2011年1月29日土曜日

The Holmes Brothers / Feed My Soul


『The Holmes Brothers / Feed My Soul』 (Alligator ALCD 4933)
 1. Dark Cloud
2. Edge Of The Ledge
3. Feed My Soul
4. You're the Kind of Trouble
5. Something Is Missing
6. Living Well Is The Best Revenge
7. I Saw Your Face
8. I Believe You I Think
9. Fair Weather Friend
10. Put My Foot Down
11. I'll Be Back
12. Pledging My Love
13. Rounding Third
14. Take Me Away

The Holmes Brothers are:
Sherman Holmes - Bass and vocals (lead vocal on 1, 5, 7)
Wendell Holmes - Guitar, piano (9, 11, 14) and vocals (lead vocal on 2, 3, 4, 6, 8, 9, 10, 12, 13)
Popsy Dixon - Drums and vocals (lead vocal on 5, 11, 14)

Additional Musicians:
Glenn Patscha - Hammond B-3 (1, 3, 4, 5, 8, 13, 14), Wurlizter piano (3, 4, 11, 13), piano (5, 6, 7, 11, 12), keyboard (2, 10, 14), backing vocals (1, 3, 4, 9, 10)
Joan Osborne - Backing vocals (2, 3, 4, 5, 7, 9, 14), percussion (2, 4, 13)
Catherine Russell - Backing vocals (3, 4, 5, 14), mandolin (6), cowbell (3)
Matt Munisteri - Guitar (2, 6)
Andy Breslau - Harmonica (13)
Roman Klun - Tambourine (8, 10)


ホームズ・ブラザーズは、ギターのウェンデルとベースのシャーマンのホームズ兄弟と、ドラムのポプシー・ ディクソンにより、1980年ニューヨークで結成されたトリオ・バンドで、ロック色のあるブルースやゴスペル、ソウルなど、パワフルに演奏するバンドです。
自分はアリゲーター移籍後から聴き始めたのですが、パワフルな演奏だけではなく、3人の歌声がとても素晴らしくて、コーラス・グループという側面を持ってることが何より魅力的だと思います。それはアルバムが出る毎に顕著に表れてるような気がします。

ホームズ・ブラザーズのアルバムは毎回楽しみにしてるのですが、今回のアルバムはアリゲーターからの4作目となります。
アリゲーター以前のアルバムも全作揃えて聴いて行きたい所ですが、中々そこまで手(お金)が回らないので、ベスト盤だけでもと思い聴いてみました。
ブルース、ゴスペル、ソウルなど曲毎にそのサウンド・カラーがはっきりしてて判り易いのと、力強く歌うボーカルとディストーションを効かせたギターで押し出しの強さを感じさせながらも、間を活かしたシンプルなバンド・サウンドでというのはやはり魅力です。それと、ゴスペルやソウルなどのコーラスでは、ガラガラ声でゴスペル・フィーリングたっぷりに歌うホームズ兄弟の後ろで、綺麗なファルセットを聴かせるポプシーの存在は大きいと思う。

そんなこんなを踏まえて最近のアルバムを聴いてみますと、アルバムを追う毎にロックやブルース色が薄れてきて、コンテンポラリーなソウル色が強くなってるような感じです。それは今回のアルバムが特に顕著で、歌う事に拘ってるのだろうなという気がします。
かと言ってアップテンポの曲が無くなった訳ではありません。(1)や(4)、(13)などで聴かれるサウンドは、昔のようにカラーのはっきりしたものではなくて、カテゴリーレスと言ってもいい位で、彼等の培ってきた音楽を融合させたような正にホームズ・サウンドと呼べるものだろうと思います。そんな中でも(13)は、唯一ハーモニカをフィーチャーしたブルージーなシャッフル・ナンバーで特に好きですね。
ウェンデルのギターはディストーションを排除して、クリアーでウォームなトーンを多用してます。これが今のサウンドに凄くマッチしてて、心地よいサウンドに一役買ってますね。
さらに、ウェンデルとシャーマンの歌声も力一杯という感じがなく、力みのないリラックスした雰囲気がとても好印象で、シャーマンが歌う(7)やウェンデルの(3)(9)などのバラード曲を聴くと、図太いんだけれども深みのある燻し銀的で渋いんですよね。兄弟なので声質が良く似ておりますが、シャーマンは少しかすれ気味で、これが凄く哀愁漂ってていいんです。前よりも良い声してますよ。
そして、特筆すべきは(5)(11)(14)で歌ってるポプシー・ ディクソンの歌声でしょう。ホームズ兄弟よりも幾分細い声なのですが、艶というか色気があって素晴らしいです。(11)を聴いて、久しぶりにビートルズの「A Hard Day's Night」を引っ張り出してきました。これは完全に原曲を凌駕してしまったな(わっ、マニアから攻撃されそう~)。凄くソウルフルで表現力も素晴らしいです。(14)も沁みるなぁ。

このアルバムは、300Bのシングル・アンプで聴いておりますが、中低音が豊潤な300Bだからこそ味わえる、なんだか幸せになれるサウンドです。
外は雪が降ってきました。雪を見ながら聴く、ホームズ・ブラザーズも乙なもんだな。

2011年1月27日木曜日

Guitar Red / Lightnin' in a Bottle


『Guitar Red / Lightnin' in a Bottle』 (Backspace Records)
1. Box Car No. 9
2. Lips Poked Out
3. Ain't Got Nobody But Myself
4. Three Legged Dog Blues
5. Chain Gang Blues
6. Lightnin' in a Bottle
7. Out of My Mind
8. Decatur Boy Blues
9. I Believe
10. Song About a Jimi Hendrix Song
11. Secret Track

Billy Christian Walls - Guitar, Clavinet & Vocals
Chris Francisco - Bass

ギター・レッド。何処かで聞いた事あるような、今更こんな名前名乗らないだろみたいなベタな名前のブルースマン。一体何者なのだろうか?
アルバムタイトルや60年代を思わせるジャケットも如何にもで、策略的なものを感じてしまうのだが、妙に気になって購入ボタンを押してしまったアルバムだ。

さて、このブルースマンはどういう人なのか調べるんですが、その時に頼りにしてるのが無料翻訳サイト。しかしこれが、どうも今一つちんぷんかんな訳をしてくれる。無料なのだから文句言うな、その前に英語勉強しろと、ははー御尤もで、でももう少しどうにかならないものかと常日頃から思ってるのでありますが、、、

