2011年7月31日日曜日

Treme : Music From The HBO Original Series - Season 1


『Treme : Music From The HBO Original Series - Season 1』 (Geffen Records)
1. Treme Song (Main Title Version) - John Boutté
2. Feel Like Funkin' It Up (Live Street Mix) - Rebirth Brass Band
3. I Hope You're Comin' Back to New Orleans - The New Orleans Jazz Vipers
4. Skokiaan - Kermit Ruffins & The Barbecue Swingers
5. Ooh Poo Pah Doo - Trombone Shorty & James Andrews
6. Drinka Little Poison (4 U Die) - Soul Rebels Brass Band & John Mooney
7. We Made It Through That Water - Free Agents Brass Band
8. Shame Shame Shame - Steve Zahn & Friends
9. My Indian Red - Dr. John
10. At the Foot of Canal Street - John Boutté, Paul Sanchez, Glen David Andrews & New Birth Brass Band
11. Buona Sera - Louis Prima
12. New Orleans Blues - Tom McDermott & Lucia Micarelli
13. I Don't Stand a Ghost of a Chance with You - Michiel Huisman, Lucia Micarelli & Wendell Pierce
14. Indian Red (Wild Man Memorial) - Mardi Gras Indians
15. Indian Red - Donald Harrison
16. Time Is On My Side - Irma Thomas & Allen Toussaint
17. This City - Steve Earle
18. Just a Closer Walk With Thee - Treme Brass Band
19. My Darlin' New Orleans - Leigh "Li'l Queenie" Harris



トレメはフォーバーグ・トレメとも呼ばれているニューオーリンズのダウンタウンで、ニューオーリンズの中では最も古い地域の一つです。ジャズが誕生した歴史的な地域と言われてますが、トレメ・ブラス・バンドやリバース・ブラス・バンドを始めとするアフリカ系アメリカ人によるブラス・バンドの盛んな街で、音楽が生活の一部となってるような地域というイメージがありますね。

そのトレメの人々がカトリーナの災害から立ち直ろうとする姿をテレビドラマ化したのが「Treme」で、2010年にSeason 1 が10回に渡り放映され、今年はSeason 2 が放映されてます。トロンボーン奏者やビッグチーフ、ラジオのDJ、大学教授、レストランの女性シェフ、バーの女性オーナーなど、様々な人達の様々な生き様が同時進行で進んでいきますが、如何せん言葉が分からないもので、その内容が理解できません。しかし、カーミット・ラフィンズのライブやアラン・トゥーサンとコステロのスタジオの模様など、映像と音楽だけでもニューオーリンズ・ファンには十分楽しめます。
このテレビドラマはDVD化されてますが、是非、日本語字幕入りを出して欲しいですね。無理かな。

で、今回のアルバムは「Treme」のサウンド・トラック盤ですが、これらのサウンドを聴いてると、ブルースと同様に生涯かけて聴き続けるに値する素晴らしいサウンドだと、改めて痛感しました。ニューオーリンズ・サウンド、やっぱ良いです。

2011年7月25日月曜日

Washboard Chaz Blues Trio / On The Street


『Washboard Chaz Blues Trio / On The Street』
1. Doing Bad
2. On The Street
3. Louis Collins
4. Pick Yourself Up
5. I'll Fly Away
6. Thank The Lord
7. The Old Folks Started It
8. Fire Once Again
9. Farewell Blues
10. Just Your Fool
11. My Life Is Filled With You
12. What's The Matter With The Mill

Washboard Chaz Leary - washboard, vocals
St. Louis Slim - guitar, background vocals, lead vocal (6)
Andy J. Forest - harmonica, background vocals, lead vocal (4)(10)
Special Guest: Roberto Luti - guitar (2)(8)


ウォッシュボード・チャズはニューオーリンズで活動しているウォッシュボード奏者。
いろんなバンドやユニットに参加してるのですが、このWashboard Chaz Blues Trio は、チャズがバンド・リーダーとして引率しているトリオ・バンドで、アコースティック・ギターとハーモニカ、そしてウォッシュボードだけというシンプルな編成により、カントリー・ブルースをジャグ・スタイルで演奏しています。2002年のデビュー・アルバムから変わらない独特のサウンドを放ってます。チャズの尋常じゃないリズム感のウォッシュボード、Roberto Luti のこれまた尋常じゃないリズミカルなバッキングと沁みるスライド・ギター。もうリズム命みたいなバンドなんですね。更には、ハーモニカのAndy J. Forest が加入して最強の布陣で製作された前作「Mix It Up」は、自分にとっては本当にスリリングなアルバムでした。

