2007年12月31日月曜日

Shinji Shiotsugu / Can’t Stop Playin’ The Blues


『Shinji Shiotsugu / Can’t Stop Playin’ The Blues』 (MOJO XQCM-1304)
1) How far can you fall?
2) Foot Loose And Fancy Free
3) Reconsider Baby
4) Dark Side of Midnight
5) Chickens Come Home To Roost
6) Sister,Sister
7) Boddy
8) Big Time Baby
9) Cold Hard City
10) Boogie Lunch
11) Delta Boy

塩次伸二ファン待望のソロアルバムが遂に出ましたね。
サポートにロバート・クレイのバンドのメンバーが参加し、プロデューサーにはあのデニス・ウォーカーを迎え、ロサンゼルスで録音されたのだが、これはもうロバート・クレイのアルバム(フランキー・リーのアルバムともいえるが)さながらの布陣で、完成度の高い素晴らしいアルバムになってるだろうってのが窺い知れますよね。ヴォーカルは3人のゲストが交代で歌っております。収録曲もデニス・ウォーカーを中心に、このアルバムの為に書き下ろしされたようです。

1曲目はデニスとアラン・ミリキタニの共作で、重心の低いミディアム・シャッフルのブルース。ザックザックと刻むアランのリズム・ギターに絡む塩次さんのスクイーズなギターがカッコいいですね。アランのヴォーカルもなかなか上手いです。

(2)はデニス、ジム・ピュー、ダイアン・ウィザースプーン共作のジャジーでスウィンギーな曲。ヴォーカルは紅一点のダイアンが担当。ダイアンはジャズ・ヴォーカリストのようで、キュートでジャジーな歌は結構いけてます。しかし、何つっても最高なのが塩次さんのジャジーなギターですよ。スウィングしてますね。やっぱこういうギター弾かせたらピカイチですわ。

お次は山岸さんとの「Together Again~」でも取り上げたフルソンの曲。こちらはギターのトーンをフロント寄りにして、ポコポコした音をさせてます。この音もたまりませんな~。超スローのTogether Againバージョンと今回のミディアムバージョン、さて、あなたはどちらがお好みでしょうか?難しい。

(4)はデニス作のソウルフルなバラード。アランの歌はほんとに上手いですね。"B.B. Chung King"というバンドでギターとヴォーカルをやってるようです。ギターも渋いサイドが光ってるし、ちょっと気になるバンドですね。塩次さんのエモーショナルなギターも痺れますよ。

他にはファンキーブルースの(5)、スワンプ・ポップぽいインストの(7)、ロッキン・ブルースのカッコイイ(8)、そして、(10)(11)は塩次オリジナルのインスト曲で、(10)はスウィンギーだけれどもアグレッシブで、アランとの絡みもスリリング。(11)はファンキーってところですね。ベースのリチャード・カズンズやピアノのジム・ピューは、長年ロバート・クレイを支えてきただけあって、やっぱ凄いですね。それに全然引けをとらない塩次さんのギターもまた凄い。

このアルバムは数々のセッションアルバムをこなしてきた職人塩次伸二の魅力が十二分に伝わって、今までに無い充実したアルバムとなりました。代表作と言っていいと思います。

2007年12月23日日曜日

June Yamagishi & Shinji Shiotsugu / Together Again Blues in New Orleans


『June Yamagishi & Shinji Shiotsugu / Together Again Blues in New Orleans』
1) Not Yet
2) Statesboro Blues
3) Reconsider Baby
4) Tramp
5) Got My Mojo Workin'
6) Ain't Nobody's Business If I Do
7) The Stumble
8) The Sad Nite Owl
9) Big Legged Woman
10) My Babe
11) Blues At The Domhouse

山岸潤史と塩次伸二、ウェスト・ロードの朋友がタイトル通り再び一緒に、ニューオーリンズの地でブルースアルバムを作り上げました。
マーヴァ・ライトのバンドを中心に、パパ・グロウズ・ファンクのジョン・グロウやボノラマのクレイグ・クレインを迎えての製作という事で、山岸のテリトリーに塩次が招かれたというような感じがしてしまうし、曲もロックよりだったりして、やはり山岸中心のアルバムと言っていいのかな。なんか塩次ファンのヤッカミみたいになってしまったな。へへ

それはさておき、収録されてる曲は、オリジナルのインスト曲(1)(11)以外は、全てコテコテのスタンダードばかりで、弄り回さず比較的ストレートにブルースしてます。この手の原点回帰的な企画物のアルバムというのは、細かいことは抜きにして肩の力抜いて楽しもうじゃないかってことだと思う。そういう意味で聴くと、もろオールマンの(2)も結構楽しかったりするな。フルソンの(3)では、塩次がテキサスぽくペキペキしたギターを弾いてます。アーバンな雰囲気のスローブルースはやっぱグッときちゃいますね。他にスローの(8)でも塩次らしい端整なギターが素晴らしいのですが、山岸とのユニゾンも綺麗ですね。そして、紅一点マーヴァ・ライトが歌う(6)では、山岸の太くて粘りのあるギターも痺れるのですが、マーヴァの歌もほんと素晴らしくてジンジンしますね。クラシックなシカゴ・ブルースの(5)(10)をニューオーリンズらしくセカンド・ラインのビートに乗せてやってます。実際このアルバムの中で一番面白い曲でした。最後は山岸と塩次の共作によるスローなインスト曲。ウェスト・ロードから30数年来ファンの方々は、二人のこういうギターの掛け合いを聴いてると感慨深いものがあるのでしょうね。

2007年12月17日月曜日

Sugar Blue / Code Blue


『Sugar Blue / Code Blue』 (Beeble BB801)
1) Krystalline
2) Chicago Blues
3) Bluesman
4) Walking Alone
5) Cold Blooded Man
6) Nola
7) Bad Boys Heaven
8) Let It Go
9) Shed No Tears
10) I Don’t Know Why
11) High You Can’t Buy

シュガー・ブルーといえば、ローリング・ストーンズのアルバムに参加してたハーピストというイメージが一番強いが、ジョニー・シャインズやルーズベルト・サイクス、サン・シールズなどのブルースは勿論のこと、ボブ・ディランやスタン・ゲッツなどのアルバムにも参加するなど、ジャンルを超えて幅広い活動してきたシュガー・ブルー。

このアルバムは12年ぶりの新作で、シカゴの若手トップクラスのセッション・ギタリスト、リコ・マクファーランドが全面的に参加し、ゲストにローリー・ベルを迎え、ファンキーなブルースやアコーステックなブルース、ロックやフュージョンに至るまで力入ってます。

まずは、一曲目のファンキーなブルースがめちゃくちゃカッコいい。高い音域を使いクリーンなトーンで、細かいフレーズを鋭く決めるシュガー・ブルーのハーモニカは、ダウンホームとはまた違ったカッコ良さがあって、これも良いなぁ。

シカゴ・ブルースの最先端の音は、とてもコンテンポラリーなものになってるのは知ってるが、(2)のイントロのハープやハイトーン・ボイスの歌を聴いてると、何処と無くヨーロッパの雰囲気が漂ってて、これはシュガー・ブルー流のシカゴ・ブルースってところかな。ハープのソロではゾクっとします。

(3)はレーナード・スキナードを思わせるようなサザン・ロックの曲。南部の香りがして好きです。こういう曲にシュガー・ブルーのハイトーン・ボイスがばっちり嵌ってますね。

(6)ではさり気無くアコーディオンを入れたりして、全体的にヨーロッパの佇まいだ。パリでの経験も血となり肉となって、その後の音楽志向にどんどん取り入れていく姿勢というのは好感が持てるし好きですね。この曲も良い曲ですよ。

(7)はローリー・ベルのギターとピアノの伴奏によるアコースティックなブルース。このアルバムで唯一のダウン・ホームな曲で、ハープもそれに合わせてダウン・ホームです。なんやかんや言ってもやっぱこの曲が一番かな。

コテコテの泥臭いブルース好きには敬遠されてしまう人かもしれませんが、なかなかセンスの良い人だと思いますし良いアルバムです。

2007年12月15日土曜日

Sugar Ray & The Bluetones / My Life, My Friends, My Music


『Sugar Ray & The Bluetones / My Life, My Friends, My Music』 (Severn CD 0042)
1) Oh,Babe
2) Little Green Talking Frog
3) I Want To Be With Her
4) You Better Change Your Ways
5) Money Taking Mama
6) Shut Your Face
7) I Don't Know
8) No Sorrow No More
9) The Last Words Of A Fool
10) Oh, Oh, Oh Pretty Baby
11) Do You Remember?
12) Think It Over Again
13) I Like My Baby's Pudding
14) My Last Affair
15) Until The Real Thing Comes Along

「私の人生、私の友人、私の音楽」と題されたシュガー・レイ・ノーシアの新譜、人柄を感じさせる良いタイトルですね。長年一緒に連んでるブルートーンズのメンバーや盟友デューク・ロビラード、ルームフル・オブ・ブルースのホーン・セクションなど気心の知れた仲間が集まって、ジャンプ・ブルースやジャズ、ブルースをやっております。変な力みなど全く無くて、肩の力が抜けた等身大のサウンドという感じがします。この忙しい師走の疲れをスーと介抱してくれる爽やかなサウンドがほんと気持ちいいな。

一曲目がそのアルバムのカラーを決めるとよく言われますが、「Oh,Babe」は正しくこのアルバムの一発目に相応しい選曲。ロイ・ミルトンやワイノニー・ハリスも演奏したルイ・プリマ作のジャンプ・ブルース。疲れが吹っ飛ぶくらい楽しくて、ヴォーカルにユニゾンするピアノの音。サックスに答えるトランペット、トランペットに答えるサックス、このコール&レスポンスがやっぱ良い。サックス2管にトランペット、トロンボーンというスモール・コンボながら、聴き応え十分の演奏力は流石ルームフル・オブ・ブルースですね。

