008年12月2日火曜日

Wentus Blues Band / Family Meeting


『Wentus Blues Band / Family Meeting』 (BSMF BSMF-2074)
DISC 1
1. Intro: Going To The Show
2. Moonshine
3. You gonna make me cry
4. Since I been loving you (feat. Sven Zetterberg)
5. I got to go (feat. Sven Zetterberg & Kim Wilson)
6. Passenger Blues (feat. Kim Wilson)
7. Pick up the pieces (feat. Sven Zetterberg & Eddie Kirkland)
8. Lonesome fugitive (Lazy Lester backstage)
9. Angel Blues (feat. Omar Dykes)
10. Stop twisting my arm (feat. Barrence Whitfield)
11. Can't you hear me knocking (feat. Mick Taylor)
DISC 2
1. I heard the angels singing (feat. Eric Bibb)
2. Down the line
3. Looking for Trouble (feat. Kim Wilson)
4. Hold that note (feat. Clas Yngström)
5. Annie Lee (feat. Barrence Whitfield)
6. Blind Willie McTell (feat. Mick Taylor)
7. Backroom Delta (Louisiana Red & Niko Riippa backstage)
8. Ventilator Blues (feat. Mick Taylor)
9. Ride on Red (feat. Louisiana Red)
10. Raining in my heart (feat. Lazy Lester)
11. Biscuit Roller (feat. Clas Yngström & Barrence Whitfield)
12. Outro: Great Final

今日紹介するウェントス・ブルース・バンドは、北欧のフィンランドで20年以上にわたり活動を続けてるブルースバンドで、このアルバムは、結成20周年を記念して行われたコンサートの模様を収めた音楽ドキュメンタリー映画のサウンド・トラックということらしい。

北欧ではホントにブルースが盛んでブルース人口も多いというのは知ってますが、こんな豪華なゲストの面々が集まるということは、やはり実力のある有名なバンドだからなんでしょうね。

で、僕のお目当てはスヴェン・ツェッターバーグだった訳でして、ギター、ハーモニカ、ヴォーカル共に卓越した才能を持った人で、スウェーデン・ブルース界の最重要人物。そのスヴェンがフロントに立ってる曲がディスク1の(4)と(5)、スヴェンの持ち味というか特徴をよく表した2曲だね。(4)はブルーズン・ソウルでクールなリズムに切れの良いギター、そしてソウルフルな歌。う~、スヴェン・ツェッターバーグだ。リトル・ウォルターの(5)は、勿論、グルーヴ感溢れるシカゴ・ブルース。ハーモニカはキム・ウィルソンに任せてるが、ホートンばりの図太いハープが聴きたかったな。

こんだけ豪華なゲストだと1曲1曲聴き応え十分なんですが、その中で面白かったのはオマー・ケント・ダイクス。このストラトの音といいフレーズといい、これはスティーヴィー・レイ・ヴォーンじゃねぇか。確信犯か。ジミー・ヴォーンとのアルバムの時もだけど、茶目っ気のある人なのかも。

あとは、レイジー・レスターだね。スリム・ハーポの「レイニン・イン・マイ・ハート」ホントいいわ。いい味出してるし、今レイド・バックさせたら右に出る人いないんじゃないかな多分。

2008年11月30日日曜日

Honeyboy Edwards / Roamin' and Ramblin'


『Honeyboy Edwards / Roamin' and Ramblin'』 (Earwig CD 4953)
1. Apron Strings
2. Crawling Kingsnake
3. Trouble Everywhere
4. I Was in New Orleans Last Night
5. How Long
6. Maxwell Street Shuffle
7. The Army Blues
8. Roamin' and Ramblin'
9. Talking About Little Walter
10. Smoky Mountains
11. Strollin' Down Highway 61
12. Low Down Dog
13. Little Boy Blue
14. Freight Train Tale
15. Riding The Rails
16. She Worries Me All The Time
17. Boogie Rambler
18. Shufflin' the Blues Conversation
19. Jump Out

ロバート・ジョンスンやチャーリー・パットンを知る生きる伝説、デヴィッド・ハニーボーイ・エドワーズ。マディやロックウッドと同じ年生まれの93歳。
実はうちのばあちゃんも93で元気なんだが、しかし、あのお年を考えると未だに現役で音楽活動が出来るというのは、やはり凄い。歌声にもまだまだ力があるしね。

このアルバムは、2007年にボビー・ラッシュやビリー・ブランチを迎えて録音されたものと、今回が初リリースらしいウォルター・ホートンが参加した75年録音物やシュガー・ブルーとの76年物などがコンピレーションされたものだ。

ボビー・ラッシュの個性的なハーモニカが聴ける(1)、このファンキーなリズムはカッコいいね。若手のヒル・カントリー・ブルースの連中には敵わないカッコ良さがある。

(6)では、ビリー・ブランチのふくよかなハーモニカに魅了される。曲名が如何にもだが、ウォッシュボードのリズムはルイジアナを感じさせ、このあたりは面白い。

そして、僕にとって極め付きは、ウォルター・ホートン参加の(10)と(19)。ハニーボーイのブギってるギターをバックにホートンのハーモニカ。鳥肌ものでシビレますね。

ハニーボーイはシカゴに移って来ても、リトル・ウォルターとマクスウェル・ストリートで演奏してたそうですが、そういう事に思いを馳せることの出来るアルバム。感慨深い。

2008年11月26日水曜日

Dr. “Feelgood” Potts / Going Down To Memphis


『Dr. “Feelgood” Potts / Going Down To Memphis』 (Pottstown PT-2007-1)
1. Going Down To Memphis
2. Ramblin' Mind Blues
3. Juke Joint Blues (Harmonica Instr.)
4. My IN-Laws
5. A Dab Of Your Love
6. Delta Blues (Harmonica Instr.)
7. Pistol Packing Mama
8. Greenwood Mississippi Town
9. I Love You Baby
10. Break Away (Harmonica Instr.)

