2011年4月30日土曜日

Mitch Woods / Gumbo Blues


『Mitch Woods / Gumbo Blues』 (Club 88 Records 8808)
1. Gumbo Blues (Dave Bartholomew)
2. Ooh La La (Dave Bartholomew)
3. Caledonia's Party (Dave Bartholomew)
4. Ain't Gonna Do It (Bartholomew / King)
5. Big Mamou (Link Davis)
6. Bumpity Bump (Dave Bartholomew)
7. Too Many Drivers (Dave Bartholomew)
8. Lil' Liza Jane (Traditional)
9. Blue Monday (Bartholomew / Domino)
10. Can't Stop Lovin' You (Dave Bartholomew)
11. I Hear You Knockin' (Bartholomew / King)
12. Shame, Shame, Shame (Fisher / Hopkins)

Mitch Woods - piano, vocals
Herb Hardesty - sax
Amadee Castenell - sax
Brian "Breeze" Cayolle - baritone/tenor sax
John Fohl - guitar
Cornell Williams - bass
Eric Bolivar - drums


ミッチ・ウッズは1951年ニューヨーク市ブルックリン生まれで、1971年からカリフォルニア州サンフランシスコで活動してるピアニスト&シンガー。1984年からBlind Pig よりアルバムをリリースするようになるのですが、ジャンプ・ブルースやブギウギを得意としてます。
2006年リリースのアルバム「Big Easy Boogie」頃からニューオーリンズに傾倒するようになったみたいで、今回のアルバムはニューオーリンズの名うてのミュージシャンを起用し、ニューオーリンズで録音されたスマイリー・ルイスのトリビュートアルバムです。ピアニストのファッツ・ドミノではなく、敢えてギタリストのスマイリー・ルイスとは、ちょっとクセ者かな。

デイヴ・バーソロミューの名曲がずらっと並んでますね。全てスマイリー・ルイスが演奏した曲ですが、割と忠実にオールドスタイルで演奏されてるのが、まず良いです。
(1)(2)(4)(6)辺りのジャンプ・ブルースは、スマイリー・ルイスというよりもファッツ・ドミノをアップテンポにしたような感じがするものの、やはりウェストコースト・ジャンプという雰囲気。端っからウェストコースト・ジャンプの人というイメージで聴くからそう聴こえるのかもしれません。ピアノは元々弾け飛んでる人ですが、ここでも跳ねるピアノはなかなか爽快です。ボーカルもバリトンボイスで割かし黒っぽいのも良いですね。
ニューオーリンズR&B然とした楽曲(3)(5)(9)(11)辺りでは、三連のピアノもいい感じで、ルイジアナ臭が漂ってて良い雰囲気出してます。ファッツ・ドミノの(9)やスマイリー・ルイス最大のヒット曲(11)なんかも、ファッツ・ドミノのアルバムでしこたま聴いたせいか、どうしてもファッツ・ドミノのイメージだな。
(7)はデイヴ・バーソロミュー作とクレジットされてますが、これはビッグ・ビル・ブルーンジーの曲ですね。勿論、スマイリー・ルイスのバージョンが元となってますが、この緩さ加減がたまらんですね。ジョン・フォールのウェストコースト・ブルースっぽいギターも良い。

2011年4月28日木曜日

John Carey & Piano Bob / Back In New Orleans


『John Carey & Piano Bob / Back In New Orleans』
1. Back In New Orleans (John Carey / Bob Wilder)
2. Parade Of Injustice (John Carey)
3. Spirit Inside Of Me (John Carey)
4. Soul Surgeon (John Carey)
5. Union Man Blues (John Carey)
6. Doin' The Big Easy (Bob Wilder)
7. Slow Dancin' (John Carey)
8. Boathouse Blues (John Carey)
9. Rock-A-Bye Baby (John Carey)
10. The Storm (John Carey)
11. Ride The Train (John Carey)
12. Gipsy Woman Blues (John Carey)
13. Box Spring Boogie (John Carey)
14. Desir'ee (John Carey)
15. Father And Son (John Carey)

John Carey - lead vocals, harmonica, background vocals, electric rhythm guitar, acoustic rhythm guitar, percussion, song arrangements
Piano Bob - grand piano, song arranger #1,6
John Fohl - electric rhythm/lead guitar
Sean Carey - electric bass, background vocals, percussion, 2nd harmonica #15
Willy Panker - drums
Jimmy Carpenter - horn arrangements, baritone/tenor saxophone
Eric Ensminger - trumpet, trombone
Tim Stambaugh - percussion #8
Special Guests:
Eric Lindell - lead guitar, vocals #9
Jumpin' Johnny Sansone - accordion #14
Marc Stone - steel guitar #11


 
ジョン・キャリーはメキシコのサンタフェ出身で、ニューオーリンズで活動してるブルース・ハーピスト。シカゴ・ブルースが根源となってるようで、ジェイムズ・コットンやバディ・ガイ、ジュニア・ウェルズなどとステージ共演の経験があるそうです。ニューオーリンズのR&Bやファンク、メンフィス・ソウルなどを演奏するようです。
ピアノ・ボブことボブ・ウィルダーはニューヨーク出身のピアニスト。バレルハウスやブギウギ・ピアノを得意としてるようで、ジャンプ・ブルースやスウィングなどを演奏してます。

この二人の共作アルバムという事ですが、収録されてる曲は殆どジョン・キャリーの曲ですし、全体的な曲調からするとジョン・キャリーのメインという感じですね。
ジャンプ・ブルースからニューオーリンズR&B、メンフィス・ソウル、ルイジアナ・ブルース、スワンプ・ポップ、ザディコなどアメリカン・ルーツ・ミュージックを幅広く取り上げてますが、ハーモニカやピアノだけが突出して前に出過ぎるような事もなく、調和の取れた非常に気持ちの良いバンドサウンド。全体的にレイドバックした雰囲気で凄く和むサウンドです。

