2010年10月3日日曜日

Vance Kelly / Bluebird


『Vance Kelly / Bluebird』 (Wolf Records CD 120.818)
1. I Stay Mad
2. Ain't Gonna Worry About Tomorrow
3. I Wish He Didn't Trust Me So Much
4. Bump and Grind
5. Little Bluebird
6. My Baby Is Fine
7. Someone Else Is Steppin' In
8. Nobody's Sleeping in My Bed
9. Ain't Doin' Too Bad
10. Doing My Own Thing/I Can't Get Next to You/I'm a Bluesman
11. Soft-Hearted Woman
12. Stormy Monday Blues/Take off Your Shoes
13. Driving Wheel



ヴァンス・ケリー。1954年シカゴ生まれ。10代の頃よりA.C.リードのバンドに参加して、サウスサイドのクラブで叩き上げた生粋のシカゴ・ブルースマンだ。

彼のサウンドはビリー・ブランチのような伝統的シカゴ・ブルースを継承するという感じではなく、ソウルやR&Bテイスト溢れるコンテンポラリーなブルースで、それが個性となってます。

若い頃から活躍してるヴァンス・ケリーですが、ソロ・デビューは40歳になってからで、オーストリアのWolf Recordsから発表された。なして、外国のレーベルから。エディ・テイラーJR.もWolfからだもんな。これがブルースの国アメリカの現実なのか。

実際、彼のサウンドは地元シカゴよりもヨーロッパのほうがウケが良いのではないかなと思うのですが、どうなんでしょうね。

それでもコンスタントにアルバムを出し続け、今回のが2008年に発売された6作目となります。

(1)~(5)が2008年にシカゴのスタジオで録音されたもので、(6)以降が1994年から2002年に行われたヨーロッパツアーのライブ録音。ロックやポップスではあまり考えられない変則的構成ですが、ブルースではよくある事です。

ヴァンス・ケリーはデビュー当初より独自のサウンドを確立させてたので、知らずに聴いてもそれ程違和感なく聴く事が出来ます。それにスタジオでもライブでも同じレベルで演奏出来る能力の高さですね。ブルースマンの殆どが叩き上げなので、どっちかと言うとライブのほうが面白かったりします。

ヴァンス・ケリーの魅力は抜群に上手いソウルフルなボーカルで、(10)のジョニー・テイラー~アル・グリーン~ボビー"ブルー"ブランドという構成のメドレーでは、オーティス・クレイも真っ青のソウル・シンガーぶりに脱帽します。

また、ギターも器用なほうで結構上手い。例えば(12)では、出だしT-ボーンばりの流れるようなフレーズを弾き、ソロではタメの効いたディストーション・サウンドで、この切れ込みの良さには圧巻ですよ。ジャジーなフレーズからジミヘンまでお手の物じゃないかな。自分はこの曲が好きで、T-ボーンの曲だからというだけではなく、というか雛形がStormy Mondayというだけで、ヴァンス・ケリーのブルース魂を凄く感じられるからです。その要は実はドラムにあって、Charles Handcoxという無名のドラマーなのですが、ジャム・ファンク・バンド的なファンキーなドラムを叩くんです。なんといっても間の使い方が上手い。これがあるから歌もギターも生きてくる。サックスのソロからギター・ソロに移行する時のバンド・アンサンブル、ベタなんだけどこれが痺れるんです。

A.C.リードから始まるこのアルバム、他にも聴き所満載で、Little Johnny Christianのシカゴ・ブルース(2)、最近発売されたジミー・ドーキンスのアルバムで初めてその存在を知ったのですが、シカゴでは普通に知られてる曲なのかな。原曲はイントロのキーボードとかサックスの使い方、チコ・バンクスのギターとか凄くイナタイ。が、ヴァンス・ケリーの色に染まったこちらの曲も中々のいい出来。クリーン・トーンのギターが染みるね。

ボビー・ウーマックの(3)からZ.Z.ヒルの(4)、ジョニー・テイラーやリトル・ミルトンもやったアイザック・ヘイズの(5)、この辺りのシンガーとしての力量も聞き物です。

ライブではバディ・ガイが"スリッピン・イン"としてリメイクしたDenise LaSalleの(7)、リトル・ミルトンの(8)、ルーズベルト・サイクスの(13)まで、結構楽しい。

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