2007年4月30日月曜日

Koko Taylor / Old School


『Koko Taylor / Old School』 (Alligator ALCD-4915)
1) Piece Of Man
2) Gonna Buy Me A Mule
3) Black Rat
4) Money Is The Name Of The Game
5) You Ain't Worth A Good Woman
6) Better Watch Your Step
7) Bad Avenue
8) Bad Rooster
9) Don't Go No Further
10) All Your Love
11) Hard Pill To Swallow
12) Young Fashioned Ways

シカゴブルースの女王、ココ・テイラーが7年ぶりに新作を発表しました。大ベテランがアルバムを出して、元気なところを見せてくれると嬉しいものですね。タイトルからもイメージできる通り、古き良き音を、重心の低いサウンドに乗せて豪快にシャウトしてます。一曲目からのこの迫力、自信が漲ってて貫禄ですね。このジャケットが物語っております。バックのサウンドもとてもカッコ良くて、ギターはいつものクリス・ジョンソンがメインで弾いてますが、この人はどうしても外せないようですね。ゲスト参加のボブ・マーゴリンもカッコいいスライドを決めてくれてます。ハーモニカはビリー・ブランチ。そして、ココのバンド、ブルース・マシーンの一員でもある菊田俊介さんが、一曲ですが参加してるのは嬉しいですね。
どっしりとした腰のある濃いシカゴ・サウンドを堪能できますよ。

ココ・テイラーも参加する今年のBLUES & SOUL CARNIVALですが、他の出演者にローリー・ベル、吾妻光良&スウィンギン・バッパーズ、マダムギター長見順という、"& SOUL"を外してもいい位、濃いラインナップとなっておりますね。特に、ローリー・ベルの参加は良かった。奥さんを亡くされて、また逆戻りなんてことにならなくて。見に行きたいけど見に行けない。こういう時に東京から田舎に帰ってくるんじゃなかったとつくづく思います。

2007年4月24日火曜日

Cleo Page / Leaving Mississippi


『Cleo Page / Leaving Mississippi』 (P-Vine PCD-23893)
1) Leaving Mississippi
2) Red Nigger
3) I Got A Girl
4) Wine
5) Roll Your Belly Slow
6) You Know You Wrong
7) California Prison Farm
8) Boot Hill
9) California Style
10) Guitar Lullabye
11) Don't Tear My Clothes
12) Goodie Train

この前書いたウォッシュボード・ウィリーは、デトロイトのコンピで聴いた事があったのだが、このクレオ・ペイジは名前すら知らない初めて聴くブルースマンでした。こんな得体の知れない(そう思ってるのは自分だけかも)ブルースマンを出すP-Vineてよくやるなぁと感心してしまいます。それに、bsr誌のリヴューでの評価は星2つ半なんだもん。でも、こんな評価の低いアルバムが、意外と当りってことがあるんですよね(笑)

タイトルからミシシッピのデルタスタイルをイメージしてしまうが、実際はテキサス~ウエストコーストに近い音で、めちゃくちゃダウンホーム。1)や5)はずばりライトニンで、このギターはもろだもんなぁ。スローブギの1)は力の入った迫力のヴォーカルに圧倒されるが、サウンドはロウダウンでスカスカ。これがいいんですよね。3)はもろ「ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー」で、このアルバムの中では比較的モダンな音になってます。4)ではぶっきらぼうな歌が、後のブロークンブルースに通じる所があるし、ずっと同じリフを弾くチープなオルガンも印象的ですね。6)や11)では、フルソンの「リコンシダー・ベイビー」のギターソロが出てきたりするのですが、特別達者というわけではないけれど、割と味のあるギターを弾くと思います。9)は「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」をロッキンにやってる曲で、ギターが結構カッコいい。11)はフェスの「ベイビー・レット・ミー・ホールド・ユア・ハンド」をアップテンポにアレンジした曲。スネアの音がとても面白く、これは楽しいですね。最後はシスター・ロゼッタ・サープの「ディス・トレイン」。ハーモニカがカッコいいが、ワンコードで刻むリフや女性のコーラスがとってもユニークで、これも妙に耳に残ってしまう面白い曲です。
B級ガレージのブルース版みたいなサウンドがね、これが一度ハマっちゃうと抜け出せなくなるんですよね。本当に癖になりそうな音です。