さて、今回のアルバムではデビュー当初より参加していたRoberto Luti がゲストという形で2曲のみ参加してるものの、レギュラー・メンバーから外れてしまったのは非常に残念な事ですね。代わりに加入したのがSt. Louis Slim というカントリー・ブルースを演奏するちょっと違ったタイプのギタリストです。

Roberto Luti が参加している2曲目では、アタックの強いメリハリ感のあるバッキングがやはり魅力で、ウォッシュボードのリズムとの相乗効果で溌剌としたリズム感が良いのです。これがこのバンドの魅力の一つだったのですが、その点、St. Louis Slim は少々弱く、比較的平坦なギターを弾いてるのがちょっと残念ですね。

とは言うものの、(5)での哀愁のあるギターはなかなか味があって良いですね。
リトル・ウォルターのシャッフル・ナンバー(10)辺りのブギ・ギターもノリは良いのですが、Roberto Luti が強烈だっただけに控えめな感じがするのは否めないですね。

チャズのレイジーなボーカルやAndy J. Forest のスワンピーなハーモニカもたまらん魅力で、ギターが変わってもこのバンドの面白さは変わらないですね。

2011年7月16日土曜日

Eden Brent / Ain't Got No Troubles


『Eden Brent / Ain't Got No Troubles』 (Yellow Dog Records 1716)
1. Someone to Love (Eden Brent)
2. Ain't Got No Troubles (Eden Brent)
3. Blues All Over (Eden Brent)
4. Later Than You Think (Colin Linden)
5. Right to Be Wrong (Hambridge, McClinton, Nicholson)
6. Leave Me Alone (Eden Brent)
7. Let's Boogie-Woogie (Eden Brent)
8. My Man (Eden Brent)
9. Beyond My Broken Dreams (Hayes, Jones, Polk)
10. If I Can't (Eden Brent)
11. In Love With Your Wallet (Eden Brent)
12. Goodnight Moon (Kimbrough, Owen)

Eden Brent - piano, vocals
Colin Linden - guitars
George Porter Jr. - electric bass
Bryan Owings - drums
Tracy Griffin - trumpet
Emile Hall - alto saxophone
Jeff Albert - trombone
Jon Cleary - hammond B3


エデン・ブレントという女性ピアニスト&シンガーをこのアルバムで初めて聴いたのですが、George Porter Jr. やJon Cleary を始めとしてニューオーリンズのミュージシャンが多数参加してるし、ニューオーリンズ録音ということもあって、てっきりニューオーリンズの人と思ってたら、実はミシシッピ州のグリーンビルを拠点に活動してる人でした。

デルタ・ブルースの聖地クラークスデールは直ぐそこです。だからと言って彼女もデルタ・ブルース・ウーマンと言う訳ではなくて、どちらかといえばジャズ・シンガーですね。
ブギウギ、ジャズ、ブルース、R&B、サザン・ソウル、ラグタイムなど音楽性も多彩ですが、本領発揮してるのはブギウギかと思います。

ロッキン・ブギウギ・ナンバーの(7)は特に好きですね。ハスキー・ボイスで割と個性的な感じで、女性の人には不適切な言い方かもしれませんが、渋い歌声です。しかし、シャウトは結構迫力があります。ブギウギ・ピアノのノリもいいね。

(1)や(2)辺りのジャジーなブルース・ナンバーも熟れたサウンドで、ホーン・セクションがニューオーリンズということもあってか、全体的にニューオーリンズR&Bという雰囲気が漂ってて、これもなかなか好きな所です。

(8)や(10)はラグタイムで、シンコペーションされたピアノのノリが気持ち良い(8)。アコギの伴奏によるほんわかとした雰囲気の(10)。ほんと惹き付けられる歌声なんだな。

2011年7月12日火曜日

Krown - Washington - Batiste / Live At The Maple Leaf


『Krown - Washington - Batiste / Live At The Maple Leaf』
1. Steal Away (J. Hughes)
2. What's Going On (M. Gaye)
3. Maple Leaf Strutt (R. Batiste Jr.)
4. Use Me (B. Withers)
5. Talk To Me, Talk To Me (J. Seneca)
6. Under The Influence (J. Krown)
7. I Feel So Bad (S."Lightnin’" Hopkins)
8. Sunday Night Crawfish (R. Batiste Jr.)
9. You Can Stay But The Noise Got To Go (J. "Guitar" Watson)

Joe Krown - hammond b-3 organ
Walter Wolfman Washington - guitar, vocals
Russell Batiste Jr. - drums, background vocals


ジョー・クラウンは1992年、ゲイトマウス・ブラウンのバンドに参加する為にニューオーリンズに移住したピアノ&オルガン奏者で、ゲイトマウスが2005年に亡くなるまでの13年間、バンド活動を共にしている。ソロ活動も精力的に行ってるが、その中でもオルガン・コンボは特に好きですね。

