2007年12月31日月曜日

Shinji Shiotsugu / Can’t Stop Playin’ The Blues


『Shinji Shiotsugu / Can’t Stop Playin’ The Blues』 (MOJO XQCM-1304)
1) How far can you fall?
2) Foot Loose And Fancy Free
3) Reconsider Baby
4) Dark Side of Midnight
5) Chickens Come Home To Roost
6) Sister,Sister
7) Boddy
8) Big Time Baby
9) Cold Hard City
10) Boogie Lunch
11) Delta Boy

塩次伸二ファン待望のソロアルバムが遂に出ましたね。
サポートにロバート・クレイのバンドのメンバーが参加し、プロデューサーにはあのデニス・ウォーカーを迎え、ロサンゼルスで録音されたのだが、これはもうロバート・クレイのアルバム(フランキー・リーのアルバムともいえるが)さながらの布陣で、完成度の高い素晴らしいアルバムになってるだろうってのが窺い知れますよね。ヴォーカルは3人のゲストが交代で歌っております。収録曲もデニス・ウォーカーを中心に、このアルバムの為に書き下ろしされたようです。

1曲目はデニスとアラン・ミリキタニの共作で、重心の低いミディアム・シャッフルのブルース。ザックザックと刻むアランのリズム・ギターに絡む塩次さんのスクイーズなギターがカッコいいですね。アランのヴォーカルもなかなか上手いです。

(2)はデニス、ジム・ピュー、ダイアン・ウィザースプーン共作のジャジーでスウィンギーな曲。ヴォーカルは紅一点のダイアンが担当。ダイアンはジャズ・ヴォーカリストのようで、キュートでジャジーな歌は結構いけてます。しかし、何つっても最高なのが塩次さんのジャジーなギターですよ。スウィングしてますね。やっぱこういうギター弾かせたらピカイチですわ。

お次は山岸さんとの「Together Again~」でも取り上げたフルソンの曲。こちらはギターのトーンをフロント寄りにして、ポコポコした音をさせてます。この音もたまりませんな~。超スローのTogether Againバージョンと今回のミディアムバージョン、さて、あなたはどちらがお好みでしょうか?難しい。

(4)はデニス作のソウルフルなバラード。アランの歌はほんとに上手いですね。"B.B. Chung King"というバンドでギターとヴォーカルをやってるようです。ギターも渋いサイドが光ってるし、ちょっと気になるバンドですね。塩次さんのエモーショナルなギターも痺れますよ。

他にはファンキーブルースの(5)、スワンプ・ポップぽいインストの(7)、ロッキン・ブルースのカッコイイ(8)、そして、(10)(11)は塩次オリジナルのインスト曲で、(10)はスウィンギーだけれどもアグレッシブで、アランとの絡みもスリリング。(11)はファンキーってところですね。ベースのリチャード・カズンズやピアノのジム・ピューは、長年ロバート・クレイを支えてきただけあって、やっぱ凄いですね。それに全然引けをとらない塩次さんのギターもまた凄い。

このアルバムは数々のセッションアルバムをこなしてきた職人塩次伸二の魅力が十二分に伝わって、今までに無い充実したアルバムとなりました。代表作と言っていいと思います。

2007年12月23日日曜日

June Yamagishi & Shinji Shiotsugu / Together Again Blues in New Orleans


『June Yamagishi & Shinji Shiotsugu / Together Again Blues in New Orleans』
1) Not Yet
2) Statesboro Blues
3) Reconsider Baby
4) Tramp
5) Got My Mojo Workin'
6) Ain't Nobody's Business If I Do
7) The Stumble
8) The Sad Nite Owl
9) Big Legged Woman
10) My Babe
11) Blues At The Domhouse

山岸潤史と塩次伸二、ウェスト・ロードの朋友がタイトル通り再び一緒に、ニューオーリンズの地でブルースアルバムを作り上げました。
マーヴァ・ライトのバンドを中心に、パパ・グロウズ・ファンクのジョン・グロウやボノラマのクレイグ・クレインを迎えての製作という事で、山岸のテリトリーに塩次が招かれたというような感じがしてしまうし、曲もロックよりだったりして、やはり山岸中心のアルバムと言っていいのかな。なんか塩次ファンのヤッカミみたいになってしまったな。へへ