結構好きな曲が多くてですね、その中でも、まずはジャンプ・ブルースの(1)や(6)ですね。特に(6)、ピアノ・インスト・ナンバーでニューオーリンズらしいノリが良い。ブギウギ・ピアノはほんと心地良いのですが、ピアノ一辺倒にはならず、ギターからピアノ、サックスとソロを回していく辺りは、ブラックミュージックの良さであり楽しい所ですね。
セカンドラインのニューオーリンズR&Bの(2)。ニューオーリンズのセッションギタリストとしては無くてはならない存在となったジョン・フォール。スヌークス・イーグリン張りのいいギター弾いてますね。ホーンやピアノ、ハーモニカの絡みも良い。
メンフィス・ソウルの(3)は現代的なサウンドながら、60年代のスタックスを思わせるホーン・アレンジにグッときます。
ブルース・ナンバーではハーモニカは割りとシカゴ・スタイルに近い感じだけれども、ルイジアナ・ブルースの(4)からシャッフルの(5)、スワンプの(8)、サザン・ロックという感じの(11)、スロー・ブルース(12)と結構色々演ってますが、(8)のふわっとしたハーモニカとのんびりしたサウンドがいい感じです。
エリック・リンデルがボーカルとギターで参加してるスワンプ・ポップの(9)。やはりエリック・リンデルの存在感たるやハンパない。
もう一人の注目のゲスト、ジョニー・サンソンがアコーディオンで参加してる(14)。こちらは田園風景を連想するカントリータッチのケイジャンサウンド。
最後は「ハーモニカ・ザディコ」と副題が付いてる通り、ハーモニカでザディコしてます。メインのハーモニカとリズムを刻むセカンドハープが息もピッタリに絡み合い、ノリノリで結構楽しいですね。
こうやって言葉にするとなんか無節操な感じを受けますが、実際聴くと意外と統一感があって、全15曲飽きる事なく楽しく聴けます。なかなか良いアルバムでした。

2011年4月26日火曜日

JW-Jones / Midnight Memphis Sun


『JW-Jones / Midnight Memphis Sun』 (RUF 7100)
1. Off The Market (JW-Jones)
2. Love Grows Cold (Lowell Fulson)
3. Kissin' In Memphis (JW-Jones)
4. Cuts Like A Knife (Bryan Adams)
5. Born Operator (JW-Jones)
6. Burnt Child (McGhee, Terry)
7. Right On Time (JW-Jones)
8. I Dont Go For That (Jimmy Reed)
9. Mean Streak (JW-Jones)
10. Make A Move (JW-Jones)
11. Howlin' With Hubert (JW-Jones)
12. Games (JW-Jones)

JW-Jones - guitar, vocals
Hubert Sumlin - guitar on 5,11,12
Charlie Musselwhite - harmonica on 3,6,8
Jesse Whiteley - hammond organ & piano
Martin Régimbald - bass
Jeff Asselin - drums
Larry Taylor - bass
Richard Innes - drums
Brian Asselin - sax
Nick Cochrane - trumpet
Lisa-Gaye Pryce - vocals on 10


JW-ジョーンズはカナダ生まれで、今でもオタワを拠点に活動しているブルース・ギタリスト&シンガー。ウェストコースト系のジャンプ・ブルースを得意としておりまして、フルアコやセミアコを柔らかいトーンでスウィンギー&ジャンピンに弾く感じは、T-ボーン・ウォーカーやピー・ウィー・クレイトンを彷彿させます。

前作辺りからソリッドなロッキン・ブルース色が強くなってきておりましたが、ゲストにリトル・チャーリー・ベイティとジュニア・ワトソンが参加して大盛り上がりしたアルバムで、JW-ジョーンズのアルバムの中では特に好きな1枚となってます。

そして、今回はヒューバート・サムリンとチャーリー・マッスルホワイトが参加してますね。その中でもヒューバートが参加してる(11)と(12)が好きだな。(11)はロッキン・ブルースのインスト・ナンバーで、レスポールのファットなトーンに気持ち歪みを効かせたJW-ジョーンズと、ストラト系のクリーンなトーンでパキパキ気味に弾くヒューバート。この超大御所と若者のコール&レスポンス、痺れましたね。こういう曲を聴くとやっぱブルースはいいなって思う。(12)はシカゴのウェスト・サイド系のブルース。ヒューバートのリズム・ギターがまた渋くてたまらんのですが、JW-ジョーンズのソロもマジック・サムかと思わせるフレーズ、歪んだ図太いサウンドでこちらもたまらん味わいです。
チャーリー・マッスルホワイトが参加してる(3)。曲自体のリズムが好きで、チャーリーのハーモニカよりもJW-ジョーンズのギターのほうに耳が行ってしまう。めちゃくちゃ上手いな。(8)はジミー・リードの曲で、ここまでトラディショナルにシカゴ・ブルースを演るのは珍しいですね。ここではチャーリーのアンプリファイド・ハープが流石です。
ローウェル・フルスンの(2)は、いつものようにホーン・セクションを導入したジャンプ・ブルースで、JW-ジョーンズの真骨頂という感じですね。

曲作りも上手いし、ギターも勿論抜群に上手い。ただ歌が、下手ではないのですがちょっと淡白かな。黒人の声は黒人特有のものだから、どう頑張ってみても、どうにかなるものじゃない。リズム感もなんだけれど。ま、あまり拘らずこれも一つの持ち味というか個性として聴けばいいんじゃないかなと思います。

そう言えば昔、黒人の友達がいまして、そいつは、歩き方から独特なリズム感があって、あれ見てたら絶対敵わないと思ったものです。そいつはヒップホップを聴いてましたが、ブルースは聴かないのか?って聞いたら、「ブルース!おじいちゃんが聴く音楽ですよ」って言ってた。思わず苦笑いでした。

2011年4月23日土曜日

Big Sam's Funky Nation / King Of The Party


『Big Sam's Funky Nation / King Of The Party』 (Sammy Williams Music)
1. King Of The Party
2. Krunked Up
3. Rage On!
4. Straight To It
5. Rock Yo Soul
6. Take 5
7. Hard To Handle
8. Big Ole Booty
9. See Me Dance
10. Work It
11. Dance Floor
17. ?
Big Sam Williams - vox/trombone/effects
Drew "Da Phessah" Baham - backup vox/trumpet/effects
Takeshi Shimmura - guitar
Eric Vogel - bass
Desmond "Chocolate Milk" Williams - drums
Feat..Khris Royal on sax #10


サミー”ビッグサム”ウィリアムスはダーティ・ダズン・ブラス・バンド(DDBB)に影響されて15才でトロンボーンを始めたそうですが、4、5年後にはそのDDBBに加入してるんですね。参加したアルバムは2002年「Medicated Magic」、2004年「We Got Robbed: Live in New Orleans」と「Funeral for a Friend」の3枚。「Medicated Magic」の冒頭を飾った曲はサミーの作曲で、演奏能力がずば抜けてたのは言うまでもなく、作曲の才能も備え持っていた。これは後に開花する事になるのですが、サミーが如何に期待されてDDBBに迎え入れられたか、容易に推し測れますね。

しかし、加入1年後位に自身のバンド、ビッグ・サムズ・ファンキー・ネイション(BSFN)を立ち上げ、2004年(2003年?)にデビュー・アルバム「Birth Of A Nation」をリリースする訳ですが、その時はまだ22才位で、トントン拍子で駆け上がり、今ではニューオーリンズを代表するトロンボーン奏者ですもんね。凄い若者です。