ウォルター・ウルフマン・ワシントンはニューオーリンズ出身で、ジョニー・アダムスのバンドに20年間在籍していたベテランのギタリスト&シンガーです。基本的にブルースですがR&Bやソウルも取り入れながら、ニューオーリンズの人らしいファンキーさが魅力ですね。

そして、新生ミーターズであるファンキー・ミーターズに参加してる名ドラマーのラッセル・バティストJr. パパ・グロウズ・ファンクでも活躍してましたね。

このニューオーリンズ屈指の腕利き3人が結集して、2008年に行われたライブでして、そのサウンドがそりゃもう詰らないはずがなかろうってなものですね。
バンドの編成からJoe Krown Trio を連想してしまうところですが、サウンドはJoe Krown Organ Combo に近い感じ。

ジョニー・テイラーもレパートリーにしていた(1)やマーヴィン・ゲイの名曲(2)、ワシントンの円熟味のある渋い歌も良いが、ジョー・クラウンのうねりのあるオルガンとニューオーリンズらしいファンキーなリズム、たまらんですね。やはりこの辺りがひと味もふた味も違うなと感じさせられる所ですね。

バティスト作の(3)とクラウン作の(6)は正にオルガン・コンボのサウンドで、このグルーヴ感といったら、ほんと最高にカッコいい。
(6)はJoe Krown Organ Combo のアルバム「Livin' Large」でやってた曲ですが、ブルージーなギターとグルーヴィーなオルガン、そして強烈なのがアフタービートの効いたどっしりしたドラムで、更にパワーアップしたサウンド、痺れますね。
ビル・ ウィザースの名曲(4)、このノリの良さも流石です。

最近はスタジオ録音のアルバムもリリースして、このトリオが定着してるようです。
目が離せないバンドですね。

2011年7月7日木曜日

Kermit Ruffins / Happy Talk


『Kermit Ruffins / Happy Talk』 (Basin Street Records)
1. Panama
2. Hey Look Me Over
3. Ain't That Good News
4. La Vie en Rose
5. Happy Talk
6. If I Only Had a Brain
7. High Hopes
8. I Got a Treme' Woman
9. Shine
10. Sugar
11. More Today Than Yesterday
12. New Orleans (My Home Town)


カーミット・ラフィンズは1964年ニューオーリンズ生まれのトランペッター&シンガー。
フレイジャー兄弟と共にリバース・ブラス・バンドの立役者の一人なんですよね。1992年に脱退してソロ活動に入るのですが、元々、ルイ・アームストロングやルイ・ジョーダンなどに影響された人で、ファンク色の強いリバースBBとは打って変わって、よりトラディショナルなニューオーリンズ・ジャズを演奏するようになります。
勿論、ブラス・バンド的なセカンドラインもあるのですが、ディキシーランドやスウィングといったこの辺りのオールド・タイムなサウンドが堪らなく好きなんです。

さて、今回のアルバムもカーミット・ラフィンズの持ち味が随所で発揮された良い作品で、1曲目のカーミットのトランペットとDr. Michael White のクラリネットの絡み具合がとってもディキシーランド。明朗なサウンドが爽快で、楽しい雰囲気を出してます。

(2)は歌物で、ビッグ・バンドのスウィング・ナンバー。ギターの入ってないSwinging Boppers という感じ。Matt Lemmler の小粋なピアノがぐっと来ますね。
(1)(2)この辺りのサウンドがやはり結構好きです。

サム・クックの(3)は比較的ファンキーな感じで、ニューオーリンズらしいアレンジですね。そして、(4)はサッチモ風だけれども、洗練された感じがカーミットらしい所かな。哀愁漂うトランペットの音色とカーミットの歌、いい味出してるピアノ、しみじみと聴かせてくれます。

(6)も歌ものだが、カリビアンなラテン系のリズムが愉快なサウンドで、映像でしか見た事がないけれど、カーニバルを思い浮かべてしまうこの陽気さがいいよね。

(8)と(12)はカーミットのオリジナル曲。(8)はスウィンギーなジャンプ・ブルースで、歌やピアノが結構ブルージーなフィーリングを出してるのが良いです。
(12)のほうは重心をどっしりと落としたスロー・シャッフルのブルース。トランペットのえぐいサウンドはたまらんですね。
(9)(10)は有名なスウィング・ナンバー。サッチモのようなアクの強さではなくて、洗練された都会的なサウンドで、ノリの良さと優雅さがあるのがカーミット・ラフィンズです。

