2011年9月7日水曜日

Mark Hummel / Unplugged - Back Porch Music


『Mark Hummel / Unplugged - Back Porch Music』 (Mountain Top Productions)
1. Have Your Ever Been In Love
2. Living With The Blues
3. Ease My Mind
4. My Little Machine
5. Shake Your Boogie
6. But I Forgive You
7. I Just Keep Loving Her
8. Can't Hold Out Much Longer
9. Evans Shuffle
10. Love In Vain
11. She Moves Me
12. Let Me Go
13. Learned My Lesson (Changed My Ways)
14. Worried Life Blues
15. Step Back Baby
16. See See Rider


最近はカナダのレーベル「Electro-Fi Records」からアルバムをリリースしているマーク・ハメルですが、今回のアルバムは久しぶりに「Mountain Top Productions」からのリリースとなりました。
これまでのMountain Topでのアルバムは編集盤ばかりで、「Blues Harp Meltdown」においてもレーベルとの関係が深いにも係わらず、新録のオリジナルアルバムが一枚も無かったというのは、どうも不思議な感じがしたのだが、ここに来て漸く、2010年に録音された正真正銘の新録アルバムがリリースされた。このアルバムを待ってたのです。

ギターのRusty Zinnを始め、ベースRW Grigsby、ピアノBob Welshといった旧友を迎え、50年代のヴィンテージなシカゴ・ブルース・サウンドを奏でております。
アルバムタイトルの「Unplugged」や「Back Porch Music」からも連想されるところで、エレキ・ギターも使用してるので完全なアンプラグドとは言えないのですが、正にバックポーチで演奏してる所が目に浮かぶような、そんなリラックスした雰囲気を醸し出してるサウンドはかなり渋いです。
豊満な低音でベースラインを弾くウッドベース、エレキギターにおいても出しゃばり過ぎず、引っ込み過ぎずの好サポートに支えられ、本来アンプリファイドが得意なマーク・ハメルのアコースティックなハーモニカ・サウンドが響き渡る。この豊潤な音色がホントたまらんのです。

2011年8月16日火曜日

Walkin' Blues - 15 Years from Mountain Top Productions


『Walkin' Blues - 15 Years from Mountain Top Productions』 (Mountain Top Productions)
Disk 1
1. Lowdown Dirty Shame - Carey Bell
2. Scared Of The Child - Gary Smith
3. Seven Nights To Rock - Mark Hummel
4. Forty Days and Forty Nights - Johnny Dyer
5. Minding My Own Business - Fillmore Slim
6. West Winds Are Blowing - RJ Mischo
7. Hey Little Brother - Fillmore Slim
8. Nailed To The Bone - Big Walter Shufflesworth
9. Solid Sender - Johnny Ace
10. City Livin' - Mark Hummel
11. Nosey Woman - Fillmore Slim
12. Trouble No More - Johnny Dyer
13. Money Back Guarantee - RJ Mischo
14. Let's Talk About Love - Paris Slim
15. Upside Your Head - Dona McGee
16. Bloodstains On The Wall - Lazy Lester
17. RJ, Get Up! Milk That Cow - RJ Mischo
Disk 2
1. Ain't She Trouble - Gary Primich
2. Broke and Hungry - Cephas & Wiggins
3. Country Boy - Johnny Dyer
4. The Legend of Fillmore Slim - Fillmore Slim
5. About To Lose Your Clown - Gary Smith
6. No Escapin' from the Blues - Paris Slim
7. My Friend Blue - Fillmore Slim
8. Got To Find My Baby - Johnny Dyer
9. Feel Like Shouting - Paris Slim
10. It's My Life, Baby - RJ Mischo
11. Faster Than Time - Fillmore Slim
12. Blues For Mr. B - Gary Smith
13. Can't Judge Nobody - Mark Hummel
14. Red Light - Eddie Taylor
15. Blue and Lonesome - Mark Hummel
16. You're Gonna Need My Help - Rick Estrin
17. Evans Shuffle - Johnny Dyer

Mountain Top Productions はカリフォルニア州サンマテオに拠点を置く新興のブルース・レーベルで、Mark Hummel やRJ Mischo 、Gary Smith といった西海岸気鋭のハーピストを中心にアルバムをリリースしている、ハーモニカ専門と言って良い位ブルース・ハープ大好きなレーベルですね。その一方でParis Slim やFillmore Slim などクセモノ的な個性派ギタリストのアルバムも出してます。同じ西海岸のデルタグルーヴほど大きくないですが、拘りを持ったコアな感じのするレーベルです。

レーベル創立15周年という事で、この15年の間に僅か13枚程のアルバムしかリリースされてませんが、1枚1枚凄く濃密な内容のアルバムばかりで、その中からベストセレクションされたのが今回のアルバムです。アリゲーターで謂うところの「15th Anniversary Collection」という感じですね。

記念すべきファーストリリースは、1996年発表のParis Slim 「Bleedin' Heart」でした。この中からDisk.1(14)とDisk.2(6)が収録されてまして、Disk.2(6)には「from the forthcoming album Going Back To Paris」とクレジットされてますが、これはどう聴いても既出。クレジットが間違えてるのか、収録曲を間違えてしまってのかはよく分かりませんが、「Going Back To Paris」という新譜がリリースされるのは本当のような気がします。最近のパリス・スリムはデルタグルーヴべったりでね、自分の事もやりなよと思ってたので久々のニューアルバム楽しみにしてます。

次は、Mountain Top West Coast Blues Session。ハーモニカのGary Smith とギターのParis Slim 、ベースJohnny Ace 、ドラムBig Walter Shufflesworth によるユニットバンドで、アルバム1枚だけでしたがこれがめちゃくちゃカッコいい。収録されてるのはDisk.1の(2)(8)(9)とDisk.2の(9)ですが、この他にも燻し銀のギター・インスト"Rollin' Blues" や、深みのある渋い味を出してるハーモニカが魅力のハープ・インスト"Sad Hours" この辺りもシビレましたね。

Gary Smith は最近音沙汰がないのですが、ライブ活動はしてるのでしょうけれどアルバムが全く届かないのは寂しいものですね。2001年にリリースされた「Blues For Mr. B」。ゲーリー・スミスのアルバムはこの1枚しか持ってないのですが、トラディショナルなシカゴ・ブルースを基調としたサウンドで、ジャジー・ブルースからミディアム・テンポのシャッフルまで、派手さがないのでインパクトには欠けるが、聴き込むほどに味が出てくるめちゃくちゃ渋いサウンド、好きですね。ここからはDisk.2の(5)と(12)。ゲーリー・スミスのハーモニカとジュニア・ワトソンのギター、正に燻し銀。たまらんです。

もう一人のギタリスト Fillmore Slim 。デビュー当初はClarence "Guitar" Sims と名乗っていました。Mountain Top からは3枚のアルバムを発表してまして、ハイトーン・ヴォイスでソウルフルなボーカルとスクィーズをあまり多用しないクリアトーンのギターが特徴的。クセのある個性的なサウンドを出したりしますが、妙に気になると言うか惹かれるブルースマンです。デビューアルバム「Born To Sing The Blues」からのDisk.1(5)は最もフィルモア・スリムらしい味が出ていて好きな曲ですね。3枚目の「The Legend of Fillmore Slim」からはDisk.1(7)(11)、Disk.2(4)(7)が選曲されてます。ラップを導入したり、ファンキーなロッキン・ブルースを演奏したり、前進しようとする姿勢はやはり共感が持てます。

そして、Mountain Top で注目すべきアルバムはやはり「Blues Harp Meltdown」でしょう。Mountain Top のハーピストは勿論、Billy Branch やJames Harman 、Rick Estrin 、Kim Wilson といった腕利きのハーピストが一堂に会して行われたライブです。ギターのジュニア・ワトソンの好サポートも随所で光ってて、ほんと凄いライブ・アルバムです。
当初は一回こっきりの予定だったライブですが、あまりもの好評に付きVol. 2、Vol. 3 と続編が開催されました。Vol. 2 ではJohnny Dyer やGary Primich などが参加し、Vol. 3 ではなんとCarey Bell やLazy Lester 、Willie "Big Eyes" Smith などの大御所さん達も参加する凄いライブに発展しました。
この中で思い入れがあるのはやはりVol. 1 で、Disk.2 の(13)と(16)の2曲だけが収録されてます。リック・エストリンのハーモニカの音色はほんとたまらん味わいです。
無論、キャリー・ベルやレイジー・レスターも最高です。

最後に、Johnny Dyer とMark Hummel のユニットにより製作されたアルバム「Rolling Fork Revisited」。マディ・ウォーターズへのトリビュートといった趣のアルバムで、マディ縁のPaul Oscher やFrancis Clay なども参加しての、全編50年代のヴィンテージなシカゴ・サウンド。しかしながら、古臭さを感じさせないのが西海岸の特徴というか面白さでもあります。マディのジュニアかと思わせる黒いボーカルのジョニー・ダイアーと卓越したハーモニカを吹くマーク・ハメル。このマーク・ハメルのハーモニカこそがポイントだと思います。収録されてるのはVol. 1 の(4)(12)とVol. 2 の(3)(8)(17)。その中でもPaul Oscher がスライド・ギターで参加してるVol. 2 (3)は聴き所で、ハーモニカとの絡み具合やスライドのソロ、ゾクゾクしますね。