さて今回のアルバムは2010年にリリースされた通算4作目となりましたが、2年に1枚は発表してますので順調だなという感じですね。
デビュー時のサウンドは、今のDDBBをもっとジャズ寄りにした軽快なノリが特徴でしたが、新作を聴く度に段々ロック色が強くなって、60年代後半のハード・ロックなのですが、Bonerama のサウンドに近い感じです。Bonerama はトロンボーン軍団でスーザフォン使いなのでホーンの厚味が凄くて、やっぱりブラスバンド的かな。BSFNはスーザフォンではなくベースを使用してるので、リズムも凄くタイトなってるのが特徴で、ジャム・ファンク・バンドという感じですね。トロンボーンのハードロック的リフや重低音の迫力も凄い。

60年代のサザン・ソウルやR&Bに傾倒している曲があるのも魅力を感じる所で、今回のアルバムではオーティスの曲をカヴァーしてますが、ファンク・ナンバーにしても、疾走感溢れるサウンドながらタメや間を活かしたバンド・アンサンブルはカッコいいですね。

2011年4月21日木曜日

Terry "Big T" Williams / Jump Back, Big T's In The House


『Terry "Big T" Williams / Jump Back, Big T's In The House』 (Matt The Scat Records)
1. The Night Doctor (Terry Lee Williams)
2. Bound For Clarksdale (Terry Lee Williams)
3. Booty Wild (Yann A. Durham)
4. How I Got the Blues (Yann A. Durham)
5. Change Must Come (Luther Allison)
6. Dew Man (Yann A. Durham)
7. Rollin' Stone/Catfish Blues (McKinley Morganfield)
8. Jump Back, Big T's In the House (Yann A. Durham)
9. Riverside Hotel (Terry Lee Williams)
10. Devil In the Cottonfield (Terry Lee Williams)
11. Last Jelly Roll (Terry Lee Williams)

Terry "Big T" Williams - guitar & vocals
Elijah Wilkins - keyboard & organ
Lee Williams - Drums
Jeremie Horton - bass
Yann A. Durham - harmonica


10年程前、シカゴのStand On The Ocean というレーベルから「Lowdown, Dirty, Mississippi Delta Blues」というコンピレーションのライブアルバムが発売された事があったのだけれど、ミシシッピ、クラークスデイルのジュークジョイントで録音されたライブで、出演者はローカルなブルースマン達。一際強烈な存在感を放っていたWillie Foster というハーピストがいてね、惚れ込んでしまってアルバムを探し回ったりしたものですが、、、
Terry "Big T" Williams もその出演者の中に名を連ねていました。

今回のアルバムは2010年にリリースされたものですが、知る限りでは3枚目のアルバムになると思います。10年前はファミリー・バンドで演ってまして、リズムに危うさを感じる所もありましたが、今回のバンドは纏まりもノリも良くて、安心して聴けますね。

B.B.キング辺りのサウンドを思わせる(1)や(4)。少し引っ掛かり気味にパキパキ弾くギターは魅力。歌も黒人特有の深みのある声で、上手くなってますね。
古いカントリー・スタイルの(2)(10)、前作で演ったよう感じのサウンド。ハーモニカを入れて、ルイジアナのスワンプ・ブルースといった雰囲気の(10)。このほんわか感もいいね。

(3)や(8)ではシカゴのカルロス・ジョンソンを彷彿とさせるファンキー・ブルース。シカゴのブルース・フェスティバルにもよく出演してるようで、いろんなサウンドを取り入れる柔軟性、これもTerry "Big T" Williamsの持ち味のようです。
(7)は典型的なデルタ・スタイルですが、何処となくジミヘンを思わせるサウンド。歌かな。ドロっとしながらもモダンな感じがしますね。
リトル・ミルトン辺りのブルーズン・ソウルかなという(9)。
デルタ・ブルースマンにしては珍しくバラエティーに富んだ音作りに挑戦してるTerry "Big T" Williamsです。結構面白いので、期待大です。

2011年4月19日火曜日

Elvin Bishop / Red Dog Speaks


『Elvin Bishop / Red Dog Speaks』 (Delta Groove DGPCD 138)
1. Red Dog Speaks (Elvin Bishop)
2. Neighbor Neighbor (Huey P Meaux)
3. Fat And Sassy (Elvin Bishop)
4. Barbecue Boogie (Elvin Bishop)
5. Many Rivers To Cross (Jimmy Cliff)
6. Blues Cruise (Elvin Bishop)
7. Doo-Wop Medley
“In The Still of the Night” (Fredericke Parris)
“Maybe” (Richard Barrett)
8. Get Your Hand Out Of My Pocket (Otis Spann)
9. His Eye Is On The Sparrow (Traditional)
10. Clean Livin’ (Elvin Bishop)
11. Midnight Hour Blues (Leroy Carr)

Elvin Bishop - vocals & guitar
John Németh - vocals & harmonica
Roy Gaines - vocals & guitar
Tommy Castro - guitar
Ronnie Baker Brooks - vocals & guitar
Stanley “Buckwheat Zydeco” Dural - accordion
Kid Andersen - guitar
Mike Schermer - rhythm guitar
Bob Welsh - piano
Ruth Davies - bass
June Core - drums
Bobby Cochrane - drums


アメリカ西海岸のブルース・レーベル、デルタ・グルーヴ・プロダクションズ移籍後の2作目となったアルバムです。
「Red Dog Speaks」というアルバムタイトルですが、この「Red Dog」ってエルヴィンが指差してる古そうなES-345のことかな。図太くて軽く歪んだイナタいギター・サウンドを出してまして、ダウンホームなサウンドに一役買ってる感じです。結構好きな音ですね。

ゆる~いスライドと語り調のボーカルがイナタい雰囲気を出してる冒頭のタイトル曲や、ノリノリのインスト・ブギ・ナンバーの(4)辺りは、ダウンホームな感じがほんと好きですね。

前作ではB.B.キングやジェイムス・コットンも参戦して、全編に渡りお祭り騒ぎで録音されたアルバムでしたが、今回は割りと絞り込んだ布陣での構成になっております。これが、エルヴィン・ビショップその人なりをより感じる事が出来て、より好きなところではあります。