次の(2)を聴いてると、ジミー"T99"ネルソンを思い出すな。意識した歌い口だけれども、気負いの無いところがいい。語りも歌も上手い。ブルージーなギターはデューク・ロビラード。これだもんなぁ~。

(3)はデイヴ・バーソロミュー作のバラード。ジャジーにアレンジされててアーバンな雰囲気です。こういう曲って歌唱力が問われるところですが、文句無しに上手くて、ダンディーて感じですね。デューク・ロビラードのマイルドなトーンのジャジーなギターも最高です。

(5)から(11)では、ギターをマイク・ウェルチに交代してブルースが続きます。マイク・ウェルチはテキサス系のギターを弾くスリンガータイプですが、ここでは的を得た的確なサポートに徹していて結構渋いです。そして、シュガー・レイがやっとハーモニカを吹いてくれました。ウォルター・ホートンに教えを請うたハーモニカは、ほんとダウンホームな音ですね。バックのサウンドが都会的で洗練されてるので、そのギャップが面白いところでもあるかな。サニー・ボーイの(7)はちょっと違和感あったけど、聴き慣れたらこれもありかなと思えてくるから不思議だ。オリジナルは(5)(8)(10)辺りがいいね。特に(8)はこのアルバムの中でも一番ロウダウンな曲で気に入りました。ビッグ・メイシオの(11)もなかなか渋い。アコギで叩きつけて弾くところなんかカッコいいね。ダウンホームなハープもたまらん。

(12)からは、またデューク・ロビラードが戻ってきてジャズです。ワイノニー・ハリスの(13)も楽しいが、ジャズの名曲(14)(15)も良い。特にねアコギの伴奏での(14)にはやられちゃいました。一枚のアルバムでこんだけ楽しめれば十分でしょ。

2007年12月9日日曜日

Big George Brock / Live At Seventy Five


『Big George Brock / Live At Seventy Five』 (Cat Head CH1004)
1) Intro by KFFA's Sonny Payne
2) Cut You Loose
3) M For Mississippi
4) Forty-Four Blues
5) All Night Long
6) Everything's Gonna Be Alright
7) No No Baby
8) Short Dress Woman
9) Bring The Blues Back Home
10) Call Me A Lover/Down South
11) Jody

2年前、突然現れて強烈なインパクトを与えたビッグ・ジョージ・ブロックが、満を持してライヴ・アルバムを発表しました。
2007年5月12日、ミシシッピのクラークスデールに在る、モーガン・フリーマンが経営しているグランド・ゼロ・ブルース・クラブでのライヴを録音されたものです。

「Live At Seventy Five」というタイトルは、ビッグ・ジョージ・ブロックが75歳だからですが、めちゃくちゃイナタいハーモニカと黒々とした図太い歌声は、とても75歳とは思えないくらいのド迫力です。ジェリー・ロール・キングスとか初期の頃のファット・ポッサムが好きな人にはど真ん中のサウンドだけれども、ズッタンバッタンしたドラムなどドタバタしたリズムがよりローダウンな感じで最高なんです。やはり、ライヴのほうが重心の低いノリで迫力がありますね。1曲目から最後まで全てカッコいい。傑作です。

ミシシッピのジューク・ジョイントでは、日夜こういうライヴが繰り広げられてるのでしょうね。古いサウンドだけど勢いのある。50年前にタイムスリップしたというよりも50年前から時間が止まってしまってるという感じだ。昼間は綿花を摘み(例えが古過ぎ)、夜になるとライヴでとんでもない音を出す。不世出のブルースマンがまだまだゴロゴロ居そうだ。そんな事を考えてたらゾクゾクしてきますね。アメリカは奥が深い。次はどんなブルースマンが突然出現するか楽しみでならない。

2007年12月2日日曜日

Rod Piazza & MFBQ / ThrillVille


『Rod Piazza & MFBQ / ThrillVille』 (Delta Groove DGPCD118)
1) Hate to See You Go/Shake Your Hips
2) Westcoaster
3) Sugar
4) Get Wise
5) Hoodoo Man Blues
6) MFBQ
7) Honey Bee
8) I Don't Play
9) Civilian
10) Stranded
11) It Can't Be True
12) Snap Crackle Hop
13) Stranger Blues
14) Sad Hours

デビュー40周年を迎えたウエストコーストのベテランハーピスト、ロッド・ピアッツァの2年ぶりの新譜です。前作の「For The Chosen Who」は多数のゲストを迎え、ある意味レイドバックしたかような和やかさがあり、メイキングDVDの映像を見てもワイワイと楽しそうでした。ですが今度の「ThrillVille」では、ドラマーの交代とMighty Flyers時代からのベーシストBill Stuveの脱退。新たなベーシストの補充はせず、ピアノのハニー・ピアッツァが多分フットペダルでだろうか、ベースラインも補ってます。これは初の試みだそうだが、いつも以上に軽快なサウンドになりましたね。ゲストもサックスの2管だけに止めて、シンプルなバンド・サウンドに徹したという感じがします。割とスカスカなのですが、これが結構カッコ良かったりするんですよね。

一曲目はリトル・ウォルターの「ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー」にスリム・ハーポの「シェイク・ユア・ヒップ」を組み込んだ曲で、半ば強引にブギに移っちゃうんですが、それほど違和感はなくてなんかカッコいいです。こんなロッキンな曲はライヴだと盛り上がるでしょうね。他にも古典的なシカゴ・ブルースを何曲かカヴァーしてますが、南部の土臭いサウンドを期待してはいけません。ウエストコーストはカラッと明るくてノリノリなんですから。僕はこれに嵌ってしまってますが。

オリジナルでも結構耳に残った曲がありましたね。例えば、(6)なんかはジェームス・ブラウンばりのファンキーな曲で、意表を突いた選曲が良いアクセントになってます。(9)はギタリストのHenry Carvajal作で、ギターのインスト・ナンバー。アフタービートの効いたスウィンギーなリズムに乗って、流暢なギターを弾いてます。そして、何と言っても極め付けは(12)。P-Vineの一連のコンピに登場しそうなファンキーなハープ・インスト。ロッドがここぞとばかりにブイブイ吹きまくってます。やっぱファンキー・ハーモニカは最高です。

最後はリトル・ウォルターの「サッド・アワーズ」。ここでのロッドのハープには、メチャメチャ痺れました。この曲を聴けば卓越したハーピストであることが分かります。ハープは音色が命というお言葉もなるほどと頷けます。いやー、ほんと聴かせてくれますね。

2007年11月28日水曜日

V.A. / Blues Harp Diggers ~ Harmonica Samurai


『V.A. / Blues Harp Diggers ~ Harmonica Samurai』 (P-Vine PCD-23965)
1) 松田幸一 / New Block and Tackle Blues
2) 西村ヒロ / Set You Free
3) WABI / You Got Me
4) THE BLUES POWER / Got My Mojo Workin'
5) KOTEZ & YANCY / I Want You By My Side
6) パリャーソ / ちからのいっぷく
7) 石川二三夫 / Is You Is Or Is You Ain't My Baby
8) JUNGLE HOP / Drinkin' Wine
9) TETSUYA NAKAMURA & JAMES WALDMAN / The Livin' End
10) 入道 / Lone Star
11) BLUES HOUSE BLUES BAND / Checkin' Up On My Baby
12) ROLLER COASTER / Key To The Highway
13) ROLLER COASTER / Honest I Do
14) WEEPING HARP SENOH / I'm Going Back Home ~ Oh Baby You Don't Have To Go
15) BLUE BEAT BOX / In My Side
16) KOTEZ /Walter's Boogie

日本人ハーピストといえば、石川二三夫さんか妹尾隆一郎さんかってところでしょうが、実際あまりよく知らない。だから、一度にこれだけの人を聴けるとは良い企画だ。

僕のお薦めは、(3)と(9)。
WABIこと湯口誠司さんはシカゴ在住で、日本人唯一の米ホーナー社認定ハーピスト。ヴィンテージなシカゴ・サウンドですが、ポテンシャルの高い演奏です。オリジナル曲も上手く作るから、あとは個性が出てきたら面白くなると思います。

仲村哲也さんはWARのメンバーで、リー・オスカーの後釜として加入したハーピストです。いろんなバンドを掛け持ちするなど、ロサンゼルス界隈では引っ張りだこだそうですね。(9)はギタリストのJAMES WALDMANとのデュオによるアルバム「Down By The Riverside」の中からの一曲。ハーモニカとギターだけの素朴なカントリー・ブルースだけど、郷愁を感じるサウンドに引き込まれてしまいます。来日公演を見逃してしまったのは、今でも悔やんでます。

2007年11月27日火曜日

V.A. / Blues Harp Diggers ~ Groovy Instrumentals


『V.A. / Blues Harp Diggers ~ Groovy Instrumentals』 (P-Vine PCD-23964)
1) The Billy Gibson Band / Hip Hug-Her
2) Junior Wells / Cha Cha Cha In Blue
3) Jerry McCain / 728 Texas (Where The Action Is)
4) Buster Brown / The Madison Shuffle
5) The James Harman Band / Wake Up Call
6) Raful Neal / Blues On The Moon
7) Frank Frost / Harp And Soul
8) George Smith / Blues In The Dark
9) B.Brown And His Rockin' McVouts / Candied Yams
10) Jerry McCain / Midnight Beat
11) Frank Frost / Harpin' On It
12) Louis Myers / Just Whaling
13) Big John Wrencher / Back Porch Boogie
14) George "Wild Child" Butler / The Best Of Wild Child
15) Junior Wells / Chitlin Con Carne
16) Johnny Dyer featuring Rick Holmstrom / BBQ At J.D.'s
17) Rod Piazza & The Mighty Flyers / The Toddle
18) Ronnie Earl & The Broadcasters / Jerry Jumps In
19) Carey Bell / Easy
20) Bernard McGee / California Breeze (Instrumental)