最近のMountain Top は活動が停滞ぎみという感じですが、既成の概念に囚われずMountain Top らしい通をも唸らせる粋なアルバムを出して欲しいですね。

2011年8月12日金曜日

Joe Krown - Russell Batiste Jr. - Walter "Wolfman" Washington / Triple Threat


『Joe Krown - Russell Batiste Jr. - Walter "Wolfman" Washington / Triple Threat』
1. Only You (W. Washington)
2. Down by the River (J. Krown)
3. Last Two Dollars (G. Jackson)
4. Ridin' Thru the Mountains (R. Batiste)
5. For Your Love (E. Townsend)
6. Triple Threat (Krown, Batiste, Washington)
7. Twelve (R. Batiste)
8. Out of the Dark (W. Washington)
9. Dame Dreaming (J. Krown)
10. Can I Change My Mind (Wolfolk, Despenza)
11. Rollin' with Big Pat (R. Batiste)
12. Spirit of the Wolf (Krown, Batiste, Washington)

Joe Krown - hammond B-3 organ
Walter "Wolfman" Washington - guitar & vocals
Russell Batiste Jr. - drums & background vocals


2008年にライブ・アルバムを発表したジョー・クラウン、ラッセル・バティスト、ウォルター・ワシントンによるトリオバンドですが、満を持してスタジオ盤をリリースしました。
スタジオ録音でも変わらずに、まったりとカッコいいサウンドを放ってますね。
ジャズ・ファンク的なオルガン・コンボ・サウンドとワシントンが歌うソウル・ナンバーの2パターンを良い按配に並べた構成で、聴き応え十分、楽しめるアルバムになりました。

ジャズ・ファンク的なオルガン・コンボ・サウンドでは、バティスト作曲でバティスト自身も参加してたパパ・グロウズ・ファンクの1stアルバム「Doin It'」に収録されてた(4)。この曲がまずは何と言ってもカッコいいのです。トリオであるが故の隙間だらけのシンプルなバンド・サウンド、マッタリとしたゆる~いファンキー・グルーヴはたまらん魅力です。

ジョー・クラウンの曲ではやっぱり(9)かな。この曲はJoe Krown Organ Combo のアルバム「Livin' Large」に収録されて曲で、どちらも甲乙付け難いカッコ良さがあるのですが、どちらかと言えば今回のバージョンのほうが好きですね。(4)同様、間やタメを効かせたこのゆる~いグルーヴがいいのです。
クラウンのこってりと粘りのあるブルージーなオルガンに、ファットなトーンでジャジー&ブルージーに弾くワシントンのギター。そして、バティストのめちゃくちゃクールなドラミング。この3人だからこそ成し得たサウンドであろうという感じがしますね。

ウルフマン・ワシントンが歌うソウル・ナンバーでは、70年代を思わせるファンキーでジャジーなソウル(1)がまず気に入ってますし、ジョニー・テイラーの1996年のヒット曲(3)や しっとり歌い上げる(5)辺りもしぶ~い歌声で結構いい感じですね。
全部で5曲歌ってるのですが、その中でもワシントンが1988年にリリースしたアルバム「Out of the Dark」のタイトル・ナンバー(8)が一番好き。ボビー・ブランドを彷彿させる渋い歌声で、後半の盛り上がりをみせる魂の入った歌とブルージーなギター、痺れます。

録音状態も申し分なく、中低音もしっかり出てますので、迫力のサウンドが楽しめます。
真空管アンプを稼動させるには過酷な季節ですが、心地よいサウンドを堪能する為には、、、、、ベランダに打ち水して扇風機回せば割と涼しい、なんてやせ我慢を言いつつ聴いておりますが、、、暑い、、、
それはさて置き、最近常用している真空管は、サンバレーのPrime 300B ver.4 というメッシュプレートの300Bで、メッシュだからって音にどう影響するのかよく分かりませんが、中低音域寄りのパワフルさと音の広がりの良さ、こういう音を豊潤な音色と言うんでしょうか。凄く気に入ってる真空管です。
ジャズ・ファンクをかけても迫力と躍動感があって楽しく聴けます。

2011年8月5日金曜日

Spencer Bohren / The Blues According To Hank Williams


『Spencer Bohren / The Blues According To Hank Williams』 (Valve Records 2987)
1. Lonesome Whistle
2. I'm Gonna Sing
3. Honky-Tonk Blues
4. Weary Blues
5. Mind Your Own Business
6. Crazy Heart
7. I Can't Help It
8. My Sweet Love Ain't Around
9. Moanin' The Blues
10. Cold, Cold heart
11. I'm So Lonesome I Could Cry
12. Live and Love
13. Lovesick Blues
14. I Saw The Light
15. Ramblin' Man


スペンサー・ボーレンはワイオミング生まれで、ニューオーリンズで活動しているギタリスト&シンガー。リゾネイターでスライドを弾き、カントリー・ブルースを演奏する人のようですが、白人のカントリー・ブルース・マンのアルバムはどうも購入意欲が湧かなかったというのもあって、今まで聴いてなかったのです。
今回のアルバムはハンク・ウィリアムズのカヴァー曲集ということで、カントリー・ブルースではなく、フォーキーなカントリー・ミュージックでして、ボビー・チャールズを思わせるようなスワンプな雰囲気もあってめちゃくちゃ渋いですね。
ハンク・ウィリアムズはベスト盤をちょっと聴いた程度であまり詳しくはないのですが、ナンバーワンヒットした(13)(9)(10)をはじめ、比較的有名な曲が収録されてますので馴染みよい所です。
個人的に気に入ってる曲は、まずはホンキートンクなブルースナンバーの(3)。終始ギター一本で歌っている曲で、アコギの響きとダンディな歌声、肩の力がスーっと抜けていく様な温かみのある穏やかな雰囲気が和みますね。
(5)も結構好きな曲で、スローテンポの落ち着いた雰囲気の曲が多い中、この曲は2パートのギターとスティールギターの伴奏で、比較的賑やかでアップテンポ。ノリの良いギターのバッキングとレイドバックしてるスティールギターが聴きもの。こういう楽しいノリの曲もいいです。
バラードの名曲(11)。「泣きたいほどの淋しさだ」って曲ですが、この辺りの歌心も素晴らしいものがありますね。
ハンク・ウィリアムズの初のナンバーワン・ヒット曲(13)も好きだな。

2011年7月31日日曜日

Treme : Music From The HBO Original Series - Season 1


『Treme : Music From The HBO Original Series - Season 1』 (Geffen Records)
1. Treme Song (Main Title Version) - John Boutté
2. Feel Like Funkin' It Up (Live Street Mix) - Rebirth Brass Band
3. I Hope You're Comin' Back to New Orleans - The New Orleans Jazz Vipers
4. Skokiaan - Kermit Ruffins & The Barbecue Swingers
5. Ooh Poo Pah Doo - Trombone Shorty & James Andrews
6. Drinka Little Poison (4 U Die) - Soul Rebels Brass Band & John Mooney
7. We Made It Through That Water - Free Agents Brass Band
8. Shame Shame Shame - Steve Zahn & Friends
9. My Indian Red - Dr. John
10. At the Foot of Canal Street - John Boutté, Paul Sanchez, Glen David Andrews & New Birth Brass Band
11. Buona Sera - Louis Prima
12. New Orleans Blues - Tom McDermott & Lucia Micarelli
13. I Don't Stand a Ghost of a Chance with You - Michiel Huisman, Lucia Micarelli & Wendell Pierce
14. Indian Red (Wild Man Memorial) - Mardi Gras Indians
15. Indian Red - Donald Harrison
16. Time Is On My Side - Irma Thomas & Allen Toussaint
17. This City - Steve Earle
18. Just a Closer Walk With Thee - Treme Brass Band
19. My Darlin' New Orleans - Leigh "Li'l Queenie" Harris



トレメはフォーバーグ・トレメとも呼ばれているニューオーリンズのダウンタウンで、ニューオーリンズの中では最も古い地域の一つです。ジャズが誕生した歴史的な地域と言われてますが、トレメ・ブラス・バンドやリバース・ブラス・バンドを始めとするアフリカ系アメリカ人によるブラス・バンドの盛んな街で、音楽が生活の一部となってるような地域というイメージがありますね。

そのトレメの人々がカトリーナの災害から立ち直ろうとする姿をテレビドラマ化したのが「Treme」で、2010年にSeason 1 が10回に渡り放映され、今年はSeason 2 が放映されてます。トロンボーン奏者やビッグチーフ、ラジオのDJ、大学教授、レストランの女性シェフ、バーの女性オーナーなど、様々な人達の様々な生き様が同時進行で進んでいきますが、如何せん言葉が分からないもので、その内容が理解できません。しかし、カーミット・ラフィンズのライブやアラン・トゥーサンとコステロのスタジオの模様など、映像と音楽だけでもニューオーリンズ・ファンには十分楽しめます。
このテレビドラマはDVD化されてますが、是非、日本語字幕入りを出して欲しいですね。無理かな。