そんな中でも、今回お祭り騒ぎで盛り上がった(6)はほんと楽しい。基本はシャッフル系のブルースですが、バックウィート・ザディコ(Accordion)やバックウィート・ザディコ・パパ(Rubboard)が参加して、ブルース?ザディコ?ってな感じになってる。ロニー・ベイカー・ブルックスやトミー・カストロのロッキンブルース・ギターからロイ・ゲインズのクリーン・トーンのスウィンギーなギター。極め付けは、ジョージ・ハーモニカ・スミス張りのトレモロを効かせるジョン・メネスのハーモニカ。これは正しく「Blues Cruise」という感じですね。

そして忘れてならないのは、前作同様ジョン・メネスがボーカルで参加してる(2)(5)(8)。特にジミー・クリフの(5)、レゲエの名盤「ハーダー・ゼイ・カム」の中に収録されてたソウルの名曲ですね。これを感情表現豊かに歌うジョン・メネス、最高。エルヴィンの泣きのスライドと相まって本当に痺れました。オーティス・スパンの(8)もシカゴ系ウェストコースト・ブルースという感じで、これも勿論良い。

実はこれまでエルヴィン・ビショップにあまり興味がありませんでした。2000年のご不幸以降、サンフランシスコを拠点に活動されてたようですが、デルタ・グルーヴからの2枚のアルバムでの無骨でブルース臭いサウンドにとんと見直してしまいました。
まだまだ70前位でしょ、やってくれそうな気がします。

2011年4月17日日曜日

Kirk Fletcher / My Turn


『Kirk Fletcher / My Turn』 (Eclecto Groove EGRCD 511)
1. El Medio Stomp (Kirk Fletcher)
2. Found Love (Jimmy Reed)
3. Natural Anthem (Jesse Edwin Davis)
4. Ain’t No Way (James Earl Thompson)
5. My Turn (Travis Carlton, Paulie Cerra, Luke Miller)
6. Congo Square (Trad. Arr. By Kirk Fletcher)
7. Way Back Home (Wilton Lewis Felder)
8. Blues For Antone (Kirk Fletcher)
9. Let Me Have It All (Sylvester Stewart)
10. Continents End (Kirk Fletcher)

Kirk Fletcher: guitar, bass, & vocals
Michael Landau: guitar
Gary Novak: drums (Tracks 4, 5, 7)
Travis Carlton: bass (Tracks 4, 5, 7)
Bobby Tsukamoto: bass (Tracks 1, 2, 3, 6, 9, 10)
Iver Olav Erstad: organ (Tracks 4, 7, 9) & Rhodes (Tracks 3, 7)
Tom Fillman: drums (Tracks 1, 2, 3, 6, 8, 10)
Paulie Cerra: sax and vocals (Tracks 4, 6)
Luke Miller: organ (Tracks 5, 7) & clav (Track 5)
Paul Litteral: trumpet (Tracks 3, 4, 9)
Dave Melton: slide guitar (Track 3)
James Gadson: drums (Track 9)
Karen Landau: spoken word (Track 10)



カーク・フレッチャーは1975年カリフォルニア州ベルフラワー生まれ。牧師さんの息子として生を受けた訳ですが、父親の教会で演奏していた兄のギターを聴いて、自分もギターを始めたそうです。何とその時カーク君8歳。12歳でブルース・フェスティバルに参加する程の腕前になってたようですが、アルバート・コリンズやボビー・ブルー・ブランドウェイン・ベネット)、ステイプル・シンガーズを観て、自分がやりたかった音楽に気づいたそうである。早熟な天才ギター少年という感じですな。こういう子が増えるとブルースの未来はもっと賑やかものになるんでしょうけれど、、、

そんなカーク・フレッチャーも1999年のファーストアルバム「I'm Here & I'm Gone」発売以降、Lynwood SlimからKim Wilsonのバンド、Mannish Boys、Hollywood Blue Flamesなど、あちこちから引っ張りだこのウェストコースト・ブルースを代表するトップギタリストの一人となりました。セッションの仕事が忙しいからなのか、リーダー作は2003年のセカンド「Shades of Blue」と今回ので計3枚。実力からするとちょっと少ないかな。
カークはAnson FunderburghやKid Ramos同様歌わないギタリストで、トラディショナルなシカゴ・スタイルをベースに、ジャジーさやスウィンギーさを内包しつつ、ファットなトーンで切れ込み鋭くエネルギッシュに弾くギター、これが魅力だと思います。

さて、2010年リリースの通算3作目となる今回のアルバム、1曲目からかなりファンキーなギター・インスト・ナンバーで、ギターのバッキングはファンキー且つエネルギッシュに弾いていて結構カッコいいのですが、ロック色が色濃くなったような、今までのサウンドとはちょっと雰囲気が変わったように感じます。全体的なグルーヴ感はカッコいいですね。
一転、ジミー・リードの(2)では、割とゆったりめのペースでトラディショナルに決めておりますが、マンドリンっぽいサウンドがポイントで、これがダウンホームな雰囲気を醸し出してます。ボーカルはカーク・フレッチャーが担当してまして、カークの歌は初めて聴いたような気がするのですが、黒人らしい深みのある良い声でなかなか上手いです。やはり、今まで歌わなかったのはギターに専念する為だったんですね。
7年ぶりのアルバムということで、本人も力入れて意欲的に作っただろうって事は、歌を披露したことでも十分伝わる所ではありますが、(5)(6)辺りはニューオーリンズのファンク・ジャム・バンド的サウンドで、こういうサウンドを演るとは思いもしなかったですね。
(5)は間やタメを活かしたゆるいグルーヴ感とワウ・ギターの使い方は結構気持ち良くて、最近の本場ニューオーリンズのジャムバンドは年々ハードになってきてるので、自分としてはこのくらい間のあるグルーヴが好きだな。
(6)はネヴィル・ブラザーズやサニー・ランドレスも演奏した定番中の定番曲。ネヴィル・ブラザーズのバージョンを下敷きにしてるように感じますが、ギターを全面にバーンと持ってくる所は、やっぱギタリストのカーク・フレッチャーならではでしょうね。ギターのカッティングなんかフリー・ジャズっぽくて痺れるところです。
そして、(9)。スライ&ザ・ファミリー・ストーンまでやっちゃう!という感じで、ほんと想定外だ。でも、ワウを噛ませたチャカポコ・ギターはめちゃファンキー・グルーヴで好きなんだな。思わず顔がにやけてしまいますよ。
ストレートなブルース曲(8)では、いつもの仰け反りギターを聴かせてはくれるのですが、しかし、カーク・フレッチャーは一体何処へ行こうとしてるのだろうか。

2011年4月15日金曜日

Anders Osborne / American Patchwork


『Anders Osborne / American Patchwork』 (Alligator ALCD 4936)
1. On The Road To Charlie Parker
2. Echoes Of My Sins
3. Got Your Heart
4. Killing Each Other
5. Acapulco
6. Darkness At The Bottom
7. Standing With Angels
8. Love Is Taking Its Toll
9. Meet Me In New Mexico
10. Call On Me