ニューオーリンズ特集も一段落ついたところで、またブルースをぼちぼちやって行こうかなと思います。

今日は、シリーズ第4弾の「ブルース・ハープ・ディガーズ~グルーヴィ・インストルメンタル」です。有名も無名も地域性もお構いなしに、ハープメインのインスト曲をどっさり詰め込んだコンピ。ハープ好きもファンキー・ブルース好きもど真ん中のサウンドで、たっぷり楽しめますね。

一曲目のビリー・ギブソンという人は、メンフィスの白人ハーピストのようです。2006年の録音ということは、まだ若い人なんでしょうか? 生ハープとアンプリファイドを交互に吹き分けるのは面白いですね。バンドのノリもいいし、迫力があってカッコいいです。

(9)のB.BrownはB.Daniel Brownというそうだが、ハウリン・ウルフをモダンにしたようなサウンドからすると、やはりメンフィス辺りの人でしょうかね。骨太のハープ好きですね。Bernard McGeeは「ファンキー・ハーモニカ」にも収録されてたサザン・ソウルのハーピスト。滑らかで透き通るハープの音も気持ちいいです。
しかし、やっぱキャリー・ベルのクロマチックはたまりませんな。

2007年11月25日日曜日

Ingrid Lucia & The Flying Neutrinos / Don't Stop


『Ingrid Lucia & The Flying Neutrinos / Don't Stop』 (Ingrid Lucia ILCD 2007)
1) A Place In The Sun
2) New Orleans
3) Mind Your Own Business
4) If I Could Be With You (One Hour Tonight)
5) There'll Be Some Changes Made
6) Hometown Blues
7) Big Long Slidin' Thing
8) Margie
9) Getting Some Fun Out Of Life
10) Do You Know What It Means To Miss New Orleans?
11) Down Home
12) Why Don't You Go Down To New Orleans?
13) It's A Long Lonely Highway

イングリッド・ルシアはニューオーリンズで活躍しているジャズ・シンガーです。
4年位前、「The Hotel Child」というアルバムを初めて聴いて、一発で気に入って、その時既に発売されてたアルバムは全て買い集めたほど惚れ込んでしまったです。

ビリー・ホリディをずっとキュートにしたような、コケティッシュな妖艶さで、30年代頃のニューオーリンズ・ジャズをノスタルジックに歌います。それは、ネオ・スウィングともレトロ・スウィングとも形容できるわけでして、あ~流行だからね、とか言われそうだけど。

イングリッドは音楽一座の中で生まれ育ち、旅から旅へと演奏活動を続け、既に8歳の時にはステージに立ち歌を歌ってたそうである。筋金入りのシンガーだったんですね。しっかりしたジャズを歌えるのも、なるほどという感じです。

さて、この「Don't Stop」というアルバムは、今年発売された新譜です。前作の「Almost Blue」ではクールなジャズに寄り添ったアルバムでした。出来も良かったので、更に突き詰めて行くのかなと思われたが、なんとレトロ・スウィング路線に戻って来ました。これではっきりしました。イングリッド・ルシア単独名義の時はジャズで、フライング・ニュートリノスが絡むとレトロ・スウィングでという事なのでしょう。
まずは、パーソナル・ラインナップから紹介しましと、

Ingrid Lucia - vocals
Duke Heitger - trumpet, vocals #4
Craig Klein - trombone, vocals #8
John Fohl - guitar
Bert Cotton - guitar
Gerald French - drums, vocals #12
Jesse Boyd - bass

2002年発売の「Fortune」頃から若干の変動はあるものの、大方この面子でアルバム製作からライヴ活動まで行ってるようです。Duke Heitgerはディキシーランド・ジャズやレトロ・スウィングのアルバムを出してる若手ホープのトランペッター。以前見たイングリッドのプロモーションビデオでは、トランペットのアーヴィン・メイフィールドが参加してましたが、彼が参加したアルバムもちょっと聴いてみたい気がしますね。Craig Klein とBert Cotton は先日紹介したボノラマのメンバーです。John Fohl はこちらも先日紹介したジョニー・サンソンのアルバムに参加してたギタリストですね。こうして見てみると、ニューオーリンズ・コミュニティーの横の繋がりの強さを感じます。

収録曲はカヴァー曲を中心に構成されてまして、(1)と(11)がイングリッドとジョン・フォールの共作によるオリジナルです。「The Hotel Child」のようなレトロさは少々薄くなりましたが、イングリッドらしいスウィンギーなアルバムになってます。(2)はポール・バーバリンのバーボン・ストリート・パレードが元ネタで、ライヴ・アルバムにも収録されてた曲ですね。僕の中でのイングリッド・ルシアのイメージにピッタリのレトロでスウィンギーな曲、これが最高なんです。トランペットとトロンボーンのコンビネーションもいいな。(3)はハンク・ウィリアムスの曲で、ライトニン・スリムやマジック・スリムがズッシリとしたシャッフルでやってましたが、イングリッドは軽快なノリのシャッフルでブルージー且つジャジーにやってます。ブルージーに歌えるのもイングリッドの良い所なんですね。(4)はサッチモを始め、いろんなジャズマンが演奏した名曲ですね。Duke Heitger とのデュエットで、この妖艶さがたまらんのです。(6)は原曲がカントリーの曲とは思えないような跳ねたノリのアレンジで、見事にイングリッドの曲にしてしまってます。Craig Klein がヴォーカルを執る(8)もスウィンギーな曲なのですが、途中でウッドベースがモダンジャズのソロを弾き出すから面白い。バラードでは最高にいいのが(10)で、鳥肌が立つ位に色っぽい。(13)はプレスリーの曲ですね。ギターのリフやロックンロールぽいギターソロがカッコ良いです。以前はルー・リードの曲とかもやってましたから、結構何でもありなのですが、何でも自分の曲にしてしまうアレンジ力にも感心させられます。

それから、このアルバムは、
"DON'T STOP was recorded in four hours"
だそうです。これには仰天しました。

2007年11月18日日曜日

Eddie Bo / Saints, Let's Go Marching On In


『Eddie Bo / Saints, Let's Go Marching On In』 (Bo-Sound 1256)
1) Pocket Train
2) Slow Roll Pt. 1
3) Slow Roll Pt. 2
4) Hard Times
5) It's Just A Matter Of Time
6) We Belong Together
7) Rainy Night In Georgia
8) Sassy (Instrumental) Pt. 1
9) Sassy (Instrumental) Pt. 2
10) Saints, Let's Go Marching On In

前作の「We Come To Party」では、ゆる~いニューオーリンズ・ファンクがこれでもかつう位に炸裂してて、「ははー、参りました」状態だったのですが、あれから早6年、エディー・ボー御年77歳現役バリバリで、久々に新作を届けてくれました。

一曲目はオリジナルのファンク・ナンバーで、前作のような派手派手ではないけれど、70年代のヴィンテージな雰囲気があって良い曲です。エディー・ボーのファンクは、ドラムやベースを強調したリズム重視というイメージがあります。この曲もリズム重視に変わりないが、リフをとるトランペットを中心としたホーン・セクションやギター、リズム・セクションそれにヴォーカルとバランス良く纏って、どっしりとした安定感のある最高のノリですね。まったりとした味のあるハイトーンの歌声も元気です。

(2)(3)は、妖しげな女性ヴォーカルを擁したスロー・ブルース。(2)ではウォルター"ウルフマン"ワシントンのブルージーなギターが前面に出て、ピアノは比較的に控えめ。一方、(3)はコロコロ転がるエディーのピアノを前面に出した構成。でも、一番前に出てんのはドラムだろって言われそうだが、このずしんとくる重たいリズムを伴ったブルースも渋くって好きです。妖しげな女性ヴォーカルは、「吐息のループ」には負けちゃうけどなんだかエロいですね(笑)

(4)は、以前に同じ曲名で録音されたことがあり、そちらはプロフェッサー・ロングヘアーを思わせるようなニューオーリンズR&Bだったが、今回のは違う曲みたいですから新たに作られたのでしょう。一曲目のような曲調のファンク・ナンバーになってます。

(5)(6)(7)は、R&B調のバラードが並んでまして、(5)はブロック・ベントン作のバラード。(7)はトニー・ジョー・ホワイト作の超有名曲で、ブロック・ベントンも好んでよく取り上げてました。60年代に戻ったかのようなエディーの哀愁漂う歌が聴きものです。

(8)(9)はJB’Sを思わせるようなファンキーな曲。Pt.1とPt.2の違いがいまひとつ分からないが、カッコいいファンク・ナンバーです。

最後は曲名通りマーチングを取り入れたファンキーな曲で、一番ニューオーリンズらしい曲ですね。シンコペーションの効いたリズムにマーチングのホーン・セクションが乗っかる。カーク・ジョセフがチューバで参加してまして、これはちょっと注目ですね。そして、ゴスペル調に歌う女性コーラス陣もとても楽しいし、体がついつい動いてしまう位のノリの良さ。ほんと楽しいですね。ニューオーリンズ最高!

