2010年10月25日月曜日

Joe Louis Walker / Between A Rock And The Blues


『Joe Louis Walker / Between A Rock And The Blues』 (Stony Plain SPCD-1345)
1. I'm Tide
2. Eyes Like a Cat
3. Black Widow Spider
4. If There's a Heaven
5. Way Too Expensive
6. I've Been Down
7. Prisoner of Misery
8. Hallways
9. Tell Me Why
10. Blackjack
11. Big Fine Woman
12. Send You Back




2009年にリリースされた今回のアルバムはプロデュースがデューク・ロビラードで、バックもデューク・ロビラードのバンドが全面的に参加してる。今までジョー・ルイス・ウォーカーをあまり聴いてこなかった自分でも、ちょっと気になる1枚でした。
アルバムタイトルから連想されるイメージはブルース・ロックで、コアなヴィンテージ・ファンは拒否反応を示されるサウンドだろうかな。

確かに1曲目なんかはハードなブルース・ロックだけれども、結構カッコよいぞ。ギターはいつものペキペキではなく、レスポール系のファット&サスティーンで弾き捲くる。しかし、カッコいいのはそこではなく、ギターのリフと歌に尽きる。リズムはタイトでこんだけカッコいいのだから、ソロがもう少しどうにかならないものかと思うのだが、その辺はやはりライブのほうがもう一段カッコいいね。

このままブルース・ロックで押し捲るかと思いきや、2曲目はなんとジャンプ・ブルースで、おーっと唸ってしまった。この曲はLittle Charlie & the Nightcats がやってた曲だが、サウンドはゲイトマウス・ブラウンのジャンプ・ブルースに近い。バンドの纏まりもノリもとてもいいね。よく転がるピアノにイナタいトロンボーン、そして特にいいのがジョー・ルイスの切れの良いペキペキギターで、ゲイトマウスのフレーズが出てきたりして兎に角楽しい。

ジャンプ・ブルースは他に(5)でもやってるが、こちらはB.B.キングっぽいジャンプ・ブルースで、アフター・ビートの効いたリズムが印象的。ギターは渋めに決めてます。

(3)(8)(10)はサザン・ソウル。マッスルショールズやフェイムを彷彿とさせる(3)、レイ・チャールズの(10)は特にいい。ジョー・ルイスはギターだけではなく歌も上手い。正にサザン・ソウル・シンガーそのもので、クラレンス・カーター辺りを思わせるくらいディープ。

(4)(6)(11)はサザン・ロック風。その中でも(6)がカッコいい。(11)は"Big Leg Woman"のリメイクで、ワウを噛ませサスティーンを効かせたギター・サウンドは、やはりサザン・ロックしてますね。

デューク・ロビラード作の(9)はスライド・ギターを導入したシャッフル・ナンバー。(12)はシュガー・レイ・ノルシアのハーモニカとジョー・ルイスのアコギのコラボによるスロー・ブルース。ハーモニカの哀愁を帯びた音色、染み入るね。

それぞれの曲がそれぞれ違ったテイストを持ってて、ギターも曲調に合わせて巧みに弾き分けております。ヘタこくとアンバランスなアルバムに終わってしまうのですが、そこはデューク・ロビラードのプロデュース力でキッチリ纏められてます。

2010年10月21日木曜日

John Boutté & Paul Sanchez / Stew Called New Orleans


『John Boutté & Paul Sanchez / Stew Called New Orleans』 (Threadhead Records)
1) Stew Called New Orleans
2) Two-five-one
3) Hey God
4) I Thought I Heard Buddy Bolden Say
5) Calll Me Superstitious
6) An Empty Chair
7) Don't Smoke Around Suzie
8) Wakes Me Up To Say Good-bye
9) A Meaning or A Message
10) Be A Threadhead
11) American Tune

John Boutte - vocals, tambourines
Paul Sanchez - vocals, acoustic guitar
Leroy Jones - trumpet
Todd Duke - electric guitar
Peter Harris - bass




ニューオーリンズを拠点に活動するジョン・ブッテとポール・サンチェスが共演したアルバムです。

ジョン・ブッテはジャズ・シンガーだけれども、ブルース、R&B、ソウル、ゴスペル、ラテンと幅広いジャンルを自分流に料理しちゃう、今や引っ張りだこの天才的シンガー。気に入った曲ならばニール・ヤングでも取り入れる貪欲性は、やはりニューオーリンズの人らしいところ。
魂を搾り出すかの如くソウルフルに歌う歌声は、鳥肌が立つほど感動的で素晴らしい。

ポール・サンチェスはアルバムを聴いた事がないのでよく知らないのだが、フォーク・ロックをやるシンガー・ソング・ライターのようです。ニューオーリンズの人ですから一癖も二癖もあるようなサウンドを出すんでしょうね。

