2007年10月30日火曜日

Johnny Sansone / Poor Man's Paradise


『Johnny Sansone / Poor Man's Paradise』 (ShortStack Records 1006)
1) Poor Man's Paradise
2) You Got Me
3) Mary Full Of Tears
4) The St. Catherine
5) Happiness, Love & Lies
6) You're Dead
7) Any Dog Would Do
8) 44
9) Johnny Sadsong
10) I'm Goin' Home

ジョニー・サンソンはニューオーリンズで活動しているハーモニカやアコーディオンを演奏するシンガーソングライター。
80年代後半に"Jumpin' Johnny and the Blues Party"というバンドを組んでアルバムも出しているようです。ブルース・バンドだろうけれど、あまりにもレア過ぎてそのサウンドを聴いた事がない。ハーモニカを吹き始めの頃は、ギター持ってジミー・リードを目指してたそうですから、シカゴ・サウンドを出していたんでしょうか。

サンソンがアコーディオンを弾くようになったのは、クリフトン・シェニエの葬式に参列したのが切っ掛けらしい。どんな葬式だったのかは知らないが、ザディコが演奏されて、サンソンのその後の音楽志向に多大な影響を与えたのは間違いないだろう。

そんなこんなでサンソンの音はブルースやブギであり、ケイジャンやザディコであり、ニューオーリンズR&B、スワンプ・ポップ。それらを混ぜ合わせたような音。なんだか良く分かんなくなったけど、一括りに出来ない楽しくなるような音楽なんですね。

最近の活動では、先日紹介したジョー・クラウンとジョン・フォール(現ドクター・ジョンのバンドのギタリスト)とで"Sansone, Krown & Fohl"というトリオバンドを組んで、泥臭いブルースやブギをアコースティックにやっておりました。

久しぶりの新作「Poor Man's Paradise」は、"Sansone, Krown & Fohl"のオーガニックなアコースティック・サウンドというコンセプトをもとに、ジョニー・サンソン流儀のサウンドを奏でたというものだと思います。ザ・バンドはビッグ・ピンクの地下室でレコーディングをしましたが、こちらはサンソンの自宅のリビングでレコーディングされてます。ジョー・クラウンやジョン・フォール、アンダース・オズボーンなど、気の合う仲間が集まって気ままにセッションしたという感じで、リラックスした雰囲気が伝わってきます。

ナショナル・スチールを操るロベルト・ルチのスライドとサンソンの素朴なアコーディオンが絡み合う(1)やジョン・フォールのギターが印象的な(2)など、これらアーシーなスワンプ・ポップはボビー・チャールズやザ・バンドといった一連のウッドストック・サウンドに近い感じがしますね。ですが、サンソンのノリはカラっとしてて明るいからいいな。重心の低いブギー調の曲やニューオーリンズR&Bなどを交えながら、ズルズルとサンソン・ワールドに引き込まれていきます。最後はサンソンのピアノとジョー・クラウンのB3オルガンによるバラードで、しっとりと歌い上げてます。ソングライターとしての力量というか才能を改めて知らしめたアルバムでもあったかなと思いました。

しかし、ジャズ・フェスとかで芝生に寝転がってこういう音楽が聴けたら、さぞかし幸せな気分になるだろうなぁ。

2007年10月26日金曜日

Lightnin' Hopkins / New York Boogie


『Lightnin' Hopkins / New York Boogie』 (P-Vine PCD-93001)
1) Hello Central
2) Coffee Blues
3) Long Way From Texas
4) Gotta Move
5) New Short Haired Woman
6) Tell Me Boogie
7) Prayin’ Ground Blues
8) New York Boogie
9) My Heart To Weep
10) Tap Dance Boogie
11) I Wonder Why
12) Buck Dance Boogie
13) Home In The Woods
14) Lightnin' s Gone Again
15) Dirty House Blues
16) Bald Headed Woman
17) Everything Happens To Me
18) Freight Train
19) I’ve Been A Bad Man
20) New Worried Life Blues
21) Broken Hearted Blues
22) One Kind Favor
23) Down To The River
24) I’m Begging You
25) Contrary Mary
26) Everybody’s Down On Me
27) You Do Too

ニューオーリンズ・ミュージック・ガイド・ブックが発売されたし、CDも溜まってたということもあって、自分なりにニューオーリンズ特集を始めてみたのですが、ここらでちょっぴり一休みしてライトニン・ホプキンスを少し。

過去の音源を購入する場合、極力ダブらないようにと注意をしていますが、、元々そういうの疎いので結構苦労します。特にライトニンは音源多すぎでしょ

この"Sittin' In With"も以前ソニーから出てたし、「Blues Train」というのもある。財布の厚みも薄くなってるというのに、ライトニンとなるとついつい買ってしまう。しかし、買って損したなってことがないのもライトニンだ。要するに好きなんですね。