エディー・ボーはカトリーナで経営していたクラブを無くして、ラファイエットに避難してるそうだが、まだニューオーリンズには戻ってないんだろうか?少しでも長く音楽活動をして貰いたいですね。

2007年11月14日水曜日

Subdudes / Street Symphony


『Subdudes / Street Symphony』 (Back Porch Records)
1) Fountain Of Youth
2) Poor Man's Paradise
3) Stranger
4) Thorn In Her Side
5) No Man
6) Fair Weather Friend
7) Brother Man
8) Half Of The Story
9) Work Clothes
10) Absolutely
11) I'm Your Town
12) Street Symphony

結成20周年を迎えたニューオーリンズのルーツロックバンド、サブデューズ。
一口にルーツロックと言っても、彼等の場合はルイジアナのスワンプ・ポップからケイジャン、ブルースにゴスペル、カントリー、フォークなど、古き良き時代のアメリカン・ルーツ・ミュージックを絶妙なバランスで融合させて、独特のサウンドを確立してるのですが、ニューオーリンズの香りはあまり感じられないんですよね。

リズム・セクションも特徴的で、ロックなサウンドを出す時はスネア、バスドラ、シンバルの最小限のドラムセットは使用するものの、殆どの場合、主にタンバリンを用いたパーカッションでリズムを取ってるんですね。これが結構ユニークだったりしますが、それにアコースティック・ギターやアコーディオンなどが絡み合ってのバンド・アンサンブルも優れてるし、飾り気のない素朴なアコースティック・サウンドの響きやバックコーラスとの卓越したハーモニーなどなど、とても心地よいんです。

2007年11月11日日曜日

Rockie Charles / I Want First Class



『Rockie Charles / I Want First Class』 (Soulgate Records 2007)
1) I Want First Class
2) Before I Find The Right Girl For Me
3) I Got Your Whipper Pill
4) I Got To Stop Lying & Pretending
5) I'm A Rolling Tumble Weed
6) My Love In Vain
7) She Got A Dummy Made Of Me
8) Because Love Hurt
9) Am I Surely Blind
10) Why Did You Lie To Me
11) Will You Still Love Me
12) Don't Believe I Want To Live Again

1942年ルイジアナ州ブースヴィルで生まれ、13歳の時に家族でニューオーリンズに引っ越す。16歳で音楽活動を始め、街の小さなクラブでブルースやロックンロールを演奏していました。67年にファースト・シングル"Mr. Rickashay" b.w. "Sinking Like a Ship"でデビュー。ナッシュビルに移り、O.V.ライトやパーシー・スレッジ、リトル・ジョニー・テーラー、オーティス・レディングのロードでバックを務める。70年に入りニューオーリンズに戻ると、自己レーベルSoulgateを立ち上げ、彼の代名詞となる"The President of Soul"を発表。これがローカルヒットします。しかし、ディスコの勢いには勝てず、レコーディングの機会を無くしてしまいます。タグボートのキャプテンという仕事をやりながら細々とライヴ活動を送る日々。そんな彼に好機が巡って来るのは20年以上も過ぎた後で、Orleans RecordsのプロデューサーCarlo Dittaに見出され、1996年に初アルバム「Born For You」を発表するに至ります。

ということで、バイオを「Born For You」のライナーから掻い摘んで紹介しましたが、「波乱万丈」ロッキー・チャールズ編みたいになってしまいました。

実際、ロッキー・チャールズのサウンドはニューオーリンズという感じではなく、やはりルイジアナのスワンプ・ブルースが基本ですね。メンフィス系のソウルという側面もあり、枯れた味のあるヴォーカルとルイジアナらしいダウンホームでレイドバックしたユル~い感じがたまらんのです。

その他にミニアルバムが2枚と2002年のフルアルバム「Have You Seen My Uncle Steve」を発表してますが、今回の「I Want First Class」は今年出た新譜です。

相変わらず自主制作で、彼を取り巻く環境は決して良くないのですが、どういう形であれ発表することが大事。というか、日本人には考えられないような手作りのチープなパッケージですが、そこに生生しいリアルさを感じるのは僕だけでしょうか。

サウンドはジャケのチープさに反比例したような濃い~内容で、ホーンセクションの入ったファンキーなものや、もろ60年代のメンフィス・ソウルといったもの、ユルユルのルイジアナ・スワンプ・ブルースからニューオーリンズR&Bものまで。最高です。

2007年11月8日木曜日

Bryan Lee / Katrina Was Her Name


『Bryan Lee / Katrina Was Her Name』 (Justin Time JUST 226-2)
1) 29 Ways
2) Don't Bite The Hand That Feeds You
3) Barefootin'
4) My Baby Done Quit Me
5) Blues Singer
6) Katrina Was Her Name
7) Take It Like A Man
8) Lowdown And Dirty
9) Ain't Nobody's Business
10) Why Did You Lie To Me
11) Flat Foot Sam
12) Bethany Jane
13) Don't Joke With The Stroke

ブライアン・リーは43年にウィスコンシンで生まれ、82年からニューオーリンズで活躍している盲目のギタリスト&シンガー。

B.B.キングやアルバート・キングからの影響を感じられるものの、ニューオーリンズ・テイストやR&B、ロックテイストを加味しつつ、よりモダンでダイナミックな自分のサウンドを築き上げた本格的なブルースマンだと思います。

伸びやかで粘りのある図太いギターと力強くてソウルフルな歌声も魅力的ですね。

91年にソロデビューして以来コンスタントにアルバムを発表し、この「Katrina Was Her Name」は通算10作目となる新譜です。全13曲中オリジナルは4曲だけで、あとはカヴァー曲という構成。全体的に弾けたノリの曲が大半を占めてて、タイトルが持つイメージとは反比例した明るく楽しいアルバムとなりました。

サックスのリフが印象的な(1)はウィリー・ディクソン作のシカゴ・ブルースですが、ニューオーリンズらしいノリの良いジャンプ・ブルースにアレンジされてます。サックスからピアノ、ギターとソロを回していくのは常套手段ですが、これが結構楽しいんですね。

どっしりとしたリズムがカッコいい(2)、弾けたようにこれでもかとギターを弾きまくる(3)や(5)とハイテンションで進む中で、タイトル曲の(6)はアコギで弾き語るマイナー・ブルースで、寂しげなスライドに胸がキュッと締め付けられる思いでした。

あと気に入ったのがジミー・ウィザースプーン作の(9)。B.B.キングやフレディ・キングを始め、いろんな人達がカヴァーした名曲中の名曲ですね。ブライアン・リーはこんな鳴きのギターを弾かせても素晴らしいです。歌もソウルフルで抜群に上手い。いや~鳥肌立ちました。これ程のブルースマンが日本では殆ど知られてないというのは本当に勿体無い事です。

2007年11月5日月曜日

The Sound Of New Orleans


『V.A. / The Sound Of New Orleans - Funky Gumbo』 (P-Vine PCD-93000)


『V.A. / The Sound Of New Orleans - Ace Vintage Treasures』 (P-Vine PCD-93029)

P-Vine企画のコンピレーション・アルバムは、釣られて良く買ってしまうのですが、秘かにお宝音源が含まれてるから見逃せないんですね。

今回の「ザ・サウンド・オブ・ニューオーリンズ 」は、ガイド・ブックの発売に連動したもので、「ファンキー・ガンボ」は、エイス・レコードやファイア、フューリーといったレーベルに、55年から62年にかけて録音された曲が収録されてます。数年前、CMに起用されて一躍有名になったヒューイ"ピアノ"スミスやリー・ドーシー、アール・キングなどの名曲から、発掘された貴重な音源まで。その中でも超目玉が、ドクター・ジョンが「ガンボ」を出す前、まだエイスでセッションマンをしていた頃に録音された2曲。ボ・ディトリーのジャングル・ビートのギターが炸裂するR&Rナンバーは、結構カッコ良い。当時、まだ10代半ばだったそうだから凄い。これは一聴の価値ありです。

一方、「エイス・ヴィンテージ・トレジャーズ」も50年代、60年代のエイスの音源を中心に構成されてます。R&BからR&R、ディープなソウルに至るまで、無名に近い人達が多く収録されてて、地味、いやいや通好みの渋い選曲ですね。最後のほうで申し訳ない程度に収められてる、アルヴィン"レッド"タイラーやリトル・ブッカー、エディ・ボーも聴き所。特に、リトル・ブッカーとはジェイムス・ブッカーのことで、58年に初めてオルガンを弾き録音した曲も入ってます。ブッカーのオルガンは強烈。この頃から既に奇人だったのですね。聴き所満載で正しくヴィンテージ・トレジャーズ。

エイス・レコードのリストには、まだCD化されてない曲が山ほどあるらしい。今後に期待ってところですね。

2007年11月3日土曜日

Bonerama / Bringing It Home


『Bonerama / Bringing It Home』 (Buffalo LBCY-509)
1) Intro
2) Bayou Betty
3) By Athenish
4) Ocean
5) And I Know
6) Mr. Go
7) Sprung Monkey
8) Gekko Love
9) Yer Blues
10) Epistrophy
11) Equale
12) Helter Skelter
13) Louie's Perch
14) Cabbage Alley

新旧問わずニューオーリンズの音楽を聴いてると、個性的な人々が非常に多くて飽きることなく楽しめる。タバコと一緒で注意書きが必要かも「依存が生じます」って(笑)。
冗談はさておき、最近特に強烈な個性を発揮してるのが、今日紹介するボノラマ。
まずは、最新アルバムのラインナップをご覧頂きたい。

Mark Mullins - (electric) trombone, vocals
Craig Klein - trombone, vocals
Steve Suter - trombone
Rick Trolsen - trombone
Bert Cotton - guitar
Matt Perrine - sousaphone
Eric Bolivar - drums
Special Guest:
Stanton Moore - drums

トロンボーンが4人もいるんですよ。デビューアルバムの時は、ゲイトマウス・ブラウンやボビー・チャールズのアルバムにも参加した事があるトロンボーン奏者のブライアン・オニール(2005年12月心臓麻痺により他界)を加えて、総勢5人もいた時期があるんですよね。こんな面白いバンドは他にないでしょう。