それはさておき、収録されてる曲は、オリジナルのインスト曲(1)(11)以外は、全てコテコテのスタンダードばかりで、弄り回さず比較的ストレートにブルースしてます。この手の原点回帰的な企画物のアルバムというのは、細かいことは抜きにして肩の力抜いて楽しもうじゃないかってことだと思う。そういう意味で聴くと、もろオールマンの(2)も結構楽しかったりするな。フルソンの(3)では、塩次がテキサスぽくペキペキしたギターを弾いてます。アーバンな雰囲気のスローブルースはやっぱグッときちゃいますね。他にスローの(8)でも塩次らしい端整なギターが素晴らしいのですが、山岸とのユニゾンも綺麗ですね。そして、紅一点マーヴァ・ライトが歌う(6)では、山岸の太くて粘りのあるギターも痺れるのですが、マーヴァの歌もほんと素晴らしくてジンジンしますね。クラシックなシカゴ・ブルースの(5)(10)をニューオーリンズらしくセカンド・ラインのビートに乗せてやってます。実際このアルバムの中で一番面白い曲でした。最後は山岸と塩次の共作によるスローなインスト曲。ウェスト・ロードから30数年来ファンの方々は、二人のこういうギターの掛け合いを聴いてると感慨深いものがあるのでしょうね。

2007年12月17日月曜日

Sugar Blue / Code Blue


『Sugar Blue / Code Blue』 (Beeble BB801)
1) Krystalline
2) Chicago Blues
3) Bluesman
4) Walking Alone
5) Cold Blooded Man
6) Nola
7) Bad Boys Heaven
8) Let It Go
9) Shed No Tears
10) I Don’t Know Why
11) High You Can’t Buy

シュガー・ブルーといえば、ローリング・ストーンズのアルバムに参加してたハーピストというイメージが一番強いが、ジョニー・シャインズやルーズベルト・サイクス、サン・シールズなどのブルースは勿論のこと、ボブ・ディランやスタン・ゲッツなどのアルバムにも参加するなど、ジャンルを超えて幅広い活動してきたシュガー・ブルー。

このアルバムは12年ぶりの新作で、シカゴの若手トップクラスのセッション・ギタリスト、リコ・マクファーランドが全面的に参加し、ゲストにローリー・ベルを迎え、ファンキーなブルースやアコーステックなブルース、ロックやフュージョンに至るまで力入ってます。

まずは、一曲目のファンキーなブルースがめちゃくちゃカッコいい。高い音域を使いクリーンなトーンで、細かいフレーズを鋭く決めるシュガー・ブルーのハーモニカは、ダウンホームとはまた違ったカッコ良さがあって、これも良いなぁ。

シカゴ・ブルースの最先端の音は、とてもコンテンポラリーなものになってるのは知ってるが、(2)のイントロのハープやハイトーン・ボイスの歌を聴いてると、何処と無くヨーロッパの雰囲気が漂ってて、これはシュガー・ブルー流のシカゴ・ブルースってところかな。ハープのソロではゾクっとします。

(3)はレーナード・スキナードを思わせるようなサザン・ロックの曲。南部の香りがして好きです。こういう曲にシュガー・ブルーのハイトーン・ボイスがばっちり嵌ってますね。

(6)ではさり気無くアコーディオンを入れたりして、全体的にヨーロッパの佇まいだ。パリでの経験も血となり肉となって、その後の音楽志向にどんどん取り入れていく姿勢というのは好感が持てるし好きですね。この曲も良い曲ですよ。

(7)はローリー・ベルのギターとピアノの伴奏によるアコースティックなブルース。このアルバムで唯一のダウン・ホームな曲で、ハープもそれに合わせてダウン・ホームです。なんやかんや言ってもやっぱこの曲が一番かな。

