2009年6月23日火曜日

Tom "Blues Man" Hunter / Down In The Bottoms


『Tom "Blues Man" Hunter / Down In The Bottoms』 (Great Recordings GR2047-2)
1. I'm Burnt Out
2. It Is What It Is
3. I Want Some More of That
4. I've Got the Hots for You
5. They Say Time Is Money
6. What You Mean to Me
7. Gulf Coast Stomp
8. I Can Fix It
9. Roll with the Punch
10. Don't Hold Your Breath
11. Down in the Bottoms

トム“ブルース・マン”ハンターはロング・ジョン・ハンターの弟で、この兄弟が共演したアルバム「One Foot in Texas」で初めて弟の存在を知った訳ですが、あのアルバム、リズム隊はダブル・トラブルで、テキサス・ホーンズやゲイリー・プリミチ、ニック・コノリー、プロデューサーにはエディ・スタウトと、テキサス・オールスターちゅう感じで豪華に作製された、なかなか好いアルバムでした。兄のロング・ジョンは、澄んだ高音がよく通る艶のある歌声と、ソリッドなクリアトーンでパキパキ弾くギター。一方、弟は図太くて嗄れた渋い声と、幾分マイルドなクリントーンでメローに弾くギターでした。同じような路線の曲を演奏してても、それぞれにに個性があって楽しく聴かせて貰いました。あれ以降、兄は音沙汰ないが、弟は遅咲きのデビューながら地道に活動してまして、2作目のアルバムを発表しました。

2005年に発売された多分初アルバムの「Expressions of A Blues Man」同様、全曲オリジナルでソングライターとしての手腕を発揮して、こなれた良い曲を書いてます。

前作でいい味を出してたハーモニカやサックスは、今回は入れておらず、歌とギター、ベースをトム一人でこなし、あとはドラムとキーボードというシンプルな構成。B級のチープさに益々磨きが掛かった感じですが、サウンドは前作と同じ路線で、スワンピーなダウンホームとモダンさが同居したような、ダイアルトーンに負けず劣らずのイナタさがありますね。

タメの効いたリズムにパキーンとしたギターが絡む(1)やメローなギターに渋い歌声、トムの魅力が遺憾なく発揮されたスローブルースの(2)、スワンプ・ポップちゅう感じのノリの良いストンプ・ナンバーの(7)など、好い曲は結構いっぱいあって、曲作りはかなり上手いし、実力もあります。しかし、前作でも感じたのですが、全体的になんか単調なんですよね。アレンジなどもっと練って頂くともっと良くなると思うんですが。

2009年6月12日金曜日

John Primer / All Original


『John Primer / All Original』 (Blues House BHP-JP2008)
1. Add a Little Touch
2. Going Back to Mississippi
3. I Called My Baby
4. Everyday Brings by a Change
5. Blue Eyed Woman
6. Other Man
7. Woman That I'm Loving
8. Bad Child
9. Keep on Loving the Blues
10. At Home Alone
11. Say Yes, Don't Say No
12. Love in My Heart for You

シカゴ・ブルースのベテランギタリスト&シンガーのジョン・プライマー。マディ・ウォーターズ・バンドの最後のギタリストだったのは周知の通りで、マジック・スリムのティア・ドロップスにも在籍してましたし、サイドマンとしても今なお活躍されてるシカゴでも屈指のギタリストですね。そして、古き良きトラディショナルなシカゴ・サウンドを今に伝える数少ないブルース・マンでもあります。

このアルバムは昨年発売の最新作で、独自のレーベル“Blues House Productions”からの第一弾。タイトル通り、全曲オリジナル。こうなると自ずと力も入るってもんだが、そこは流石に酸いも甘いも噛み分けたベテランでして、力の入れ所が違うね。

いつになく50年代、60年代のヴィンテージなシカゴ・サウンドを力みなく、どっしりと落ち着いた感じでやっとります。例えば(1)は、「Poor Man Blues」の冒頭を飾った曲で、アップテンポのド派手にファンクしたナンバーだったが、ここでは、それこそ腰ダメのどっしりとしたシャッフルに生まれ変わってます。このアルバムのカラーを物語る象徴的な曲になってる思いますね。甲乙つけ難いカッコ良さだ。