ギター・レッド、本名をBilly Christian Wallsと言って、ジョージア州のディケーターでホームレスをしているストリート・ミュージシャンのようだ。リトル・ジョー・ワシントンとか出て来たから、ホームレスといってももう驚かなくなってしまったね。
公園や通りの路上が演奏場所だったそうだが、アトランタのBackspace RecordsのオーナーBen Rowellに気に入られて、初レコーディングの機会を得たようだ。


サウンドはアコギ一本でブルースを歌うカントリー・スタイルが基本で、リズミカルにギターを掻き鳴らしビートを効かせ、割とぶっきらぼうに歌う。結構好きなタイプだな。
紹介文を読む限りではドラッグやアルコール中毒になったり、飢えや貧困、逮捕等かなり苦労してきたそうですが、それでも、女の話やら酒の話、監獄の話を陽気に歌ってるところなんか好感持てる。
ブルースは元々ダンス・ミュージックだった訳ですし、ビートのあるノリの良い曲がいい。(1)(2)(4)(8)辺りかな好きなのは。ライトニンを思わせるロウダウンな(7)もいい。

実はこの人、カントリー・ブルース一辺倒ではなく、(6)では70年代のファンキー・ソウルをやってる。クラビネットが凄くファンキーで、この音を聴くとスティービー・ワンダーを思い出してしまうな。割りと熟れた演奏で結構やってた感じがします。
(9)ではフォーキーなSSW的サウンド。ギターのカッティングが凄く気持ち良くて、コード弾きの間に入る単音の音にハッとさせられます。ルーシー・フォスターなんかが演奏しても良さそうな曲ですね。
もっと多くの引き出しを持ってそうな感じのする人ですが、果たして次はあるだろうかな。

2011年1月25日火曜日

The William Clarke Band / Tip Of The Top


『The William Clarke Band / Tip Of The Top』 (Watch Dog Records)
1. Drinkin' Beer
2. Just A Dream
3. Take A Walk With Me
4. Tribute To George Smith
5. Charlie's Blues
6. Goin' Steady
7. Hot Dog And A Beer
8. Chromatic Jump
9. Hard Times
10. Blowin' The Family Jewels
11. Drinkin' Straight Whiskey
12. Party Party
13. Got My Brand On You
14. My Dog Won't Bark
15. My Wife Got Mad

William Clarke - Harmonica & Vocals (all except 5,9)
Charlie Musselwhite - Vocals & Harmonica (5)
George "Harmonica" Smith - Harmonica & Vocals (9)
Hollywood Fats - Guitar (3,4,5,12)
Junior Watson - Guitar (1,6,14,15)
Ronnie Earl - Guitar (7)
Joel Foy - Guitar (1-3,5,6,10-13)
Steve Killman - Guitar (8)
Bruce Thorpe - Guitar (8)
Fred Kaplan - Guitar (9), Piano (3-5,7,9,12-15)
Rob Rio - Piano (1,2,6,10,11)
Willie Brinlee - Bass (all except 14,15)
Bill Stuve - Bass (14,15)
Jerry Monte - Drums

ウィリアム・クラークは1951年生まれで、ロッド・ピアッツァよりも4歳位年下なのですが、ロッド・ピアッツァ、ハリウッド・ファッツと共にウエストコーストの白人ブルースの礎を築いた1人だと思います。
そのウィリアム・クラークが、ブルースに興味を持つようになるきっかけがローリング・ストーンズだったとは、ちょっと意外であったと同時に、自分と同じだった事になんか親近感を覚えたものです。
最初はギターやドラムを演奏してたそうですが、1967年頃にハーモニカに転向してます。ビッグ・ウォルター・ホートンやジェームス・コットン、ジュニア・ウェルズなどに影響されてたようですが、ジャズ・オルガン・トリオの演奏も熱心に聴いてたそうです。これがジャンピーでスウィングしてるグルーヴのあるサウンドに、シカゴ・ブルースのハーモニカが乗っかるというスタイルの基になってるんですね。
1969年の中頃からロサンゼルスに移り、数多くのブルースマン達と共演を重ね、本格的に活動していく訳ですが、その中でも取分け影響力の大きかったジョージ・ハーモニカ・スミスとは、師と仰ぎ1983年に他界するまで交流が続いた。
ウィリアム・クラークのハーモニカにジョージ・ハーモニカ・スミスの面影を感じ取る事は出きるが、そのサウンドをなぞるのではなく、自分のスタイルで演奏した人だ。
現在のウエストコースト・ブルースの主流となっているサウンドは、明らかにウィリアム・クラークのサウンドであって、それを自分流に昇華できた人が生き残れるのでしょうね。
自分にとっては、自分の中にあったあの忌まわしい至上主義から開放してくれて、ウエストコースト・ブルースに夢中になるきっかけとなり、そして、ブルースをより楽しく聴けるようになったのは、ウィリアム・クラークのお陰と言っても過言ではない。本当に愛すべきブルースマンだったのです。

さて、今回のアルバムは1987年にKing Aceから発売されたものの再発盤です。2000年に一度CD化されておりましたが、今回はジャケも新装新たにWatch Dog Recordsからの発売となりました。このWatch Dog Recordsは、クラーク夫人がウィリアム・クラークの音源を発掘と復刻する為に立ち上げたレーベルで、今までもコンスタントにアルバムが発売されてます。今となってはウィリアム・クラークはほんと果報者だね。

しかしながら、アリゲーター以前のオリジナルアルバムは全くCD化されておらず、特に愛すべきギタリスト、ハリウッド・ファッツが参加したアルバムを聴きたくても聴けない。そんな折、Watch Dogが「The Early Years Volume 1」を出してくれて、漸くその音源を聴く事が出来た。そんな状態なんですよね。クラーク夫人には版権問題?をクリアして、是非ともオリジナルアルバムのCD化を期待したいところですが、、、