見た目はちょっとユニークなブラス・バンド。しかし、サウンドはブラス・バンドにあらず。彼等のHPを見ると"New Orleans Brass Funk Rock"と表現してますが、基本はジャズ・ファンクをやるジャム・バンド。そんでもってファンキーにロックしてるという感じ。実際に取り上げてるカヴァー曲もレッド・ツェッペリンやジミー・ヘンドリックス、ブラック・サバスまでやってます。セカンドに入ってるサバスの「The Wizard」は最高にカッコ良かったね。こういったハード・ロックの曲をやる時は、エレクトリック・トロンボーンを使ってまして、ディストーションを効かせワウを絡ませた音は、ジミヘンのギターさながらの凄まじさです。また、ベースラインをウッドベースみたいな音でボンボン言わせるスーザフォンも面白い。それにギター、ドラムのお決まりの構成でバンドの纏りの良さも然る事乍ら、重低音がズシーンと響いてくるファンキーなサウンドにも圧倒されますね。

そして、もう一つ特徴的なのが、今まで発表したアルバムは全部ライヴアルバムなんです。これも珍しい。この手のバンドはライヴが全てみたいなところあるし、自分達の魅力を伝えられるのはライヴしかないみたいなね。

新作の「Bringing It Home」は、2006年の9月7、8日にニューオーリンズの名門クラブTipitina's Uptownでライヴ・レコーディングされたものです。

一曲目はオリジナルで、スピード感のあるジャズ・ファンク。トロンボーン軍団のブラス・アンサンブルは見事で、それに絡みつくギターの小刻みなカッティングも気持ちいい。リズム隊の纏りも良くて、やはりスーザフォンの存在は大きい。ボノラマの真骨頂はこういう曲だなと思いますね。クラシカルなニューオーリンズR&B風味の(5)では、温かみのある歌が何とものんびりしてて好きですね。

クラシック・ロックのカヴァーは、ツェッペリンとビートルズをやってます。「Ocean」も痺れる位カッコ良いですが、やっぱ「Yer Blues」ですよ。このタメの入ったユルさはたまらんです。エレクトリック・トロンボーンのソロは、これはもうサイケだ。

最後はお得意のミーターズで、セカンドラインのファンクもお手の物。そして、隠しトラックではトラディショナルなジャズまで披露してくれてます。

2007年10月30日火曜日

Johnny Sansone / Poor Man's Paradise


『Johnny Sansone / Poor Man's Paradise』 (ShortStack Records 1006)
1) Poor Man's Paradise
2) You Got Me
3) Mary Full Of Tears
4) The St. Catherine
5) Happiness, Love & Lies
6) You're Dead
7) Any Dog Would Do
8) 44
9) Johnny Sadsong
10) I'm Goin' Home

ジョニー・サンソンはニューオーリンズで活動しているハーモニカやアコーディオンを演奏するシンガーソングライター。
80年代後半に"Jumpin' Johnny and the Blues Party"というバンドを組んでアルバムも出しているようです。ブルース・バンドだろうけれど、あまりにもレア過ぎてそのサウンドを聴いた事がない。ハーモニカを吹き始めの頃は、ギター持ってジミー・リードを目指してたそうですから、シカゴ・サウンドを出していたんでしょうか。

サンソンがアコーディオンを弾くようになったのは、クリフトン・シェニエの葬式に参列したのが切っ掛けらしい。どんな葬式だったのかは知らないが、ザディコが演奏されて、サンソンのその後の音楽志向に多大な影響を与えたのは間違いないだろう。

そんなこんなでサンソンの音はブルースやブギであり、ケイジャンやザディコであり、ニューオーリンズR&B、スワンプ・ポップ。それらを混ぜ合わせたような音。なんだか良く分かんなくなったけど、一括りに出来ない楽しくなるような音楽なんですね。

最近の活動では、先日紹介したジョー・クラウンとジョン・フォール(現ドクター・ジョンのバンドのギタリスト)とで"Sansone, Krown & Fohl"というトリオバンドを組んで、泥臭いブルースやブギをアコースティックにやっておりました。

久しぶりの新作「Poor Man's Paradise」は、"Sansone, Krown & Fohl"のオーガニックなアコースティック・サウンドというコンセプトをもとに、ジョニー・サンソン流儀のサウンドを奏でたというものだと思います。ザ・バンドはビッグ・ピンクの地下室でレコーディングをしましたが、こちらはサンソンの自宅のリビングでレコーディングされてます。ジョー・クラウンやジョン・フォール、アンダース・オズボーンなど、気の合う仲間が集まって気ままにセッションしたという感じで、リラックスした雰囲気が伝わってきます。

ナショナル・スチールを操るロベルト・ルチのスライドとサンソンの素朴なアコーディオンが絡み合う(1)やジョン・フォールのギターが印象的な(2)など、これらアーシーなスワンプ・ポップはボビー・チャールズやザ・バンドといった一連のウッドストック・サウンドに近い感じがしますね。ですが、サンソンのノリはカラっとしてて明るいからいいな。重心の低いブギー調の曲やニューオーリンズR&Bなどを交えながら、ズルズルとサンソン・ワールドに引き込まれていきます。最後はサンソンのピアノとジョー・クラウンのB3オルガンによるバラードで、しっとりと歌い上げてます。ソングライターとしての力量というか才能を改めて知らしめたアルバムでもあったかなと思いました。

しかし、ジャズ・フェスとかで芝生に寝転がってこういう音楽が聴けたら、さぞかし幸せな気分になるだろうなぁ。

2007年10月26日金曜日

Lightnin' Hopkins / New York Boogie


『Lightnin' Hopkins / New York Boogie』 (P-Vine PCD-93001)
1) Hello Central
2) Coffee Blues
3) Long Way From Texas
4) Gotta Move
5) New Short Haired Woman
6) Tell Me Boogie
7) Prayin’ Ground Blues
8) New York Boogie
9) My Heart To Weep
10) Tap Dance Boogie
11) I Wonder Why
12) Buck Dance Boogie
13) Home In The Woods
14) Lightnin' s Gone Again
15) Dirty House Blues
16) Bald Headed Woman
17) Everything Happens To Me
18) Freight Train
19) I’ve Been A Bad Man
20) New Worried Life Blues
21) Broken Hearted Blues
22) One Kind Favor
23) Down To The River
24) I’m Begging You
25) Contrary Mary
26) Everybody’s Down On Me
27) You Do Too

ニューオーリンズ・ミュージック・ガイド・ブックが発売されたし、CDも溜まってたということもあって、自分なりにニューオーリンズ特集を始めてみたのですが、ここらでちょっぴり一休みしてライトニン・ホプキンスを少し。

過去の音源を購入する場合、極力ダブらないようにと注意をしていますが、、元々そういうの疎いので結構苦労します。特にライトニンは音源多すぎでしょ

この"Sittin' In With"も以前ソニーから出てたし、「Blues Train」というのもある。財布の厚みも薄くなってるというのに、ライトニンとなるとついつい買ってしまう。しかし、買って損したなってことがないのもライトニンだ。要するに好きなんですね。

タイトルを「New York Boogie」と付けられたこのアルバムは、ボブ・シャッドが51年に録音して"Sittin' In With"や"Jax"から出したシングルを、P-Vineが独自に編集したものみたいですね。(1)~(8)が初のニューヨーク録音で、ビルボードR&Bチャートの6位を記録した(1)と(2)もしっかり収録されてます。そして、(9)以降がヒューストン録音となっておりますね。スタイルは勿論、カントリー・ブルース。ギター一本でコール&レスポンス。曲によってはベースも入ってます。NY録音はブギとスローが半々ですが、全体的にスローが多目ですね。ライトニン独特のあのドロドロっとした感じが少なくて、なんかちょっと上品に聴こえる。ブギもギターをガツガツ弾きまくる曲が少なくて、がつーんとくるインパクトに少々欠けるかな。でも、聴けば聴くほど味が出てくるのがライトニンなのです。

2007年10月24日水曜日

Joe Krown Trio / Old Friends


『Joe Krown Trio / Old Friends』 (JRK Music JK-1002)
1) Keep On Gwine
2) Junko Partner
3) Tipitina
4) It Wasn't Me
5) Old Friends
6) My Blue Heaven
7) The Royal Boogie
8) St. James Infirmary
9) Lipstick Traces
10) Feel So Good
11) Tchoupitoulas St. Rag
12) C.C. Rider Boogie

ジョー・クラウンはニューオーリンズ屈指のキーボード奏者。
92年頃からゲイトマウス・ブラウンのバンドに加入するようになり、「Gate Swings」や「American Music, Texas Style」、最後のアルバムとなった「Back to Bogalusa」にも参加しておりました。ゲイトマウスと一緒に来日したこともありましたね。

他には、ルーサー”ギタージュニア”ジョンソンの「I Want to Groove with You」とかキッド・ラモスのアルバムにもゲイトマウスと共に参加してましたので、割とブルースファンにも馴染み深い人だと思います。

ソロになってからは、ジョー・クラウン・オルガン・コンボというバンドを中心に活動してます。初めて聴いたアルバムは、2002年に出た「Funk Yard」でした。ハモンド・オルガンをメインにしたジャズファンクで、クールなグルーヴにほんとシビレましたね。

また、その一方で「New Orleans Piano Rolls」というアルバムを発表。こちらは古典的なニューオーリンズのR&Bやジャズ、ブルースをピアノだけで演奏するというもの。ピアノの腕も相当なもんで、最後まで飽きさせず楽しめるピアノソロのアルバムというのには、早々お目にかかれまい。

新作の「Old Friends」は、「New Orleans Piano Rolls」の続編といってもいいアルバムだが、今回はオルガン・コンボのメンバーでもあるギターのブリント・アンダーソンとドラムのマイク・バーラスを加えたトリオだ。これは自ずと期待は高まる訳でして、クラシックなニューオーリンズR&Bやブギウギがとても気持ちいい。(1)(2)(3)(6)(9)(10)あたりですね。ヴォーカルはブリント・アンダーソンが取ってます。サウンドはトリオということもあって、シンプルでタイト。だけど、割と厚みもありますね。ジョーの左手がポイントなのですが。パーカッションも入ってて、コンガかな?ポカポカとラテン的な色彩が良いアクセントになってます。(4)(5)(7)(11)がオリジナルで、タイトル曲となってるインストのバラード(5)は、ゲイトマウス・ブラウンを偲んでピアノを弾いてるのかなと思ってしまいます。物悲しいピアノの音にジーンときちゃいました。オリジナルで一番好きなのが(7)。テンポの速いブギウギナンバーで、ジョーの繰り出す左手のブギのリズムと、跳ねまわるは転がるはの右手。そこにブリント・アンダーソンのブルージーなアコギが絡んで来る。これはたまらんです。