(3)(8)ではエルモア・ジェイムス・サウンドを披露。トリビュート・アルバムを作製するほどエルモア好きのようだが、バンドも凄くタイトで、あのアルバムを思い出させるサウンド。スロー・ブルースの(3)がいいね。プライマーのスライドが渋いし、特にこのユルさがたまらんです。

(4)(9)はリトル・ミルトンのブルーズン・ソウルという感じかな。歌はソウルフルで結構上手いですね。

このアルバムの中では比較的ファンキーな(6)。この前聴いてたバイザー・スミスのブギのようなノリの良さで、お気に入りの1曲です。

そして、オーティス・ラッシュを彷彿とさせる(10)では、エモーショナルなスクィーズ・ギターと歌、痺れますね。ギターが泣いてます。

最後はアコギとハーモニカのセットによるカントリー・ブルース。スライドを絡ませながらダンサブルに弾くギターは、アタックはそれ程強くないが、なにげにサン・ハウスぽくて好きだな。ハーモニカはハーモニカ・ハインズ。アルバムを通して、各曲毎に巧みに表情を変えながら、上手くサポートしております。このコンビ、なかなかいけるかも。

このアルバムを最初に聴いた時、ガツーンとくる一発はないし、ちょっと物足りなさを感じたんですが、何回か聴いているうちにジワジワっと効いてくる、そういうヤツですね。

2009年6月8日月曜日

Sista Monica Parker / Sweet Inspirations


『Sista Monica Parker / Sweet Inspirations』 (Mo Muscle MMRE-4084)
1. You Gotta Move (Fred McDowell)
2. You'll Never Walk Alone (Rodgers & Hammerstein)
3. Imagine (John Lennon)
4. Sweet Inspirations (Dan Penn & Spooner Oldham)
5. Why Did You Leave My Child? (Monica Parker)
6. Soul Shine (Warren Haynes)
7. This Joy (Shirley Caesar)
8. I'm Happy With Me (Monica Parker)
9. Three Little Birds (Bob Marley)
10. Let It Be (John Lennon & Paul McCartney)
11. Gospel Beat
12. All Things Are Possible (Monica Parker)
13. Kumbaya My Lord
14. Hero Song (Mariah Carey)
15. Live In The Spirit (Monica Parker)
16. To Dream The Impossible Dream (Joe Darion & Mitch Leigh)
17. Dr. MLK & Obama Impossible Dream Tribute

シスタ・モニカ・パーカー、カリフォルニア州のサンタクルーズを拠点に活動しているシンガー。7歳の頃から教会でゴスペル・クワイアを歌い鍛えられた喉で、ブルース、ゴスペル、ソウル、ジャズ、見事に歌いこなします。

若手の女性ブルース・シンガーでは、シェメキア・コープランドもパワフルなシャウターで好きなのですが、それ以上にやっぱモニカが好きだな。

レコード・デビューは1995年ですが、初めて聴いたのは2000年の3作目「People Love the Blues」でした。ウェストコーストらしい軽快なノリで、ハードにロッキン・ブルースしたアルバムで、その類まれな歌唱力とパワフルなシャウトに一発で惚れ込んでしまいましたね。また、殆どの曲を自作してまして、それが結構上手い。

その後出したトラディショナルなゴスペル・アルバムやガン克服後の復帰作のジャズ・アルバムなど、発表したアルバムはそれ程多くないが、一枚一枚それぞれ魅力的で、アルバムを出すごとに声や表現力豊かな歌唱力に益々磨きが掛かってるように思います。特に前作の「Can't Keep a Good Woman Down!」は、一番好きなアルバムで、モニカの良さを全部出し尽くした、集大成的なアルバムのように感じました。

そして、今回の最新作は通算8作目のアルバムで、カバー曲中心の構成になってます。コンセプトのあるアルバム以外でこんなに人の曲を歌うのは初めての事。ブルースやゴスペル、ファンキー・ソウルはもちろん、レゲエや今時のコンテンポラリーなR&B、ジョン・レノンからマライヤ・キャリーまで多彩な構成ですが、全てモニカ節で歌ってくれるからたまらんのです。

1曲目がブルースなのは嬉しい。モニカらしい軽快なノリのシャッフルで、先日亡くなったココ・テイラーに匹敵するパワフルな歌はやっぱガツーンときますね。ブルースがこの1曲だけとはちと寂しいですよ。

(2)はサッカー・ファンにも馴染みの曲。パワーだけではなく、こういう感情移入したバラードも表現力豊かに歌えるから素晴らしい。苦難を乗り越えたモニカだけに説得力があります。泣けます。