ハーモニカを持ったヒゲ濃い~おじさん、この顔のような凄く濃い~サウンドが飛び出して来るんじゃないかなと思って買ったアルバム。

全く知らない人は、まずはallmusicで調べたりしますが、過去に3枚程アルバムを出してるようです。試聴もしてみると、ボビー・ウォーマックを思わせるようなサザン・ソウルかニュー・ソウルというのかな、そういったサウンドのアルバムで、正直「え~」って感じでした。というのもこの"Going Down To Memphis"は、メンフィスとかミシシッピとかの南部の香りが漂うこってりとしたブルースだもん。どっちが本当のドクター・フィールグッド・ポッツなんでしょうね。わかりましぇん。

それはさておき、このアルバムはメチャメチャ気に入ってます。以前紹介したビッグ・ジョージ・ブロックに匹敵するくらい。

ヴォーカルが入ってる曲は、比較的ゆるいテンポのものが多くて、ジミー・リードを思わせるまったりとしたゆるさ。(2)あたりの引き摺るようなゆるさはたまらんです。

ハーモニカはテクニシャンちゅう感じじゃないけれど、ビブラートを使って歌心のあるハーモニカだと思います。歌は黒人さん特有のあれで、ソウルフルで上手い。この声聴かされたらやっぱ敵わないと痛感しちゃうな。

ハーモニカ・インストの(3)、(10)あたりは、フランク・フロストみたいなアップテンポのデルタブルース。ジェリー・ロール・キングスほどのイナタさはないけれど、シビレるな。

(9)はメンフィスらしくハウリン・ウルフを感じさせる1曲。これもなかなかいい。
全曲オリジナルで、良い曲ばかりです。捨て曲なし!
それから、Chiemi“The Ice Lady”Fujioという人が2曲ベースを弾いてるのですが、日本人女性かな?だとしたらスゲ~!

2008年11月24日月曜日

House Rockin' and Blues Shoutin'!


『House Rockin' and Blues Shoutin'!』 (Blue Witch BWR-1039)
1. Goin' Away Baby - The Fabulous Thunderbirds
2. Lonesome Bedroom - The Mannish Boys
3. Long John's Country Blues - Long John Hunter
4. Please Don't Go - Floyd Dixon
5. That's All Right - Big Pete Pearson & The Rhythm Room All-Stars
6. Henry's Houserocker - Henry Gray with Kid Ramos
7. Rich Woman - The Fabulous Thunderbirds
8. My Bleeding Heart - Sonny Rhodes
9. That's It - Paul Oscher
10. Monkey Meat - Chief Schabuttie Gilliame with Johnny Dyer and Henry Gray
11. C.C. Rider - Robert Lockwood
12. Horsin' Around - The Fabulous Thunderbirds
13. Time Will Tell - Louisiana Red
14. Two Drinks Of Wine - Billy Boy Arnold

ボブ・コリトアというハーピストをご存知かな?活動の場はアリゾナ州のフェニックスで、オーソドックスなシカゴ・ブルースをやる人なのですが、昨年はデイヴ・ライリーのアルバム「Travelin' the Dirt Road」でハーモニカを吹いてました。割と評判良かったのについつい買いそびれてしまったヤツだ。

そのボブ・コリトアさんは、Rhythm Roomという名のお店を経営してまして、そこで繰り広げられたライブの中から選りすぐりの名演集が、今回ご紹介するアルバムです。

ざっとクレジット見ても、フェニックスに住んでたら毎晩通いたくなるくらい濃い~メンツが揃ってますな。

3曲も収録されてるファビュラス・サンダーバーズ。ロッキン・ブルースをド派手に噛ましてくれるバンドですが、ここではオーソドックスに演奏してます。キム・ウィルスンのハープを十二分に堪能できるノリノリのインストナンバー(12)がカッコイイ。

弾き語りのロング・ジョン・ハンター。ギターの音色がとても心地よい。

ビッグ・ピート・ピアスンの感情の入った迫力の歌は痺れましたね。

ヘンリー・グレイとキッド・ラモスががっぷり四つに組んだインストの(6)。ピアノもギターもこりゃ~たまらんです。

あと、サニー・ローズの何処と無く神秘的なラップ・スティールの音とか、ポール・オシャーのギターとハーモニカの巧みな演奏。ロックウッドの透き通るような煌びやかなギターなどなど聴きどころ満載ですよ。

2008年11月22日土曜日

Bill Lupkin / Hard Pill To Swallow


『Bill Lupkin / Hard Pill To Swallow』 (Blue Bella BBCD-1011)
1. Think It Over Baby
2. Funny Way to Show Me You Love Me
3. Bad Luck
4. Fine Little Thing
5. I'll Be Over You Someday
6. Elgin Bounce
7. Cell Phone Blues
8. See That Little Girl
9. Hole in My Heart
10. Blues Again Today
11. You're Gonna Be Sorry
12. Hook, Line and Sinker
13. Where You Goin'
14. Hard Pill to Swallow

ニック・モス繋がりで初めてその存在を知ったこのビル・ラプキン。
60年代後半からシカゴで活躍してるベテランのハーピストで、70年代にはジミー・ロジャースのバンドに加入し、録音にも参加してるようです。この録音は聴いた事がないので何とも言えないが、当時からかなりの実力者だっただろうってことは想像できます。にも拘らず、自己名義の単独アルバムが極端に少ない。2006年にBlue Bellaから出る前は、1999年のライブアルバムだけという現実。世の中厳しいね。

で、このアルバムは2007年に出たBlue Bellaからの2作目。目下のところ、これが最新作になります。古き良きダウンホームなシカゴ・ブルースをやってまして、99年のライブアルバムからこのアルバムも、一貫してそのサウンドは変わってない。シカゴではマイノリティーとなってしまったようだが、ダウンホームなブルースはやっぱいいなぁ。

前作同様すべてオリジナルで、アップテンポのシャッフルからマイナー調のブルースまで、ソングライターとしてもなかなかですが、それよりなによりもハープの音。図太く奥行きがあってホント気持ち良く鳴ってます。ヴォーカルも負けないくらい太く、渋めで好きですね。ニック・モスのサポートもビル・ラプキンの持ち味を良く引き出してるし、なかなか良いアルバムですね。