で、今回のアルバムは「Treme」のサウンド・トラック盤ですが、これらのサウンドを聴いてると、ブルースと同様に生涯かけて聴き続けるに値する素晴らしいサウンドだと、改めて痛感しました。ニューオーリンズ・サウンド、やっぱ良いです。

2011年7月25日月曜日

Washboard Chaz Blues Trio / On The Street


『Washboard Chaz Blues Trio / On The Street』
1. Doing Bad
2. On The Street
3. Louis Collins
4. Pick Yourself Up
5. I'll Fly Away
6. Thank The Lord
7. The Old Folks Started It
8. Fire Once Again
9. Farewell Blues
10. Just Your Fool
11. My Life Is Filled With You
12. What's The Matter With The Mill

Washboard Chaz Leary - washboard, vocals
St. Louis Slim - guitar, background vocals, lead vocal (6)
Andy J. Forest - harmonica, background vocals, lead vocal (4)(10)
Special Guest: Roberto Luti - guitar (2)(8)


ウォッシュボード・チャズはニューオーリンズで活動しているウォッシュボード奏者。
いろんなバンドやユニットに参加してるのですが、このWashboard Chaz Blues Trio は、チャズがバンド・リーダーとして引率しているトリオ・バンドで、アコースティック・ギターとハーモニカ、そしてウォッシュボードだけというシンプルな編成により、カントリー・ブルースをジャグ・スタイルで演奏しています。2002年のデビュー・アルバムから変わらない独特のサウンドを放ってます。チャズの尋常じゃないリズム感のウォッシュボード、Roberto Luti のこれまた尋常じゃないリズミカルなバッキングと沁みるスライド・ギター。もうリズム命みたいなバンドなんですね。更には、ハーモニカのAndy J. Forest が加入して最強の布陣で製作された前作「Mix It Up」は、自分にとっては本当にスリリングなアルバムでした。

さて、今回のアルバムではデビュー当初より参加していたRoberto Luti がゲストという形で2曲のみ参加してるものの、レギュラー・メンバーから外れてしまったのは非常に残念な事ですね。代わりに加入したのがSt. Louis Slim というカントリー・ブルースを演奏するちょっと違ったタイプのギタリストです。

Roberto Luti が参加している2曲目では、アタックの強いメリハリ感のあるバッキングがやはり魅力で、ウォッシュボードのリズムとの相乗効果で溌剌としたリズム感が良いのです。これがこのバンドの魅力の一つだったのですが、その点、St. Louis Slim は少々弱く、比較的平坦なギターを弾いてるのがちょっと残念ですね。

とは言うものの、(5)での哀愁のあるギターはなかなか味があって良いですね。
リトル・ウォルターのシャッフル・ナンバー(10)辺りのブギ・ギターもノリは良いのですが、Roberto Luti が強烈だっただけに控えめな感じがするのは否めないですね。

チャズのレイジーなボーカルやAndy J. Forest のスワンピーなハーモニカもたまらん魅力で、ギターが変わってもこのバンドの面白さは変わらないですね。

2011年7月16日土曜日

Eden Brent / Ain't Got No Troubles


『Eden Brent / Ain't Got No Troubles』 (Yellow Dog Records 1716)
1. Someone to Love (Eden Brent)
2. Ain't Got No Troubles (Eden Brent)
3. Blues All Over (Eden Brent)
4. Later Than You Think (Colin Linden)
5. Right to Be Wrong (Hambridge, McClinton, Nicholson)
6. Leave Me Alone (Eden Brent)
7. Let's Boogie-Woogie (Eden Brent)
8. My Man (Eden Brent)
9. Beyond My Broken Dreams (Hayes, Jones, Polk)
10. If I Can't (Eden Brent)
11. In Love With Your Wallet (Eden Brent)
12. Goodnight Moon (Kimbrough, Owen)

Eden Brent - piano, vocals
Colin Linden - guitars
George Porter Jr. - electric bass
Bryan Owings - drums
Tracy Griffin - trumpet
Emile Hall - alto saxophone
Jeff Albert - trombone
Jon Cleary - hammond B3


エデン・ブレントという女性ピアニスト&シンガーをこのアルバムで初めて聴いたのですが、George Porter Jr. やJon Cleary を始めとしてニューオーリンズのミュージシャンが多数参加してるし、ニューオーリンズ録音ということもあって、てっきりニューオーリンズの人と思ってたら、実はミシシッピ州のグリーンビルを拠点に活動してる人でした。

デルタ・ブルースの聖地クラークスデールは直ぐそこです。だからと言って彼女もデルタ・ブルース・ウーマンと言う訳ではなくて、どちらかといえばジャズ・シンガーですね。
ブギウギ、ジャズ、ブルース、R&B、サザン・ソウル、ラグタイムなど音楽性も多彩ですが、本領発揮してるのはブギウギかと思います。

ロッキン・ブギウギ・ナンバーの(7)は特に好きですね。ハスキー・ボイスで割と個性的な感じで、女性の人には不適切な言い方かもしれませんが、渋い歌声です。しかし、シャウトは結構迫力があります。ブギウギ・ピアノのノリもいいね。

(1)や(2)辺りのジャジーなブルース・ナンバーも熟れたサウンドで、ホーン・セクションがニューオーリンズということもあってか、全体的にニューオーリンズR&Bという雰囲気が漂ってて、これもなかなか好きな所です。

(8)や(10)はラグタイムで、シンコペーションされたピアノのノリが気持ち良い(8)。アコギの伴奏によるほんわかとした雰囲気の(10)。ほんと惹き付けられる歌声なんだな。

2011年7月12日火曜日

Krown - Washington - Batiste / Live At The Maple Leaf


『Krown - Washington - Batiste / Live At The Maple Leaf』
1. Steal Away (J. Hughes)
2. What's Going On (M. Gaye)
3. Maple Leaf Strutt (R. Batiste Jr.)
4. Use Me (B. Withers)
5. Talk To Me, Talk To Me (J. Seneca)
6. Under The Influence (J. Krown)
7. I Feel So Bad (S."Lightnin’" Hopkins)
8. Sunday Night Crawfish (R. Batiste Jr.)
9. You Can Stay But The Noise Got To Go (J. "Guitar" Watson)

Joe Krown - hammond b-3 organ
Walter Wolfman Washington - guitar, vocals
Russell Batiste Jr. - drums, background vocals


ジョー・クラウンは1992年、ゲイトマウス・ブラウンのバンドに参加する為にニューオーリンズに移住したピアノ&オルガン奏者で、ゲイトマウスが2005年に亡くなるまでの13年間、バンド活動を共にしている。ソロ活動も精力的に行ってるが、その中でもオルガン・コンボは特に好きですね。

ウォルター・ウルフマン・ワシントンはニューオーリンズ出身で、ジョニー・アダムスのバンドに20年間在籍していたベテランのギタリスト&シンガーです。基本的にブルースですがR&Bやソウルも取り入れながら、ニューオーリンズの人らしいファンキーさが魅力ですね。

そして、新生ミーターズであるファンキー・ミーターズに参加してる名ドラマーのラッセル・バティストJr. パパ・グロウズ・ファンクでも活躍してましたね。

このニューオーリンズ屈指の腕利き3人が結集して、2008年に行われたライブでして、そのサウンドがそりゃもう詰らないはずがなかろうってなものですね。
バンドの編成からJoe Krown Trio を連想してしまうところですが、サウンドはJoe Krown Organ Combo に近い感じ。

ジョニー・テイラーもレパートリーにしていた(1)やマーヴィン・ゲイの名曲(2)、ワシントンの円熟味のある渋い歌も良いが、ジョー・クラウンのうねりのあるオルガンとニューオーリンズらしいファンキーなリズム、たまらんですね。やはりこの辺りがひと味もふた味も違うなと感じさせられる所ですね。

バティスト作の(3)とクラウン作の(6)は正にオルガン・コンボのサウンドで、このグルーヴ感といったら、ほんと最高にカッコいい。
(6)はJoe Krown Organ Combo のアルバム「Livin' Large」でやってた曲ですが、ブルージーなギターとグルーヴィーなオルガン、そして強烈なのがアフタービートの効いたどっしりしたドラムで、更にパワーアップしたサウンド、痺れますね。
ビル・ ウィザースの名曲(4)、このノリの良さも流石です。

最近はスタジオ録音のアルバムもリリースして、このトリオが定着してるようです。
目が離せないバンドですね。

2011年7月7日木曜日

Kermit Ruffins / Happy Talk


『Kermit Ruffins / Happy Talk』 (Basin Street Records)
1. Panama
2. Hey Look Me Over
3. Ain't That Good News
4. La Vie en Rose
5. Happy Talk
6. If I Only Had a Brain
7. High Hopes
8. I Got a Treme' Woman
9. Shine
10. Sugar
11. More Today Than Yesterday
12. New Orleans (My Home Town)


カーミット・ラフィンズは1964年ニューオーリンズ生まれのトランペッター&シンガー。
フレイジャー兄弟と共にリバース・ブラス・バンドの立役者の一人なんですよね。1992年に脱退してソロ活動に入るのですが、元々、ルイ・アームストロングやルイ・ジョーダンなどに影響された人で、ファンク色の強いリバースBBとは打って変わって、よりトラディショナルなニューオーリンズ・ジャズを演奏するようになります。
勿論、ブラス・バンド的なセカンドラインもあるのですが、ディキシーランドやスウィングといったこの辺りのオールド・タイムなサウンドが堪らなく好きなんです。