コテコテの泥臭いブルース好きには敬遠されてしまう人かもしれませんが、なかなかセンスの良い人だと思いますし良いアルバムです。

2007年12月15日土曜日

Sugar Ray & The Bluetones / My Life, My Friends, My Music


『Sugar Ray & The Bluetones / My Life, My Friends, My Music』 (Severn CD 0042)
1) Oh,Babe
2) Little Green Talking Frog
3) I Want To Be With Her
4) You Better Change Your Ways
5) Money Taking Mama
6) Shut Your Face
7) I Don't Know
8) No Sorrow No More
9) The Last Words Of A Fool
10) Oh, Oh, Oh Pretty Baby
11) Do You Remember?
12) Think It Over Again
13) I Like My Baby's Pudding
14) My Last Affair
15) Until The Real Thing Comes Along

「私の人生、私の友人、私の音楽」と題されたシュガー・レイ・ノーシアの新譜、人柄を感じさせる良いタイトルですね。長年一緒に連んでるブルートーンズのメンバーや盟友デューク・ロビラード、ルームフル・オブ・ブルースのホーン・セクションなど気心の知れた仲間が集まって、ジャンプ・ブルースやジャズ、ブルースをやっております。変な力みなど全く無くて、肩の力が抜けた等身大のサウンドという感じがします。この忙しい師走の疲れをスーと介抱してくれる爽やかなサウンドがほんと気持ちいいな。

一曲目がそのアルバムのカラーを決めるとよく言われますが、「Oh,Babe」は正しくこのアルバムの一発目に相応しい選曲。ロイ・ミルトンやワイノニー・ハリスも演奏したルイ・プリマ作のジャンプ・ブルース。疲れが吹っ飛ぶくらい楽しくて、ヴォーカルにユニゾンするピアノの音。サックスに答えるトランペット、トランペットに答えるサックス、このコール&レスポンスがやっぱ良い。サックス2管にトランペット、トロンボーンというスモール・コンボながら、聴き応え十分の演奏力は流石ルームフル・オブ・ブルースですね。

次の(2)を聴いてると、ジミー"T99"ネルソンを思い出すな。意識した歌い口だけれども、気負いの無いところがいい。語りも歌も上手い。ブルージーなギターはデューク・ロビラード。これだもんなぁ~。

(3)はデイヴ・バーソロミュー作のバラード。ジャジーにアレンジされててアーバンな雰囲気です。こういう曲って歌唱力が問われるところですが、文句無しに上手くて、ダンディーて感じですね。デューク・ロビラードのマイルドなトーンのジャジーなギターも最高です。

(5)から(11)では、ギターをマイク・ウェルチに交代してブルースが続きます。マイク・ウェルチはテキサス系のギターを弾くスリンガータイプですが、ここでは的を得た的確なサポートに徹していて結構渋いです。そして、シュガー・レイがやっとハーモニカを吹いてくれました。ウォルター・ホートンに教えを請うたハーモニカは、ほんとダウンホームな音ですね。バックのサウンドが都会的で洗練されてるので、そのギャップが面白いところでもあるかな。サニー・ボーイの(7)はちょっと違和感あったけど、聴き慣れたらこれもありかなと思えてくるから不思議だ。オリジナルは(5)(8)(10)辺りがいいね。特に(8)はこのアルバムの中でも一番ロウダウンな曲で気に入りました。ビッグ・メイシオの(11)もなかなか渋い。アコギで叩きつけて弾くところなんかカッコいいね。ダウンホームなハープもたまらん。

(12)からは、またデューク・ロビラードが戻ってきてジャズです。ワイノニー・ハリスの(13)も楽しいが、ジャズの名曲(14)(15)も良い。特にねアコギの伴奏での(14)にはやられちゃいました。一枚のアルバムでこんだけ楽しめれば十分でしょ。

2007年12月9日日曜日

Big George Brock / Live At Seventy Five


『Big George Brock / Live At Seventy Five』 (Cat Head CH1004)
1) Intro by KFFA's Sonny Payne
2) Cut You Loose
3) M For Mississippi
4) Forty-Four Blues
5) All Night Long
6) Everything's Gonna Be Alright
7) No No Baby
8) Short Dress Woman
9) Bring The Blues Back Home
10) Call Me A Lover/Down South
11) Jody