2007年10月20日土曜日

Dwayne Dopsie The Zydeco Hellraisers / Traveling Man


『Dwayne Dopsie The Zydeco Hellraisers / Traveling Man』 (SONO-1069)
1) My Baby's On The Phone
2) I Wish You Was Mine
3) Peace Of Mind
4) My Louisiana Beauty
5) Traveling Man
6) Where'd My Baby Go
7) My Name Is Hurricane
8) Thinking Of You
9) Everbody Say
10) Zydedco Two Step

5年位前ザディコに嵌った時期があって、今でも当然好きなんですが、バックウィート・ザディコとかボー・ジョックなどのベテラン勢は勿論、クリス・アルドワンとかキース・フランク、ロージー・レデットなどの若手もよく聴いてました。その若手の中でも一番のお気に入りが今回紹介するドウェイン・ドプシーなのです。

初めて聴いたのが「Now It Begins」という自主制作のファースト・アルバム。ジャケはカラープリンターでの印刷ぽいし、メディアはCD-Rというチープな作り。だけど、そのサウンドはパンキッシュなロッキンザディコで、爆走するスピード感とうねりまくるリズムは本当に強烈でした。特に圧巻だったのがジミヘンの「ヴゥードゥー・チャイル」。やはりロック世代だなぁと思いつつも、ジミー・ロジャースの「ザッツ・オールライト」をカヴァーするところとか、ブルースの影響も感じられる。ドウェインはこういうブルージーな感覚も持ってるから魅力的なんですね。

「Traveling Man」は去年発売されたアルバムで、これまでのドウェインと根本的に変わらないサウンドだが、サックスを起用したことで幾分アーバンな雰囲気になってます。

相変わらずのノリの良さとスピード感、ドウェインのアコーディオンの早弾きは、やっぱり爽快。

2007年10月16日火曜日

The Andy J Forest Band / Real Stories


『The Andy J Forest Band / Real Stories』 (Slang Records)
1) Let 'Em Die
2) Gonna Getcha
3) Trailerless Man
4) Swing Is Everything
5) Breach In The Levee
6) 4:20 AM
7) Stinkin' Lincoln
8) Lithium For Art
9) Strollin' with Bone In New Orleans
10) Eddie & Betty
11) Last Words
12) Pick Yourself Up
13) Maintenant

アンディ J フォレストは1955年にワシントン州で生まれ、現在はニューオーリンズで活躍してるハーピスト&シンガー。

60年代後半、ロサンゼルス滞在中にサニー・テリーやウォルター・ホートン、チャーリー・マッスルホワイト、ロッド・ピアッツァなどのライヴを見てハーモニカを覚え、ジョージ・スミスに教えを請うた事もあるそうです。そして、70年代前半からニューオーリンズで活動するようになるのですが、そこにはジェームス・ブッカーやアール・キングなどの影響があったようです。

初期の頃はサザンビートの効いたロック・サウンドでしたが、最近はリゾネイターを用いたSSW的なアーシーなサウンドやフリー・ジャズからフュージョンぽいもの、なんとザディコまでやっちゃいます。ほんと多彩な音楽性を見せておりますが、根本的にブルース。

アンディのメイン楽器はハーモニカだけどリゾネイターも得意で、今回のアルバムでも一曲だけですが、雰囲気のある渋いスライドを弾いてます。で、肝心のハーモニカはというと、表情豊かな音を出すんですね。フレーズも多彩でかなり上手いです。ヴォーカルはなんとなくレイジーな歌い方で、枯れた味のある歌声を聴かせてくれます。

そして、もう一つ忘れてならないのが、優れたソングライターでもあるという事。新作では、T-ボーン・ウォーカーの(9)以外はすべてオリジナルで、全体的にファンク色の濃い音作りなのですが、しっかりと南部の臭いも漂わせてる所がいいんですね。

1曲目からファンキーなビートに乗せたロッキン・ブルース、これがメチャメチャカッコいい。泥臭いロックン・ロール・ナンバーの(2)、緩めのスカ・チューンの(3)とどの曲もたまらんです。そして、ウォッシュボード・チャズがギタリストのロベルト・ルチと共に参加してるのも注目点で、(4)はもろウォッシュボード・チャズ・ブルース・トリオのサウンド。ここまでやっちゃうともう楽しくてしょうがないですね。他にジャジーな曲やらスウィンギーな曲、重心の低いブギー、ザディコとケイジャンの中間ぽい曲なんかもやっております。バンドの纏まりもあって、本当に楽しめます。最高の一枚ですね。

2007年10月14日日曜日

Tab Benoit / Power of the Pontchartrain


『Tab Benoit / Power of the Pontchartrain』 (Telarc CD-83654)
1) Don't Make No Sense
2) Good to Ya, Baby
3) Shelter Me
4) Power of the Pontchartrain
5) For What It's Worth
6) Midnight and Lonesome
7) Sac-Au-Lait Fishing
8) Somebody's Got to Go
9) I'm Guilty of Lovin' You
10) Addicted
11) One Foot in the Bayou

タブ・ベノアはブルースが盛んなルイジアナ州バトンルージュ生れの40歳。
ベノアのトレードマークはテレキャスター・シンライン。ジャケットに写ってるのがメインギターで、使い込まれて年季の入ったシンライン。渋いなぁ~。太過ぎず細過ぎずマイルドでいい音してるんですね。これでスワンピーなブルースをブイブイ弾き倒してくれます。ジョン・フォガティを思わせるような、ちょっぴりハイトーンで力強い歌声もなかなかのもんです。

今回の新作は結構ロック寄りのサウンドになっておりまして、のっけからファンキーなリズムに乗ってギターが気持ち良~く鳴ってます。この音、一度壺に嵌ったらとても脱け出せませんよ。

ベノアのサウンドって独特の雰囲気があって、ブルースファンからは敬遠されがち。生まれがルイジアナだからブルースはもちろん、ケイジャンとかカントリーとかもよく聴いただろうしね。この辺のスワンプがサウンドの基礎となってるんだが、ニュー・オーリンズからの影響や世代が若いからロックからの影響もあって、特にCCRが好きなんだろうなちゅうのもよく分かるし、ジミヘンの影も見え隠れしたりする。そんなこんなをミックスしてハイってな感じかな。一度、食したら忘れられない味なんだけど。
あ、それで思い出した、ガンボスープ。これも一度食べたら忘れられないらしい。
僕はオクラが苦手なので遠慮したことがあったが、今度食べてみようかな。
でも、福岡で食べさせてくれる所があるのかな?

2007年10月11日木曜日

Marva Wright / After the Levees Broke


『Marva Wright / After the Levees Broke』 (Aim 5015)
1) Levee Is Breaking Down
2) Katrina Blues
3) God's Good Hands [From Hurricane in the Bayou]
4) Way It Is
5) You Are My Sunshine
6) You Got a Hold of Me
7) Funny Not Sunny Kind of Love
8) Bluesiana Mama 07
9) Rock Me
10) I Have Had My Fun
11) Crazy
12) Change Is Gonna Come

"New Orleans Blues Queen"マーヴァ・ライトの新作は、「堤防が決壊した後」という意味のタイトルで、カトリーナでの悲惨な現実や生まれ育ったニューオーリンズへの思いを歌ったアルバムのようです。

冒頭、ヘリコプターの効果音が嫌が応でも連想してしまう重々しい雰囲気から始まるが、曲自体は軽快なコンテンポラリーブルース。元々、ゴスペル・シンガーだったマーヴァのとてもパワフルで豊満な伸びのある歌声には、ぐっと引き込まれる魅力があります。次の重心の低いスローブルース(2)も迫力があっていいですね。山岸潤史がギターで参加してて、これがまたマーヴァを盛り立てるような良いギターを弾くんですよね。渋いです。他に98年に発売した曲の再演(8)や軽快なロック・ナンバーの(9)。この辺りが好きですね。

また、マーヴァはバラードを歌わせても素晴らしくて、どちらかと言うとバラードの方がいいんじゃないかなと思う位です。(3)(10)(11)(12)辺りがそうですが、特にサム・クックの(12)が良い。マーヴァは歌詞を変えて歌ってるようで、気持ちの入り様といい、表現力の豊かさといい、抜群です。感動しました。

英語はさっぱりなんで詳しい詩の内容は分かりませんが、こうしてマーヴァの歌声を聴いてるとそれほど悲愴感は感じられず、希望を持って元気に生きようとするエネルギーを感じます。ニューオーリンズの葬儀ではブラスバンド入りのパレードをするのはよく知られてることで、バンドは墓地に行くまでは悲しく、帰り道は陽気に演奏するそうです。こういう前向きなニューオーリンズ気質が好きなんですよね。

2007年10月8日月曜日

New Orleans Music Guide Book


待ちに待った「ニューオーリンズ・ミュージック・ガイド・ブック」が漸く発売されます。
タワーレコードで先行発売されたので、早速昨日購入してきました。
ざっと中身を拝見させて頂いたが、噂通り本当に内容の濃い~本になってます。
プロフェッサーやアール・キングの写真から始まり、カーニヴァルやジャズフェスの写真なんか見てると、行ったことのない自分にとってはタメ息が出そうです。
それから、ニューオーリンズの歴史、用語解説もありまして、これなんか今更聞けな~いちゅうことで有難い。そして、大御所達の紹介。
勿論、ディスク・ガイドもドド~ンと掲載されてます。Jazz/Brass Band、R&B/R&R、Blues、Soul/Gospel、ネヴィル・ファミリーは独立したコーナーになってて、層の厚さや影響力の大きさを感じますね。そして、Funk/Jam BandからRockまで。こうして見てるとニューオーリンズの街には、いろんな音で溢れてるのがよく分かります。現在活躍されてる人達のアルバムもきっちり紹介されてるのも嬉しいですね。
あれやこれやと欲しい物が.....明日からまた素うどんか~。