このアルバムには、そのハリウッド・ファッツが参加した音源が4曲も含まれてるのはとても有難い。お気に入りは(12)で、この時はウィリアム・クラークもハープを一時閉まって、ハリウッド・ファッツに花を持たせてるのですが、ここぞとばかりジャンピーでスウィンギーなギターを弾きまくる。ウォームなトーンもたまらんなぁ。最高です。
勿論、愛すべきジュニア・ワトソンも負けちゃいない。ジャンピーな(1)から燻し銀的な(14)(15)まで、随所で痺れるギターを聴かせてくれる。
そして、何と言ってもジョージ・ハーモニカ・スミスが参加した(9)だな。トラディショナルなシカゴ・スタイルのスロー・ブルースで、バンドはピアノとギターによる伴奏なのですが、この時ばかりはトラディショナルに徹しております。ダイアトニックでしっとりと吹いてたハーモニカもソロではクロマチックに持ち替えてブォーって図太いトーンを響かせる。鳥肌が全身を駆け上がるくらい凄いインパクトだ。
それに対して、ジョージ・スミスへのトリビュート曲(4)、こちらもトラディショナルなシカゴ・スタイルのスロー・ブルースで敬意を表す。ロングトーンで小刻みにビブラートの掛かったクロマチックの音色は図太く、師匠に負けず劣らずの迫力があり、ほんと痺れる。この2曲、聴き比べると面白い。
それから、突拍子もなく1曲だけのライブ(8)、ロッキン・ブルースのハープ・インストですが、これがめちゃくちゃカッコいい。正にウィリアム・クラークの真骨頂だ。



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『William Clarke / Live Bootleg Cassette Anthology』 (Watch Dog Records)
1. Introduction
2. Walked All Night Long
3. Lollipop Mama Jam
4. Telephone Is Ringing
5. Must Be Jelly
6. Tryin To Stretch My Money
7. My Last Goodbye
8. Home Is Where The Heart Is
9. Loose Your Life
10. Ice Cream Man/Walked All Night Long
11. Lonesome In My Bedroom
12. Bill's last tune....Goodbye

1996年3月、ツアー中だったウィリアム・クラークは、インディアナポリスのステージで突然倒れた。うっ血性心不全と診断され、一時は治療に専念するのだが、完治してないにも拘らず、夏から秋にかけてのクラブ廻りのツアーにまた出掛けてしまう。
どうしてそんなムチャな事を、、、プロ意識からだったのか、それとも、ブルースを演奏したくて仕方が無かったのか。
1996年11月、フレズノのクラブで再び倒れ、治療の甲斐なく45歳の若さでこの世を去ってしまった。死因は出血性潰瘍だったそうである。

その亡くなる2ヶ月前に録音された貴重な音源が発見された。それが(7)(8)(9)。
正にラスト・ツアーの模様を収めた最後の録音ということになります。
その他の音源は、1991年サンフランシスコでのライブです。共にプライベート・レコーディングなので音質はあまり良くありません。
しかし、この熱気に満ちた勢いのある演奏には圧倒されました。
特に、1996年の演奏。この時のウィリアム・クラークは体重は30キロ程落ち、体調は最悪だったはず。なのに搾り出すような力強い歌声、ロングトーンでブォーってぶっといクロマチックの音、いつものサウンドでほんと凄まじい人だ。
1991年というのはアリゲーターからデビューしたての頃、ノリに乗ってて勢いがあるのは当然と言えば当然で、それと比べてみても何の遜色も無い、いやそれ以上の勢いさえ感じる。もしかしたら、全部1991年の演奏なんじゃないかなぁっていう疑念さえ抱いてしまう。しかし、命を削って搾り出したサウンドって思うと感慨深いものがあります。

「Bill's last tune....Goodbye」、、、涙なくしては聴けません。 

2011年1月22日土曜日

Rod Piazza & The Mighty Flyers Blues Quartet / Soul Monster


『Rod Piazza & The Mighty Flyers Blues Quartet / Soul Monster』 (Delta Groove DGPCD134)
1. Soul Monster
2. Can't Stand To See You Go
3. Cheap Wine
4. Key To The Highway
5. Sunbird
6. That's What's Knockin' Me Out
7. Tell Me About It Sam
8. Queen Bee
9. Expression Session
10. Ko Ko Mo (I Love You So)
11. Talk To Me
12. You Better Watch Yourself
13. Hey, Mrs. Jones

Rod Piazza - Harp and Vocals
Miss Honey - Piano and Bass
Henry Carvajal - Guitar and Vocals
Dave Kida - Drums and Percussion
Jonny Viau - Tenor Sax
Allen Ortiz - Tenor Sax in Spirit

ロッド・ピアッツァの今回のアルバムは、Delta Grooveからの3枚目となります。2009年にリリースされたものですが、、、
シカゴ・ブルース色の強いウエストコースト系のサウンドというのは、Black Topの頃から、いやもっと前のBacon Fatの頃から相変わらずなのですが、今回のアルバム、全体的にちょっと平凡かなぁという印象を受けます。
個人的には、ジミー・リードやリトル・ウォルター、「Key To The Highway」などをストレートにカヴァーした曲は、もうこの辺でいいかなという気もします。又、オリジナル曲が少ないのも気になります。クリエーティブな発想を維持していくのは大変なのでしょうね。

その中でもロッキン・ブルースのハープ・インスト、(1)や(5)はカッコいいですね。
(1)はミディアムテンポですが、出だしのアンプリファイドされたクロマチックハープの図太いトーンでのビブラート、やっぱこれでしょう。痺れます。ベースも低音ぶりぶりですから迫力が増しますね。ファンキーでカッコいい曲です。
(5)はバンドアンサンブルも頗る良くて、これぞグルーヴィ・インストちゅう感じやね。
ベーシスト脱退後、新たに補充はしてないようで、ライブではベースレスでやってるようですが、YouTubeで「Sunbird」を見てみましょう。

2011年1月21日金曜日

Philips ECG 7581A

音楽を聴くうえで欠かせないのがオーディオ機器な訳ですが、最近は真空管アンプにどっぷり嵌ってまして、その面白さは何と言っても真空管を差し替えて聴く楽しさでしょうね。
真空管と言っても、電圧増幅管、整流管、出力管とありますが、今回は出力管です。

アンプ付属の曙光電子300B-98を始め、Gold LionのKT-88、KT-66と聴いてきて、さて次は6L6GC辺りを聴いてみようかということで、めぼしい品を検索。

素直に現行Tung-SolかSED/Winged-Cで行くか、ギターアンプ用のGroove TubesやTADをオーディオに流用したらどんな感じだろうかとか、やっぱりヴィンテージのGEやRCAは存在感あるしいいな、でも高いなぁとか考えつつ、そんな中で目に留まったのが色んな所で高音質と評価の高かったPhilips ECG 7581A。