2008年11月20日木曜日

Bharath and his Rhythm Four / Friday Night Fatty


『Bharath and his Rhythm Four / Friday Night Fatty』
1. Don't have to Hunt no More
2. Gin drinkin' Woman
3. You're the One
4. Louisiana Blues
5. Born Blind
6. Sweet Black Angel
7. Friday Night Fatty
8. Huckle Boogie
9. I Need a Change
10. Little Girl
11. Talk to Me Baby
12. Take a Swing with Me
13. Ludella
14. Fast Boogie

ジュニア・ワトソンが参加してるアルバムはついつい購入してしまうのですが、このアルバムもそんな中の一枚。

てっきりウエストコーストのブルースだろうとばかり思ってたら、なんと50年代の思いっきりヴィンテージなシカゴ・ブルースじゃないですか。

機材もヴィンテージなものを使ってるようで、細かいニュアンスに至るまであの当時のサウンドを再現してます。このこだわりようはもうマニアックな世界ですね。

ヴォーカルを担当するバラスのハーモニカはもろリトル・ウォルターで、かなりの達者物だと思います。

大御所達の名曲に紛れてオリジナルもやってますが、これが実に良く出来てる。例えば(2)なんかハーモニカだけじゃなくピアノも効いてて、コテコテに黒いな。

古典的なバック・ビート・シャッフルちゅうのは、聴いててホント気持ちいいんですが、一番好きなのはピー・ウィー・クレイトンの(8)だったりします。今の僕にはこのジャンプ・ブルースがたまらんのです。ジュニア・ワトソンのギターも実にいい。

2008年11月17日月曜日

Eric Lindell / Low on Cash,Rich in Love


『Eric Lindell / Low on Cash,Rich in Love』 (Alligator ALCD 4918)
1. Lay Back Down
2. Low on Cash
3. Josephine
4. Mind Your Business
5. Tried and True
6. Lady Day and John Coltrane
7. What I Got
8. It's My Pleasure
9. It's a Pity
10. I Got a Girl
11. It's You
12. All Night Long

エリック・リンデルのアリゲーター移籍後、2作目のアルバムです。
今年の初め頃に発売されたんですが、随分と長いことサボってたんで「今頃!」になってしまった。こういったアルバムが盆地みたいになってることだし、またボチボチやってこうかな。

そんでもって、このエリック・リンデルさん、好きなんですよ。
なんつってもあの個性的な歌声がいい。ちょっぴりスモーキーでヨレっとしてても、なにげに惹きつけられる魅力があるんですね。

サウンドはレイドバックした南部のロックという感じで、スワンプ・ポップとかソウル、ファンク、R&B、ブルース、ジャズなどなどを混ぜ混ぜして独特だね。妖しい雰囲気なんかも漂ってて、独自性の高い音を出してます。ニューオリンズっていろんな人いるからホント面白い。

前作はアリゲーター1作目ということもあったのか、力入り過ぎてて音詰め込み過ぎみたい。ギラギラしたサウンドだったが、今回のアルバムは肩の力が抜けて、なかなかのいい感じ。結構気に入ってるのが(8)で、ファンキーなリズムとアクセントになってるクリス・ミュレのスライド、そして、エリックのペキペキしたブルージーなギター。カッコイイね。あと、ギターのコードワークがなかなか良いソウルフルな(4)とか、エリックのハーモニカが聴けるブルージーな(10)とか好きだね。
曲作りも上手いしアレンジも上手いんで、何回聴いても飽きないね。

2008年3月23日日曜日

Jeff Healey / Mess of Blues


『Jeff Healey / Mess of Blues』 (Ruf 1126)
1. I'm Torn Down (Live)
2. How Blue Can You Get (Live)
3. Sugar Sweet
4. Jambalaya
5. The Weight
6. Mess O' Blues
7. It's Only Money
8. Like A Hurricane (Live)
9. Sittin' On Top Of The World (Live)
10. Shake, Rattle and Roll

ジェフ・ヒーリーが3月2日、癌で亡くなりました。享年41。自分と同い年。
新譜が発売される直前の訃報でした。
デビュー当時、日本でも結構話題になった人でしたね。

盲目のギタリスト。椅子に腰掛けて膝の上にギターを置き、5本の指でジミヘン顔負けのアグレッシブなギターを弾く。凄いギタリストがいるもんだなぁと驚いたものです。

ブルースも演奏してましたが、ハードなロック・スタイルが主体で特にファンという訳ではありませんでした。

あれから20年、懐かしさとアルバム・タイトルに惹かれて、予約注文したこの新譜が遺作となってしまいました。

ブルースやロックのカヴァー曲で構成されてるこのアルバムは、日頃ライヴでやってる曲の中で人気のあるものを収録したそうで、全10曲の内、4曲がライヴ音源、6曲がスタジオ録音になってます。ギターはジェフ・ヒーリーそのものですが、ハード・ロックではなく相対的にブルース・ロックという感じですね。僕はかなり気に入ってます。

まずは、フレディ・キングの(1)、このノリいいね。ジェフがいくら弾きまくってもバックのリズム隊がしっかりしてるから収まりがいいし、激しくロールするピアノもなかなかのもんで、ほんと気持ち良く聴ける。現代のブルース・ロックのお手本みたいな演奏だね。

B.B.キングお得意の(2)では、ぐっとスローに静かな出だし。そして、一発のチョーキングにやられちゃいました。抑えていたものが爆発するが如く激しさを増す後半、オルガンとの絡み、激しさの中にも悲哀なるものを感じて心打たれます。このエモーショナルなギターは...ブルース衝動のある人だった。

お次のマディの(3)は、一転ファンキーなノリのファンク・ブルース。切れの良いカッティングが気持ちいいサイド・ギター。ここでも大活躍のオルガン、これがやっぱり結構上手い。ジェフも比較的太めの声で上手く歌ってますね。