2007年9月2日日曜日

Classic Blues Artwork 1920's Calendar 2008



毎年恒例になったブルース・カレンダーの2008年版が発売されます。
2004年のチャーリー・パットンの全身写真を用いた表紙から始まり、早5年目となりました。今年はサム・コリンズ。チャーリー・パットンの次に良い表紙ですね。
カレンダーの中も例年通り、20年代のSP盤の広告を使用しててとっても渋いです。
そして、今年も勿論CD付。月と曲順がリンクした凝った作りで、こちらも楽しめますよ。
カレンダーを眺め、当時を想像しながら音を聴く。なかなか乙なものですね。
このシリーズはあと10年続くそうですから、必ずコンプリートします。


Track Listing
1)Range In My Kitchen Blues - Texas Alexander
2)One Dime Blues - Blind Lemon Jefferson
3)Mississippi Jail House Groan - Rube Lacy
4)Nehi Mama Blues - Blind Joe Reynolds
5)Deep Moaning Blues - Ma Rainey
6)Jail House Blues - Crying Sam Collins
7)Madison Street Rag - Banjo Joe (Gus Cannon)
8)Seaboard Stomp - Blind Blake
9)New Shake That Thing - Mississippi Sheiks
10)Low Down Jail House - Blind Blake
11)Cold And Blue - Ida Cox
12)The Santa Claus Crave - Elzadie Robinson
Bonus tracks
13)Ain’t Gonna Do That No More - Blind Blake
14)Talkin’ To You Wimmen ’Bout The Blues - Blind Willie McTell and Mary Willis
15)Merciful Blues - Blind Willie McTell and Mary Willis
16)Outside Woman Blues - Blind Joe Reynolds

2007年7月19日木曜日

Fillmore Slim / The Legend of Fillmore Slim


『Fillmore Slim / The Legend of Fillmore Slim』 (Mountain Top CD-MTP777)
1) Legend of Fillmore Slim
2) Trapped by the Devil
3) Nosey Woman
4) Love for the Third Time
5) Hey Little Brother
6) Watch Yo'self
7) Jack You Up
8) My Friend Blue
9) Vegetable Man Intro
10) Vegetable Man
11) She Don't Love Me
12) Blues from the Heart
13) Tired of My Old Lady
14) Legend of Fillmore Slim Intro

フィルモア・スリムは34年ニューオリンズで生まれ、現在ウェストコーストで活躍しているシンガー&ギタリスト。55年頃からロスで活動し始め、59年に録音もしてるようですが、聴いた事はないです。初アルバムはクラレンス"ギター"シムズ名義で、87年に出された「Born to Sing The Blues」。99年にMountain TopからCD化されたものを初めて聴いた訳でして、一発で気に入りそれからのファンです。少々繊細でハイトーンの歌声は好みが分かれる所ですが、エモーショナルでソウルフルな歌い回しをし、僕は結構好きです。ギターはあまりチョーキングを多用しない無骨なタイプ。当時はレスポールタイプのギターを使用しており、微妙に歪みサスティーンの効いた音はとても気持ち良くて、フレージングも良いので、なかなか聴かせてくれます。しかし、最近は歌に専念して、あまりギターを弾いてくれないので少々寂しいですね。

今回の新作でも8)と11)でギターを披露してますが、殆ど歌に専念してます。いつもの特徴のある歌声は健在で、73歳とは思えないほど張りがあり上手いですね。感服させられます。ギターは今や無くてはならない存在となったフランク・ゴールドワッサーが全面的に参加し、ハーモニカではリック・エストリンが渋く華を添えてます。そしてもう一人、ギタリストのジョー・ルイス・ウォーカーが参加してますが、重低心のファンク・ブルース3)ではド派手に弾き倒してくれてます。カッコいい曲ですね。シャッフルの6)やエルモア調の3連スライドが入る13)もなかなかカッコいいし、ラップを取り入れたスローの5)や語りが入った11)も相変わらず遊び心があって面白い。そして、何と言ってもナイスなのが12)。この曲は尊敬するギタリストを偲んで作られた曲のようで、歌詞の中にギタリストの名前が次から次に出てきて、それに答えるかごとく透かさず、フランク・ゴールドワッサーがギターでそのフレーズを真似る。T-ボーン・ウォーカー、ジョニー・ギター・ワトソン、BBキング、アルバート・キング、アルバート・コリンズ、フレディ・キング。これがとても似てるし的を突いてるので思わずニヤリ。ほんと器用ですね。前半はスローに粛々と進むのですが、後半のソロ以降、ジョー・ルイス・ウォーカーが「これでもか」という位熱く弾きまくってます。やり過ぎだろって思うのですが、まー、いいやね。

2007年6月13日水曜日

V.A. / Blues Harp Diggers ~ Best Of Big Walter Horton


『V.A. / Blues Harp Diggers ~ Best Of Big Walter Horton』 (P-Vine PCD-23954)
1) JOHNNY SHINES / Evening Sun
2) SHAKEY "BIG WALTER" HORTON / Have A Good Time
3) BIG WALTER HORTON / Jumpin' Blues
4) BIG WALTER HORTON / Hard-Hearted Woman
5) JESSE FORTUNE / Too Many Cooks
6) BIG WALTER HORTON / Cotton Patch Hot Foot
7) BIG WALTER HORTON / I'm In Love With You baby (Walter's Blues) [take 1]
8) BIG WALTER HORTON / What's The Matter With You [take 1]
9) ARBEE STIDHAM feat. SHAKEY "BIG WALTER" HORTON / When I Find My Baby
10) GEORGE "WILD CHILD" BUTLER / Open Up Baby
11) BIG WALTER HORTON / Black Gal
12) BIG WALTER HORTON / Blues In The Morning
13) BIG WALTER HORTON / Little Boy Blue [take 2]
14) SHAKEY "BIG WALTER" HORTON / Need My Baby
15) BIG WALTER HORTON / Hard Hearted Woman
16) BIG WALTER HORTON / Now Tell Me Baby [take 2]
17) BIG WALTER HORTON / Back Home To Mama
18) TOMMY BROWN feat.BIG WALTER HORTON / Southern Women
19) SUNNYLAND SLIM feat.BIG WALTER HORTON / Highway 61
20) BIG WALTER HORTON with CAREY BELL / Trouble In Mind

P-Vineのブルース・ハーモニカのコンピ・シリーズは、全部で5枚リリースされるそうですが、こちらもその中の1枚で、ビッグ・ウォルター・ホートンの名演集となってます。

のっけからジョニー・シャインズの53年JOBセッションに客演した時の曲とは、こりゃまた粋ですね。イントロのアンプリファイド・ハープのこの音。切れの良さといいアタックの強さといい、何度聴いても惚れ惚れしてしまいますよね。どっちがメインか分かんない位吹きまくってて最高です。

2)や14)は56年のコブラ録音。コブラといえばオーティス・ラッシュが超有名で、「I Can't Quit You Baby」ではホートンがハーモニカを吹いていたが、ホートンの曲ではラッシュがギターを弾いてます。ウイリー・ディクソンが絡んでるだけあって、R&B的な感覚のモダンな作りで新しさを感じます。ハロルド・アシュビーのサックスとホートンの太いハープ。この絡みは本当にたまらんですね。

3)や6)~8)、11)~14)は51年、メンフィスでのモダン・RPM録音。この頃はまだ生ハープなのですが、音の太さは本当に凄いですね。それと、ハンド・ヴィブラートを使った奏法は、当時のあだ名"MUMBLES"からも分るように、もごもごとした吹き方もホートンの特徴的はものです。18番の「Little Boy Blue」はやっぱシビレます。

4)、17)の54年ステイツ録音も傑作なんですよね。
5)や9)、10)、18)、19)といったサポート側に回った時でも名演奏は多く、その存在感に圧倒されます。19)のサニーランド・スリムの56年コブラ・セッションに、共に参加しているジミー・ロジャースの「Walking By Myself」、この曲でもホートンがハーモニカを吹いてるのはご承知の通りで、僕はこの曲でビッグ・ウォルター・ホートンを初めて聴いたのですが、その繊細かつ豪快なブローは凄まじく、一発で惚れ込んでしまったのです。

これだけの巨人でありながら性分が災いしてか、自己名義の録音にあまり恵まれず、晩年までマックスウェル・ストリートで演奏し続けていたそうです。感慨深いものがありますね。そんなウォルター・ホートンのありそうでなかった究極のベスト盤。チェスの一連のベスト盤に匹敵するくらいの内容で、マスト・アイテムになること間違いなし、と思います。

2007年6月10日日曜日

V.A. / Blues Harp Diggers ~ Funky Harmonica


『V.A. / Blues Harp Diggers ~ Funky Harmonica』 (P-Vine PCD-23953)
1) LOUIS MYERS / Top Of The Harp
2) BOBBY RUSH / She's A Good Un - Part.1
3) JUNIOR WELLS / Snatch It Back And Hold It
4) JERRY McCAIN / Juicy Lucy
5) SMOKEY WILSON / Go Go Train (alt.take)
6) FRANK FROST / Feel Good babe
7) GEORGE "WILD CHILD" BUTLER / Hold Me Baby
8) RAFUL NEAL / Let's Work Together
9) BUSTER BENTON / Do It In The Rain
10) JIMMY REED / Big Legged Woman
11) FRANK FROST / My Back Scratcher
12) GEORGE "WILD CHILD" BUTLER / Jelly Jam
13) JERRY McCAIN / Soul Spasm
14) JIMMY REED / Big Boss Man (High Energy Version)
15) JUNIOR WELLS / We're Ready
16) SMOKEY WILSON / Tell Me Baby (alt.)
17) ROD PIAZZA & THE MIGHTY FLYERS / Come On Home
18) BILLY BRANCH & CARLOS JOHNSON / Don't Throw Your Love On Me So Strong
19) BERNARD McGEE / The Time Is Right