さて、今回のアルバムもカーミット・ラフィンズの持ち味が随所で発揮された良い作品で、1曲目のカーミットのトランペットとDr. Michael White のクラリネットの絡み具合がとってもディキシーランド。明朗なサウンドが爽快で、楽しい雰囲気を出してます。

(2)は歌物で、ビッグ・バンドのスウィング・ナンバー。ギターの入ってないSwinging Boppers という感じ。Matt Lemmler の小粋なピアノがぐっと来ますね。
(1)(2)この辺りのサウンドがやはり結構好きです。

サム・クックの(3)は比較的ファンキーな感じで、ニューオーリンズらしいアレンジですね。そして、(4)はサッチモ風だけれども、洗練された感じがカーミットらしい所かな。哀愁漂うトランペットの音色とカーミットの歌、いい味出してるピアノ、しみじみと聴かせてくれます。

(6)も歌ものだが、カリビアンなラテン系のリズムが愉快なサウンドで、映像でしか見た事がないけれど、カーニバルを思い浮かべてしまうこの陽気さがいいよね。

(8)と(12)はカーミットのオリジナル曲。(8)はスウィンギーなジャンプ・ブルースで、歌やピアノが結構ブルージーなフィーリングを出してるのが良いです。
(12)のほうは重心をどっしりと落としたスロー・シャッフルのブルース。トランペットのえぐいサウンドはたまらんですね。
(9)(10)は有名なスウィング・ナンバー。サッチモのようなアクの強さではなくて、洗練された都会的なサウンドで、ノリの良さと優雅さがあるのがカーミット・ラフィンズです。

2011年7月2日土曜日

Lynwood Slim & Igor Prado Band / Brazilian Kicks


『Lynwood Slim & Igor Prado Band / Brazilian Kicks』 (Delta Groove Productions)
1. Shake It Baby (Amos Blakemore, Buddy Guy)
2. Is It True? (Dave Bartholomew, King)
3. Bloodshot Eyes (Hank Penny, Ruth Hall)
4. My Hat's On The Side Of My Head (Harry Woods, Claude Hulbert)
5. Blue Bop (Igor Prado)
6. Little Girl (Walter Jacobs)
7. I Sat And Cried (Jimmy Nelson)
8. Maybe Someday (Richard Duran)
9. Show Me The Way (Richard Duran, Mike Watson)
10. Bill's Change (Igor Prado)
11. The Comeback (C.L. Frazier)
12. The Way You Do (Jimmy Nolen)
13. Going To Mona Lisa’s (Richard Duran, Igor Prado)

Lynwood Slim - vocals, harmonica,& flute
Igor Prado - vocals & guitar
Rodrigo Mantovani - acoustic bass
Yuri Prado - drums & percussion
Denilson Martins - alto, tenor & baritone saxophone
Donny Nichilo - piano


リンウッド・スリムは1953年ロスアンゼルス生まれ。1977年頃から30年以上活躍しているベテランのブルース・ハーピスト&シンガー。フルートも演奏するのですが、これが個人的にはちょっと馴染めない所でして、、、

12歳でトランペット、15歳でハーモニカを演奏し始め、ジミー・リードやリトル・ウォルター、ビッグ・ウォルター・ホートンなどに影響されたようです。取っ掛かりはやはりこの辺りからですが、ブルースに限らずジャズやスウィングを取り入れたサウンドが特徴です。

イゴール・プラド・バンドとは2、3年前から一緒にライブ活動しているようで、最近のイゴール・プラドはアグレッシブなサウンドを出してはいるものの、音楽性に共通するところ多々あり、ユニットを結成しアルバムが出来上がったのも必然的であったという気がします。

このアルバム一見すると、メインであるリンウッド・スリムのバック・バンドをイゴール・プラド・バンドが務めるという見方が一般的でしょうが、その捉え方は間違いではないが、間違いでもある。バック・バンドは言われた通りに演奏してりゃいいんだよ、みたいな感じは全くなくて、お互いがお互いを尊重し合って、双方の良さが存分に発揮された、聴いてて本当に気持ちの良い素晴らしいアルバムに仕上がってます。これも偏にリンウッド・スリムの人柄に良さによるところでしょうか。

アルバムとしては重要な1曲目、このサウンドは全く以てイゴール・プラド・バンドのサウンドで、まずは花を持たせてくれるなんて、嬉しくて泣けてくるね。
この曲は、ジュニア・ウェルズ1966年のアルバム「It's My Life, Baby!」に収録されてたアップ・テンポのファンキーなナンバー。ここではテンポをミディアムに落としてはいるものの、ボーカルもイゴール・プラドが担当して比較的ワイルドに演奏してます。ギターもテキサス・スタイルでほんとワイルド。ただ、最後のフルートはやっぱりちょっとね。ここはクロマチック・ハープでブリッとやって欲しかったな。しかし、カッコいいナンバーです。

2曲目も好きな曲で、スヌークス・イーグリンのバージョンを割りと忠実に演奏してます。リンウッドの渋い歌声も魅力ですが、何と言ってもジョニー・ギター・ワトソン張りのギターが痺れますね。

ジャンプ・ブルースの(3)、スウィングしてるジャズ・ナンバーの(4)やジャズ・バラードの(8)、この辺りのリンウッドらしい曲も雰囲気のある良い演奏してます。特に(4)でのスウィング感たっぷりのジャジーなギターやピアノなど、陶酔してしまうサウンドですね。

(5)のビバップ系ジャンプは、アップ・テンポでアグレッシブなインスト・ナンバー。ハイテンションのジャズ・ギター、カッコいいです。こんなサウンド出せるブルース・バンドはなかなかいないですよね。

そして、(6)(9)(13)はトラディショナルなシカゴ・ブルースで、まったりとしたスロー・ブルースの(6)もいいが、お気に入りは(9)。何と言ってもリンウッドのクロマチック・ハープが素晴らしくて、味のある渋い音色がたまらんですね。(13)はエディ・テイラー・スタイルのブギ、この辺りもリンウッドお得意のサウンドですね。

イゴール・プラド・バンドは、プラド・ブルース・バンド時代の「Blues And Swing」を聴いて以来、期待を込めて注目してた若手ブルース・バンドだ。デルタ・グルーヴはブルースに愛情のあるレーベルで、録音の質も非常に優れてる。今度はデルタ・グルーブでメインのアルバムを録音して欲しいですね。

2011年6月23日木曜日

Trombone Shorty / Backatown


『Trombone Shorty / Backatown』 (Verve Forecast)
1. Hurricane Season (Troy Andrews)
2. On Your Way Down (Allen Toussaint)
3. Quiet As Kept (Troy Andrews)
4. Something Beautiful (Troy Andrews / Ryan Montbleau)
5. Backatown (Troy Andrews)
6. Right To Complain (Troy Andrews / PJ Morton)
7. NEPH (Troy Andrews)
8. Suburbia (Andrews, Ballard, Murano, Peebles)
9. In The 6th (Andrews, Oestreicher)
10. One Night Only (The March) (Andrews, Montbleau)
11. Where Y'at (Andrews, Slaughter)
12. Fallin' (Andrews, Morton)
13. The Cure (Andrews, Ballard, Murano)
14. 928 Horn Jam (Andrews, Oestreicher, Slaughter, Williams)

Troy "Trombone Shorty" Andrews - vocals, trombone, trumpet, keyboard, drums percussion
Pete Murano - guitar
Mike Ballard - bass
Joey Peebles - drums
Dwayne Williams - percussion
Dan Oestreicher - baritone saxophone
Clarence Slaughter - saxophone, flute
Additional Musicians:
Marc Broussard - additional vocals on (6)
Lenny Kravitz - backing vocals, guitar solo on (4)
Charles Smith - synthesized bass on (3),(5)
Allen Toussaint - piano on (2)


トロンボーン・ショーティことトロイ・アンドリュースの2010年リリースのアルバムです。
メジャー・レーベル移籍第一弾ということで、かなり気合いを入れた作品でしょうけれど、このメタル・サウンドにはちょっと面食らってしまったね。
ヒップホップやクラブ・サウンド、その中でも特にファンク・メタルを前面に打ち出してるのが特徴的で、背丈よりも大きいトロンボーンを吹いてた頃からトロイの事を知ってるニューオーリンズ・ジャズ・ファンの方々は、このサウンドをどう聴くのでしょうか。
しかしながら、重要なのはニューオーリンズのジャズやセカンドラインがしっかり土台となってる事で、これがサウンドの肝心要なんですよね。

そして、コンポーザーとしての実力も十二分に発揮されたアルバムで、マイナー系の曲が多いのがちょっと気になりますが、結構良い曲が揃ってますね。
冒頭からセカンドラインを織り交ぜたファンク色の強いニューオーリンズ・ファンクとしては割りと順当な滑り出し。トランペットのキャッチーなリフが印象的ですね。
個人的には3曲目が好きだな。タメながらもメリハリを付けたトロンボーンやワウ・ギターのリフがカッコいい。引き摺り気味に吹くトロンボーンのレイジーさもたまらんです。