(4)はファッツ・ドミノやプロフェッサー・ロングヘアーなど、ニューオーリンズの多くの人達が演奏したハンク・ウィリアムスの「On The Bayou」。ロックよりの作りですが、その香りは漂ってくるから良い。明るいノリで楽しい。

ザ・バンドの(5)やエルビスの(6)、ニール・ヤングの(8)など、ロックのカヴァー曲もそれなりに楽しめるのだが、ブルース好きとしてはウルフの(9)も聴き所でして、スロー・シャッフルのブルース。静かなすべり出しから次第次第に盛り上げてスパッとブレイク。このブレイクの入り方もカッコいいし、その後のブルージーなギターもカッコいいね。
このアルバムを聴けば聴くほど、早過ぎる死は残念でなりません。
50や60になった時のギターも聴いてみたかったですね。
ご冥福をお祈り致します。

2008年2月21日木曜日

Roomful of Blues / Raisin' A Ruckus


『Roomful of Blues / Raisin' A Ruckus』 (Alligator ALCD 4919)
1. Every Dog Has Its Day
2. Lower On Your List Of Priorities
3. Talkin' To You Eye To Eye
4. Big Mamou
5. Round It Down
6. I Would Be A Sinner
7. Black Night
8. Boogie Woogie Country Girl
9. Solid Jam
10. Sweet Petite
11. While I Can
12. Raisin' A Ruckus
13. New Orleans
14. Life Has Been Good

ルームフル・オブ・ブルースは1967年にロードアイランド州のプロヴィデンスで結成されたバンドだが、当時の中心的人物はデューク・ロビラードやアル・コプリーで、地元のクラブやバーを回りブルース・ロックをやってたようですね。77年のデビュー以降メンバーの出入りが頻繁で、ロニー・アール、ロン・レヴィ、シュガー・レイ・ノーシア、ルー・アン・バートンなど有名になった人も多い。また、エディ"クリーンヘッド"ヴィンスンやビッグ・ジョー・ターナー、アール・キングなどのバックバンドを務め、その演奏能力の高さにも定評のあるところですね。そして、肝心の音楽的嗜好はブルースは勿論のこと、ジャズ、ジャンプ、ジャイヴ、スウィング、ブギ、ソウル、R&B、R&Rなどなど様々なルーツミュージックを内包しつつ、東海岸らしい洗練された都会的センスのあるサウンドを聴くことができます。

で、今回の新作も変わらないルームフル・オブ・ブルース・サウンドが堪能できるわけですが、ヴォーカルがデイヴ・ハワードという人に交代してます。比較的図太い声の持ち主で、いろんなタイプの曲をカッコ良く歌いこなしてます。僕は好きなヴォーカリストですね。このバンドはサックス2本にトランペット1本のホーンセクションを含む8人編成ですが、毎回思うのは本当にバンド・アンサンブルがカッコいいという事と、確立されたサウンドだなってことで、メンバーが交代しても変わらずに「ルームフル・オブ・ブルース」をやり続けてくれるんじゃないかなと思いますね。

最後に、このアルバムが発売される4日前にトランペット奏者のボブ・イノスが亡くなってしまいました。今のメンバーの中では一番の古株で、非常に残念です。

2008年2月17日日曜日

Flavio Guimaraes & Prado Blues Band


『Flavio Guimaraes & Prado Blues Band』 (Chico Blues LMCD0347)
1. I May Be Wrong (Basie/Rushing)
2. Missing Mr.Clarke (Flavio Guimaraes)
3. T-Bone Shuffle (T.Walker)
4. Riding with Ray (Flavio Guimaraes/Prado)
5. Please Send Her Home To Me (T.Braden)
6. Tin Pan Alley (Traditional)
7. George´s Boogie (Flavio Guimaraes)
8. Lazy Thing (Flavio Guimaraes/Prado)
9. Below´s Shuffle (Flavio Guimaraes/Prado)
10. Swing Me Baby (Igor Prado)
11. Put The Kettle On (Traditional)
12. Going Home Tomorrow (A.Young/Domino)
13. Boogie do Caue (Flavio Guimaraes)
14. Louise (Traditional)

2年程前、スウェーデン・ブルースのコンピレーション・アルバムを探してた時に偶然見つけたのが、プラード・ブルース・バンドの「Blues And Swing」というアルバムでした。

ブラジルのブルース・バンドというのも面白そうだったのですが、アルバム・ジャケットのカッコ良さといい、タイトルといい、こりゃいいもん見~けたってな感じでしたね。

30年代か40年代のスウィング・ジャズやウエストコースト・ブルース、ジャンプ・ブルースなどを演奏する結構スウィンギーなブルース・バンドで、聴いただけだとウエストコーストのバンドかと勘違いするほど。スウェーデンのブルース・バンドもこういうサウンドを出す人達多いですね。僕なんかは、この辺りのサウンドが大好物なんです。

それからサウスポーのギタリストIgor Pradoの、ハリウッド・ファッツを彷彿させるジャンピンなギターもなかなかイケてます。いや本当にカッコいいバンドですよ。

今回紹介する新作は、と言っても2006年に発表されたものなんですが、ゲストにこれまたブラジルのベテランハーピストFlavio Guimaraesという人を迎えて、前作同様、ブルース&スウィング路線のアルバムになってます。

Flavio Guimaraesのハーモニカを聴く限りでは、ジョージ・スミスからウイリアム・クラーク辺りの流れを汲むウエストコーストを感じさせるハーピストですね。(2)や(7)のハーモニカ・インスト曲でのクロマチックは、ウイリアム・クラークを思わせるくらい上手いですね。曲自体もP-Vineのコンピ「ファンキー・ハーモニカ」に収録せれてても全然引けをとらない程、ファンキーでカッコいい曲です。

