『The William Clarke Band / Tip Of The Top』 (Watch Dog Records)
1. Drinkin' Beer
2. Just A Dream
3. Take A Walk With Me
4. Tribute To George Smith
5. Charlie's Blues
6. Goin' Steady
7. Hot Dog And A Beer
8. Chromatic Jump
9. Hard Times
10. Blowin' The Family Jewels
11. Drinkin' Straight Whiskey
12. Party Party
13. Got My Brand On You
14. My Dog Won't Bark
15. My Wife Got Mad
William Clarke - Harmonica & Vocals (all except 5,9)
Charlie Musselwhite - Vocals & Harmonica (5)
George "Harmonica" Smith - Harmonica & Vocals (9)
Hollywood Fats - Guitar (3,4,5,12)
Junior Watson - Guitar (1,6,14,15)
Ronnie Earl - Guitar (7)
Joel Foy - Guitar (1-3,5,6,10-13)
Steve Killman - Guitar (8)
Bruce Thorpe - Guitar (8)
Fred Kaplan - Guitar (9), Piano (3-5,7,9,12-15)
Rob Rio - Piano (1,2,6,10,11)
Willie Brinlee - Bass (all except 14,15)
Bill Stuve - Bass (14,15)
Jerry Monte - Drums
ウィリアム・クラークは1951年生まれで、ロッド・ピアッツァよりも4歳位年下なのですが、ロッド・ピアッツァ、ハリウッド・ファッツと共にウエストコーストの白人ブルースの礎を築いた1人だと思います。
そのウィリアム・クラークが、ブルースに興味を持つようになるきっかけがローリング・ストーンズだったとは、ちょっと意外であったと同時に、自分と同じだった事になんか親近感を覚えたものです。
最初はギターやドラムを演奏してたそうですが、1967年頃にハーモニカに転向してます。ビッグ・ウォルター・ホートンやジェームス・コットン、ジュニア・ウェルズなどに影響されてたようですが、ジャズ・オルガン・トリオの演奏も熱心に聴いてたそうです。これがジャンピーでスウィングしてるグルーヴのあるサウンドに、シカゴ・ブルースのハーモニカが乗っかるというスタイルの基になってるんですね。
1969年の中頃からロサンゼルスに移り、数多くのブルースマン達と共演を重ね、本格的に活動していく訳ですが、その中でも取分け影響力の大きかったジョージ・ハーモニカ・スミスとは、師と仰ぎ1983年に他界するまで交流が続いた。
ウィリアム・クラークのハーモニカにジョージ・ハーモニカ・スミスの面影を感じ取る事は出きるが、そのサウンドをなぞるのではなく、自分のスタイルで演奏した人だ。
現在のウエストコースト・ブルースの主流となっているサウンドは、明らかにウィリアム・クラークのサウンドであって、それを自分流に昇華できた人が生き残れるのでしょうね。
自分にとっては、自分の中にあったあの忌まわしい至上主義から開放してくれて、ウエストコースト・ブルースに夢中になるきっかけとなり、そして、ブルースをより楽しく聴けるようになったのは、ウィリアム・クラークのお陰と言っても過言ではない。本当に愛すべきブルースマンだったのです。
さて、今回のアルバムは1987年にKing Aceから発売されたものの再発盤です。2000年に一度CD化されておりましたが、今回はジャケも新装新たにWatch Dog Recordsからの発売となりました。このWatch Dog Recordsは、クラーク夫人がウィリアム・クラークの音源を発掘と復刻する為に立ち上げたレーベルで、今までもコンスタントにアルバムが発売されてます。今となってはウィリアム・クラークはほんと果報者だね。