ジョン・レノンのイマジンも流石に上手いんですが、僕はレット・イット・ビーかな。バラード調から転調してノリのよいゴスペル調に変わるアレンジは結構好きですね。モニカならではで、ゴスペル・クワイアが入る所なんかゾクゾクします。

シャーリー・シーザーの(7)はアップテンポのゴスペル・ナンバー。教会でもこんな曲を踊りながら歌うんでしょう。楽しそう。

ボブ・マーリーの(9)も以外でした。レゲエのグルーヴに乗ってソウルフルに歌い上げてます。モニカのレゲエは初めて聴きましたが、聴き馴染んだ楽曲というのもあるでしょうけれど、何の違和感なくスーっと入ってきますね。

その他、オリジナルではコンテンポラリーなR&Bナンバー(5)、バラードの(8)(12)、ファンキー・ソウルの(15)なども聴き応えがあります。

最後は、マーチン・ルーサー・キングJr牧師の有名な「I Have a Dream」の演説とオバマ大統領の演説をサンプリングされた曲。グッときました。

2009年6月1日月曜日

Motor City Josh / Forty Four : A Tribute to Howlin' Wolf


『Motor City Josh / Forty Four : A Tribute to Howlin' Wolf』
1. Forty Four
2. Spoonful
3. Evil Is Goin' On
4. Back Door Man
5. 300 Lbs of Joy
6. I Ain't Superstitious
7. Sittin' on Top of the World
8. Smokestack Lightnin'
9. Little Red Rooster
10. Built for Comfort
11. Meet Me in the Bottom
12. Wang Dang Doodle
13. Goin' Down Slow

モーター・シティ・ジョシュの11作目となる最新作は、なんとハウリン・ウルフのトリビュート・アルバム。やるね~。ジャケットもなかなかカッコいいし、元々ハズレの少ない人ですから、益々期待が持てそうな感じだ。名曲の数々をどんな味付で料理してくれるのか、興味深いところです。

まずは、ウルフオリジナルの(1)。先のライブ・アルバムでもやってたような感じの、重心の低いファンキーなブルース・ロック。拳を振り上げて体が燃えてきそうな、そんなロッキンなノリで、かなりカッコいい。

サンプリングされたウルフの語りから始まる(2)。ジョシュのボーカルが、ウルフが歌い出したのかと思う位ソックリでドキッとしました。ウルフとコール&レスポンスなんて粋な演出もあり、凝った作りです。要所要所で入ってくるジェイソン・リッチの個性的なハーモニカも上手い。この曲は白人のバンドも多数取り上げてて彼らと聴き比べても、ジョシュが如何に泥臭くブルースしてるか良く分かります。難しい曲なのに大したもんです。

(3)これはもう70年代のハード・ロックの世界ですね。軽くファズの掛かったワウでのスライド・ギターとジョニー・ローズのサイド・ギターによるハード・ロック的リフ。そうそうこれはレッド・ツェッペリンですよ。あの時代を青春期で過ごした50代のロック親父ニンマリのサウンド。僕もハード・ロックに嵌まった時期がありまして、リアルタイムではないのですがゼップ大好きで、ゼップのレコードだけは捨てられなかった。

(4)は、このアルバムの中では特にダウンホームなサウンドに仕上がってます。ルイジアナを想わせるようなユルさと泥臭さがあって、何とも雰囲気のあるサウンドです。蜩の鳴き声みたいなジェイソンのハープが面白い。

(7)ではピアノを入れて、ゆったりとしたジャジーな感じでいいんですが、ギター・ソロになると途端にブルース。器用なようで実は無骨もんの不器用さがある。憎めないんだな。

(9)は先のライブ・アルバムでは、ノリノリのロッキン・ブルース・バージョンでしたが、こちらは緩いダウンホームなアレンジで演奏してます。聴き較べると面白いね。

なかなか聴き応え十二分の楽しいアルバムでしたが、仮に、このアルバムをもう一回作ったら、全く違うアレンジでやってくれるでしょうね。それも聴いてみたいものですが、いろんなアレンジで演奏しても全てモーター・シティ・ジョシュのサウンドになってしまうのが、この人の凄いところなんですね。人を楽しませることに長けてるし、白人のブルース・マンの中では、やっぱナンバー・ワンだな。