Anders Osborne - vocals, electric/acoustic guitars, piano, percussion
Robert Walter - hammond b3, piano, moog, clavinet, keyboard bass
Pepper Keenan - guitars, background vocals, percussion
Stanton Moore - drums


アンダース・オズボーンはWiki によると、1966年、スウェーデンのヴェストラ・イェータランド県ウッデヴァッラ生まれ。
ドラマーをしていた父親の影響で幼少の頃から、リトル・リチャードやファッツ・ドミノ、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィスなど、アメリカのロックンロールやジャズなどに慣れ親しみ、ピアノやギター、ドラムなどの楽器を演奏するようになったみたいです。
16歳になると家を出て、ヨーロッパ、アフリカ、中近東、アジア、北アメリカなどの各地を演奏活動しながら放浪していたようですが、1985年ニューオーリンズの地に腰を落ち着け、以後ずっとニューオーリンズを拠点に活動してます。ギタリスト、シンガー、そして、優秀なコンポーザーでもあり、プロデューサーでもあります。

アンダース・オズボーンという人を知ったのは、ビッグチーフ・モンク・ブードローとの共作アルバム「Bury the Hatchet」か2001年の「Ash Wednesday Blues」辺りだったかな。
アルバムは数枚しか聴いてないし熱心なファンという訳ではないので、アンダース・オズボーン・サウンドの王道が何処に位置してるのか、実は分かってない。聴いた限りではサザン・ロックという感じを受けるのですが、ブルースというよりもR&Bの感触ですね。ただ、サザン・ロックを演るにしても、ベースの代わりにスーザフォンがベースラインを演奏する辺りは、ニューオーリンズR&Bとかブラスバンド的な雰囲気で、とても面白いサウンドだと思いますね。また、アコギを使用してソフトに歌い上げるSSW的サウンドも演ってます。
前作2007年の「Coming Down」では、そのSSW的サウンドやボブ・ディラン的フォーク・ロックに特化したアルバムをリリースしました。
そして、2010年リリースの今回のアルバムはほぼ丸ごとサザン・ロックのアルバムで、今まで以上にハードな音作りになってます。こうなると益々アンダース・オズボーンという人が分からなくなってくる。
それなりにロックを聴いてきたロック世代の自分でも、この歳になると1曲目のハードなディストーション・サウンドを聴くのは少々しんどい。と言ってもアンダース・オズボーンと同い年なのですが(笑)、、、
2曲目以降のサウンドは結構好きな感じなのですが、スーザフォンを外したことにより、ニューオーリンズ・サウンドらしいユニークさがなくなってしまったのはちょっと残念かな。
とは言うものの、(2)でのキレの良いギター・リフに先ず痺れましたね。ハードなサウンドの中にもキャッチーさがある、こういうのは結構好きです。
アンダース・オズボーン流レゲエ・サウンドの(3)では、サウンドの要はRobert Walterのオルガンだったりします。こういう所がやっぱ面白さを感じますね。
ロウダウンのギター・リフが印象的なブルース・ロック(4)や、70年代のストーンズを思わせるロック・バラード(5)など曲作りも結構多彩で、ポップで軽快な(9)なんかを聴いても曲作るの上手いなと思います。アンダース・オズボーンがコンポーザーとして色んな所に名を連ねてるのも頷けますね。最後はアコギによる弾き語りで、ヴァン・モリソンっぽい歌声がなかなか渋い。

2011年4月13日水曜日

Nick Moss / Privileged


『Nick Moss / Privileged』 (Blue Bella BBCD 1014)
1. Born Leader
2. Louise
3. Georgia Redsnake
4. Privileged At Birth
5. Politician
6. She's So Fine (Born Blind)
7. Tear 'Em Down
8. For What It's Worth
9. Why Should I Care
10. Your Love's A Lie
11. Bolognious Funk

Nick Moss - Guitar, Vocals
Gerry Hundt - Rhythm Guitar, Mandolin
John Kattke - Organ, Clavinet
"Stumpy" Hutchkins - Bass
Bob Carter - Drums, Percussion


ニック・モスはシカゴを拠点に活動しているブルース・ギタリスト&シンガーで、かつてジミー・ロジャースのバンドに在籍してた事でも知られてるギタリストです。
自身のバンド、Nick Moss & The Flip Topsでは、50年代のヴィンテージなシカゴ・ブルースから、ワトソンやコリンズを思わせるテキサス系ブルースやヒューストン・ジャンプ、R&Bにソウルなどを演奏する、比較的トラディショナルなサウンドを出すバンドです。

2010年にリリースされた今回のアルバム、Nick Moss & The Flip TopsからNick Moss単独名義になり、いつもとは違ったサウンドに挑戦してるのかなとか想像しつつ聴いてみると、これが何と60年代後半のあのハードなブルース・ロックが目白押しじゃないですか。
ここ最近のアルバムは確かにロック色が若干強い傾向にあったのですが、ここまでがぶり寄りのクリーム・サウンドのアルバムを出してくるとは、ちょっと驚きでした。

そのクリームの曲をカヴァーした(5)、クリーム同様スリーピースで演奏してるのですが、重低音を効かせたドラムとベース、それにオーバードライブが掛かったギターが絡む。これ程がっつり演られちゃうと爽快ですね。
次の(6)はサニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Born Blind」ですが、クリームの「クロスロード」のリフを拝借してアレンジされてまして、これは結構嵌っちゃってます。
こういう機会がない限り今では殆ど聴かないサウンドなのですが、偶に聴くとやっぱりカッコいいね。今現在、アメリカで活躍している白人ブルースマン達の原点が、実はクリームやツェッペリン、ジミヘン、ストーンズ辺りだったとは、な~んだ自分と一緒じゃんとか思うとやっぱり嬉しくなってしまいますね。一つの過程でしょうけれど、、、
ハウリン・ウルフの(2)なんかもぶりっとブルース・ロックしてますし、バッファロー・スプリングフィールドの(8)では何でかチャーを思い出してしまったサウンド。結構ファンキーで好きです。(9)はこれはZ.Z.トップのサウンドだ。
バンドの纏まりもノリも申し分なくて、ロック耳で聴くとかなりカッコいいです。

2011年4月11日月曜日

Mark Hummel / Retro-Active


『Mark Hummel / Retro-Active』 (Electro-Fi 3417)
1. Funky Way
2. The Price Of Love
3. Never No More
4. One More Time
5. Roller Coaster
6. I'm Shorty
7. My Baby's So Sweet
8. Honey Bee Blues
9. I Want To Be Loved
10. Strange Things Happening
11. Ready Steady Stroll
12. Lord Oh Lord Blues
13. Highway Rhumba
14. Before The Beginning
15. It's My Life Baby
16. Can't Be Successful