写真右がPhilips ECG 7581A。ミリタリー・グレードで、85年アメリカ製のNOS管です。
隣のGold Lion KT-66と比べると地味ではありますが、小さくてかわいい真空管ですね。

まず、このPhilips ECGというブランドですが、オランダのフィリップス社がアメリカのSylvania ECGを買収してPhilips ECGになったそうである。だから、本体はシルバニア製ということになりますね。しかし、フィリップスという会社は、いろんな所の真空管ブランドを買収しては好きなように販売してたようで、イギリスのMullardもその中に一つだそうです。

7581Aというのは6L6GCの高信頼管に当たるそうで、6L6GCのプレート損失は30Wですが、7581Aは35Wにパワーアップされてます。高信頼管で高出力だから音が良いとは限らないと聞き及んではいましたが、巷では音が良いと評判の真空管、欲しくなるのが人情ってもんでしょうね。値段は許容範囲内でという条件が付きますが、、、

そして、肝心な音ですが、特徴的なのは高音ですね。カチっとしたシャープさと透き通るような透明感、音場が広くて押し出してくる感じ。これは今まで聴いた真空管の中で断トツに凄い。その反面、中低音が弱くてちょっと物足りないですね。中低音大好きな自分にとっては微妙な感じだな。そこで思い出したのがプリ管。常用してるMullardからPhilips ECGに交換してみました。Mullardの時のような透明感や音場の広さは少々弱まってしまったが、その代わり中低音が少し太くなり迫力が増したような感じです。全体的にバランスも良くなったと思います。PhilipsにはPhilipsということかな。でも、Gold Lion KT-88とMullardのコンビのほうが音がいいと思う。というか音は良いか悪いかではなく、自分の好みか否かということでしょうね。

それから、このPhilips ECG 7581Aは物凄く青く光るんです。


ちなみに、他の真空管も確認してみたのですが、300B-98は片側だけ若干、KT-88は両方若干、KT-66に至っては全く光らないです。
どうしてこんなに青く光るのか調べてみましたら、BOI Tube Wikiによると、青色蛍光という現象で、真空管のプレートボックス内部で、電子がカソードからプレートへ飛んでいく際、電子が漏れてガラスに当たる事で発生するそうですが、そのガラスに含まれるコバルトなどの不純物が青く光るようです。真空管の良し悪しには全く関係ないということですが、シズル的にはそそられる光ですね。いやー、面白い。

2011年1月19日水曜日

Candye Kane / Superhero


『Candye Kane / Superhero』 (Delta Groove DGPCD133)
1. Superhero
2. Hey! Toughen Up!
3. I Put A Hex On You
4. I'm A Bad, Bad Girl
5. Ik Hou Van Je (I Love You)
6. Who't Been Sleeping In My Bed?
7. Don't Cry For Me New Jersey
8. You Need Love
9. I Like 'Em Stacked Like That
10. Till You Go Too Far
11. Picture Of You
12. You Can't Stop Me From Loving You
13. I Didn't Listen To My Heart
14. Throw It In The Trash Can Love
15. I'm Gonna Be Just Fine

Candye Kane - vocals
Laura Chavez - guitar (1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14), acoustic & baritone guitars (7)
Paul Loranger - bass (1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 11, 12, 13, 14), string bass (7, 8)
Evan Caleb - drums (1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 11, 12, 13, 14)
Mitch Kashmar - vocals (9), harmonica (10)
Kid Ramos - guitar (9, 10)
Dave Gonzales - baritone guitar (1, 14)
Greg Rutledge - piano (5), Hammond B-3 (3, 6)
Jonny Viau - saxophone (1, 13, 14)
Stephen Hodges - drums and percussion (7, 8)

キャンディ・ケインはロサンゼルス出身の白人ブルース・シンガーで、波瀾万丈の経歴を微塵も感じさせない天真爛漫さや西海岸の人らしいカラッと陽気な感じが魅力です。
キャンディの200ポンドの体型から発せられる歌声は、クセのない白人らしいものですが、非常に強力で活力に満ちた所が良いですね。

ブルースを歌う前は、ロックンロールやパンクなんかも歌ってたというからユニークなのですが、R&Rやロカビリー好きなんだなというのは今でも感じられます。ジャンプ・ブルースやロッキン・ブルース、スウィング、ジャイヴ、R&B、シカゴ流シャッフルにブギなどなど、何でもござれ状態のキャンディ・ケイン・サウンド。ウエストコースト・ブルースらしいカラッと明るいノリの良さは、やっぱり聴いてて楽しくなりますね。

1994年のAntone's以降、Sire、Rounder、Rufと渡り歩いて、通算9作目の今回のアルバムはDelta Groove Productionsからのリリースとなりました。Delta Grooveは良質のヴィンテージ機材を使用して録音するという拘りを持ってるレーベルでもありますので、音質の面でも楽しめるアルバムになってると思います。

さて、いつものようにYouTubeでビデオクリップ探しを始めたら、出てくる出てくる、それはもう膨大な数のビデオがアップロードされておりました。アメリカでは相当人気があるんですね。そういえば、このアルバムはビルボードのブルース・チャートで9位まで上昇してましたし、アメリカ人はR&R調の軽快なサウンドがやっぱ好きなんですね。

で、これだけ数多くのビデオクリップがあるならば、アルバム1枚分揃えたら面白いかなと思って探しましたが、流石にそこまでは見つかりませんでした。
ですが、とりあえず1曲目から


サックスなしドラムもスネアのみというシンプルな構成のライブですが、ボーカルがボーカルなだけに結構な迫力です。こういう隙間だらけのサウンドって大好きなんでちょっと痺れちゃうな。ギターはLaura Chavezという女性で、インパクトはありませんがジワーと響いてくるいいギターを弾きますね。ウォームなトーンもいい。しかし、エピフォン295のゴールドトップとはなかなか渋いじゃないですか。このギタリスト、ブルースではなく、元々はR&Rかロカビリーの人のような気がしますね。


2曲目はアコースティック・ライブで、アルバムのロッキン・ブルース調とはまた一味も二味も違った雰囲気。渋味のある味わい深いサウンドが良いです。


ロカビリー風のバラードナンバー。ギターもトレモロを使ってロカビリー風ですね。ブリッジを押さえてトレモロ・サウンドを出すのは、ちょっと面倒臭さそうだな。どうせならアームを付けちゃえばいいのにと、つい余計な事を思ってしまう。ソリッドなギターでもウォームなトーンはなかなかいいね。