しかしながら、アリゲーター以前のオリジナルアルバムは全くCD化されておらず、特に愛すべきギタリスト、ハリウッド・ファッツが参加したアルバムを聴きたくても聴けない。そんな折、Watch Dogが「The Early Years Volume 1」を出してくれて、漸くその音源を聴く事が出来た。そんな状態なんですよね。クラーク夫人には版権問題?をクリアして、是非ともオリジナルアルバムのCD化を期待したいところですが、、、
このアルバムには、そのハリウッド・ファッツが参加した音源が4曲も含まれてるのはとても有難い。お気に入りは(12)で、この時はウィリアム・クラークもハープを一時閉まって、ハリウッド・ファッツに花を持たせてるのですが、ここぞとばかりジャンピーでスウィンギーなギターを弾きまくる。ウォームなトーンもたまらんなぁ。最高です。
勿論、愛すべきジュニア・ワトソンも負けちゃいない。ジャンピーな(1)から燻し銀的な(14)(15)まで、随所で痺れるギターを聴かせてくれる。
そして、何と言ってもジョージ・ハーモニカ・スミスが参加した(9)だな。トラディショナルなシカゴ・スタイルのスロー・ブルースで、バンドはピアノとギターによる伴奏なのですが、この時ばかりはトラディショナルに徹しております。ダイアトニックでしっとりと吹いてたハーモニカもソロではクロマチックに持ち替えてブォーって図太いトーンを響かせる。鳥肌が全身を駆け上がるくらい凄いインパクトだ。
それに対して、ジョージ・スミスへのトリビュート曲(4)、こちらもトラディショナルなシカゴ・スタイルのスロー・ブルースで敬意を表す。ロングトーンで小刻みにビブラートの掛かったクロマチックの音色は図太く、師匠に負けず劣らずの迫力があり、ほんと痺れる。この2曲、聴き比べると面白い。
それから、突拍子もなく1曲だけのライブ(8)、ロッキン・ブルースのハープ・インストですが、これがめちゃくちゃカッコいい。正にウィリアム・クラークの真骨頂だ。
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『William Clarke / Live Bootleg Cassette Anthology』 (Watch Dog Records)
1. Introduction
2. Walked All Night Long
3. Lollipop Mama Jam
4. Telephone Is Ringing
5. Must Be Jelly
6. Tryin To Stretch My Money
7. My Last Goodbye
8. Home Is Where The Heart Is
9. Loose Your Life
10. Ice Cream Man/Walked All Night Long
11. Lonesome In My Bedroom
12. Bill's last tune....Goodbye
1996年3月、ツアー中だったウィリアム・クラークは、インディアナポリスのステージで突然倒れた。うっ血性心不全と診断され、一時は治療に専念するのだが、完治してないにも拘らず、夏から秋にかけてのクラブ廻りのツアーにまた出掛けてしまう。
どうしてそんなムチャな事を、、、プロ意識からだったのか、それとも、ブルースを演奏したくて仕方が無かったのか。
1996年11月、フレズノのクラブで再び倒れ、治療の甲斐なく45歳の若さでこの世を去ってしまった。死因は出血性潰瘍だったそうである。
その亡くなる2ヶ月前に録音された貴重な音源が発見された。それが(7)(8)(9)。
正にラスト・ツアーの模様を収めた最後の録音ということになります。
その他の音源は、1991年サンフランシスコでのライブです。共にプライベート・レコーディングなので音質はあまり良くありません。
しかし、この熱気に満ちた勢いのある演奏には圧倒されました。
特に、1996年の演奏。この時のウィリアム・クラークは体重は30キロ程落ち、体調は最悪だったはず。なのに搾り出すような力強い歌声、ロングトーンでブォーってぶっといクロマチックの音、いつものサウンドでほんと凄まじい人だ。
1991年というのはアリゲーターからデビューしたての頃、ノリに乗ってて勢いがあるのは当然と言えば当然で、それと比べてみても何の遜色も無い、いやそれ以上の勢いさえ感じる。もしかしたら、全部1991年の演奏なんじゃないかなぁっていう疑念さえ抱いてしまう。しかし、命を削って搾り出したサウンドって思うと感慨深いものがあります。
「Bill's last tune....Goodbye」、、、涙なくしては聴けません。
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