2011年4月3日日曜日

Igor Prado Band / Watch Me Move!


『Igor Prado Band / Watch Me Move!』 (Chico Blues Records)
1. Drive At Home (Snooks Eaglin)
2. Watch Me Move (Junior Wells)
3. Knock On Wood (Cropper, Floyd)
4. Mess Around (Ertegun, Stone)
5. I Got Loaded (Bob Camille)
6. Nobodys Baby (Homer Steinweiss)
7. Leaps And Bounds (Butler, Ellis, Scott, Shepherd)
8. Slow Down Little Eva (Snooks Eaglin)
9. Signed, Sealed, Delivered (Stevie Wonder)
10. Genes Groove (Igor Prado)
11. Shake It Baby (Guy, Wells)
12. Ice Man Groove (Igor Prado)

Igor Prado - vocals & guitar
Yuri Prado - drums & percussion
Rodrigo Mantovani - acoustic bass
Denilson Martins - alto, tenor & baritone saxophone

Ari Borger - hammond B3
Lynwood Slim - flute (11)


元々はPrado Blues Bandとしてブラジルのサンパウロを拠点に活動していたブルース・バンドですが、中心人物だったギタリストのイゴール・プラドは、Igor Prado Bandを新たに結成して、ボーカルも担当するようになります。2007年には1stアルバム「Upside Down」をリリースしてまして、今回のアルバムはIgor Prado Bandとしては2作目となります。

Prado Blues Band~Igor Prado Band、トラディショナルなシカゴ・スタイルのブルースという側面も勿論あるのですが、その中核を成すサウンドというのは、Prado Blues Bandの2005年のアルバム「Blues & Swing」が象徴的で、スウェーデンのブルース・バンドっぽい所もあるけれど、やっぱりウェストコースト系のスウィンギーなジャンプ・ブルースですね。それは、Igor Prado Bandになっても変わるところではなかった。
Lynwood Slimを始め、Rick Estrin、Steve Guyger、R.J. Mischo、Mark Hummel、Mitch Kashmarなどウェストコーストの連中との交流も深く、高く評価されてるようです。

2007年リリースの1stアルバム「Upside Down」では、ゲスト参加してたR.J. MischoやSteve Guyger、J.J.Jacksonが殆どのボーカルを担当し、イゴール・プラドのボーカルは1曲のみであとはギターに専念してましたが、しかし、今回のアルバムでは全てイゴール・プラドが歌っており、なんだか気合入ってるなって感じです。サウンドの面にしても、これまでのスウィンギーなジャンプ・ブルース路線から、ファンキーなロッキン・ブルースに路線変更したのか、それとも今回だけなのか、その辺りは定かではないが、兎に角めちゃくちゃファンキー・グルーヴだ。

収録曲はというと、前作ではオリジナルとカヴァー半々だったのですが、今回はカヴァー中心の構成になってます。どちらかと言うとオリジナルが聴きたかったので、ちょっと残念だなと言う思いもあるのですが、そんな気持ちを払拭する位カッコいい曲が揃ってます。

スヌークス・イーグリンの(1)は「The Sonet Blues Story」に収録されてた曲で、スヌークス・イーグリンがギター一本で歌った曲ですが、こちらはバンドスタイルでガツンとロッキン・ブルースしてます。スヌークス関連で他には(8)ですね、こちらは「Complete Imperial Recordings」に収録されてた「Little Eva」。現代風のロッキン・ブルースというアレンジで、ノリのいい軽快なサウンドが良い。スヌークスをなぞるのではなく、自分のスタイルというのをちゃんと持ってるのがイゴール・プラドのギターの素晴らしいところです。

(2)(11)はジュニア・ウェルズの曲ですが、(2)ではギターのバッキングやベースライン、ドラミングなどのリズムセクションは、Jimmy Nolenがいた頃のJ.B.'sを思わせるファンキー・グルーヴでめちゃくちゃカッコいいな。イゴール・プラドのボーカルも結構意識してるような歌い方で、雄叫びシャウトはご愛嬌ちゅう感じですね。一転ギターソロになると、バディ・ガイ張りにソリッドで仰け反りギターが炸裂。元々ホローボディのトーンでスウィンギーに弾くギタリストなのですが、こういうスタイルも弾けるんですね。本当に上手いです。そして、「It's My Life, Baby!」に収録されてた(11)では、ルイジアナ・ブルースぽいゆったりめのサウンドにアレンジされており、間を活かした感じがなかなかクールだ。ハイテンションのギターソロで盛り上がった後のリンウッド・スリムのフルートにはガクッときてしまった。

レイ・チャールズの(4)はローウェル・フルスンの「Tramp」のリズムを使用したブルース仕立てで、「Tramp」はもう聴き飽きたとか思ってたのですが、これ中々しっくり行ってるんじゃないですか。アレンジも結構上手いものですね。

ペパーミント・ハリス最大のヒット曲(5)、この曲はロバート・クレイやらロス・ロボス、最近だとジョー・ルイス・ウォーカーもカヴァーしてましたが、スワンプ系の人達に結構人気あるんですよね。自分はザディコ・マンのキース・フランクのバージョンが意外と好きだったりします。イゴール・プラドのバージョンはタブ・ベノワに比較的近い感じで、スワンプ・ブルースのノリですね。中々いいですよ。

6曲目はファンキー・ソウルという感じのクールなナンバーですが、この曲聴いた事がなくて誰の曲か調べたら、Sharon Jonesという黒人女性シンガーが歌ってました。割と最近出てきたグループのようですが、もろ60年代のディープでファンキーなソウルが特徴。これをカヴァーするイゴール・プラドもなんか凄いな。

7曲目はBill Doggettという人の曲で、これも聴いた事なかったな。サックスが小刻みに刻むリズムとウォームなトーンのスウィンギーなギター。この手のジャンプ・ブルースはたまりません。

最後はオリジナルの(10)と(12)。(10)はサックス奏者のGene Ammonsをトリビュートしたジャズ・ナンバーで、キャッチーなサックスのフレーズにも惹かれるところですが、やっぱり何と言ってもスウィンギーなギターが一番。イゴール・プラドの真骨頂です。
そして、(12)はアルバート・コリンズのトリビュート曲。この切れ味の良いギターにはほんと痺れますね。

ファンキー・ブルースにスワンプ・ブルース、R&B、ソウル、そしてジャズ。アレンジの上手さもさることながら、バンド・アンサンブルの纏まりの良さ、色んな人達と共演する中で培って来たものだろうと思いますが、ほんと熟れてるなと感じます。Igor Prado Bandがどういう方向性に進んで行くのか、楽しみなバンドです。

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