カウント・ベイシー&ジミー・ラッシングの(1)やT-ボーン・ウォーカーの(3)では、Igor PradoがT-ボーンばりのギターを弾いてますが、これがお得意なところなんでしょうね。(11)はウォルター・ホートンの曲を下敷きにしたトラディショナルなシカゴブルースで、ノリのよいシャッフルが心地よいです。(12)ではもろジョニー・ギター・ワトソンなギターが炸裂してるんでビックリ。へ~こんなアグレッシブなギターも弾くとは本当に面白い。これからも楽しみな人だ。最後の(14)は、ジーミー・リードを思わせるダウンホームなスローブルース。前作ではやらなかったタイプの曲だが、Flavio Guimaraesが参加したことで幅が広がったのかな。しかし、この人のハープ本当に上手い。10穴も沁みるな。

これからも注目していきたいバンドなんですが、昨年、ギターのIgor Pradoがソロアルバムを出したので、今年中にはなんとか手に入れたいな。

2008年2月7日木曜日

Nappy Brown / Long Time Coming


『Nappy Brown / Long Time Coming』 (Blind Pig BPCD-5119)
1. Keep On Pleasin' You
2. You Were A Long Time Coming
3. Don't Be Angry
4. Give Me Your Love
5. That Man
6. Right Time
7. Who
8. Cherry Red
9. Aw Shucks, Baby
10. Every Shut Eye Ain't Sleepin'
11. Bye Bye Baby
12. Take Care Of Me

ナッピー・ブラウンはサヴォイしか聴いた事がないんですが、ゴスペル・フレイバーのジャンピンなR&Bシンガーで、面白い歌い方をするのが印象的なシンガー。

このアルバムは80歳を前にして発売された新録のアルバムです。往年の迫力の低域や艶やかな高域など、幾分抜けが悪くなって衰えは感じさせるが、年季が入った深みのある渋い声で、こういうのを燻し銀の声というのだろう。そして何より元気だ。

サヴォイではエヴァレット・バークスデイルやミッキー・ベイカーといったニューヨークの名ギタリストが参加しておりましたが、このアルバムではアトランタ出身のジャンピンなギタリスト、ショーン・コステロがメインで弾いてます。まだ28歳の若者で、ナッピーにしてみれば孫みたいなものだ。世代を越えた競演が出来るのもブルースの良さですよね。

で、このショーン・コステロがまた良いギターを弾くんですよ。一曲目のジャンプ・ブルースあたりの溌剌としたサウンドは、若きギタリストによる所が大きいと思うのだが、ナッピーの存在感も圧倒的で、ほんとにノリの良いジャンプ・ナンバーですね。

(3)はサヴォイ時代の曲で、55年のビルボードR&Bチャート2位を記録したナッピーの代名詞的な曲。”リーリーリーリーリー”ってメリスマを使った歌い方も相変わらずで、歌やギターソロの途中で”リリー”だの”ピピー”だのオブリを入れるのも笑える位面白い。ギターは大好きなジュニア・ワトソンなんですが、ちょっと影が薄くなってしまったな。しかし、ついつい体が動き出してしまうようなノリノリで楽しい曲ですね。

(4)はソウルフルなスローバラードで、曲もいいし歌もめちゃ上手い。こちらが浸ってたらまた例の如く”ララレ・ララレ”だのやりやがって、とんだすっ呆け親爺だ。だけども、憎めない人の良さというのが歌に滲み出てるね。

(5)もサヴォイ時代の曲。原曲ほどのインパクトがないのが残念。

(6)はレイ・チャールズが歌ってヒットしたが、元々はナッピーのオリジナル。こちらはチャートインすらしなかったのである。

(7)はウィリー・ディクスンの曲で、ギターにジュニア・ワトソン、ハーモニカにジョン・ネメスというウエスト・コーストの連中が参加して、ジャンピンなシカゴ・ブルースになってます。アリゲーター録音よりもタイトなサウンドで、僕はこちらのほうが好きですね。

(8)はビッグ・ジョー・ターナーですね。アコースティク・セットによるスロー・ブルースで、ボブ・マーゴリンのアコギもめちゃ渋い。

(9)だけが2002年の録音のようで、ハーモニカがボブ・コリトア、ピアノにヘンリー・グレイ、ギターにキッド・ラモスなどが参加してのヴィンテージなシカゴ・ブルース。ボブ・コリトアはもろリトル・ウォルターを意識したハープだけど、結構良いノリしてますね。

ナッピー・ブラウンはプロ根性丸出しで、エンターテイナー抜群のステージを展開すると聞いたことがあります。若きギタリストやハーピストを引き連れて日本にやって来てくれないかなと思います。一度見てみたいな。

2008年1月30日水曜日

Phantom Blues Band / Footprints


『Phantom Blues Band / Footprints』 (Delta Groove DGPCD119)
1. Look At Granny Run
2. See See Baby
3. Leave Home Girl
4. Cottage For Sale
5. Fried Chicken
6. Barnyard Blues
7. Your Heartaches Are Over
8. My Wife Can't Cook
9. When Malindy Sings
10. Chills And Fever
11. A Very Blue Day
12. A Fool For You
13. When The Music Changes

ファントム・ブルース・バンドのメンバーは、元々テキサスとかロサンゼルスを中心に活動するベテランのスタジオ・ミュージシャンなんですね。

Tony Braunagel: drums
Larry Fulcher: bass & vocals (3, 7, 9, 13)
Darrell Leonard: trumpet
Denny Freeman: guitar
Mike Finnigan: keyboards & vocals (1, 4, 6, 10, 12)
Joe Sublett: sax
Johnny Lee Schell: guitar & vocals (2, 5, 8, 11)

個々のメンバーの経歴を見てみると、錚々たるアーティストのサポートを務めておりまして、B.B.キング、フレディ・キング、アルバート・コリンズ、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュなどのブルース・マスターはもとより、ジミヘンやストーンズ、ボブ・ディランなどのロック・スターまで。そして、忘れてならないのがタジ・マハールの所での活躍ぶりですよね。「Senor Blues」と「Shoutin' in Key」で2度のグラミー賞受賞、2001年にはW.C.ハンディ・ブルース・アワードのバンド・オブ・ジ・イヤー受賞という、まさに凄腕プレーヤー集団なのであります。これだけでも食欲わいてきたでしょ。