タイトルを「New York Boogie」と付けられたこのアルバムは、ボブ・シャッドが51年に録音して"Sittin' In With"や"Jax"から出したシングルを、P-Vineが独自に編集したものみたいですね。(1)~(8)が初のニューヨーク録音で、ビルボードR&Bチャートの6位を記録した(1)と(2)もしっかり収録されてます。そして、(9)以降がヒューストン録音となっておりますね。スタイルは勿論、カントリー・ブルース。ギター一本でコール&レスポンス。曲によってはベースも入ってます。NY録音はブギとスローが半々ですが、全体的にスローが多目ですね。ライトニン独特のあのドロドロっとした感じが少なくて、なんかちょっと上品に聴こえる。ブギもギターをガツガツ弾きまくる曲が少なくて、がつーんとくるインパクトに少々欠けるかな。でも、聴けば聴くほど味が出てくるのがライトニンなのです。

2007年10月24日水曜日

Joe Krown Trio / Old Friends


『Joe Krown Trio / Old Friends』 (JRK Music JK-1002)
1) Keep On Gwine
2) Junko Partner
3) Tipitina
4) It Wasn't Me
5) Old Friends
6) My Blue Heaven
7) The Royal Boogie
8) St. James Infirmary
9) Lipstick Traces
10) Feel So Good
11) Tchoupitoulas St. Rag
12) C.C. Rider Boogie

ジョー・クラウンはニューオーリンズ屈指のキーボード奏者。
92年頃からゲイトマウス・ブラウンのバンドに加入するようになり、「Gate Swings」や「American Music, Texas Style」、最後のアルバムとなった「Back to Bogalusa」にも参加しておりました。ゲイトマウスと一緒に来日したこともありましたね。

他には、ルーサー”ギタージュニア”ジョンソンの「I Want to Groove with You」とかキッド・ラモスのアルバムにもゲイトマウスと共に参加してましたので、割とブルースファンにも馴染み深い人だと思います。

ソロになってからは、ジョー・クラウン・オルガン・コンボというバンドを中心に活動してます。初めて聴いたアルバムは、2002年に出た「Funk Yard」でした。ハモンド・オルガンをメインにしたジャズファンクで、クールなグルーヴにほんとシビレましたね。

また、その一方で「New Orleans Piano Rolls」というアルバムを発表。こちらは古典的なニューオーリンズのR&Bやジャズ、ブルースをピアノだけで演奏するというもの。ピアノの腕も相当なもんで、最後まで飽きさせず楽しめるピアノソロのアルバムというのには、早々お目にかかれまい。

新作の「Old Friends」は、「New Orleans Piano Rolls」の続編といってもいいアルバムだが、今回はオルガン・コンボのメンバーでもあるギターのブリント・アンダーソンとドラムのマイク・バーラスを加えたトリオだ。これは自ずと期待は高まる訳でして、クラシックなニューオーリンズR&Bやブギウギがとても気持ちいい。(1)(2)(3)(6)(9)(10)あたりですね。ヴォーカルはブリント・アンダーソンが取ってます。サウンドはトリオということもあって、シンプルでタイト。だけど、割と厚みもありますね。ジョーの左手がポイントなのですが。パーカッションも入ってて、コンガかな?ポカポカとラテン的な色彩が良いアクセントになってます。(4)(5)(7)(11)がオリジナルで、タイトル曲となってるインストのバラード(5)は、ゲイトマウス・ブラウンを偲んでピアノを弾いてるのかなと思ってしまいます。物悲しいピアノの音にジーンときちゃいました。オリジナルで一番好きなのが(7)。テンポの速いブギウギナンバーで、ジョーの繰り出す左手のブギのリズムと、跳ねまわるは転がるはの右手。そこにブリント・アンダーソンのブルージーなアコギが絡んで来る。これはたまらんです。

2007年10月20日土曜日

Dwayne Dopsie The Zydeco Hellraisers / Traveling Man


『Dwayne Dopsie The Zydeco Hellraisers / Traveling Man』 (SONO-1069)
1) My Baby's On The Phone
2) I Wish You Was Mine
3) Peace Of Mind
4) My Louisiana Beauty
5) Traveling Man
6) Where'd My Baby Go
7) My Name Is Hurricane
8) Thinking Of You
9) Everbody Say
10) Zydedco Two Step

5年位前ザディコに嵌った時期があって、今でも当然好きなんですが、バックウィート・ザディコとかボー・ジョックなどのベテラン勢は勿論、クリス・アルドワンとかキース・フランク、ロージー・レデットなどの若手もよく聴いてました。その若手の中でも一番のお気に入りが今回紹介するドウェイン・ドプシーなのです。