2007年4月20日金曜日

Rusty Zinn / Reggaeblue


『Rusty Zinn / Reggaeblue』 (Bad Daddy 659428-0023-27)
1) She Comes From Nothing
2) The World Is In Rewind
3) Just Take Your Time
4) Pushin' Towards A Dream
5) Everytime I See A Rainbow
6) Reggae My Blues Away
7) Can't Take My Eyes Off Of You
8) My God
9) You Got To Show It
10) A Song Of My Own
11) The Day After
12) Heaven Is A Place Called Zion

ラスティ・ジンの今年出た新作ですが、これには驚きました。タイトルが「レゲエ・ブルー」だったもんで、レゲエぽい曲でもやってるのかな位に思ってたら、ここまで純度の濃いレゲエアルバムを出してくるとは思いもよりませんでした。大まかに言って、レゲエのグルーヴをベースにソウル、R&B、ブルースを歌うというミクスチャー的な趣旨で、曲は7)を除いて全てオリジナル、バンドはソウル・シンジケートやビッグ・マウンテンのメンバーだったTony Chin、Santa Davis、Fully Fullwoodを12曲中6曲に起用するといった力の入れようで、本気度が見て取れます。

収録曲を少し紹介しますと、1)はソウルな歌い出しから始まりレゲエにという流れで、構成も良く出来た曲ですね。バンドはブルース畑の人達が担当してます。2)は古典的な70年代のレゲエ。バックはソウル・シンジケートのメンバーによるもので、流石にジャマイカのトップクラスだけあって良いグルーヴしてます。3)はクラシックなソウルバラード。いい曲を作るもんですね。クロッパーを思わせるようなギターも味があっていいです。5)はアコースティックギターを使ったフォーキーな曲。シンガーソングライター的な一面も持ってたのですね。曲自体もとても良く、しんみりと聴かせてくれます。6)はコンテンポラリーなブルースとレゲエをミックスしたような、なかなか良い曲ですね。ラスティらしいブルージーなギターをやっと聴けました。7)はフランキー・ヴァリが最初に歌った、邦題が「君の瞳に恋してる」いう超有名曲。どれだけ多くの人がこの曲をカヴァーしただろうか、だけど、レゲエバージョンで歌ったのは、多分ラスティが初めてだろう。ラスティは歌が弱いとずっと思ってましたが、ラスティの中性的な声がこの曲とぴったりマッチしてて、結構聴かせてくれてます。
ラスティはこれからもこの方向性で行くのだろうか?ベタなブルースが聴けないのはちょぴり残念だが、レゲエ・ブルースをもっと発展させるのもいいかもしれません。

2007年4月17日火曜日

Washboard Willie / Motor Town Boogie


『Washboard Willie / Motor Town Boogie』 (P-Vine PCD-23894)
1) C.C. Rider
2) Move After Hours
3) Summit Ridge Drive
4) Dupree Blues
5) Struttin' That Stuff
6) 10-20 Special
7) Calvin's Blues
8) Shake Your Moneymaker
9) No Name Blues
10) Fool On A Mule

ウォッシュボード・ウィリーはデトロイトで活躍してたウォッシュボード奏者で、このアルバムは56年から64年に録音された曲をまとめられたものです。

デトロイトはご存知のように自動車工場の町ですから、いろんな所から人が集まって来る。だからだろうか、多様なスタイルのブルースを聴くことができる。一つの枠で形容できないのもデトロイト・ブルースの特徴の一つであり、却ってそこに面白さを感じるところでもあると思います。それは、過去に限った事ではなく、最近のコンピを聴いてみても、いろんなバンドがいるもんだなとつくづく思います。