中盤ではタイトル曲の(5)と言いたい所だが、このアルバムの中ではちょっと異質な感じのする(8)。出だし70年代のハード・ロックを思わせるが、その後のドラマチックな展開はロック・オペラという感じがします。このサウンドだとメタル・オペラと言ったほうが正しいかも。この曲、車のCMとかに使ったらカッコいいでしょうね。
続く(9)はキャッチーなホーン・アンサンブルと軽快なセカンドライン・ファンクの組み合わせで、結構お気に入りの1曲です。

後半はやっぱり(11)だね。このアルバムの中では特に好きな曲で、ギターやベース、ドラムが重厚なリズムを繰り出し、トロンボーンを含むホーン・セクションがキャッチーな旋律を奏でる。バンド・アンサンブルのカッコ良さと言ったらほんと痺れるね。
しかし、キャッチーキャッチーってバカの一つ覚えの様に言ってますが、リズムはファンクネスでも、ホーンのフレーズやメロディは思わず口ずさんでしまう位覚え易いのが特徴。
その他にバップ系の曲やソウル・ナンバーもやってますが、やっぱりジェームス・ブラウンは好きなんですね。次回作でGets Funkyやるのかな。
兎に角、家の中でじっくり腰据えて聴くのではなく、ドライブのお供に聴くとより最高です。

2011年6月17日金曜日

Reverend KM Williams / When I Rise


『Reverend KM Williams / When I Rise』 (Dialtone Records)
1. When I Rise
2. Free to Roam
3. The Lord Will Work It Out Somehow
4. I'm Comin Home
5. Something Took Control of Me
6. Tell Me Woman
7. Goin Away Baby
8. We'll Go Back to God
9. Please Come Back Home
10. I'm a Boogie Man
11. Take a Little Walk with Me
12. Hard Times Everywhere
13. My Lord Knows Just What to Do

Rev. KM Williams - guitar & vocals
Washboard Jackson - drums & washboard
Hash Brown - guitar 2/10, Harp 5/6
Blue Lisa, Andrea Dawson - back up vocals


テキサスのダイアルトーン・レコードがまたまた面白い人を引っ張って来ましたね。
レヴァレンド・KM・ウィリアムズ。1956年、ミシシッピのデルタ地帯に程近いテキサス州クラークスヴィル生まれ。
"Reverend" と言う位ですので聖職者なのでしょうけれど、何が面白いかって、ジャケットにも写ってる如何にもハンドメイドの1弦?2弦?のギター。YouTube を見るまではシャレだろうと思ってたら、マジでスライド弾いてる。これがまためちゃくちゃエグいサウンドを出してるし、こりゃほんとたまげた。
R.L.バーンサイドを彷彿させるファットポッサム系のミシシッピ・ヒル・カントリー・ブルース。
ギターとドラムだけで、ただひたすらワンコード・ブギで疾走する。
アメリカの牧師さんはスゲエな。

2011年6月16日木曜日

Hosea Hargrove / Tex Golden Nugget


『Hosea Hargrove / Tex Golden Nugget』 (Dialtone Records)
1. Negro Down
2. Nine Pounds Of Steel
3. 44 In My Hand
4. Boogaloo
5. Booty
6. Caress Me Baby
7. HOSEA
8. King Arthur
9. If You Love Me Like You Say
10. Love My Life (Part 2)
11. Years Go Passing By
12. I’m In Love With You Baby
13. Rock Me Baby

Hosea Hargrove - guitar & vocals
Scott Chester - rhythm guitar
Mike Keller - Bass
Jason Moeller - drums
Nick Connelly - piano
Charles Shaw - drums (13)
Hash Brown - rhythm guitar (13)


ホージア・ハーグローヴは1929年テキサス生まれで、現在もテキサスのオースティン界隈で活動している生粋のテキサス・ブルースマンで、若きジミー・ヴォーンがホージアを観る為に、ゲットーの黒人クラブに通い続けたという、伝説のブルースマンだそうである。

その伝説のブルースマンのアルバムが遂にダイアルトーンからリリースされたという訳ですが、1998年にフェドラから「I Love My Life」というアルバムをリリースしてますので、これが通算2作目となります。

前作を聴いてみますと、ギター・スリムの「The Things That I Used to Do」をライトニン・ホプキンス・スタイルで演奏しており、テキサスだなという感じはするのですが、全体的な感じとしては、ジェリー・ロール・キングス辺りのミシシッピ、ジューク・ジョイント・ブルースという雰囲気のサウンドでした。フランキー・リー・シムズとかに影響されたそうですが納得です。いずれにしましても、エグいサウンドである事は間違いないですね。

さて、今回のアルバムですが、ケント時代のローウェル・フルスンを思わせる(1)や(7)、ソウル・バラードの(2)、ライトニン・スタイルのカントリー・ブルース(3)などなど、比較的音楽性に富んだ構成になっとるようです。
「トランプ」のリズムを強弱付けてがっつり刻む(1)、グルーヴがエグくていいですね。

間を活かしたファンキーなブギ・ナンバー(4)、ジューク・ジョイント・ブルースという感じで、シンプルなバンド・サウンドながらギターのバッキングやピアノ、ドラム等のバンド・アンサンブルは、このアルバムの中でもダントツでカッコいい。

続く(5)は60年代のレイ・チャールズを思わせるファンキーなR&Bナンバーで、アフタービートを叩くドラムとギターのリフ。このノリノリのリズムもまた痺れるところだな。

そして、意外だったのが(8)で、こういう渋めのジャジーなブルースもやるんですね。
(6)(9)(10)は前作にも収録されてた曲で、リトル・ジョニー・テイラー作の(9)はアルバート・コリンズのカヴァーですが、ルイジアナっぽいアレンジで演奏されてて結構面白い。ですが歌の上手さやインパクトのあるギターとかね、やっぱりコリンズのほうが上かな。

2011年6月14日火曜日

Andy J Forest / NOtown Story : The Triumph Of Turmoil


『Andy J Forest / NOtown Story : The Triumph Of Turmoil』
1. True To You
2. Who Are You Tryn'a Fool?
3. Pretend We're Not Pretending
4. You Gotta Pay
5. The Blues Blues Too (inst.)
6. Dogs Chase Cats
7. The Moon Of June
8. Poor You
9. Morning Glory Vine
10. My Excuse For Now
11. The Blues Blues
12. Harpbinger (inst.)

Andy J Forest - vocals, harmonica, frattoir, slide guitar
Jack Cole - guitars
Allyn Robinson - drums
David Hyde - bass
Sean C - backup vocals #2, 7,8,11
Mike Hood - piano #4,5,7,11
Bart Ramsey - accordion #9
Washboard Chaz - #7


アンディ J フォレストは1955年ワシントン州生まれのハーピスト&シンガー。10代の頃、ロサンゼルスでジョージ・ハーモニカ・スミスやビッグ・ウォルター・ホートン、サニー・テリーなどを観てお手本とし、22歳でプロとして活動を始めるが、ジェームス・ブッカーやアール・キングなどの影響から、ニューオーリンズへと心惹かれていく。

その後、10年間のヨーロッパでの生活を終え、1991年にニューオーリンズ戻り活動しています。ウォッシュボードをアメリカでは一般的な"Washboard"とは言わず、わざわざ仏語で"frattoir"と言ってるのは、ヨーロッパ生活での影響なのでしょうか。

今回のアルバムは2010年にリリースされた新作だが、いつも通りの自主制作盤だ。
インナー・ジャケは前作よりも上等になったが、メディアは相変わらずCD-Rで、安く上げる為には致し方ない事なんでしょうね。しかし、中味は充実してて兎に角カッコいい。

まずは1曲目のロッキン・ブルース。切れの良いファンキーなリズムと、ジョージ・スミス程の馬力はあまり感じられないけれど、程よいファット感のあるトラディショナルなハーモニカ。この辺りのアンディ J フォレストらしいウェスト・コースト系のブルースは結構好きだ。

続く(2)はルイジアナ、スワンプ・ブルースで、ブルース・ハープのポジションというヤツはどうも良く分らないのですが、ここでは多分ファーストポジションを使用して、素朴に哀愁漂う音色が印象的です。こういうサウンドもなかなかいいですね。

(3)はスワンピーなレゲエ。ディレイのエフェクターを使用して、恰もユニゾンで演奏してるかのような効果を出してます。好んで良く用いる手法で、これもアンディの特徴的なハープ・サウンドの一つとなってます。

ミディアム・シャッフルのハープ・インスト(5)、これもなかなカッコいいナンバーですね。
(7)はロカビリー・タッチのバラード・ナンバーで、アンディ自身もウォッシュボード奏者であるが、ここではウォッシュボード・チャズが参加しています。このウォッシュボードのリズムが凄くアクセントになってて印象的ですが、全体的にまったりしたノリが心地よいね。

(9)は聴き様によってはレゲエにも、ザディコにも、ブルースにも聴こえて来るアンディ J フォレスト独壇場のサウンド。この跳ねてるリズムは最高です。
他にもキレの良いロッキン・ブルース(8)やドッシリしたシャッフル(11)、ロッキンなハープ・インスト(12)でのハープもかなり痺れる所ですし、どの曲もなかなかなものです。