この曲はエスター・フィリップスのR&Bナンバー。ブルース仕立てではあるが、これも直球勝負でキャンディ・ケインらしいところ。


5曲目はスウィンギーで好きな1曲。音があまり良くないのが残念ですが、それを考慮してもアルバムのほうがノリが良いように感じます。この曲のポイントはピアノで、いいピアニストのようですが如何せんキーボードの音がちょっとね。音楽を聴くという行為だけを鑑みると、当然ですが音質の良いアルバムを聴いてるほうが楽しいですね。


最後は(8)のウィリー・ディクスン作シカゴ・ブルース。決してマディと比較してはいけません。キャンディ・ケイン結構好きなのですが、ロウダウンな曲はあまり似合わないみたい。やっぱり、ジャンピー、スウィンギーに軽快にやって欲しい。

(9)(10)ではDelta GrooveアーティストのMitch KashmarやKid Ramosがゲスト参加しておりますが、ブルース・フィーリングに差があるのは否めないな。

2011年1月17日月曜日

Mississippi Heat / Let's Live it Up!


『Mississippi Heat / Let's Live it Up!』 (Delmark DE 807)
1. Let's Live It Up!
2. Steadfast, Loyal and True
3. Jumpin' In Chi-Town
4. She Died From A Broken Heart
5. Betty Sue
6. Another Sleepless Night
7. Peace Train
8. Been Good To You
9. I Want To Know
10. Enlighten Me
11. Daggers & Spears
12. Don't Cry For Me
13. I Got Some News Today
14. Until We Meet Again (Au Revoir Et A Bientot)

ミシシッピ・ヒートはイスラエル生まれのハーピストPierre Lacocqueによって、1991年に結成されたシカゴのブルース・バンドです。

まず、Pierre Lacocqueのハーモニカを聴いてみましょう。


結構トラディショナルなサウンドを出すハーピストですね。ですが、曲によってはヨーロピアンな香りも漂い、それがこのバンドのユニークさにも繋がってると思います。
バンド・サウンドも伝統を踏まえつつ、コンテンポラリーな部分も取り入れて、新しいサウンドを模索しようという感じも見受けられます。

そして、紅一点のInetta Visor、2001年に加入した黒人女性シンガー。
次のビデオクリップはこのアルバムの冒頭を飾ってる曲です。


腹の底から噴き上がる図太い声は、伸びやかで艶がある。エタ・ジェイムズを思わせ迫力があっていいですね。(7)辺りを聴くと、クワイアも入りゴスペル・フィーリングたっぷりに歌ってます。これもバンドの良さになってて好きです。

今回登場するゲスト陣は、いつものカール・ウェザズビーと今回初のジョン・プライマー。
プライマーに至っては3曲を歌っており、ミシシッピ・ヒートのアルバムとしてはここまで歌わせる必要があったのかちょっと疑問です。しかし、曲は好いんです。プライマーらしいトラディショナルなシャッフルの(2)(13)。ビートの効いたノリの良い(5)が好きだな。

カール・ウェザズビーはもう常連さんですね。ライブにもよく参加してるようですし、レギュラーメンバーと言っていいくらい息もピッタリ。(8)や(9)辺りのアルバート・キング節にはやっぱり痺れちゃいますね。

2011年1月16日日曜日

Tom McDermott / New Orleans Duets


『Tom McDermott / New Orleans Duets』 (Rabadash Records RAB-032)
1. Irresistive! - Evan Christopher - clarinet
2. Tricks Ain't Walkin' No More - Jelly Roll Morton - vocals
3. Just A Little While To Stay Here - Connie Jones - cornet
4. Opulence - Aurora Nealand - clarinet
5. Blueberry Hill - Seguenon Kone
6. These Foolish Things - Judith Owen - vocals
7. Some Satchmo Sampling - Louis Armstrong - vocals
8. Cupid - John Boutte - vocals
9. Manchega - Michael Skinkus - percussion
10. Leyla's Lullaby - Helen Gillet - cello
11. Sportsmen's Paradise - Anders Osborne - vocal
12. The Stars and Stripes Forever - Matt Perrine - sousaphone
13. Our Love Rolls On - Topsy Chapman - vocals
14. The Isle Of New Orleans - Tim Laughlin - clarinet
15. One Chord Song - Harry Shearer - vocals & guitar
16. Insouciance - Richard Scott - accordion
17. Don't Want Nuthin' For Christmas - John Fohl - vocals & guitar
18. Conversa De Botequim - Eduardo Tozzato - vocals
19. That's What I Saw At The Mardi Gras - Debbie Davis - vocals
20. Dude Botley's Stomp - Eric Traub - saxophone
21. To Kill Our Brothers Now - Cindy Scott - vocal

Tom McDermott - piano


ジャズをツマミ食い程度にしか聴かない自分は、このTom McDermott(トム・マクダーモット)というピアニストの事を全く知らなかった。それ故にこのアルバムもツマミ食いなのです。ファンの方には全く以て失礼な話で申し訳ないことです。

ですが、何かの縁です。トム・マクダーモットのことをちょっと勉強してみました。
1957年ミズーリ州セントルイス生まれ。母親は教会でラグタイムを演奏するオルガン奏者で、音楽一家の中で育ったようです。ピアノは6歳の時、叔母から手解きを受け、16歳でプロとして活動始めてます。1978年セントルイス大学で学位を、1982年ワシントン大で修士を取得。セントルイスの新聞Globe-Democratで音楽評論を執筆するなど、優秀な人みたいです。風貌からも大学教授みたいな知的な感じはしますね。
最初のアルバムは1981年に「New Rags」というタイトルのアルバムを発表したようですが、自主制作だったのでしょうか、記録を見つけることが出来ませんでした。
その後、1984年ニューオーリンズ万国博覧会からの仕事のオファーを機にクレセントに移住、当初から別の仕事をする必要がなかったそうです。
1990年から5年間、Dukes of Dixielandに在籍。1994年からはラウンダーでプロデューサーやアレンジャー、コンポーザー、ライナーノーツのライターに至るまで、いろんな仕事を手掛けてます。ざっと見ても順風満帆に見えますし、才能豊かな人だと感じます。