それで、ウォッシュボード・ウィリーですが、1909年にアラバマ州ラッセル郡で生まれコロンバスで育ち、48年にはデトロイトに移って来たそうです。ウィリーの最大の特徴はウォッシュボードを演奏することで、ザディコやケイジャンでは無くてはならない程ごく一般的なこの楽器も、ブルースでとなるとあまりにも馴染みが薄く、特異な存在にも見えますよね。しかも、バスドラとかスネア、シンバルまで自分で演奏してたそうですから面白い。ウォッシュボード掻き鳴らしながらバスドラを刻む姿を映像で見てみたいものですね。

そんなウィリーが醸し出すサウンドは本当にアーシーで、1)や4)ではルイジアナ・ブルースの雰囲気が漂うダウンホームな音で、このゆるさ加減はたまんないですね。歌声もおおらかで、もさっとした感じが良くて、なんか落ち着くな。と思いきや5)はノリの良いブギウギで、ブギ・ウギ・レッドの良く転がるピアノとリズミカルなウォッシュボードの絡みは最高なのですが、後半あれっと思ったら、ウォッシュボードを止めてスネアをパコパコ叩いてるんですから面白いですね。6)でもそうですが一曲の中で、ウォッシュボードとタイコをとっかえひっかえ忙しなくやってるんですよね。益々映像が見たくなります。そして、7)や9)ではカルヴィン・フレイザーのダウンホームなんだけどモダンなギターが冴えてていいです。8)は歌は語り、リズムはアフリカン。これもなかなか楽しい曲です。最近はこればかり聴いてたのですが、ちっとも聴き飽きないですね。

2007年4月11日水曜日

Papa Grows Funk / Mr. Patterson's Hat


『Papa Grows Funk / Mr. Patterson's Hat』 (Buffalo LBCY-507)
1) Gorillafaceeugmopotamus!
2) My Man
3) John Brown
4) Walkin' In Our Own Shoes
5) Gone Gonzo
6) Tootie Montana
7) Go!
8) Mafungo
9) Ride On
10) Slapjack
11) Rite Rite
12) Stanky
13) They’re Callin’
14) Walkin' In Our Own Shoes (radio edit)

パパ・グロウズ・ファンクの新作は、なんか音がマイルドになったね。軽快なファンクビートの上にキャッチーなメロディーラインが乗っかると言った感じで割と聴き易くなり、メインパートをサックスが担当する曲も多くなって、比較的にジャズよりの音になったと感じます。その分、以前のようなガツ~ンとくるものがなく、インパクトに欠けるかなと最初思ったんだけれども、何度か聴いてるうちにボディブローがじわじわと効いてきちゃって、バンド全体のうねり具合が益々いい感じになって、結構気に入りました。

冒頭からのギターのカッティングとか、相変わらず冴えてるしカッコいいんですが、僕はアルバムの後半が気に入ってて、まずは7)ですね。思いっきりタメの効いた重心の低いリズム。これがたまりませんです。10)はこのアルバムで唯一の軽快なシャッフルの曲。ギターもブルージーでなかなかいいですね。13)ではゆるいノリの、これはレゲエですよね。レイドバックした雰囲気がとてもいいです。
このバンドはニューオリンズ最強のジャムバンドと思ってますが、メッセージ色も強くなってきてるし、もう単なるジャムバンドではないなと感じました。

2007年4月7日土曜日

John Nemeth / Magic Touch


『John Nemeth / Magic Touch』 (BLIND PIG BPCD-5109)
1) Blues Hit Big Town
2) Blue Broadway
3) Magic Touch
4) My Future
5) She's Looking Good
6) She Did Not Show
7) You're An Angel
8) Sit & Cry The Blues
9) You Were Wrong
10) Let Me Hold You
11) Up To No Good
12) Come On