2011年7月2日土曜日

Lynwood Slim & Igor Prado Band / Brazilian Kicks


『Lynwood Slim & Igor Prado Band / Brazilian Kicks』 (Delta Groove Productions)
1. Shake It Baby (Amos Blakemore, Buddy Guy)
2. Is It True? (Dave Bartholomew, King)
3. Bloodshot Eyes (Hank Penny, Ruth Hall)
4. My Hat's On The Side Of My Head (Harry Woods, Claude Hulbert)
5. Blue Bop (Igor Prado)
6. Little Girl (Walter Jacobs)
7. I Sat And Cried (Jimmy Nelson)
8. Maybe Someday (Richard Duran)
9. Show Me The Way (Richard Duran, Mike Watson)
10. Bill's Change (Igor Prado)
11. The Comeback (C.L. Frazier)
12. The Way You Do (Jimmy Nolen)
13. Going To Mona Lisa’s (Richard Duran, Igor Prado)

Lynwood Slim - vocals, harmonica,& flute
Igor Prado - vocals & guitar
Rodrigo Mantovani - acoustic bass
Yuri Prado - drums & percussion
Denilson Martins - alto, tenor & baritone saxophone
Donny Nichilo - piano


リンウッド・スリムは1953年ロスアンゼルス生まれ。1977年頃から30年以上活躍しているベテランのブルース・ハーピスト&シンガー。フルートも演奏するのですが、これが個人的にはちょっと馴染めない所でして、、、

12歳でトランペット、15歳でハーモニカを演奏し始め、ジミー・リードやリトル・ウォルター、ビッグ・ウォルター・ホートンなどに影響されたようです。取っ掛かりはやはりこの辺りからですが、ブルースに限らずジャズやスウィングを取り入れたサウンドが特徴です。

イゴール・プラド・バンドとは2、3年前から一緒にライブ活動しているようで、最近のイゴール・プラドはアグレッシブなサウンドを出してはいるものの、音楽性に共通するところ多々あり、ユニットを結成しアルバムが出来上がったのも必然的であったという気がします。

このアルバム一見すると、メインであるリンウッド・スリムのバック・バンドをイゴール・プラド・バンドが務めるという見方が一般的でしょうが、その捉え方は間違いではないが、間違いでもある。バック・バンドは言われた通りに演奏してりゃいいんだよ、みたいな感じは全くなくて、お互いがお互いを尊重し合って、双方の良さが存分に発揮された、聴いてて本当に気持ちの良い素晴らしいアルバムに仕上がってます。これも偏にリンウッド・スリムの人柄に良さによるところでしょうか。

アルバムとしては重要な1曲目、このサウンドは全く以てイゴール・プラド・バンドのサウンドで、まずは花を持たせてくれるなんて、嬉しくて泣けてくるね。
この曲は、ジュニア・ウェルズ1966年のアルバム「It's My Life, Baby!」に収録されてたアップ・テンポのファンキーなナンバー。ここではテンポをミディアムに落としてはいるものの、ボーカルもイゴール・プラドが担当して比較的ワイルドに演奏してます。ギターもテキサス・スタイルでほんとワイルド。ただ、最後のフルートはやっぱりちょっとね。ここはクロマチック・ハープでブリッとやって欲しかったな。しかし、カッコいいナンバーです。

2曲目も好きな曲で、スヌークス・イーグリンのバージョンを割りと忠実に演奏してます。リンウッドの渋い歌声も魅力ですが、何と言ってもジョニー・ギター・ワトソン張りのギターが痺れますね。

ジャンプ・ブルースの(3)、スウィングしてるジャズ・ナンバーの(4)やジャズ・バラードの(8)、この辺りのリンウッドらしい曲も雰囲気のある良い演奏してます。特に(4)でのスウィング感たっぷりのジャジーなギターやピアノなど、陶酔してしまうサウンドですね。

(5)のビバップ系ジャンプは、アップ・テンポでアグレッシブなインスト・ナンバー。ハイテンションのジャズ・ギター、カッコいいです。こんなサウンド出せるブルース・バンドはなかなかいないですよね。

そして、(6)(9)(13)はトラディショナルなシカゴ・ブルースで、まったりとしたスロー・ブルースの(6)もいいが、お気に入りは(9)。何と言ってもリンウッドのクロマチック・ハープが素晴らしくて、味のある渋い音色がたまらんですね。(13)はエディ・テイラー・スタイルのブギ、この辺りもリンウッドお得意のサウンドですね。

イゴール・プラド・バンドは、プラド・ブルース・バンド時代の「Blues And Swing」を聴いて以来、期待を込めて注目してた若手ブルース・バンドだ。デルタ・グルーヴはブルースに愛情のあるレーベルで、録音の質も非常に優れてる。今度はデルタ・グルーブでメインのアルバムを録音して欲しいですね。