2006年のデルタ・グルーヴからのデビュー作「Out Of The Shadows」に続き、この「Footprints」が2007年発表の新作アルバムになります。

このアルバムの中で一番気に入ってるのがハワード・テイトの(1)で、のっけから最高にカッコいい。スタックスかマッスルショールズのウィルソン・ピケットかってな具合のノリで、マイク・フィニガンの歌はディープでかなり上手いし、ジョニー・リー・シェルのロバート・ウォードを思わせるギターもたまらんです。ホーン・セクションも最高で、例えばお決まりの”パーパッ”って入るオブリガート、く~痺れる。

フレディ・キングの(2)はコンテンポラリーな仕上りのブルースで、ジョニー・リー・シェルのブルージーなギターが良い。

(3)はシル・ジョンスンの「'Bout to Make Me Leave Home」。ハイ・サウンドを凌駕する程のファンキーなリズムで、ラリー・ファルチャーのソウルフルで艶のあるボーカルもなかなか上手い。

(5)もハイ・サウンドのルーファス・トーマスだね。元祖ファンキー親父のお株を奪っちゃうくらいファンキーなノリが最高に楽しい。ギターもちゃ~んとチキンしてます。

ナット・キング・コールのスタンダード・ナンバー(4)、オリジナルのシャッフルのブルース(6)、50年代のドゥー・ワップやオールディーズの雰囲気を持つ(8)、アコギによるスライドとアフリカンなリズムを伴ったカントリーなブルースで摩訶不思議なサウンドが魅力の(9)、ジャズ・ファンク的な(11)、レイ・チャールズのバラード(12)、スカというかレゲエというか、ケイジャンにも通ずるようなカリビアンなリズムが楽しい(12)など。前作同様バラエティに富んだ選曲だが、どの曲もファントム・ブルース・バンドのカラーがしっかり出てて、芯がぶれないちゅうのは流石に百戦錬磨のツワモノの集まりだなと感じさせられる所です。古くもあり新しくもある、温故知新なサウンド。これ聴いてたらホッピーのお代わり3本はいけちゃうね。

2008年1月25日金曜日

The Insomniacs / Left Coast Blues


『The Insomniacs / Left Coast Blues』 (Delta Groove DGCD117)
1) Stick Around
2) Serves Me Right
3) Watch Your Mouth
4) Stuttering Blues
5) Crime Scene
6) Wrong Kind of Love
7) I'm Treat You Right
8) I'm Not Sorry
9) Shake the Chandelier
10) I Got Money
11) Be Quiet
BONUS TRACKS
12) Serves Me Right (Live)
13) No Wine, No Women (Live)

オレゴン州ポートランド出身の新人バンド、ジ・インソムニアックス。
舌を噛みそうな名前だね、意味も分かんないし、で、辞書で調べたら「不眠症患者」という事らしい。あ~だから目が血走ってんのかな。凝視したら暗示をかけられそうだよ。「あなたは、も~眠くならな~い」って、、、

冗談はさておき、私個人的に注目しておりますデルダ・グルーヴという新興レーベルから発売されたアルバムでして、流石にこのジャケにはドン引きしてしまったですが、サンプル聴いたらもう迷わずポチしました。
ウェストコースト・サウンドのスウィンギーなジャンプ・ブルース・バンドなのです。

Vyasa Dodson - vocals & guitar
Dean Mueller - bass
Dave Melyan - drums
Alex Shakeri - piano & keyboard

という4人組のバンドで、このバンドを率いてるのがヴォーカルとギターを担当してる弱冠25歳のVyasa Dodson(読み方が分からん)。作詞作曲もやってて殆どがオリジナル。冷え込みの厳しいブルース界において、才能を持った若手新人さんの登場は喜ばしい事じゃないですか。で、この人、特筆すべきはギターの上手さなんです。リトル・チャーリー・バティかジュニア・ワトソンかって感じで、メイン・ギターが結構使い込まれたテレキャスターちゅうのもいい。独特のあの乾いたパキパキではなく、柔らかくて骨太のサウンドで、ウエストコーストのギタリストがよく出す音だね。

1曲目の軽快なノリのジャンプ・ブルースからシャッフル、R&Rナンバーとバンドの纏まりも良くて、軽快にロールしたり跳ねたりするピアノもなかなかいいですね。やっぱこのカラッとした明るいノリのウエストコースト・サウンドは楽しい。好きですね。(4)はジャジーなスロー・ブルースで、クリーンなトーンでキララララって弾くギターは、まるでロバート・ジュニア・ロックウッドを思わせ、お若いのに良いギターを弾きなさる。ヴォーカルも上手いほうだと思うのですが、ロッド・ピアッツァみたいに軽めですね。
結構いい曲も書くVyasa Dodson、これからがちょっと楽しみなブルースマンです。

2008年1月21日月曜日

Nick Moss & The Flip Tops / Play It 'Til Tomorrow


『Nick Moss & The Flip Tops / Play It 'Til Tomorrow』 (Blue Bella BB 1008)
Disc: 1
1) Late Night Saint
2) You Make Me So Angry
3) Woman Don't Lie
4) Mistakes From the Past
5) Bad Avenue
6) Lyin' For Profit
7) Herman's Holler
8) Grease Fire
9) Rising Wind
10) Tend To Your Business
11) My Love Is Like a Fire
12) Peculiar Feelings
13) Too Many Miles
14) The Rump Bump
15)
Disc: 2
1) You've Got the Devil Inside
2) I'll Be Straight With You
3) Another Life Is Gone
4) Fill 'er Up
5) It's Written In the Bible
6) Wild Imagination
7) You'll Remember My Name
8) Crazy Mixed Up Baby '07
9) Got My Mail Today
10) I Shall Not Be Moved
11) Slim's Lament
12) Married Woman Blues
13) I'll Be Straight With You
14) It's Written In the Bible