さて、通算8作目の「New Orleans Duets」と題された今回のアルバムは、タイトルが示す通り正に1対1、ガチンコ勝負のデュエット・アルバムなのです。その数総勢21名!
見開きのジャケットを見ますと、ルイ・アームストロングからジョン・ブッテ、ジェリー・ロール・モートン、スーザホンのマット・ペリン、、、、、とお行儀良く順番待ちを、、、
ちょっとちょっと、ルイ・アームストロングやジェリー・ロール・モートンは亡くなってるからデュエット出来ないだろうって、そうなんですけれど、

モートンの(2)では、30年代のCongress sessionから、アカペラの「Tricks Ain't Walkin' No More」にトム・マクダーモットのピアノを被せるという構成で、正に夢の共演という感じでしょうか。古い音源なので録音状態はあまり良くないのですが、ピアノの音もそれに合わせ、録音レベルを落としてるのが凝ってるというか粋ですね。モートンの哀愁漂う歌に、そっと寄り添うという感じのピアノ。しみじみとくるなぁ。絶品です。

ルイ・アームストロング(7)はサッチモの声をサンプリングして、声を被せたり、テープスピードを早くしたり遅くしたりして遊んでるのですが、空耳アワー的には「ジョンレノン、ジョンレノン」と聴こえて思わず笑ってしまった。熱狂的なサッチモファンが聴いたら「冒涜しとる」と怒る人もいるんじゃないかとこちらが心配になりました。

あとは全て現役のアーティストとのデュエットで、、、そうそう自分にとってはこの現役というのが凄く重要なのです。今この瞬間、同じ時代を生きてる人達のサウンドを聴いてると、実感としてリアリティーを感じます。だから楽しいのです。

おっと不粋な話はこれ位にして、新しいCDを購入してまずやることは、ipodの中にインポートします。通勤途中に聴く為ですが、何も考えず頭の中に広がる音を只只聴いてると、黒人の女性シンガーが歌いだした。一瞬誰?と思ったらジョン・ブッテだったんです。意外と中性的な声の持ち主だったんだと改めて思ってしまった。歌う曲はサム・クックのキューピッド。ピアノは結構スウィングしてるのに歌とのバランス感覚は絶妙。ソロでの転がるピアノも気持ちいいですね。

スーザホンのマット・ペリンとの(12)は、運動会でお馴染みの行進曲。ピアノとスーザホンだけで演奏されてるのですが、これが結構迫力あります。ラグタイム・ピアノのスケールの大きな演奏とブンブンいうベースラインのスーザホンとのアンサンブル、飛び跳ねながら行進しないといけなそう。ニューオーリンズらしい底抜けに陽気で楽しい一曲。

個々の楽曲を聴いていきますと、ゲストに合わせて選曲がなされてるようで、デキシーランドありジャズ・バラードあり、ニューオーリンズR&B、ヨーロピアン風ジャズ、ブラジリアン・ラグなどなど多彩で楽しめます。ジョン・フォールの(17)なんかもブルージーなギターと渋い歌、いいですね。ゲストを立てつつ自分もやっちゃうよという感じなのですが、そこにはしっかりとしたバランス感覚があり、それが絶妙なのでやっぱ凄いなと思う。

最後に1曲目で共演してるクラリネット奏者Evan Christopherとのライブを観てみましょう。


ピアノという楽器が打楽器的要素も含んでるなとつくづく感じます。それにベースラインも担当して、一人で何役もこなすピアニスト、ほんと尊敬してしまいます。クラリネットの音もいいし、二人だけでもこれだけのノリの良さと迫力で演奏出来るのですから面白いですね。ニューオーリンズのジャズ、美味も珍味もいっぱいあって、ツマミ食いだけではちょっと勿体無いかな。

2011年1月14日金曜日

Little Freddie King / Gotta Walk With Da King



『Little Freddie King / Gotta Walk With Da King』 (MadeWright MRW65)
1. Cleo's Back
2. Bus Station Blues
3. Walking With Freddie
4. I Use To Be Down
5. Chicken Dance
6. Goin Out Da Mountain
7. Kinghead Shuffle
8. Mean Little Woman
9. Tough Frog To Swallow

Little Freddie King - lead guitar, vocal
"Wacko" Wade Wright - drums
Anthony "Sheet's" Anderson - bass
Bobby "Lighting Rod" Lewis DiTullio - harp


リトル・フレディ・キングを紹介してる上記のビデオクリップを観ると、「New Orleans Bluesman」となってますが、生粋ではなく生まれはミシシッピー州マッコム。10代の時にニューオーリンズに移って来たようで、60年近くニューオーリンズに住んでてやってる音楽がミシシッピー・デルタブルースというのはどうも不思議な感じです。血なのでしょうか、しっかりと自分のルーツを踏まえてるってことにまず好感が持てます。

そのデルタブルースとライトニン・スリム的なスワンプ・ブルースをミックスしたような感じが、基本的なサウンドです。ジョン・リー・フッカーやライトニン・ホプキンスを思わせるギター・サウンドから、ギター・スリムのフレーズもちょくちょく出てきますので、その辺りも結構好きなのでしょうね。

さて、今回のアルバムはニューメキシコのサンタフェで行われたフェスティバルでのライブが収録されてます。「the ninth annual Thirsty Ear Festival」というフェスティバルらしいですが、いろんな所でいろんなフェスティバルが開催されてるんですね。

Thirsty Ear FestivalのYouTubeがあればベストだったのですが、生憎いいのが無かったので別のライブを見てみましょう。
このビデオクリップはアルバム冒頭の曲で、なんか公園の一角でやってるようですが、


ジャズ・フェスの常連で、国外からも取材に来るようなベテランのブルースマンが、テント張ってライブだなんて、やっぱり面白い街だな。しかも、しっかりステージ衣装で決めて手を抜いてない。ブルースマンだね。
初期の頃のファット・ポッサムを思わせるサウンドで、ズッタンバッタンしてるドラムが如何にもジューク・ジョイント風。それにギターとハーモニカの掛け合いが乗っかってるんですが、このまったりとレイドバックしてるサウンドはたまらんですね。特にハーモニカは力強くブロウすることもなく、アルバム通して終始こんな感じ。これがスワンピーさにより拍車を掛けてますね。

2曲目はライトニン・ホプキンス的なギターが印象的なスロー・ブルース。(3)はジョン・リー・フッカー流のブギ・ナンバー。(4)は何処と無くギター・スリムを思わせる。華やかさや豪快さはなく、言い方は悪いがしみったれ感さえあるのだが、そういう意味では前作とは対照的で狙ってのものでしょうね。そういやジャケも正反対だ、確信犯だね。