2011年6月11日土曜日

Kenny Neal / Hooked On Your Love


『Kenny Neal / Hooked On Your Love』 (Blind Pig Records)
1. Hooked On Your Love
2. Bitter With The Sweet
3. Down In The Swamp
4. Blind, Cripped, or Crazy
5. If Walls Could Talk (Robert Miller)
6. Things Have Got To Change
7. New Lease On Life (William Bell / Keith Jones)
8. Ain't Nothing You Can Do (Don Robey / Wade Scott)
9. Old Friends (George Jackson / Jimmy Webb)
10. Tell My Why
11. Voodoo Mama
12. You Don't Love Me


ケニー・ニール、2010年リリースのアルバムです。前作同様、ブラインド・ピッグからのリリースで、ブラインド・ピッグに入ってからソウルを取り込んだサウンドを出しておりますが、今回のアルバムは更にソウル色を強くしたような感触ですね。

カヴァー曲では、リトル・ミルトンの(5)。(7)はウィリアム・ベル2006年の曲。ボビー・ブランドの(8)。スペンサー・ウィギンスの(9)。(4)はケニー・ニール作とクレジットされてますが、これはO.V.ライトの曲ですね。といった感じでメンフィス・ソウルに傾倒したかのような選曲がなされており、ケニー・ニールの行く末を示唆してるのかなという印象を受けます。

しかし、ケニー・ニールの牙城は飽くまでもルイジアナ、スワンプ・ブルースで、ソウルを混ぜ合わせ、絶妙にバランスの取れたルイジアナ産ブルーズン・ソウルという感じですね。
1曲目や2曲目のリトル・ミルトンを思わせるマイルドなトーンのギターが痺れる所で、ブルーズン・ソウルなのだけれどルイジアナ臭が漂ってるのがやはり魅力ですね。

(3)はファンク・ブルースとスワンプ・ブルースとを混合させたような曲。イメージ的には相反するサウンドの融合で、コレってアリですか?という感じなのでが、これが結構シックリきてる。この辺の感覚がケニー・ニールらしい所で、中々カッコいいリズムで好きですね。

ファンキー・ソウル的リズムがカッコいいウィリアム・ベルの(7)や、ボビー・ブランド(8)での泥臭い歌声もいいですね。そして、父レイフル・ニールもカヴァーしたスペンサー・ウィギンスの(9)、レイジー・レスターを彷彿させるスワンピーなハーモニカに兎に角痺れました。ブルージーな(8)とは一転してソウルフルに歌うのも聴きものです。
ジャンプ・ブルースの(11)も好きなんだな。

2011年6月7日火曜日

Motor City Josh & The Big 3 / It's A Good Life


『Motor City Josh & The Big 3 / It's A Good Life』 (FordCo Music)
1. Let It Roll
2. It's a Good Life
3. It's Just Another Rainy Day
4. All Roads
5. Lola Jeanne
6. Big Girl Part 1
7. I Hung My Head (Sting)
8. Cakewalk Into Town (Taj Mahal)
9. I'm Tryin'
10. Lucky Mutha Foya
11. Hula Hoop Champion
12. ATL Family 2010
13. Pawn Shop Blues
14. Crazy Love
15. Big Girl Part 2

Josh Ford - guitar & vocals
Johnny Rhoades - guitar
Alex Lyon - bass
Eric Savage - drums
and many more...


モーター・シティ・ジョシュが2010年にリリースした通算12枚目のアルバムです。
前作はハウリン・ウルフのトリビュートという事で、どっぷりブルースに浸かったアルバムでしたが、今回はアーバンな雰囲気のサザン・ロックが主体となっております。

冒頭1曲目はレイドバックしたスライド・ギターが特に印象的なミディアム・テンポのサザン・ロックだが、オールマン・ブラザーズ・バンドの、中でも取り分け「Brothers And Sisters」辺りを思わせるサウンドだ。この頃のオールマンズはディッキー・ベッツのルーツでもあるカントリー・サウンドを取り入れ、更に豊かな音楽性を発揮した頃ですね。
モーター・シティ・ジョシュもカントリーをルーツとしている側面も持っており、このアルバムでもカントリー・フレーバーを随所に取り入れてて、共通する部分も感じられるところです。
そういえば以前、「Jessica」をカヴァーしてましたしやっぱり好きなのでしょうね。

改めて収録曲を眺めてみると、(7)(8)以外はオリジナルで、特にジョシュ夫人のStacia Ford との共作が目に付きますが、20年来の友人Chuck Lyon 等との共作はいつも通り。元々コンポーザーとしても評価の高いジョシュ、このアルバムでの全15曲、ひいき目なしにどの曲も素晴らしい出来ですね。

ジョシュはブルースだけに拘らず、これまでに色んな音楽を聴いてきたのだろうなって気がします。それらが血となり肉となって、あの独特のモーター・シティ・ジョシュ・サウンドを構築してる。とは言え、スティングの(7)はやはり意外な選曲ではないかと思います。しかしながら、きっちりジョシュ・サウンドに仕立て上げるアレンジの巧みさは流石。曲の継ぎ目に、ルー・リードの「Walk on the Wild Side」のフレーズをサラッと入れてる所なんか、あまりにも嵌り過ぎでニクイ演出。ルー・リード大好きな自分にはゾクッとくる一瞬でした。後半のツイン・リードによるギター・ソロは、サザン・ロック好きにもたまらんギターの音色ではないでしょうか。それにしても、ジョシュのテレキャスターはいい音で鳴ってますよ。

もう一つのカヴァー曲(8)は、タジ・マハールの70年代の曲ですね。ジョシュはチューバではなくウォッシュボードをリズムのアクセントとし、ピアノも導入して南部色豊かなスワンプ・ブルースに仕立ててます。ジョシュのボーカルもかなり黒いのが特徴なもので、このアルバムの中では特に土臭いサウンドでなかなかいい感じですね。

オリジナルではプロモーション・ビデオまで製作した(6)、最もジョシュらしいと言えばジョシュらしいファンク・ブルース・ナンバーです。兎に角、このノリは最高で、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の超有名なリフを思いっきりやっちゃって、遊び心満点。
パート2の(15)はカントリー・バージョンか思いきや、パート1以上にファンキーになっちゃう。ギターの切れの良いバッキングとタイトなリズム、カッコいいですね。こちらでは「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だけでは飽き足らず、クリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」、ガンズ・アンド・ローゼズ(曲名は知らない)、「サティスファクション」にエアロスミスの「ウォーク・ディス・ウェイ」。ライブだと延々とやっちゃうかもよ。相変わらず面白い人だね。

モーター・シティ・ジョシュは年間300本のライブをこなすツワモノのライブ・バンドで、演奏能力が高いのは言うまでもなく、エンターテイナーという部分でも凄く考慮されたライブを行っています。ライブ・アルバムを聴いただけでもその面白さは実感できるところで、何れ観てみたいブルース・バンドの一つなのですが、現状では残念ながら日本に来ることはまずないでしょう。それならば、DVDだけでも発売してくれないかなと前々から思っていたところ、最近漸くしかも立て続けに2本のライブDVDを発売しました。その内の1本が何と、2003年リリースのライブ・アルバム「Live From The Road」のDVD化。へぇ~このライブ、カメラ回してたんですね。もう1本はごく最近の現メンバーになってからのライブのようです。モーター・シティ・ジョシュは兎に角ライブです。楽しみですね。

2011年6月1日水曜日

Harmonica Hinds / Anything If I Could


『Harmonica Hinds / Anything If I Could』 (Harmonica Hinds)
1. Cuddle Inn
2. Credit Card
3. Anything If I Could
4. Thinking Bout the Good Times
5. Politics and Personality
6. Way Down South
7. You're Looking Good
8. It's So Nice
9. Walking Down the Street
10. Child of the Universe
11. Amigo
12. Horse

Harmonica Hinds - vocals, harp, guitar, tambourine
Eddie Taylor Jr. - guitar
Rick Kreher - guitar
Edward G. McDaniel - bass
Kenneth Smith - drums


ハーモニカ・ハインズは1970年代初頭からシカゴで活動しているハーピスト&シンガーで、それ以前はニューオーリンズに居たそうですが、シカゴではジュニア・ウェルズやサミー・ロウホーンジョン・プライマー等と共に、テレサズ・ラウンジのハウスバンドに参加してた事もあるようです。

ココ・テイラーの1978年のアルバム「The Earthshaker」でハーモニカを吹いてたのはこのハーモニカ・ハインズで、その他にはレフティ・ディズやジョン・プライマー、エディ・テイラーJr.等のアルバムにも参加してますよ。1998年のパークタワー・ブルース・フェスティバルに、シカゴ・ブルース・オールスターズのメンバーとして来日してます。

最近ではバディ・ガイズ・レジェンドを常宿としているようですね。ギター弾いてハーモニカ吹いて、タンバリンをフットストンプするスタイルが特徴。今時、バスドラやらハイハットやら一人でやっちゃったらちょっとスマートじゃないなと個人的には思うのですが、ハーモニカ・ハインズはその辺、粋でクールだなと思います。