ジョン・ブッテのアルバムが出たら意地でも購入すると言うくらいジョン・ブッテには惚れ込んでおるのですが、ブッテとサンチェス、対等にメインを張るアルバムで、一緒にライブやったり、お互いのアルバムにゲスト出演するなど、意気投合するなかで自然な成り行きで企画されたアルバムなのでしょう。

「ニューオーリンズと呼ばれるシチュー」というアルバムタイトルが何ともカッコいい。ニューオーリンズのシチューと言えば、いろんな具材を使った濃厚なスープのガンボだが、このシチューは最高の具材をトコトコ煮込んで最高の味付けをしたクリームシチューというイメージ。素朴さの中に深い味わいの個性がある。のんびり聴いてリラックスできます。

ジャズで多用せれるコード進行を捩ったであろう(2)は、キャッチーなメロディーのレトロ・スウィング調で、Leroy Jones のトランペットが兎に角レトロで、良い味出してます。サンチェスのボーカルも柔らかい歌い口で、ほのぼのとした感じがとてもいいね。

ジャズ・バラードのサンチェス作(6)は「空の椅子」という曲で、寂しげな曲調から失恋の歌なのかなと連想してしてしまったのだが、イントロのTodd Duke のギター、サンチェスのボーカル、Leroy Jones のペット、男の哀愁なるものが漂ってて、なんかたまらんものがあるな。

一転して「スージーの周辺じゃ禁煙だよ」という(7)は、Louisiana Music Factory のライブで本人達もお客さんも大爆笑してるけれど、何と歌ってるのだろう?気になるところだが、軽快なノリのニューオーリンズR&Bでブルージーなブッテの歌も最高。

このアルバムの中では特にノリのよいジャイブ調の(10)、ブルージーなTodd Duke のギターがいいね。

そして、ジョン・ブッテがボーカルを執るポール・サイモンの(11)。アコギ一本で歌われるこの曲はブッテの素晴らしさが際立ってる。何回聴いても鳥肌が立ってね、ほんとグッとくる。
ジョン・ブッテって声域が広いわけでもないし、声帯も強そうじゃない、体も小さいし、身体的に恵まれたボーカリストではないけれど、人を感動させる歌心を持ってる。それこそ、魂から搾り出すと言う感じで歌う、伝わるんだよね。
素晴らしいボーカリストに出会えて感謝せねば、スティーヴィー・ワンダーに!

2010年10月18日月曜日

Harmonica Shah / If All You Have Is A Hammer


『Harmonica Shah / If All You Have Is A Hammer』 (Electro-Fi 3413)
1. Out On The Highway
2. I Wonder Why?
3. Bumble Bee Man
4. Nasty Brown Rat
5. I've Got A Woman Black As Midnight Gold
6. Stranded In Detroit
7. Every Goodbye Ain't Gone
8. If You Don't Leave, I'll Get Somebody Who Will
9. Blues For Ford, Chrysler and G.M.
10. Don't You Feel Like A Dog Covered In Fleas?
11. Boom Boom
12. Duke and Queen Blues
13. Cryin' Won't Help Me Now


デトロイトで活動しているハーピストのハーモニカ・シャー、2009年発売の最新アルバムです。Electro-Fi に移籍しての3作目、通算5作目のアルバムとなります。

デビュー当初からディープなダウンホーム・ブルースで、スロー、ミディアム共に重心の低いどっしりとしたサウンドが持ち味。ジョン・リー・フッカーのようなドス黒いブギではなく、やっぱり50年代のジュニア・ウェルズ辺りのシカゴ・ブルースが基本形です。

歌やハーモニカも野太くディープで、芯のしっかりした力強い演奏が魅力。

今回のアルバムも前作同様、Jack De Keyzer と組んだ作品で、このJack De Keyzer 、イギリス生まれでカナダで活動しているブルース・ギタリスト。ジャズやR&Bという側面も持ち合わせており、ディープではないがクリーンなトーンが気持ちいいモダンなギタリストです。

その前に組んでたHoward Glazer はディストーションを効かせたハードなギタリストで、なんかブルース・ロック的な感じにもなってました。やってる事は同じでもギタリスト1人で結構雰囲気が変わるものです。個人的にはJack De Keyzer のほうが好み。

ジョン・リー・フッカーの(11)以外は全てオリジナルで、1曲目こそ比較的アップテンポのシャッフル・ナンバーだが、全体的スロー、ミディアムテンポ中心の構成です。際立ってずば抜けた曲はないけれど、聴き込むほどに味が出る渋いアルバムですね。