初めて聴いたのが「Now It Begins」という自主制作のファースト・アルバム。ジャケはカラープリンターでの印刷ぽいし、メディアはCD-Rというチープな作り。だけど、そのサウンドはパンキッシュなロッキンザディコで、爆走するスピード感とうねりまくるリズムは本当に強烈でした。特に圧巻だったのがジミヘンの「ヴゥードゥー・チャイル」。やはりロック世代だなぁと思いつつも、ジミー・ロジャースの「ザッツ・オールライト」をカヴァーするところとか、ブルースの影響も感じられる。ドウェインはこういうブルージーな感覚も持ってるから魅力的なんですね。

「Traveling Man」は去年発売されたアルバムで、これまでのドウェインと根本的に変わらないサウンドだが、サックスを起用したことで幾分アーバンな雰囲気になってます。

相変わらずのノリの良さとスピード感、ドウェインのアコーディオンの早弾きは、やっぱり爽快。

2007年10月16日火曜日

The Andy J Forest Band / Real Stories


『The Andy J Forest Band / Real Stories』 (Slang Records)
1) Let 'Em Die
2) Gonna Getcha
3) Trailerless Man
4) Swing Is Everything
5) Breach In The Levee
6) 4:20 AM
7) Stinkin' Lincoln
8) Lithium For Art
9) Strollin' with Bone In New Orleans
10) Eddie & Betty
11) Last Words
12) Pick Yourself Up
13) Maintenant

アンディ J フォレストは1955年にワシントン州で生まれ、現在はニューオーリンズで活躍してるハーピスト&シンガー。

60年代後半、ロサンゼルス滞在中にサニー・テリーやウォルター・ホートン、チャーリー・マッスルホワイト、ロッド・ピアッツァなどのライヴを見てハーモニカを覚え、ジョージ・スミスに教えを請うた事もあるそうです。そして、70年代前半からニューオーリンズで活動するようになるのですが、そこにはジェームス・ブッカーやアール・キングなどの影響があったようです。

初期の頃はサザンビートの効いたロック・サウンドでしたが、最近はリゾネイターを用いたSSW的なアーシーなサウンドやフリー・ジャズからフュージョンぽいもの、なんとザディコまでやっちゃいます。ほんと多彩な音楽性を見せておりますが、根本的にブルース。

アンディのメイン楽器はハーモニカだけどリゾネイターも得意で、今回のアルバムでも一曲だけですが、雰囲気のある渋いスライドを弾いてます。で、肝心のハーモニカはというと、表情豊かな音を出すんですね。フレーズも多彩でかなり上手いです。ヴォーカルはなんとなくレイジーな歌い方で、枯れた味のある歌声を聴かせてくれます。

そして、もう一つ忘れてならないのが、優れたソングライターでもあるという事。新作では、T-ボーン・ウォーカーの(9)以外はすべてオリジナルで、全体的にファンク色の濃い音作りなのですが、しっかりと南部の臭いも漂わせてる所がいいんですね。

1曲目からファンキーなビートに乗せたロッキン・ブルース、これがメチャメチャカッコいい。泥臭いロックン・ロール・ナンバーの(2)、緩めのスカ・チューンの(3)とどの曲もたまらんです。そして、ウォッシュボード・チャズがギタリストのロベルト・ルチと共に参加してるのも注目点で、(4)はもろウォッシュボード・チャズ・ブルース・トリオのサウンド。ここまでやっちゃうともう楽しくてしょうがないですね。他にジャジーな曲やらスウィンギーな曲、重心の低いブギー、ザディコとケイジャンの中間ぽい曲なんかもやっております。バンドの纏まりもあって、本当に楽しめます。最高の一枚ですね。

2007年10月14日日曜日

Tab Benoit / Power of the Pontchartrain


『Tab Benoit / Power of the Pontchartrain』 (Telarc CD-83654)
1) Don't Make No Sense
2) Good to Ya, Baby
3) Shelter Me
4) Power of the Pontchartrain
5) For What It's Worth
6) Midnight and Lonesome
7) Sac-Au-Lait Fishing
8) Somebody's Got to Go
9) I'm Guilty of Lovin' You
10) Addicted
11) One Foot in the Bayou

タブ・ベノアはブルースが盛んなルイジアナ州バトンルージュ生れの40歳。
ベノアのトレードマークはテレキャスター・シンライン。ジャケットに写ってるのがメインギターで、使い込まれて年季の入ったシンライン。渋いなぁ~。太過ぎず細過ぎずマイルドでいい音してるんですね。これでスワンピーなブルースをブイブイ弾き倒してくれます。ジョン・フォガティを思わせるような、ちょっぴりハイトーンで力強い歌声もなかなかのもんです。