今までにリリースしたアルバムは全て自主制作ですが、1994年の「Sensation」、1998年の「Another Dimention Of The Blues」、2008年の「Finally」があります。そして、今回の2010年にリリースされた最新作となります。初めて聴いたアルバムは「Finally」で、それ以前のアルバムは探し出すのはとてもムリっぽい感じですね。ジャケット見るとバンジョーなんか持ってたりするし、どんな音を出してたのか気になるところです。

今回のアルバムも前作と同様にエディ・テイラーJr. が全面参加、ギターがTom Holland からRick Kreher に交代した以外は同じメンバーでレコーディングされてます。
サウンドも前作同様バンド・サウンドをメインに、黄金期50年代の伝統的なシカゴ・ブルースを継承するサウンド。特にエディ・テイラーが好きな人にはたまらんサウンドです。

1曲目はハープ・インスト・ナンバー。ハインズのハーモニカは派手にブロウする事はないが、トラディショナルな渋い音色。ジュニアも親父さんに負けず劣らずのブギ・ビートを繰り出し、なかなかノリの良いバッキングで盛り立てる。何回聴いても楽しいサウンドです。
タイトル・ナンバー(3)のゆる~いシャッフルもたまらん味わい。
(6)は例の一人パフォーマンス。デルタ調のワンコード・ブルースで、タンバリンのストンプがめちゃくちゃイナタいね。
(8)なんかは1st ポジションで吹いてるハーモニカといい、このレイジーさといい、ボーカルの酔いどれた感じといい、正にジミー・リード。これもたまらん。
スワンプ・ポップなブルース(9)も結構好きだな。
アコギを使用したカントリー調の(11)なんかを聴くと、90年代にやってたサウンドはこんな感じだったのかなと想像してます。
最後は(1)と同じノリのハープ・インストで締め括り。いや~、楽しいです。

2011年5月27日金曜日

Teresa Lynne / Tear Drop Collector


『Teresa Lynne / Tear Drop Collector』 (Sugar Dog Productions)
1. Dreamboat Sinkin'
2. Should've Been Mine
3. Tear Drop Collector
4. Ms Wrong
5. One More Lie
6. Riptide
7. Lucky Moon
8. Been Crazy
9. Summertime
10. Shake My Memory


テレサ・リンはルイジアナ州シュリーブポート生まれで、コロラド州デンバーを拠点に活動してるブルース・ハーピスト&シンガー。

現在進行形のブルースを色々探してはいるものの、ブルース・ハープを吹きブルースを歌う女性には滅多に出会わないもので、稀な存在であると思います。
見た目には50歳くらいに見えるのですが、実の所Bioに記載がないので分かりません。

幼い頃からブルースやソウル、ゴスペルに触れ、教会のクワイアで歌っていたそうですが、影響されたのはサニー・ボーイ・ウィリアムソンやマディ・ウォーターズ、ジェイムズ・コットンなどで、やはり真性かなという印象です。ハーモニカは歩き出す前からって、多分親が玩具として与えたのでしょうけれど、それを職にしてしまうってのが並じゃないよね。

そして、10代の終わり頃だろうけれど、ナイトクラブで演奏するようになりロードにも出てる。ロードではデルバート・マクリントンのライブに遭遇、自分を売り込みステージで共演してる。その時演奏したのが「24 Hours A Day」というのも渋いところだが、なんか肝が据わってるというか、筋金入りのブルース・ウーマンって感じですね。

デビュー・アルバムは自主制作ですが、「Mistress of the Blues」というアルバムを2006年にリリースしてます。今回はそれに続く2作目で、こちらも自主制作のようです。
ガーシュウィンの「Summertime」以外は全てオリジナルで、作曲が出来るのは強みです。

1曲目はロッキン・ブルースでChris Cain がゲスト参加してますが、チョーキングを絡めた流暢なフレージングはアルバート・キングを彷彿とさせ、結構いいギターを弾いてますね。

テレサ・リンのハーモニカは、ジェイムズ・コットンやビッグ・ウォルター・ホートンに影響されたという事ですが、ホートンみたいにトレモロを効かせ圧倒的な音圧でぶりぶり吹くタイプではなく、アグレッシブさはないけれどバッキングやフレーズ、マイルドの音色、コットンに近い感じかな。ビブラートを効かせてブロウする辺りは雰囲気よい音色ですが、インパクトという点では少々弱い部分もあるハーモニカですね。しかし歌はエタ・ジェイムズを思わせるソウルフルさと迫力を兼ね備えてて、ボーカルのほうにより魅力を感じますね。

2曲目にはBob Margolin が参加してます。ミディアム・テンポのジャジーなブルースで、兎に角マーゴリンのギターが渋ぶ過ぎ。そのギターに合いの手を入れるスワンピーなハーモニカもいいね。テレサ・リンはやっぱりハートで吹くハーピストで、聴けば聴くほどに沁みてくる感じ。しかし、渋い良い曲を作りますね。

スロー・ブルース(3)を挟んで、スワンプ・ブルースの(4)も結構気に入ってます。ベースラインとキーボードのアンサンブルが特にスワンピーで、このゆったりとした横揺れのノリは好きだな。

ブルージーなソウル・ナンバーの(5)。エタ・ジェイムズばりのソウルフルな歌はやはり結構来ますね。シャウトする時なんかジャニス・ジョプリン入ってたりするし、テレサ・リンは根本的にwhisky throated vocals という感じで、この辺が魅力的な所かな。

Summertime は平凡な出来かなという印象ですが、ハーモニカは凄く良い雰囲気を出しており、高音域のブロウから低音へと吹き進める辺り、フレージングも結構上手いと思います。そして、最後はココ・テイラーを思い浮かべるパワフルなシカゴ・スタイルのブルース。なんやかんや言ってもこれがテレサ・リンの真骨頂って感じです。

2011年5月25日水曜日

Dr. "Feelgood" Potts / Memphis Blues International


『Dr. "Feelgood" Potts / Memphis Blues International』 (Pottstown Records)
1. Memphis Blues International
2. Beale Street Stomp (Harmonica Instr.)
3. Leave Well Enough Alone
4. Gravy Train Blues
5. Going And Buy Me Some Whiskey (The Whiskey Song)
6. My Mother In-Law
7. I Wanna Get Physical With You
8. Home Town Boogie (Harmonica Instr.)
9. I Can't Joy Ride (The Gas Song)
10. Monkey Doing Man


ドクター・フィールグッド・ポッツはミシシッピー州グリーンウッド生まれで、メンフィスを拠点に活動しているシンガー&ハーピスト。2007年リリースの「Going Down To Memphis」というアルバムで初めて聴いたのですが、デルタ・スタイルのダウン・ホームなブルースを演奏するブルースマンです。以前にも何枚かアルバムを出してましたが、そちらはサザン・ソウルでして、元々はソウル・シンガーだったようですね。
今回のアルバムも前作同様、がっつりダウン・ホーム・ブルースしてまして、デルタと言えばデルタ、メンフィスと言えばメンフィス、そんな感じに聴こえます。シャッフル・ナンバーがメインの構成で、時折スロー・ブルースも挿入して単調にならないようにしてるのですが、濃厚でドロドロッとしたサウンドではなくて、軽快にドライブしてるというのが特徴。しかし、歌は結構ディープですね。ハーモニカはアンプリファイド・ハープは使用せず、ダイアトニックを強力に吹いてます。トラディショナルなスタイルでライス・ミラー辺りを思わせますね。
収録曲は全てオリジナルで飛び抜けて凄い曲というのはないのですが、小細工なしのストレート勝負、この無骨さがたまらん魅力なのです。

2011年5月23日月曜日

Alabama Mike / Tailor Made Blues


『Alabama Mike / Tailor Made Blues』 (Jukehouse Records)
1. Tailor Made (Mike Benjamin)
2. Ghetto Life (Benjamin, Brenton, Silveira)
3. Eddie Lee (Mike Benjamin)
4. Go Ahead (Jon Lawton)
5. I'm Gone (Scott Brenton)
6. Enough To Keep Me Holdin On (Knight, Tiven, Tiven)
7. Moon Dog Howl (Mike Benjamin)
8. Stop Putting Me On (Jon Lawton)
9. Look Here Baby (Tom Holland)
10. Hoo Doo Man (Junior Wells)
11. Easiest Thing I'll Ever Do (Tom Holland)


アラバマ・マイクは1964年アラバマ生まれで、サンフランシスコを拠点に活動しているブルース&ソウル・シンガー。2009年に45歳にしてデビュー・アルバム「Day To Day」を発表しましたが、それに続く2作目のアルバムとなります。

デビュー・アルバムはミシシッピの香り漂うジューク・ジョイント・ブルースという感じのサウンドであったが、今回はメンフィス・ブルース&ソウルという感じがするな。

冒頭1曲目はB.B.キング風ジャンプ・ブルースで、前作でもB.B.サウンドはやっていたが、今回はトランペット、トロンボーン、バリトン&テナーのサックスと4管のホーン・セクションを導入して分厚いサウンドになってます。ギターはJohnny Nocturne Band のメンバーだったAnthony Paule がゾクッとくる痺れるギターを弾いてます。そして、マイクのディープな歌も健在で、何よりもこのノリの良さが最高です。