2年前、突然現れて強烈なインパクトを与えたビッグ・ジョージ・ブロックが、満を持してライヴ・アルバムを発表しました。
2007年5月12日、ミシシッピのクラークスデールに在る、モーガン・フリーマンが経営しているグランド・ゼロ・ブルース・クラブでのライヴを録音されたものです。

「Live At Seventy Five」というタイトルは、ビッグ・ジョージ・ブロックが75歳だからですが、めちゃくちゃイナタいハーモニカと黒々とした図太い歌声は、とても75歳とは思えないくらいのド迫力です。ジェリー・ロール・キングスとか初期の頃のファット・ポッサムが好きな人にはど真ん中のサウンドだけれども、ズッタンバッタンしたドラムなどドタバタしたリズムがよりローダウンな感じで最高なんです。やはり、ライヴのほうが重心の低いノリで迫力がありますね。1曲目から最後まで全てカッコいい。傑作です。

ミシシッピのジューク・ジョイントでは、日夜こういうライヴが繰り広げられてるのでしょうね。古いサウンドだけど勢いのある。50年前にタイムスリップしたというよりも50年前から時間が止まってしまってるという感じだ。昼間は綿花を摘み(例えが古過ぎ)、夜になるとライヴでとんでもない音を出す。不世出のブルースマンがまだまだゴロゴロ居そうだ。そんな事を考えてたらゾクゾクしてきますね。アメリカは奥が深い。次はどんなブルースマンが突然出現するか楽しみでならない。

2007年12月2日日曜日

Rod Piazza & MFBQ / ThrillVille


『Rod Piazza & MFBQ / ThrillVille』 (Delta Groove DGPCD118)
1) Hate to See You Go/Shake Your Hips
2) Westcoaster
3) Sugar
4) Get Wise
5) Hoodoo Man Blues
6) MFBQ
7) Honey Bee
8) I Don't Play
9) Civilian
10) Stranded
11) It Can't Be True
12) Snap Crackle Hop
13) Stranger Blues
14) Sad Hours

デビュー40周年を迎えたウエストコーストのベテランハーピスト、ロッド・ピアッツァの2年ぶりの新譜です。前作の「For The Chosen Who」は多数のゲストを迎え、ある意味レイドバックしたかような和やかさがあり、メイキングDVDの映像を見てもワイワイと楽しそうでした。ですが今度の「ThrillVille」では、ドラマーの交代とMighty Flyers時代からのベーシストBill Stuveの脱退。新たなベーシストの補充はせず、ピアノのハニー・ピアッツァが多分フットペダルでだろうか、ベースラインも補ってます。これは初の試みだそうだが、いつも以上に軽快なサウンドになりましたね。ゲストもサックスの2管だけに止めて、シンプルなバンド・サウンドに徹したという感じがします。割とスカスカなのですが、これが結構カッコ良かったりするんですよね。

一曲目はリトル・ウォルターの「ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー」にスリム・ハーポの「シェイク・ユア・ヒップ」を組み込んだ曲で、半ば強引にブギに移っちゃうんですが、それほど違和感はなくてなんかカッコいいです。こんなロッキンな曲はライヴだと盛り上がるでしょうね。他にも古典的なシカゴ・ブルースを何曲かカヴァーしてますが、南部の土臭いサウンドを期待してはいけません。ウエストコーストはカラッと明るくてノリノリなんですから。僕はこれに嵌ってしまってますが。

オリジナルでも結構耳に残った曲がありましたね。例えば、(6)なんかはジェームス・ブラウンばりのファンキーな曲で、意表を突いた選曲が良いアクセントになってます。(9)はギタリストのHenry Carvajal作で、ギターのインスト・ナンバー。アフタービートの効いたスウィンギーなリズムに乗って、流暢なギターを弾いてます。そして、何と言っても極め付けは(12)。P-Vineの一連のコンピに登場しそうなファンキーなハープ・インスト。ロッドがここぞとばかりにブイブイ吹きまくってます。やっぱファンキー・ハーモニカは最高です。

最後はリトル・ウォルターの「サッド・アワーズ」。ここでのロッドのハープには、メチャメチャ痺れました。この曲を聴けば卓越したハーピストであることが分かります。ハープは音色が命というお言葉もなるほどと頷けます。いやー、ほんと聴かせてくれますね。