今回の新作は結構ロック寄りのサウンドになっておりまして、のっけからファンキーなリズムに乗ってギターが気持ち良~く鳴ってます。この音、一度壺に嵌ったらとても脱け出せませんよ。

ベノアのサウンドって独特の雰囲気があって、ブルースファンからは敬遠されがち。生まれがルイジアナだからブルースはもちろん、ケイジャンとかカントリーとかもよく聴いただろうしね。この辺のスワンプがサウンドの基礎となってるんだが、ニュー・オーリンズからの影響や世代が若いからロックからの影響もあって、特にCCRが好きなんだろうなちゅうのもよく分かるし、ジミヘンの影も見え隠れしたりする。そんなこんなをミックスしてハイってな感じかな。一度、食したら忘れられない味なんだけど。
あ、それで思い出した、ガンボスープ。これも一度食べたら忘れられないらしい。
僕はオクラが苦手なので遠慮したことがあったが、今度食べてみようかな。
でも、福岡で食べさせてくれる所があるのかな?

2007年10月11日木曜日

Marva Wright / After the Levees Broke


『Marva Wright / After the Levees Broke』 (Aim 5015)
1) Levee Is Breaking Down
2) Katrina Blues
3) God's Good Hands [From Hurricane in the Bayou]
4) Way It Is
5) You Are My Sunshine
6) You Got a Hold of Me
7) Funny Not Sunny Kind of Love
8) Bluesiana Mama 07
9) Rock Me
10) I Have Had My Fun
11) Crazy
12) Change Is Gonna Come

"New Orleans Blues Queen"マーヴァ・ライトの新作は、「堤防が決壊した後」という意味のタイトルで、カトリーナでの悲惨な現実や生まれ育ったニューオーリンズへの思いを歌ったアルバムのようです。

冒頭、ヘリコプターの効果音が嫌が応でも連想してしまう重々しい雰囲気から始まるが、曲自体は軽快なコンテンポラリーブルース。元々、ゴスペル・シンガーだったマーヴァのとてもパワフルで豊満な伸びのある歌声には、ぐっと引き込まれる魅力があります。次の重心の低いスローブルース(2)も迫力があっていいですね。山岸潤史がギターで参加してて、これがまたマーヴァを盛り立てるような良いギターを弾くんですよね。渋いです。他に98年に発売した曲の再演(8)や軽快なロック・ナンバーの(9)。この辺りが好きですね。

また、マーヴァはバラードを歌わせても素晴らしくて、どちらかと言うとバラードの方がいいんじゃないかなと思う位です。(3)(10)(11)(12)辺りがそうですが、特にサム・クックの(12)が良い。マーヴァは歌詞を変えて歌ってるようで、気持ちの入り様といい、表現力の豊かさといい、抜群です。感動しました。

英語はさっぱりなんで詳しい詩の内容は分かりませんが、こうしてマーヴァの歌声を聴いてるとそれほど悲愴感は感じられず、希望を持って元気に生きようとするエネルギーを感じます。ニューオーリンズの葬儀ではブラスバンド入りのパレードをするのはよく知られてることで、バンドは墓地に行くまでは悲しく、帰り道は陽気に演奏するそうです。こういう前向きなニューオーリンズ気質が好きなんですよね。

2007年10月8日月曜日

New Orleans Music Guide Book


待ちに待った「ニューオーリンズ・ミュージック・ガイド・ブック」が漸く発売されます。
タワーレコードで先行発売されたので、早速昨日購入してきました。
ざっと中身を拝見させて頂いたが、噂通り本当に内容の濃い~本になってます。
プロフェッサーやアール・キングの写真から始まり、カーニヴァルやジャズフェスの写真なんか見てると、行ったことのない自分にとってはタメ息が出そうです。
それから、ニューオーリンズの歴史、用語解説もありまして、これなんか今更聞けな~いちゅうことで有難い。そして、大御所達の紹介。
勿論、ディスク・ガイドもドド~ンと掲載されてます。Jazz/Brass Band、R&B/R&R、Blues、Soul/Gospel、ネヴィル・ファミリーは独立したコーナーになってて、層の厚さや影響力の大きさを感じますね。そして、Funk/Jam BandからRockまで。こうして見てるとニューオーリンズの街には、いろんな音で溢れてるのがよく分かります。現在活躍されてる人達のアルバムもきっちり紹介されてるのも嬉しいですね。
あれやこれやと欲しい物が.....明日からまた素うどんか~。