(2)や(4)はアラバマ・マイクらしいディープなダウンホーム・ブルース、続く(5)ではアコギとハープ、アップライト・ベースによるスワンピーなカントリーブルースで、ちょっと一息入れましょうという感じのリラックスしたサウンド、和みますね。

そして、フレデリック・ナイト作の(6)、イントロのギターからホーンのフレーズなんかもろスタックス・サウンドで、これにアラバマ・マイクの歌でしょ、たまらん所です。

(8)もサザン・ソウルですが、やっぱめちゃくちゃ歌上手いですね。ブルースにソウル、ゴスペルが絡み合った歌声は、リトル・ジョニー・テイラー辺りを思わせます。
けだる~いゆるゆるのフードゥーマン・ブルース。陰鬱な感じがフードゥーらしくていいんじゃないでしょうか。

最後はジェイムズ・コットンのギタリストTom Holland 作のメンフィス・ソウル。アラバマ・マイクは曲調に応じて声質を変えるのなんか上手いですね。ここでは軽~く歌ってます。この歌声を聴いて忌野清志郎を思い出したのは自分だけだろうか。

2011年5月20日金曜日

James Cotton / Giant


『James Cotton / Giant』 (Alligator ALCD 4940)
1. Buried Alive In The Blues
2. Heard You're Getting Married
3. Find Yourself Another Fool
4. Sad Sad Day
5. Change
6. How Blue Can You Get?
7. With The Quickness
8. Since I Met You, Baby
9. Going Down Main Street
10. That's All Right
11. Let Yourself Go
12. Blues For Koko

James Cotton - harmonica
Slam Allen - vocals and guitar (left channel)
Tom Holland - guitar (right channel), vocal on “Sad Sad Day”
Noel Neal - bass
Kenny Neal, Jr. - drums
Ronnie James Weber - bass on “Sad Sad Day”


ジェイムズ・コットンが喉頭ガンを患い歌う事が出来なくなってもう久しいのですが、ライブやレコーディング等精力的に活動を続けている。「35th Anniversary Jam」ではボーカリスト、ギタリスト共に豪華なゲストが参加して、個人的には凄く楽しめるアルバムでした。

古巣アリゲーターからリリースされた今回のアルバムには、どんなゲストが参加して歌うのだろうかとちょっと期待してたのですが、James Cotton Blues Band でのレコーディングだったようです。ちなみに、ベースのNoel Neal は言わずもがなですが、ドラムのKenny Neal Jr. はケニー・ニールの息子さんだそうですね。恐るべしニール・ファミリー。
ボーカルはギターのSlam Allen が担当してますが、B.B.っぽい感じでちょっとディープさに欠けるかなと言う気もします。いずれにしても、日頃ライブで演ってるサウンドが聴けるということですね。

(5)(7)(9)は70年代のファンク・ブルースを思わせるサウンド。特に(7)は「100% Cotton」の頃のRocket 88 辺りを彷彿とさせるインスト・ブギで、年齢を感じさせないコットンのハーモニカは強力ですね。やはり、この辺のサウンドが好きだな。

(4)(6)(8)のスロー・ブルースの中では、アイボリー・ジョー・ハンターの名曲(8)が良い。トレモロを効かせたハーモニカは鳥肌もので素晴らしいです。

最後の曲はココ・テイラーに捧げた一曲。ふくよかでスケールの大きなフレーズとトリッキーなフレーズ、コットンらしくていいです。

2011年5月18日水曜日

Eric Lindell / Between Motion and Rest


『Eric Lindell / Between Motion and Rest』 (Sparco Records 002)
1. Lucky Lucky (Peter Joseph Burtt)
2. Try To Understand (Eric Lindell)
3. True Blue Love (Eric Lindell)
4. It's So Hard To Believe (Curtis Mayfield)
5. Bodega (Eric Lindell / Chris Arenas)
6. Matrimony (Eric Lindell)
7. That's Why I'm Crying (Sam Maghett)
8. Don't Fret (Eric Lindell / Peter Smith)

Eric Lindell - vocals, harmonica, rhythm/lead guitar
Jake Brown - drums
Thomas Johnson - slide guitar, country guitar
Chris Arenas - bass
Peter smith - rhythm guitar
Ivan Neville - organ, electric piano, clavinet
Adam Theis - trombone
Joe Cohen - saxophone
Peter Joseph Burtt - vocals, kora


ギターの渋いバッキングとスワンピーなハーモニカ、そして高いクリアなトーンで「キ、コ~ン」って鳴るギター。冒頭1曲目のイントロ、完璧にやられた。ゴージャスなアレンジやプロデュースもない至ってシンプルなサウンド、程よい隙間のあるアーシーなスワンプロック。シカゴからやっとニューオーリンズに戻って来たなって感じだ。だからってアリゲーターのサウンドが悪いと言ってる訳ではなくて、やってる事は一貫して同じなんだけれど、ただ、着飾った装飾品や服装を脱ぎ捨てて、洗いざらしのコットンのTシャツに戻っただけの事。

このエリック・リンデル本来のサウンドがやはり一番好きだ。
2曲目3曲目こちらもサザンロック、スワンプロックと言う感じの正にエリック・リンデル節。

そして、(4)はカーティス・メイフィールド作のソウル・ナンバー。相変わらず個性的な歌い方だけれども、ソウルフルでしみじみと感じる歌はほんと上手い。その歌を引き立てる為の電子ピアノやトロンボーン、サックス、ギターの使い方も抜群に素晴らしくて沁みるね。

カントリー調のサザン・ロックといった感じの(5)は、レーナード・スキナードを思い出すサウンドだ。個性的なホーン・アレンジなんか聴くと、やっぱ天才かなと思ってしまう。

エリック・リンデルにしては意外な選曲だったマジック・サムの(7)。ブルーズン・ソウルという感じのアレンジ、この絶妙さにも脱帽ですね。歌はPeter Joseph Burtt という人が歌ってるようですが、黒っぽくて結構渋いです。

最後の曲はアーロン・ネヴィルの息子アイヴァン・ネヴィルの弾くクラビネットがめちゃファンキーで、70年代のファンキー・ソウルを思わせる。が、ギターソロはブルージー。

エリック・リンデルが書いたライナーの末尾に、「古い友人達とレコードを製作することを楽しみにいていた。実現できて嬉しい。」みたいな事が書いてあって、やりたいようにやったこのアルバムのこのサウンドが、本当のエリック・リンデルのサウンドだと痛感した。
自主制作でないと出来ないと言うのであれば、自主制作で十分だと思うな。

2011年5月16日月曜日

Ingrid Lucia / Midnight Rendezvous


『Ingrid Lucia / Midnight Rendezvous』 (Threadhead Records ILCO 2010)
1. When Does The Party End
2. Midnight Rendezvous
3. The Kiss
4. I'm Watching You
5. Don't Go There
6. Honey Child
7. Rhinestones and Glitter
8. Bouncin' In A Bubble
9. Dream Door
10. Help Yourself
11. I'm With You
12. Funny Boy

Ingrid Lucia - vocals
John Fohl - guitar, background vocals
Casandra Faulconer - bass
Simon Lott - drums, percussion
David Stocker - piano, organ
Anders Osborne - percussion, background vocals


2001年に録音されたライブアルバム「Live from New Orleans」からボノラマのギタリスト、バート・コットンと共に、ずっとイングリッド・ルシアのアルバムに参加し続けてるジョン・フォール。またジョン・フォールかとお思いでしょうが、ドクター・ジョンのバンド・メンバーとなって有名になる何年も前から、イングリッドはこのジョン・フォールと一緒に演ってるのです。最近では曲作りも共同作業してますし、不可欠な存在といった所だろうか。しかし、何時まで続いてくれるだろうかこの関係、というのも気になるところではありますが、、、

2010年リリースの今回のアルバムは、全曲イングリッド・ルシアとジョン・フォールの共作で、プロデューサーにアンダース・オスボーンを迎え作製されており、かなり気合が入ってるなという印象を受けます。

前作は丸ごとジャズ・ボーカルのアルバムでしたが、今回はラテン系というかヒスパニック的サウンドのような感じです。しかし、底抜けに陽気なサウンドではなくて、愁いを帯びたような暗翳さを出してます。スローでマイナー調のフラメンコっぽい感じでもありますね。
このイメージというのは主に前半の曲で、もっと厳密に言うと(2)と(3)なんですよね。この曲でアルバム全体のイメージとなってしまった。それ位強烈なインパクトがありましたね。

ニューオーリンズ・ファンク的なドラミングとスウィンギーなアコギのバッキングなど軽快感のあるリズムが特徴の(1)、ヨーロピアンな雰囲気を醸し出してる(4)、カントリー調のアコギが印象的な(6)、レトロではないがスウィング感たっぷりの(7)など、大体この辺りが気に入ってるのですが、中でもブルース・ナンバーの(9)は好きだな。

どっしりとしたスロー・ブルースで、陰鬱な雰囲気を出そうとしてるような気がしないでもないのだが、そうならないのがやっぱり根が陽気だからだろうかな。
イングリッド・ルシアのサウンドの根底にはいつもジャズがあったのだが、今回はそのジャズ的要素が希薄だった。多分、このサウンドはジョン・フォールに因るところが大きかったと思う。さて、次はどんな展開になるのか楽しみですね。