2011年1月16日日曜日

Tom McDermott / New Orleans Duets


『Tom McDermott / New Orleans Duets』 (Rabadash Records RAB-032)
1. Irresistive! - Evan Christopher - clarinet
2. Tricks Ain't Walkin' No More - Jelly Roll Morton - vocals
3. Just A Little While To Stay Here - Connie Jones - cornet
4. Opulence - Aurora Nealand - clarinet
5. Blueberry Hill - Seguenon Kone
6. These Foolish Things - Judith Owen - vocals
7. Some Satchmo Sampling - Louis Armstrong - vocals
8. Cupid - John Boutte - vocals
9. Manchega - Michael Skinkus - percussion
10. Leyla's Lullaby - Helen Gillet - cello
11. Sportsmen's Paradise - Anders Osborne - vocal
12. The Stars and Stripes Forever - Matt Perrine - sousaphone
13. Our Love Rolls On - Topsy Chapman - vocals
14. The Isle Of New Orleans - Tim Laughlin - clarinet
15. One Chord Song - Harry Shearer - vocals & guitar
16. Insouciance - Richard Scott - accordion
17. Don't Want Nuthin' For Christmas - John Fohl - vocals & guitar
18. Conversa De Botequim - Eduardo Tozzato - vocals
19. That's What I Saw At The Mardi Gras - Debbie Davis - vocals
20. Dude Botley's Stomp - Eric Traub - saxophone
21. To Kill Our Brothers Now - Cindy Scott - vocal

Tom McDermott - piano


ジャズをツマミ食い程度にしか聴かない自分は、このTom McDermott(トム・マクダーモット)というピアニストの事を全く知らなかった。それ故にこのアルバムもツマミ食いなのです。ファンの方には全く以て失礼な話で申し訳ないことです。

ですが、何かの縁です。トム・マクダーモットのことをちょっと勉強してみました。
1957年ミズーリ州セントルイス生まれ。母親は教会でラグタイムを演奏するオルガン奏者で、音楽一家の中で育ったようです。ピアノは6歳の時、叔母から手解きを受け、16歳でプロとして活動始めてます。1978年セントルイス大学で学位を、1982年ワシントン大で修士を取得。セントルイスの新聞Globe-Democratで音楽評論を執筆するなど、優秀な人みたいです。風貌からも大学教授みたいな知的な感じはしますね。
最初のアルバムは1981年に「New Rags」というタイトルのアルバムを発表したようですが、自主制作だったのでしょうか、記録を見つけることが出来ませんでした。
その後、1984年ニューオーリンズ万国博覧会からの仕事のオファーを機にクレセントに移住、当初から別の仕事をする必要がなかったそうです。
1990年から5年間、Dukes of Dixielandに在籍。1994年からはラウンダーでプロデューサーやアレンジャー、コンポーザー、ライナーノーツのライターに至るまで、いろんな仕事を手掛けてます。ざっと見ても順風満帆に見えますし、才能豊かな人だと感じます。

さて、通算8作目の「New Orleans Duets」と題された今回のアルバムは、タイトルが示す通り正に1対1、ガチンコ勝負のデュエット・アルバムなのです。その数総勢21名!
見開きのジャケットを見ますと、ルイ・アームストロングからジョン・ブッテ、ジェリー・ロール・モートン、スーザホンのマット・ペリン、、、、、とお行儀良く順番待ちを、、、
ちょっとちょっと、ルイ・アームストロングやジェリー・ロール・モートンは亡くなってるからデュエット出来ないだろうって、そうなんですけれど、

モートンの(2)では、30年代のCongress sessionから、アカペラの「Tricks Ain't Walkin' No More」にトム・マクダーモットのピアノを被せるという構成で、正に夢の共演という感じでしょうか。古い音源なので録音状態はあまり良くないのですが、ピアノの音もそれに合わせ、録音レベルを落としてるのが凝ってるというか粋ですね。モートンの哀愁漂う歌に、そっと寄り添うという感じのピアノ。しみじみとくるなぁ。絶品です。

ルイ・アームストロング(7)はサッチモの声をサンプリングして、声を被せたり、テープスピードを早くしたり遅くしたりして遊んでるのですが、空耳アワー的には「ジョンレノン、ジョンレノン」と聴こえて思わず笑ってしまった。熱狂的なサッチモファンが聴いたら「冒涜しとる」と怒る人もいるんじゃないかとこちらが心配になりました。

あとは全て現役のアーティストとのデュエットで、、、そうそう自分にとってはこの現役というのが凄く重要なのです。今この瞬間、同じ時代を生きてる人達のサウンドを聴いてると、実感としてリアリティーを感じます。だから楽しいのです。

おっと不粋な話はこれ位にして、新しいCDを購入してまずやることは、ipodの中にインポートします。通勤途中に聴く為ですが、何も考えず頭の中に広がる音を只只聴いてると、黒人の女性シンガーが歌いだした。一瞬誰?と思ったらジョン・ブッテだったんです。意外と中性的な声の持ち主だったんだと改めて思ってしまった。歌う曲はサム・クックのキューピッド。ピアノは結構スウィングしてるのに歌とのバランス感覚は絶妙。ソロでの転がるピアノも気持ちいいですね。

スーザホンのマット・ペリンとの(12)は、運動会でお馴染みの行進曲。ピアノとスーザホンだけで演奏されてるのですが、これが結構迫力あります。ラグタイム・ピアノのスケールの大きな演奏とブンブンいうベースラインのスーザホンとのアンサンブル、飛び跳ねながら行進しないといけなそう。ニューオーリンズらしい底抜けに陽気で楽しい一曲。

個々の楽曲を聴いていきますと、ゲストに合わせて選曲がなされてるようで、デキシーランドありジャズ・バラードあり、ニューオーリンズR&B、ヨーロピアン風ジャズ、ブラジリアン・ラグなどなど多彩で楽しめます。ジョン・フォールの(17)なんかもブルージーなギターと渋い歌、いいですね。ゲストを立てつつ自分もやっちゃうよという感じなのですが、そこにはしっかりとしたバランス感覚があり、それが絶妙なのでやっぱ凄いなと思う。

最後に1曲目で共演してるクラリネット奏者Evan Christopherとのライブを観てみましょう。


ピアノという楽器が打楽器的要素も含んでるなとつくづく感じます。それにベースラインも担当して、一人で何役もこなすピアニスト、ほんと尊敬してしまいます。クラリネットの音もいいし、二人だけでもこれだけのノリの良さと迫力で演奏出来るのですから面白いですね。ニューオーリンズのジャズ、美味も珍味もいっぱいあって、ツマミ食いだけではちょっと勿体無いかな。

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