ジョン・ネメスはウエスト・コーストで活躍してるシンガー&ハーモニカ吹き。1976年アイダホ生まれで、ボイジー育ちの31歳です。教会仕込みのヴォーカルは、ゴスペル色やディープさはないのですが、ソウルフルで素晴らしい歌唱力の持ち主です。ハーモニカもなかなかの腕前で、ジュニア・ワトソンのツアーに参加したり、アンソン・ファンダーバーグのバンドでサム・マイヤーズの代わりにハーモニカを吹いたりしてました。サウンドはトラディショナルなブルースが根底にあり、スタックス・サウンドを思わせるR&Bの曲や、サム・クックのようなソウル・ミュージックもやっておりますが、根がウエスト・コーストのミュージシャンですから、明るいノリのカラッとしたサウンドが特徴ですね。

「Magic Touch」は、今年発売された通算3枚目の新作です。プロデューサーにアンソン・ファンダーバーグを迎え、リズムセクションもアンソンのバンドがサポートしてます。ギターは前作同様ジュニア・ワトソンが務め、ホーンセクションはテキサス・ホーンズ。人脈を総動員した感がありますが、これだけテキサス~ウエスト・コーストのベテランが揃うと、否が応でも期待が持てますよね。で、今回もイカした楽曲が揃ってまして、

1)3)6)8)9)がブルースで、1)はジュニア・ウェルズが、54年デルマークに吹き込んだシカゴ・ブルース。なんとも渋い曲を一発目持ってきたもので、レトロさとモダンさが同居したような音は、ウエスト・コーストの白人ブルース・バンドに多く見られますね。好きな人にはたまらん音です。3)は軽快なノリの良いロッキン・ブルース。ジュニア・ワトソンがいいギターを弾くんですよね。ハイ・トーンのヴォーカルもいいです。6)は"You Got to Move"を改作したスローブルース。味のあるいいハーモニカを聴かせてくれます。8)はウィリー・ディクソン作でバディ・ガイが歌った曲。バディの迫力には勝てないが、なかなか上手く歌い込んでますね。そして、Z.Z.Hill作の9)は、マジック・サムがアレックス・クラブで演奏した曲です。このノリが最高なんですよね。ワトソンのギターにも痺れました。

一方、ソウルやR&Bの曲では、2)は"ファンキー・ブロードウェイ"をイメージして作られた曲でしょうか。ソウルフルな歌が響きますね。本当に上手いです。5)はウイルソン・ピケットが歌った曲で、ストレートにカヴァーされてます。ネメスはシャウタータイプではないのですが、ここではシャウト気味に歌ってます。これもなかなか様になってるし、バックのノリもいいので結構楽しめます。オリジナルの10)は、スタックスを思わせるソウル・バラードで、ギターのリフやサックスなんかはスタックスそのもの。ギターソロはこの曲だけアンソンが弾いてるのですが、これがテキサンらしいジョニー・ギター・ワトソンばりのソロで痺れました。11)もオリジナルのスロー・バラードで、スワンピーな雰囲気がありますが、これは飾り気の無い素朴なハーモニカに因る所が大きいです。いいハーモニカ吹きますよ。歌もシャウトするあたりの歌いまわしにグッときました。最後の12)は、ウィリー・イーガンが55年頃の出したブギウギで、これをニュー・オリンズの雰囲気たっぷりのスカ・チューンにアレンジしてます。このアルバムの中では異色の作品となりましたが、ついつい体が動き出してしまいそうな位ノリが良く、ユニークな曲で楽しくなります。

ジョン・ネメスはまだまだ若いですから、これからが楽しみな人なんですが、4)の"My Future"を聴いてると、ジャジーなハーモニカを吹いたりしてますので、そちら方面にもいくよって曲名が暗示してるのかなと、自分勝手な解釈をしております。ジャジーでスウィンギーな曲はテキサス~ウエスト・コーストの連中はお得意なので、そういう曲も聴いてみたいものですね。いずれにしても注目していきたい人です。