マーク・ハメルはウェストコースト・ブルースのハーピスト&シンガー。1955年生まれということは、ウィリアム・クラークよりも何歳か年下ですね。70年代半ばにはシングルを出してたようですから、かなり若い頃からハーモニカを吹いてたんでしょう。今ではベテランハーピストの1人なのですが、クリームやジミヘン等のブルース・ロックからブルースを知ったそうで、皆同じ様な経路を辿ってるんですね。
偶に思うんですよ、もしイギリス人がいなかったら、ブルースは未だにブラックコミュニティの一音楽のままなんじゃないかって。そして今は、ブルースを演奏するミュージシャンは黒人よりも白人のほうが多い。なぜ黒人の若者はブルースを演奏しなくなったんだろうか?

さて、ウェストコーストのハーピストは大体ジョージ・ハーモニカ・スミスの影響下にあると言われてまして、このマーク・ハメルもクロマチックの音色やらトレモロやら、イカしたサウンドを聴かせてくれるが、全体的な雰囲気はリトル・ウォルターとかジェイムス・コットンのハーモニカに近い感じがします。だが、シカゴ・ブルースにスウィンギーなジャズやR&Rの要素を加えたサウンドはやはりウェストコーストのブルースそのものです。

2010年リリースの今回のアルバムは、1995年から2009年の間に録音された曲を編集したもののようです。トラディショナルなシカゴ・ブルース主体となってるアルバムですが、初っ端1曲目のJimmy Beeバージョンのカヴァーは、ファンキーなロッキン・ブルース仕立て。ファンキーなベースラインとRusty Zinnのバッキングがこの曲の要で盛り立ててるのですが、後半にマーク・ハメルの図太いハーモニカが入って来た時には鳥肌もので痺れました。カッコいい1曲です。
Memphis Slim & Willie Dixonの(4)、Little Walterバージョンの(5)、Jimmy Reedの(7)、Sonny Boy Williamsonの(8)や(12)、Muddy Watersの(9)、Junior Wellsの(15)などなどヴィンテージなシカゴ・サウンドがズラッと並んでおりますが、その中でも、(8)(12)でのジョン・リーを彷彿とさせる生ハープの音色、渋いです。
Percy Mayfield(3)辺りのウェストコーストらしいスウィンギーさはやはり好きで、マーク・ハメルのクロマチック・ハープやRusty Zinnのスウィンギーなギターソロいいですね。
最後の曲(16)はLightnin' Slimバージョンのカヴァーですが、Charlie Musselwhiteがアコースティック・ギターを弾き、マーク・ハメルが生ハープを吹いてる。これもまた渋い。

2011年4月9日土曜日

Duke Robillard / Passport to the Blues


『Duke Robillard / Passport to the Blues』 (Stony Plain SPCD 1349)
1. Workin' Hard For My Uncle
2. Hong Kong Suit
3. Blues Train
4. Girl Let Me Tell Ya
5. Rhode Island Red Rooster
6. Fatal Heart Attack
7. Make It Rain
8. When Your're Old You're Cold
9. Text Me
10. Duke's Evening Blues
11. The High Cost Of Lovin'
12. Grey Sky Blues
13. Bradford Boogie


今なお絶大な人気を誇るブルース・バンド、ルームフル・オブ・ブルースの創設者で、初代ギタリストでもあったデューク・ロビラード。ジミー・ヴォーン脱退後のファビュラス・サンダーバーズ加入を始め、多数のレコーディング・セッションに参加する最も信頼されてるギタリストです。ブルースは勿論、ジャズ、スウィング、ロック等弾き熟す様は職人的で、そういえば、Duke Robillardブランドのギターも製作しているようで、正に職人という感じですね。

ソロ・アルバムも80年代中頃から精力的に作製しており、ここ最近は年1ペースじゃないですかね。押さえるのは大変なんで見て見ぬ振りをしてたのですが、2010年にリリースされた今回のアルバム、デュークの顔に釣られて購入してしまった。トム・ウェイツ以外は全てオリジナルで、意欲的に取り組んだ作品なのかなという感じです。

ブルース・ロックの(1)から始まって、ラテン系のボー・ディドリーを思わせる(2)、ミシシッピのディープなデルタ・スタイルの(5)、トム・ウェイツの(7)は、デュークの歌声がトム・ウェイツに聴こえてきてちょっと苦手。スロー・テンポのジャズ・ナンバーの(8)、ウォームなトーンのギターとかこの辺りのサウンドはいいね。(9)はファビュラス・サンダーバーズ・スタイルのテキサス系ロッキン・ブルース。これは好きです。ストレートなブルース(12)でのペキペキ・フレーズやトーンには痺れるところです。(13)はデルタ・スタイルのブギ・ナンバー。あれ、スウィンギーな曲が無かったな。これがちょっと残念。あと、やっぱり歌がね、これがもうちょっとどうにかなれば最高なんですが、、、

2011年4月7日木曜日

Big Daddy ‘O’ / Used Blues


『Big Daddy ‘O’ / Used Blues』 (Rabadash RAB-033)
1. Life is Hard (Fred James)
2. Better off with the Blues (Delbert McClinton)
3. Soul fixin Man (Luther Allison)
4. Need your love so Bad (Little Willie John)
5. Something Special (Eric Clapton)
6. It’s G-Babe (Owen Tufts)
7. Johnny B. Goode (Chuck Berry)
8. Poor Boy (Howlin' Wolf)
9. Sucker for Love (John Mayall)
10. Same Kind of Crazy (Delbert McClinton)
11. All your Stories (Jesse Winchester)
12. Too Tall to Mambo (The Nighthawks)

John Autin - all piano, b-3
Cassandra Faulconer - all bass
Doug Belote - all drums (except 4,5)
Big Daddy 'O' - all vocals, acoustic/electric guitars
Cherie Mannino - female vocal (4)
Tim Ernest - tenor sax (1, 4, 12)
Steve "Harpo" Gelder - harmonica (8),after guitar solo (10)
Rockin' Jake - harmonica (11), before guitar solo (10)
Sam Skeelton - baritone sax (4)
Eric Alexander - trombone (4)
Milo Mannino - trumpet (4)
Shawn Manguno - drums (4)