2010年10月16日土曜日

Chick Willis / Hit & Run Blues


『Chick Willis / Hit & Run Blues』 (Benevolent Blues BEN 1)
1. Houdini Lover
2. Love To See You Smile
3. Stoop Down Low
4. Soul Of A Man
5. 1,2,3,4,5 Shots Of Whiskey
6. Millionaire
7. Country Lovin’ Man
8. Looking For My Baby
9. Recess In Heaven
10. Today I Started Loving You
11. Blues Man (Live)



 
 
チック・ウィリス。1972年の初アルバム"Stoop Down Baby...Let Your Daddy See"は、強烈なインパクトがありますね。自分はリアルタイムで聴いた訳じゃありませんが、チックを語るとき未だに引き合いに出されますよね。

お下劣だとか猥雑だとか。ジャケットとタイトル曲に起因するところで、正にその通りなのですが、それでもって敬遠するとなると、ちょっと勿体無い話だ。

全体的にチープで何となくダウンホームなサウンドは、如何にもB級ブルースという感じは否めないのだが、そこがまた良いとこなんです。好きな人にはたまらんのですが。

そのクセモノチックさんも今年で76歳位になられたのかな。まだまだ現役バリッバリのブルースマンですわ。

さて、今回のアルバムは2009年に発売された目下のところ最新アルバムです。

スタジオ新録とライブ音源1曲という構成で、サブタイトルを読むと何だか力入れてんのかなと期待させられるのですが、曲目をよくよく見ると気になるんですよ。

オリジナル半分、カヴァー半分という構成ですが、そのカヴァー曲全てボビー"ブルー"ブランド絡みなんですよね。余りにも安直過ぎないですかチックさん。

アルバム作るけど曲が足りなーい。偶々聴いてたボビー"ブルー"ブランドのベスト盤からこれとこれと入れちゃえって感じじゃないでしょうね? 根がいい加減ぽいから有り得るな。

しかし、内容はサブタイトルに偽りなし。53年間のブルース人生の集大成と言っても過言ではないくらい。歌詞の内容はともかく(英語解らん)、サウンドは前作と同様にブルーズン・ソウルの王道を行くスタイルだ。

チック・ウィリスの音楽性は昔から一貫しているし、ギターのペキペキ感も相変わらずで良い。ホーン・アレンジや女性コーラスの使い方など、60年代のR&B、ソウルの香りが漂うヴィンテージな雰囲気。バンド・アンサンブルなんかも凄くクールで、おちゃらけのイメージがある人だが、センスは抜群にいいね。ここ最近のアルバムは至って真面目にと言うと変だが、細部まで練ってあり丁寧に作ってますね。

そう言えば何年か前、アルバート・キングのトリビュート・アルバムを出したが、もしかしてこのアルバムはボビー"ブルー"ブランドに捧げるアルバムなのかも。
ソウル・バラードなんかもソロモン・バークじゃなくボビー"ブルー"ブランドだもんな。
(ソロモン・バークさんお亡くなりになられたそうで、残念ですね)

アルバム的にはライブ音源の(11)は要らなかったんじゃないかと。でも曲自体は最高で、ギター・スリム・スタイルのペキペキペキのギターはめちゃイナタくて痺れる。
やっぱり、B級グルメ・サウンドが好きだな。

最後にジャイブ・ナンバーを1曲どうぞ! ほんと可笑しい。



2010年10月12日火曜日

Smilin’ Bobby & Hidden Charms / Big Legged Woman


『Smilin’ Bobby & Hidden Charms / Big Legged Woman』 (Wolf Records CD 120.821)
1. I Play For Keeps
2. I Didn't Know
3. Cold, Cold Feeling
4. Little By Little
5. Big Legged Woman
6. I Got To Leave This Woman
7. The Bobby Strut
8. They Call Me a Dog (Mind Your Own Business)
9. You Don't Love Me
10. You Are the One




またまた、出てきましたね。知らないブルースマンが。
本名Bobby G. Smith、芸名をSmilin' Bobbyと言うブルースマンは、1939年生まれで、今年で71歳。

58年頃からシカゴのクラブとかマックスウェル・ストリートで活動し始め、Magic SamやWalter Jacobs、Hound Dog、Junior Wells、Vance Kelly、Buster Benton、Koko Taylorなどと演奏経験があるものの、今でもクラブ通いするブルースファンの間では、知る人ぞ知るブルースマンのようです。

半世紀にも及ぶクラブでの演奏活動を経て、本当に初めて録音されたアルバムのようですが、ジミー・リードやエディ・テイラー辺りのヴィージェイを彷彿とさせるヴィンテージなサウンドが基本です。

Israel Tolbertの(5)やトランプのリズムを使ったオリジナルの(7)などファンキーの曲も織り交ぜながら単調にならないよう構成されてます。

Jessie Mae Robinsonの(3)は結構好きですね。この曲はテキサスの人が好んでよく演奏する曲で、シカゴではあまり聴いた事ないですね。クリーントーンのギターはフェントン・ロビンソンを思わせるメローな感じで、なかなか良い雰囲気のギターです。