(5)は曲名からも連想される通り、「コッコッコッコッ、コッケー」のギターで始まる、ロウダウンでノリの良いワン・コードのダンス・ナンバー。ステージでは間違いなくチキン・ダンスやってるだろうな。ハーモニカも「コッ、コッ、コッケー~」としか聴こえなくて、延々とやってんだもん、これが面白くて耳から離れない。


2011年1月11日火曜日

Bryan Lee / My Lady Don't Love My Lady


『Bryan Lee / My Lady Don't Love My Lady』 (Justin Time JUST 237-2)
1. Imitation Of Love
2. I Don't Know
3. Three Can Play The Game
4. Early In The Morning
5. Let Me Up I've Had Enough
6. Heartbreaker
7. Too Many Wolves
8. My Lady Don't Love My Lady
9. When I Been Drinking
10. Me And My Music
11. Reconsider Me
12. Just To Prove My Love To You

Bryan Lee - guitar, vocals
Marty Ballou - upright bass
Gordon Beadle - tenor sax
Mark Domizio - guitar
Buddy Guy - guitar
Doug James - baritone sax
David Maxwell - piano
John Perkins - drums
Duke Robillard - guitar
Kenny Wayne Shepherd - guitar
Richard Ward - bass

ブライアン・リーはウィスコンシン州トゥーリヴァース出身の盲目のブルース・ギタリスト&シンガーで、ニューオーリンズで活動するようになって30年近くになるそうです。

レコードデビューは91年ですが、初めて聴いたのは2003年リリースのベスト盤からで、それ以降、出るアルバムは必ず買うようになってしまった。

で、何が好きかと言うと、まずギターの音。ファットなトーンにサスティーンを効かせてアルバート・キング流に弾くギターは、やっぱり聴いてて気持ちいい。


このライブは2005年の「Live and Dangerous」の一曲目ですが、白人ギタリストの中でもブルース・ロックとは一線を画く、”ブルース・ギタリスト”という感じの粘りのあるサウンドが気に入ってます。
毎度真空管アンプの話題で申し訳ないが、こういう重心の低い図太いサウンドは、300Bよりも中低音に迫力の出るKT-88とJBL4312で申し分ない。愛用のKT-88はロシア製のGold Lionですが、いろいろ買い漁らなくてもこれ一本で十分じゃないかと思える程、いい音で鳴ってくれます。ブライアン・リーの粘りのチョーキングがほんと痺れますよ。

次のビデオクリップは、ギター・スリム作の名曲「The Things That I Used to Do」。
ここでは主に歌を聴いて頂きたいのですが、、、


どうですか、この白人離れした歌声は、目を瞑って聴いたら黒人かと思うでしょう。
ギターだけではなく歌も素晴らしいのが、ブライアン・リーの魅力なのです。
映像が途中で切れるのが残念ですが、歌い出しの「The Things That I Used to Do~♪」だけでも十分痺れちゃいます。スロー・ブルースもぶっといサウンドが売り?これもブライアン・リーらしくて好きだな。

しかし、この人ギター何本持ってんだろ。一番好きなのはテレキャスターのようだが、普通のヤツからカスタム、シンライン、色違いまで何本も見かける。その他にもストラト、レスポール、フライングV、ファイヤーバードにエクスプローラー、335、それに特注ぽい変なギターまで、基本的にソリッドなギターが多いが相当ギター・マニアのようだ。それらをステージで使用してるから良い人だね。

さて、サウンドに話を戻すと、ブライアン・リーの大方のサウンドは、アルバート・キング流のファンキー・ブルースなのだが、シカゴ・ブルースもやるし、B.B.キングっぽいジャンプ・ブルースも演奏します。そして、その根底にはしっかりとR&Bが感じられるのも魅力的なのです。

今回のアルバムは2009年にリリースされた通産12作目となります。
プロデュースは前作同様デューク・ロビラードが担当。アーティストの持ち味を引き出すのが上手い人なので、今回もブライアン・リーの旨みがギュッと詰まった美味しいアルバムに仕上がっております。

聴き所は満載ですが、中でも一番の聴き所はバディ・ガイがゲスト参加してる(4)でしょう。バディほどの超大物をゲストに呼ぶと、どうぞどうぞご自由にお弾き下さいってなるんじゃないかな。しかし、そこはバディ。自身のアルバムでは「ストーン・クレイジー」だが、ゲストとなるとちゃんと弁えて、主役が活きるギターというのを見極めてる。ロングサスティーンでファットなトーンのブライアンとパキッと切れの良いバディのコラボ、なかなか聴きものです。ベタなシカゴ・ブルースですが、どっしりとしたスローシャッフル、迫力あります。

あとは、Dr.ジョン作の(1)。Dr.ジョンも自身のアルバム「Creole Moon」で取り上げておりますが、こちらはジョニー・アダムスのバージョンが基になってます。R&Bテイストたっぷりで、軽快なノリの良いサウンド。

(6)の「Heartbreaker」はツッェペリンではなく、アーメット・アーティガン作のレイ・チャールズで有名な曲。ウッド・ベースの「ボン、ボン、ボーン~」と渋~く始まり、ピアノもサックスもR&Bだが、沈黙を破ってギターを弾きだすとブルース。ブライアン・リーらしい。ニューオーリンズらしい跳ねたリズムも気持ち良い。

(9)はビッグ・ ビル・ブルーンジーの中でも比較的マイナーな曲。カントリー・ブルースではなくジャジーなスローバラード仕立てでほんと渋い。ギターもピアノやサックスもジャジーで、ほんと心地よいサウンドを出してます。

2011年1月9日日曜日

Jake Leg Stompers & Friends / Walkin' The Dog



『Jake Leg Stompers & Friends / Walkin' The Dog』 (Hoo-Doo Records)
1. Walkin' The Dog
2. Ain't That Lovin' You Baby
3. Diggin' My Potatoes
4. Freight Train
5. Midnight Special
6. Jesus On The Mainline
7. Sitting On Top Of The World
8. Dark Town Strutter's Ball
9. Bad Luck Blues
10. Mean Old Frisco
11. High Steppin' To New Orleans
12. Help Me
13. Glory, Glory , Hallelujah