ニック・モスはシカゴを拠点に活動するギタリスト&シンガー、たまにハーモニカも吹きます。
ベーシストとして音楽活動をし始め、18歳でバディ・スコットのバンドに加入してます。
20歳でジミー・ドーキンスのツアーに参加した後、レジェンダリー・ブルース・バンドにカルヴィン"ファズ"ジョーンズの後釜として加入、93年の「Money Talks」に参加してます。これが多分ニック・モスの初レコーディングだと思います。

その後、ギターに転身してジミー・ロジャース・バンドのセカンド・ギタリストを務めるんですね。レコーディングには参加していないようですが、一緒にやってたというだけでもやっぱ凄いわ。

ウィリー"ビッグ・アイ"スミスの95年発売の「Bag Full of Blues」でギター弾いた後、自分のバンド"Nick Moss & The Flip Tops"を結成し、99年に「First Offense」でデビューということになります。

オールドのギターとオールドのチューブ・アンプの組み合わせによる、心地よい感じに歪んだファットなギター・トーンが特徴的で、ブルース・フィーリング溢れるカッコいいギタリストです。

ヴィンテージなシカゴ・ブルースは結構ダウン・ホームなサウンドだったりしますが、R&Bやロッキンなブルース、ジャジーなジャンプ・ブルースでは、ウエストコースト・サウンドの雰囲気があって、当初てっきり西海岸の人とばかり思ってたんですね。

また、デビュー・アルバムから一貫してオリジナル曲中心の構成で、コンスタントにアルバムを発表できるのも作詞作曲できる人の強みでしょうかね。

2006年に5作目にして初のライヴ・アルバム「Live at Chan's」を発表したのですが、ニック・モスのアルバムの中では一番好きなアルバムで、これ程までにエモーショナルなギターを弾く人だったのかと改めて惚れ直した、ほんと傑作ライヴ・アルバムでした。

それに続き2007年に発表したのが、通算6作目となる今回の新譜です。しかも、2枚組みという大作で、勢いとどまるところ知らずちゅう感じですよ。

Disc:1では基本的な路線は固持してるのですが、いつになくロック色の強い曲が満載で、1曲目、エディ・テイラー・ジュニアのリフから始まるロックンロール・ナンバー。ノリノリにドライヴしててガツーんと来ましたね。バンド・アンサンブルもお決まりのパターンなのですがこれがカッコいいんです。

お次もアップテンポのR&Rナンバーで、エディ・テイラー・ジュニアのクリーン・トーンのソロもなかなかですが、やはりニックのオーヴァー・ドライヴしたファットなギターが痺れますな。

フロイド・ジョーンズ作の(9)では、ニックがハープ、エディがギターを担当。こういうヴィンテージなシカゴ・ブルースの時のエディのギターはやはり渋い。いたるところで引っ張りだこなのも分かるな。親父さんみたいに最高のサイド・マンになってくれそう。ニックのハープも図太い味のある音を出してます。

(8)のファンキーなギター・インスト曲や(14)のキレのよいリフが気持ちいいインスト曲もめちゃくちゃカッコいい。はじけちゃってます。

全編通して聴くとニック・モスもロック世代だったんだと感じます。変な捻りなど無く、豪快にど真ん中ストレート勝負ちゅう感じがとても気持ち良くて好きだなぁ。

かたやDisc:2では、1、2曲目こそウエストコーストの連中がやるようなノリのシカゴ・ブルースだけれど、あとは思いっきり古典的なシカゴ・ブルースをやってます。

ニックはエレキからアコーステック・ギターに持ち替え、バンドはベースレスにして間を活かした、50年代のチェス・サウンドのような音作りしてます。

差し詰め(3)は「ロング・ディスタンス・コール」、(5)は「ローリン・ストーン」ちゅう感じかな。ためて引きずるようなサウンドで、あたかもマディが歌い出しそうだが当然歌ってるのはニック・モスです(笑)。

他に、アコギでのアンプラグド・セッションみたいなのも何曲かやってまして、これもこれまでにない取り組み。マンドリンを取り入れたカントリー調の(10)は特に面白かった。(14)ではアコギとハープによるもろカントリー・ブルース。無理してダウン・ホームにやろうとはせず、肩の力抜いて自然体でやってるのが好感持てます。

1枚目はエレクトロニックでバリバリに、2枚目はアコーステックでナチュラルにと両極端で結構楽しめます。どちらも1枚の独立したアルバムにしていい位、質が高くて濃い内容になってます。

2008年1月14日月曜日

Omar Kent Dykes & Jimmie Vaughan / On the Jimmy Reed Highway


『Omar Kent Dykes & Jimmie Vaughan / On the Jimmy Reed Highway』 (RUF 1122)
1) Jimmy Reed Highway
2) Baby What You Want Me to Do/Bright Lights Big City
3) Big Boss Man
4) Good Lover
5) Caress Me Baby
6) Aw Shucks, Hush Your Mouth
7) You Upset My Mind
8) I'll Change My Style
9) Bad Boy
10) Baby, What's Wrong
11) Hush Hush
12) You Made Me Laugh

ジミー・ヴォーンは言わずもがなスティーヴィー・レイ・ヴォーンの兄貴さんで、ファビュラス・サンダーバーズのギタリストだったテキサス出身のブルースマンだね。スティーヴィーみたいな派手さはないけれど、ツボを突くいぶし銀のギターが好きです。

一方、オマー・ケント・ダイクスはオマー&ザ・ハウラーズのヴォーカル&ギタリスト。テキサスで活動するハードなブルース・ロックをやるバンドですね。オマーの歌い方はハウリン・ウルフにくりそつで、これ以上誇張するとパロディーになっちゃうって感じだ。

この二人のテキサンがタッグを組み、テキサスからウエストコースト辺りの名うてのミュージシャンを集めて、ジミー・リードのトリビュート・アルバムを作り上げました。

てっきりロッキンなブルースかと思いきや、これが古典的なサウンドのブルースなんですね。参加してるハーピストもキム・ウィルソン、ジェイムス・コットン、ゲイリー・プリミチ、デルバート・マクリントンと豪華で、ハープファンも素通り出来ないしょ。なんせジェイムス・コットンが1曲ですが吹いてるんですからね。流石に年季の入ったハープは痺れますよ。