アメリカン・ルーツ・ミュージックをアコギの弾き語りスタイルで、独特の節回しでもって沁み沁みと歌い上げるBig Daddy ‘O’。曲の殆どはカヴァーで、ブルースやR&B、ソウル、カントリー、ロック、ジャズなど名曲中の名曲からマイナーな曲、エッこんな人の曲まで!
それぞれの曲が全てBig Daddy ‘O’ サウンドに染まる巧みなアレンジ。聴き馴染んだ曲なのに新しい曲を聴いたような新鮮さがあります。そして、何と言っても魅力的なのは、Big Daddy ‘O’ の素朴で心温まる独特の歌声にあります。Big Daddy ‘O’ が歌えばそれは全てBig Daddy ‘O’ の曲になってしまうのです。正に稀代の逸財。

そして、2作目、3作目とアルバムをリリースする毎にバンド・スタイルが増えてきて、4作目でとうとうブルース・アルバムを作ってしまいましたね。
デビューアルバムの様に弾き語りで沁み沁み歌うスタイルが、Big Daddy ‘O’ の本懐という意見もあるだろう。それには賛同するところではあるが、その反面、バンド・スタイルのブルースをたっぷり聴いてみたいという思いもありました。
今回は、ブルース・アルバムを作ってみたらどうかというJohn Autin(プロデューサー)のアドバイスのもと製作されたようですが、個人的には願っても無い事です。

収録曲を見てみますと、オリジナルの(6)以外は全てカヴァーというのは相変わらずで、有名無名幅広く取り揃えた構成。オリジナルに拘ってる自分でも、ことBig Daddy ‘O’ に関してはカヴァーだろうがオリジナルだろうが、その辺りは然程重要なことではない。
ブルース曲であろうと巧みなアレンジ力と素晴らしい表現力で、全ての曲を自分の物にしてしまうからである。
その中でも(7)。チャック・ベリーの代名詞というべきリフをそのまま弾いてしまうと、それは即R&Rの曲となってしまうのだが、それらを排除してスウィンギーでジャジーなジャンプ・ブルースにアレンジされてます。スウィンギーなピアノとギター、それに独特の節回しで「ジョニービーグー~」と歌うボーカル。これには流石に唸ってしまったな。
エリック・クラプトンの(5)は唯一の弾き語りバージョン。フォーキー・タッチの曲調ではあるが、さり気なく絡んでくるスライド・ギターはたまらんですね。勿論、ボーカルやスライドを咬ませたソロ、なかなかブルージーで、こちらが原曲ではないかと思わせる出来栄えです。
ホーン・セクションを導入し、女性ボーカリストとデュエットしてるアーバン・ブルース(4)、ペキペキのギターとディープなハーモニカが痺れる(8)、ロッキン・ブルース(10)、70年代のウッドストックのサウンド思わせるスワンプ・ポップの(11)では、Rockin' Jakeの哀愁漂うハーモニカを伴いしんみりと聴かせてくれるし、なかなか聴き所多し。

バンド・スタイルのブルースだからって魅力が半減するなんてことは決してないですね。
それどころか更に魅力が増したのではないかと感じます。
そして、Big Daddy ‘O’ はやっぱりブルース・マンだと痛感しました。

2011年4月5日火曜日

R.J.Mischo / Knowledge You Can't Get In College


『R.J.Mischo / Knowledge You Can't Get In College』 (Greaseland GR 20923)
1. Two Hours From Tulsa
2. Too Cool For School
3. Knowledge You Cant Get In College
4. Little Joe
5. Ain't Nothin' New
6. Ruthie Lee
7. Please Don't Leave
8. Teacher's Pet
9. Big Plans
10. Don't Look Twice
11. Rich Cat
12. Devil's Love Sin/The Wrong Man
13. Down To The Bottom
14. Mama Don't Tear My Cloths


ウェストコースト・ブルースのハーピストの中でもトップクラスのイカしたサウンド(個人的な好み)を放つR.J.Mischo、今年で51歳を迎えるR.J.Mischoも30年以上の活動暦を持つベテランのハーピスト&シンガーである。90年代中頃からコンスタントにアルバムを発表して、2010年にリリースされた今回のアルバムで通算10作目となります。
今がほんと旬のノリに乗ってるハーピストの一人ですね。

2008年リリースの前作「King Of A Mighty Good Time」同様、今回もマルチなギタリスト、Chris "Kid" Andersenのプロデュースも含め全面的協力のもと作製されております。
更に、Risty Zinnもギターで参加してまして、個性的な二人のギターを聴き比べるもの一興ってもんです。

さて、R.J.Mischoのサウンドはヴィンテージなシカゴ・ブルースというのが根底にあるのですが、今回のアルバムを聴くと、どうもそのサウンドからの脱却を図ろうといてるような雰囲気で、その要がChris "Kid" Andersenなのかなという気がしなくもないのですが、、、

例えばオリジナルの2曲目、スウィンギーでジャンピーなハープ・インスト曲なのですが、意外にもこういう曲は今までやってなかった様な気がします。R.J.Mischoのアンプリファイド・ハープの音がね、ファット&マイルドで然も滑らか、ちょっぴりエコーが掛かった響はほんと気持ち良い音を奏でてます。ビバップ系のドラミングからベースソロ、そしてハープという展開、Chris "Kid" Andersenのスウィンギーなギター・ソロ、めちゃくちゃ痺れます。

更に、スヌークス・イーグリンの(14)はスワンプ・ブルース仕立て、素朴な生ハープやRisty Zinnのギターがほんわかムードで、如何にもスワンピー。R.J.Mischoのボーカルはあっさり系なのですが程よい黒っぽさがあって、何との言えない趣きがあるのがいいですね。ほんとサウンドに幅ができたなと感じます。

ヴィンテージのシカゴ・スタイルも勿論やってまして、インスト曲の(8)では如何にもSonny Boy WilliamsonⅡを思わせるハーモニカだが、ファットな響はR.J.Mischoらしいところ。Risty Zinnのギターは少しレスリーっぽいエフェクトが掛かってるのもヴィンテージでたまらんものがあります。伝統的なシカゴ・ブルースではありますけれど、リズムがスウィンギーだからだろうか、全体的に漂う雰囲気はウェストコースト・ブルースそのもの。

ロッキン・ブルースでは(10)が良い。バッキングの刻みのカッコ良さとペキペキ感のあるChris "Kid" Andersenのギター、それにR.J.Mischoのアンプリファイド・ハープが絡む。これはもう最高にカッコ良い絶頂ロッキン・ブルースだ。テンションの高いノリの良いサウンドもR.J.Mischoの持ち味の一つですね。シビレます。

R.J.Mischoのアルバムを全て聴いた訳ではないのですが、聴いた中ではこのアルバムはナンバー・ワンの出来だと思います。気に入ってます。

2011年4月3日日曜日

Igor Prado Band / Watch Me Move!