ファンキー物ではオリジナルの(6)なんか、派手にファンキーちゅう感じではないですが、トランプ物よりかはずっといいノリだと思います。

ガツンと一発という感じのブルースではなく、ジワジワ効いてくるタイプのブルースでまあまあいいんだけどな、なんか物足りなさを感じるのは自分だけかな。

2010年10月3日日曜日

Vance Kelly / Bluebird


『Vance Kelly / Bluebird』 (Wolf Records CD 120.818)
1. I Stay Mad
2. Ain't Gonna Worry About Tomorrow
3. I Wish He Didn't Trust Me So Much
4. Bump and Grind
5. Little Bluebird
6. My Baby Is Fine
7. Someone Else Is Steppin' In
8. Nobody's Sleeping in My Bed
9. Ain't Doin' Too Bad
10. Doing My Own Thing/I Can't Get Next to You/I'm a Bluesman
11. Soft-Hearted Woman
12. Stormy Monday Blues/Take off Your Shoes
13. Driving Wheel



ヴァンス・ケリー。1954年シカゴ生まれ。10代の頃よりA.C.リードのバンドに参加して、サウスサイドのクラブで叩き上げた生粋のシカゴ・ブルースマンだ。

彼のサウンドはビリー・ブランチのような伝統的シカゴ・ブルースを継承するという感じではなく、ソウルやR&Bテイスト溢れるコンテンポラリーなブルースで、それが個性となってます。

若い頃から活躍してるヴァンス・ケリーですが、ソロ・デビューは40歳になってからで、オーストリアのWolf Recordsから発表された。なして、外国のレーベルから。エディ・テイラーJR.もWolfからだもんな。これがブルースの国アメリカの現実なのか。

実際、彼のサウンドは地元シカゴよりもヨーロッパのほうがウケが良いのではないかなと思うのですが、どうなんでしょうね。

それでもコンスタントにアルバムを出し続け、今回のが2008年に発売された6作目となります。

(1)~(5)が2008年にシカゴのスタジオで録音されたもので、(6)以降が1994年から2002年に行われたヨーロッパツアーのライブ録音。ロックやポップスではあまり考えられない変則的構成ですが、ブルースではよくある事です。

ヴァンス・ケリーはデビュー当初より独自のサウンドを確立させてたので、知らずに聴いてもそれ程違和感なく聴く事が出来ます。それにスタジオでもライブでも同じレベルで演奏出来る能力の高さですね。ブルースマンの殆どが叩き上げなので、どっちかと言うとライブのほうが面白かったりします。

ヴァンス・ケリーの魅力は抜群に上手いソウルフルなボーカルで、(10)のジョニー・テイラー~アル・グリーン~ボビー"ブルー"ブランドという構成のメドレーでは、オーティス・クレイも真っ青のソウル・シンガーぶりに脱帽します。

また、ギターも器用なほうで結構上手い。例えば(12)では、出だしT-ボーンばりの流れるようなフレーズを弾き、ソロではタメの効いたディストーション・サウンドで、この切れ込みの良さには圧巻ですよ。ジャジーなフレーズからジミヘンまでお手の物じゃないかな。自分はこの曲が好きで、T-ボーンの曲だからというだけではなく、というか雛形がStormy Mondayというだけで、ヴァンス・ケリーのブルース魂を凄く感じられるからです。その要は実はドラムにあって、Charles Handcoxという無名のドラマーなのですが、ジャム・ファンク・バンド的なファンキーなドラムを叩くんです。なんといっても間の使い方が上手い。これがあるから歌もギターも生きてくる。サックスのソロからギター・ソロに移行する時のバンド・アンサンブル、ベタなんだけどこれが痺れるんです。

A.C.リードから始まるこのアルバム、他にも聴き所満載で、Little Johnny Christianのシカゴ・ブルース(2)、最近発売されたジミー・ドーキンスのアルバムで初めてその存在を知ったのですが、シカゴでは普通に知られてる曲なのかな。原曲はイントロのキーボードとかサックスの使い方、チコ・バンクスのギターとか凄くイナタイ。が、ヴァンス・ケリーの色に染まったこちらの曲も中々のいい出来。クリーン・トーンのギターが染みるね。

ボビー・ウーマックの(3)からZ.Z.ヒルの(4)、ジョニー・テイラーやリトル・ミルトンもやったアイザック・ヘイズの(5)、この辺りのシンガーとしての力量も聞き物です。

ライブではバディ・ガイが"スリッピン・イン"としてリメイクしたDenise LaSalleの(7)、リトル・ミルトンの(8)、ルーズベルト・サイクスの(13)まで、結構楽しい。