このアルバムを聴いてたら、「何も足さない、何も引かない」という某ウイスキーの名コピーを思い出しました。ピュアモルトならぬピュアブルースだ。ちょっと褒め過ぎかなですが、ジミー・リードに対する尊敬の念を感じました。

2008年1月12日土曜日

Lurrie Bell / Let's Talk about Love


『Lurrie Bell / Let's Talk about Love』 (P-Vine PCD-93044)
1) Let's Talk About Love
2) Earthquake And Hurricane
3) You Ought To Be Ashamed
4) Why (Am I Treated So Bad)
5) Feeling Good
6) Missing You
7) Directly From My Heart To You
8) Cold Chills
9) Chicago Is Loaded With The Blues
10) My Dog Can't Bark
11) Turn To Me
12) Wine Head Woman

近年のルーリー・ベルはサポート側に回る事の方が多くて、この前紹介したシュガー・ブルーの新作に参加してたり、今は亡きキャリー親父と共演したライヴ・アルバムは、まだまだ記憶に新しい所ですね。また、ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルへの出演など活動目覚しくなってきたところで、正しく満を持してという感じの新録のソロ・アルバム。前作の「Cuttin' Heads」からおよそ7年ぶり、「よっ、待ってました!」ですね。

で、この新作のプロデューサーはシカゴのハーピスト、マシュー・スコラーが担当してまして、ルーリーとは20数年来の友人である。気心の知れた良き理解者と一緒にやれたのは本当に大きいと思う。マシューはライナーで、「アーティストとして好きなようにできるレコードを作ろう」と語ってるように、ルーリー自身も思い通りにやれたのではないかなと思います。

ですがギター・サウンドの変わりようには少し驚きでしたね。以前のようなソリッドで鋭く畳み掛けるような音ではなくなり、まろやかなクリーン・トーンでロングサスティーンも多用したりして渋めに弾いてます。

最初は正直言って物足りなさを感じたのですが、何回か聴いてる間にだんだん好くなって来てね今は結構気に入ってます。その中でもフェントン・ロビンソンもやった(7)がいいね。フェントンと違ってスクイーズなのですが、この絶妙なトーンで感情がグッと入ったギターはホント痺れますよ。あと(8)はヒップ・ランクシャンの曲のようだが、このリズムはバディ・ガイが「Mary Had a Little Lamb」でやったやつと同じで、ファンキーでカッコイイ。BBキングぽいギターが気持ちいい(6)もなかなかのもんです。それとマシュー・スコラーがハープを吹いてる(9)と(12)ですね。ビリー・ブランチ程の知名度は無いけれど、シカゴでは屈指のハーピストなんですよ。でも最近はアルバムもご無沙汰で、久しぶりに聴けてマシューファンとしては嬉しいところです。特に(12)はマシューのアルバムを聴いてるみたいで、シャッフルのノリも楽しい曲ですね。

2008年1月10日木曜日

ハウリン・ウルフの日

今日は1976年1月10日に亡くなったハウリン・ウルフの命日でした。


日頃、現在進行形の新録アルバムに現を抜かしてね、いにしえの偉大なブルースマンをこの数年あまり聴いてなかった。ので
せめて命日くらいは偲んでみようかなと思いまして、今日は朝から仕事場でも一日中、ハウリン・ウルフが吠えまくりでした。
ブルースを聴く上で避けては通れぬこの豪快な頑固親父、最初に買ったレコードは2枚組みの輸入盤でした。「Moanin' in the Moonlight」と「Rockin' Chair」がカップリングされたもので、「Rockin' Chair」のほうは曲順合ってるのに「Moanin' in~」は曲順バラバラ、一曲目が「Forty Four」という訳の分からぬアルバムなのです。だけどガキの頃はそんな事は気にもせずこのアルバムを一所懸命聴いてたので愛着ありますね。
十数年ぶりかな針を落とすのは、アナログで聴くハウリン・ウルフ、格別ですな。
やはり、ブルースの礎ここにありという感じがします。
そういえば、ウルフの伝記本が発売されるそうで、これは買わんといかんでしょね。

2008年1月7日月曜日

Ray Reed / Lookin' For The Blues


『Ray Reed / Lookin' For The Blues』 (P-Vine PCD-25068)
1) Lady Pearl's Cut You Loose
2) Lookin' For The Blues
3) Woke Up This Morning
4) Never Make Your Move Too Soon
5) Lucy Mae Blues
6) Two Trains Running
7) I Love You Baby
8) Bad Sad
9) Boogie Chillen
10) Wonder Why
11) Trust Me
12) Have You Ever Loved A Woman
13) Maypearl Rose
14) Key To The Highway
15) Twist
16) Bad Sad (acoustic)

ダイアルトーンはテキサスの超ローカルな無名ブルースマンを見つけては世に出すという本当に奇特なレーベルだが、このレイ・リードもそんな中のひとりで、67歳にして初録音のデヴュー・アルバムだそうである。
全体的な印象としては、テキサスというよりもミシシッピの泥臭いデルタ・ブルースに近い感じがしますね。

1曲目から豪快にドライブするシャッフルのリズムに乗せて、ワイルドなギターが炸裂してます。初っ端からガツンですよ。これは最高ですね。

BBキングの(3)もなんか泥臭い。テキサス系のギターもワイルドだけど歌もワイルドですね。年齢詐称じゃないかなっう位のド迫力ですよ。

(4)のロックンロールぽいファンキーなノリも結構好きだな。

マディの「ローリン・ストーン」をカヴァーした(6)、ブギ・ギターがめちゃカッコいい(9)、フレディ・キングの(12)ではイナタいギターと貫禄の歌声を聴かせてくれるし、(14)はハーモニカをお供にアコースティックギターで渋く決めてます。ほんと全曲最高です。これは絶対買いですよ。もう買ってるって、こりゃ失礼しやした。