『Igor Prado Band / Watch Me Move!』 (Chico Blues Records)
1. Drive At Home (Snooks Eaglin)
2. Watch Me Move (Junior Wells)
3. Knock On Wood (Cropper, Floyd)
4. Mess Around (Ertegun, Stone)
5. I Got Loaded (Bob Camille)
6. Nobodys Baby (Homer Steinweiss)
7. Leaps And Bounds (Butler, Ellis, Scott, Shepherd)
8. Slow Down Little Eva (Snooks Eaglin)
9. Signed, Sealed, Delivered (Stevie Wonder)
10. Genes Groove (Igor Prado)
11. Shake It Baby (Guy, Wells)
12. Ice Man Groove (Igor Prado)

Igor Prado - vocals & guitar
Yuri Prado - drums & percussion
Rodrigo Mantovani - acoustic bass
Denilson Martins - alto, tenor & baritone saxophone

Ari Borger - hammond B3
Lynwood Slim - flute (11)


元々はPrado Blues Bandとしてブラジルのサンパウロを拠点に活動していたブルース・バンドですが、中心人物だったギタリストのイゴール・プラドは、Igor Prado Bandを新たに結成して、ボーカルも担当するようになります。2007年には1stアルバム「Upside Down」をリリースしてまして、今回のアルバムはIgor Prado Bandとしては2作目となります。

Prado Blues Band~Igor Prado Band、トラディショナルなシカゴ・スタイルのブルースという側面も勿論あるのですが、その中核を成すサウンドというのは、Prado Blues Bandの2005年のアルバム「Blues & Swing」が象徴的で、スウェーデンのブルース・バンドっぽい所もあるけれど、やっぱりウェストコースト系のスウィンギーなジャンプ・ブルースですね。それは、Igor Prado Bandになっても変わるところではなかった。
Lynwood Slimを始め、Rick Estrin、Steve Guyger、R.J. Mischo、Mark Hummel、Mitch Kashmarなどウェストコーストの連中との交流も深く、高く評価されてるようです。

2007年リリースの1stアルバム「Upside Down」では、ゲスト参加してたR.J. MischoやSteve Guyger、J.J.Jacksonが殆どのボーカルを担当し、イゴール・プラドのボーカルは1曲のみであとはギターに専念してましたが、しかし、今回のアルバムでは全てイゴール・プラドが歌っており、なんだか気合入ってるなって感じです。サウンドの面にしても、これまでのスウィンギーなジャンプ・ブルース路線から、ファンキーなロッキン・ブルースに路線変更したのか、それとも今回だけなのか、その辺りは定かではないが、兎に角めちゃくちゃファンキー・グルーヴだ。

収録曲はというと、前作ではオリジナルとカヴァー半々だったのですが、今回はカヴァー中心の構成になってます。どちらかと言うとオリジナルが聴きたかったので、ちょっと残念だなと言う思いもあるのですが、そんな気持ちを払拭する位カッコいい曲が揃ってます。

スヌークス・イーグリンの(1)は「The Sonet Blues Story」に収録されてた曲で、スヌークス・イーグリンがギター一本で歌った曲ですが、こちらはバンドスタイルでガツンとロッキン・ブルースしてます。スヌークス関連で他には(8)ですね、こちらは「Complete Imperial Recordings」に収録されてた「Little Eva」。現代風のロッキン・ブルースというアレンジで、ノリのいい軽快なサウンドが良い。スヌークスをなぞるのではなく、自分のスタイルというのをちゃんと持ってるのがイゴール・プラドのギターの素晴らしいところです。

(2)(11)はジュニア・ウェルズの曲ですが、(2)ではギターのバッキングやベースライン、ドラミングなどのリズムセクションは、Jimmy Nolenがいた頃のJ.B.'sを思わせるファンキー・グルーヴでめちゃくちゃカッコいいな。イゴール・プラドのボーカルも結構意識してるような歌い方で、雄叫びシャウトはご愛嬌ちゅう感じですね。一転ギターソロになると、バディ・ガイ張りにソリッドで仰け反りギターが炸裂。元々ホローボディのトーンでスウィンギーに弾くギタリストなのですが、こういうスタイルも弾けるんですね。本当に上手いです。そして、「It's My Life, Baby!」に収録されてた(11)では、ルイジアナ・ブルースぽいゆったりめのサウンドにアレンジされており、間を活かした感じがなかなかクールだ。ハイテンションのギターソロで盛り上がった後のリンウッド・スリムのフルートにはガクッときてしまった。

レイ・チャールズの(4)はローウェル・フルスンの「Tramp」のリズムを使用したブルース仕立てで、「Tramp」はもう聴き飽きたとか思ってたのですが、これ中々しっくり行ってるんじゃないですか。アレンジも結構上手いものですね。

ペパーミント・ハリス最大のヒット曲(5)、この曲はロバート・クレイやらロス・ロボス、最近だとジョー・ルイス・ウォーカーもカヴァーしてましたが、スワンプ系の人達に結構人気あるんですよね。自分はザディコ・マンのキース・フランクのバージョンが意外と好きだったりします。イゴール・プラドのバージョンはタブ・ベノワに比較的近い感じで、スワンプ・ブルースのノリですね。中々いいですよ。

6曲目はファンキー・ソウルという感じのクールなナンバーですが、この曲聴いた事がなくて誰の曲か調べたら、Sharon Jonesという黒人女性シンガーが歌ってました。割と最近出てきたグループのようですが、もろ60年代のディープでファンキーなソウルが特徴。これをカヴァーするイゴール・プラドもなんか凄いな。

7曲目はBill Doggettという人の曲で、これも聴いた事なかったな。サックスが小刻みに刻むリズムとウォームなトーンのスウィンギーなギター。この手のジャンプ・ブルースはたまりません。

最後はオリジナルの(10)と(12)。(10)はサックス奏者のGene Ammonsをトリビュートしたジャズ・ナンバーで、キャッチーなサックスのフレーズにも惹かれるところですが、やっぱり何と言ってもスウィンギーなギターが一番。イゴール・プラドの真骨頂です。
そして、(12)はアルバート・コリンズのトリビュート曲。この切れ味の良いギターにはほんと痺れますね。

ファンキー・ブルースにスワンプ・ブルース、R&B、ソウル、そしてジャズ。アレンジの上手さもさることながら、バンド・アンサンブルの纏まりの良さ、色んな人達と共演する中で培って来たものだろうと思いますが、ほんと熟れてるなと感じます。Igor Prado Bandがどういう方向性に進んで行くのか、楽しみなバンドです。