Washboard Chaz Leary - vocals #3, 4, 7; backing vocals, washboard
Steve Gardner - vocals #1, 2, 5, 6, 10, 12, harmonic slide - national steel guitar
Bill Steber/Jake Leg Stompers - vocals #8,9, 11, 13; banjo, ukulele, harmonica, steel/acoustic guitar, saw, backing vocals
Brandon Armstrong, Jake Leg Stompers - tuba, trombone, upright bass, steel/acoustic guitars, banjo, backing vocals
Bill Benfield - mandolin, slide steel/lead acoustic guitar
Hisa Nakase - upright bass, acoustic guitar, backing vocals
Rick Vitter - hand claps

Steve Gardner とWashboard Chaz、そして、Jake Leg Stompers がコラボレーションしたアルバム。まずは、Walkin' The Dog のライブ映像を、、、


う~ん、たまら~ん。スチールのリゾネーターでスライドをペンペーンやって、少し我鳴りぎみに歌うSteve Gardner。素朴なハーモニカも結構好きだ。そして、パコパコバンジョーを弾くBill Steber にベースラインを吹くチューバのBrandon Armstrong。めちゃくちゃイナタいサウンドだよ。特にチューバのリズムが耳から離れなくて、このまったりとした横揺れのグルーヴは最高ですね。
アルバムではこれに、ウォッシュボードやアップライト・ベース、トロンボーンなどが加わって賑やかなサウンドになります。特にウォッシュボードが入る事によってメリハリが効いて来るのですが、、、元々Washboard Chaz 大好きでこのアルバムを購入した自分でも、実はライブのほうが気に入ってたりします。

ジャグやらカズー、ウォッシュタブ・ベースなどの古典的な楽器は使用してませんが(ノコギリは使ってるみたい)、ブルースをメインにジャズやゴスペル、カントリーを演奏するジャグ・バンドです。トラディショナルな楽曲が中心ですが、Steve Gardner やBill Steber、Washboard Chaz が中心となってアレンジを担当し、基本的にそれを歌っているようです。アルバム全体の纏まりはありますが、それぞれに個性が出ておりますので、そういった所も聴き所の一つと思います。

2曲目はご存知ジミー・リードの曲で、Steve Gardner がアレンジした曲です。これも結構お気に入りの1曲で、タメの効いたゆる~いサウンドがポイントです。
Steve Gardner はミシシッピー出身で日本在住のブルースマン兼カメラマンだそうです。こういう人が日本で活躍されてるとは知りませんでした。リゾネーターでスライドを弾き、素朴なカントリー・ブルースを歌うのが特徴のようです。
他にSteve Gardner のアレンジで気に入ってるのが、ライス・ミラーの(12)。ミシシッピー出身らしいヒル・カントリーっぽいスロー・ブルース。ロウダウンでまったりしたサウンドだが、Washboard Chaz がカラララララー、チーンってやるとなんだかジャグに聴こえちゃうから不思議。しかし、このレイジーさはいいね。

レイジーさではWashboard Chaz も負けちゃいない。彼がアレンジしてるのは(3)(4)(8)だが、好きなのはBrandon Armstrong がアレンジしてChaz が歌う(7)。ミシシッピー・シークスの代表曲で、戦前のカントリーブルースの名曲ですね。アコギやウォッシュボードなどのバンドアンサンブルも聴きものなのだが、戦前のカントリーブルースマンの香りが漂うレイジーなChaz の歌が何と言っても良い。
ラグタイム調の(8)もなかなか楽しい曲でいいですね。

Bill Steber 作の(11)も結構好き。ホンキートンク調の曲なのですが、何処かで聴いた事があるなとか思ってたら、そうそう「ホンキートンク・ウィメン」だ。カントリー・ミュージックを深く掘り下げて聴いてみようと思った事はないのですが、ホンキートンクの軽快なノリの良さは聴いてて楽しくなるものですね。

最後はゴスペルの名曲(13)。オサー・ターナーの「Everybody Hollerin' Goat」も最後の曲はこの曲だったな。オサーのフルートとアフリカン・ビートは不思議な感覚でしたが、こちらはジャグ・バンドらしいノリの良さとレイドバックした雰囲気が持ち味。

2011年1月3日月曜日

Ingrid Lucia / St. Valentine's Day Massacre



『Ingrid Lucia / St. Valentine's Day Massacre』 (ILCD2009)
1. We'll Meet Again
2. That's My Desire
3. That Old Feeling
4. I Cover the Waterfront
5. These Foolish Things
6. La Vie En Rose (Latin,band)
7. Green Eyes
8. You Go to My Head
9. What Is This Thing Called Love?
10. You Made Me Love You
11. Body and Soul
12. La Vie En Rose (Ballad, Duo)
13. Melancholy Baby
14. That Old Black Magic

Ingrid Lucia - vocals
Jason Mindledorff - saxophone
Victor Atkins - piano
Jesse Boyd - bass
Gerald French - drums

イングリッド・ルシアが2009年にリリースしたアルバムですが、ここまでトラディショナルでストレートなジャズ・ボーカルのアルバムを出したのは初めての事だと思います。

かなりビリー・ホリディを意識したサウンドにはなっておりますが、イングリッド・ルシアはニューオーリンズで活動する前はニューヨークで活動してまして、ニューオーリンズというよりもニューヨークというイメージのクールさがありますね。

しかし、このアルバム・タイトル「St. Valentine's Day Massacre」を直訳すると、「セント ・ バレンタイン・デイの大虐殺」だって、かなり物騒じゃないですか! でも、バレンタインの日に聴かされたらハートを鷲掴みにされてコロッとやられちゃうかも。まー、そういう意味合いなんでしょうね。

曲目は誰もが聴いた事のあるスタンダードばかりで、イングリッド・ルシアのコケティッシュで妖艶な声でしっとりと歌い上げる。それを支えるバックバンドがとてもクールで最高なんですよね。渋いサックスもいいんですが、やっぱり(2)や(3)などで聴けるスケールの大きなピアノはとても魅力があります。

録音状態もすこぶる良くて、真空管の聴き比べに使用したCDの中の一枚で、こういうサウンドはビーム管や五極管ではなく、やはり直熱三極管でしっとりと聴きたいところ。
今持ってる曙光電子の300B-98は、結構いい音がするのですが元気が良過ぎるんですね。ムラードのプリ管と組み合わせてもやっぱり高音がちょっと荒っぽい。この高音がもう少し優雅に鳴ってくれる300Bが欲しいですね。

このアルバムは企画物的な感じがするなと、発売当初から思ってはいたのですが、どうも初回プレスのみで廃盤にしてしまったようです。実に勿体無い