P-Vineのブルース・ハーモニカ特集第2弾は、ファンキー編ですよ。
デルマークやジュウェル、ケントなどの音源から選曲されたもので、ファン垂涎の名曲がずらーと並んでますね。耳にタコが出来る程聴き込んだ曲ばかりですが、何回聴いても聴き飽きないんです。このファンキー・グルーヴ、たまらん。

2007年6月7日木曜日

Dennis Binder / Hole in That Jug


『Dennis Binder / Hole in That Jug』 (Earwig CD 4952)
1) Must Be A Hole In That Jug
2)Big Leg Mama
3) She's Somethin' Else
4) I'm Lonesome
5) You Got Me Way Down Here
6) Funky Butt
7) Love Call
8) Early Times
9) I Don't Want Nobody Messin' Around With Me
10) Why Everybody Sings The Blues
11) Terrorist On The Loose
12) Everybody Needs A Miracle
13) Goin' Home

デニス・バインダーは1928年ミシシッピー州ローズデイル生まれのシンガー&ピアニスト。39年頃にシカゴに移り、51年にチェスで4曲録音したが発表されず、その後アイク・ターナーのバンドに入り、54年にはモダンの録音にも参加したようですね。他にギター・レッドとのサンでの録音やデルマークでも録音を残していますが、今回、アーウィグから発表された新譜は、自身初のフルアルバムみたいです。

冒頭から挨拶代わりの軽快なノリのロックンロール・ナンバー、流石にこういった曲はお手の物でなかなか良いです。ヴォーカルはリトル・リチャードほどのバイタリティは感じられませんが(80前だから当然かも 汗汗)、比較的ディープで柔らかい歌声は味があって惹かれますね。控え目ですがコロコロ良く転がるピアノも印象的です。

2曲目はミディアム・シャッフルのブルース。デトロイト・ジュニアやマジック・スリムのティアドロップスに参加してたシカゴ・ブルースのベテランギタリスト、ジェームス・ホイーラーとジョディ・ウイリアムスのアルバムに参加してたクリス・ジェームスのギターが、なかなか渋くていい味出してます。

7)と9)は60年に録音された曲のようです。通して聴いててもそれ程違和感はなく、全体的にヴィンテージなサウンドだからでしょうが、この録音にはA.C.リードやヴィンセント"ギター・レッド"デュリングが参加してます。9)のソウル・バラードでは、A.C.リードの図太いサックスに痺れます。デニス・バインダーのヴォーカルも若いだけあって、声に艶があって上手いですね。

8)はニューオリンズR&B風のロックンロール・ナンバーで、本領発揮するのはやはりこのような曲みたいです。とっても楽しい曲で結構好きですね。若い頃の録音をもう少し聴いてみたくなりました。

2007年5月30日水曜日

V.A. / Blues Harp Diggers ~ Rockin' & Blowin'


『V.A. / Blues Harp Diggers ~ Rockin' & Blowin'』 (P-Vine PCD-23914)
1) Icepick's Confession
2) Chicken Shack Boogie
3) Turn Your Damper Down
4) Pretty Thing
5) Evening Sun
6) Gonna Keep What I've Got
7) My Love Is Here To Stay
8) Big Road Blues
9) My Home
10) Three-Way Party
11) Cause I Love You
12) Big Leg Woman
13) Tomorrow Will Find Me The Same Way
14) She Wants To Sell My Monkey
15) Hey Little Girl
16) Hook, Line And Sinker
17) No Money Down
18) Born To Boogie

テキサスやウェストコースト、ニューオリンズなどの上質のリアル・ブルースを供給することで定評のあったブラックトップ。このレーベルから出されたブルース・ハーモニカに焦点を絞った、コンピレーションアルバムです。

テキサス~ウェストコーストのお気に入りのハーピスト達が次から次に登場します。
ジェイムス・ハーマンにロッド・ピアッツァ、テキサスのゲイリー・プリミチ、ラスティ・ジンのアルバムに参加したキム・ウィルソンやリック・エストリン。テキサスのギタリストのマイク・モーガンにはリー・マクビーなど。ノリの良い明るいサウンドのロッキン・ブルース。僕の大好きな音が目白押しなもんで、もう楽しくて仕方ありません。

あと、アンスン・ファンダーバーグ&サム・マイヤーズやジョニー・ダイヤーといった黒人ハーピストも収録されてますが、この音には痺れますね。ヴェテランの貫禄で、味わい深さもひとしおです。
忘れるところでしたが、マディのバンドに居たジェリー・ポートノイも入ってます。
全曲、理屈ぬきで楽しめます。

2007年5月27日日曜日

Barbara Blue and the Phantom Blues Band / By Popular Demand


『Barbara Blue and the Phantom Blues Band / By Popular Demand』 (Shout 33)
1) Trouble with a Capital "T"
2) Back by Popular Demand
3) Toolbox Blues
4) Don't Lead Me On
5) Road Blues
6) Can't Get Your Lovin' off My Mind
7) Sell My Jewelry
8) From the Delta to the Golden Gates
9) Cheatin' Blues
10) Drunken Angel
11) Brought Together by the Blues
12) Turtle Blues
13) Moonlight Over Memphis
14) If I Had You
15) Red Cadillac & The Blues
16) You Can't Stop My Love
17) No No Baby
18) Old Man's Moving Out

バーバラ・ブルーはピッツバーグで生まれ、メンフィスで活躍しているブルースシンガーですが、全く知らなかった人で、このアルバムはファントム・ブルース・バンド(タジ・マハルと共演してグラミー賞を受賞したバンド)が参加してるというだけで購入したものです。ですが、このバーバラ・ブルーというシンガー只者ではないですね。抜群の歌唱力で、ジャニス・ジョプリンのような歌い方をする時もありますが、図太くてパワフルな歌声は白人離れした、黒人シンガーそのもので、かなり説得力のあるシンガーですね。

ファントム・ブルース・バンドの素晴らしいサポートを受けて、ファンキーなブルースやジョン・リー・フッカーのようなローダウンなブルース、ソウル、R&Bバラード、ニューオリンズものまで歌いこなしております。どの曲もメジャー級といっていいほどの出来です。メンフィスのクラブシーンで鍛え上げられた年期が感じられます。

2007年5月24日木曜日

Candye Kane / Guitar'd and Feathered


『Candye Kane / Guitar'd and Feathered』 (BSMF-2044)
1) My Country Man
2) Back with My Old Friends
3) When I Put the Blues on You
4) I'm Not Gonna Cry Today
5) I Done Got Over It
6) Goodbye My Heart
7) I'm My Own Worst Enemy
8) Fine Brown Frame
9) I'm Lucky
10) Jesus and Mohammed
11) Club of the Foolish Hearts
12) We're Long Ago and Far Away
13) Crazy Little Thing

ロサンゼルス出身のジャンプ・ブルース・シンガー、キャンディ・ケインの通算8枚目となる新作です。94年にアントンズからデビューする前、80年代にはパンク・ロックを歌って評判になり、86年にCBSと契約するのですが、キャンディの波乱万丈な過去を警戒したCBSは契約を破棄したらしいんですね。傷心したキャンディはサンディエゴに移り、パラディンのベーシスト、トーマス・イアズリーと結婚後、コミュニティ・カレッジに通って勉強。ルース・ブラウンやビッグ・ママ・ソーントン、エタ・ジェームス、ベシー・スミスなどに触れ、ブルースに目覚める訳です。ジャンプにジャイヴ、スウィング、R&Bからシャッフルやロックンロールまで、何でも歌いこなす歌唱力は相当なものであり、あのダイナマイト・ボディから発せられる歌声は、とてもパワフルで圧倒されます。また、作曲も自分でこなし、結構いい曲を書きますよ。

今回は、豪華なギタリストをゲストに呼んでのアルバムになってます。
T-ボーン・ウォーカーばりのギターを弾いてるジュニア・ワトソンやプロデュースも担当してるボブ・マーゴリン。カナダ出身のスー・フォーリー。ジェフ・ロスのDell Arte Gutarは透明感のある気持ちいい音を出してます。カントリータッチの軽快なブルースをアコースティック・ギターでペキペキ弾いてるキッド・ラモス。ブルース・ロックなギターを弾いてるユーゴ出身の女性ギタリスト、アナ・ポポヴィッチ。あと、ボブ・ブロズマンやポパ・チャビーなど。それぞれのギタリストが個性的なプレイを披露してくれてて、とてもバラエティに富んだ楽しい作品になってます。キャンディも負けじと力強い歌声を聴かせてくれてますが、ゲスト陣によってよりキャンディの素晴らしさが際立った感がありますね。
もし、キャンディ・ケインを聴いたことないという人は、騙されたと思って聴いてみて下さい。きっと、今年のお気に入りの一枚になると思いますよ。

2007年5月17日木曜日

The Mannish Boys / Big Plans


『The Mannish Boys / Big Plans』 (Delta Groove DGPCD-116)
1) Border Town Blues
2) I Can't Stay Here
3) I Get So Worried
4) Mary Jane
5) Carpet Bagger Blues
6) Just to Be with You
7) Gotta Move
8) Why Do Things Happen to Me
9) Groan My Blues Away
10) Mine All Mine
11) Young & Tender
12) My Baby's a Good 'Un
13) Broken Hearted Blues
14) Walkin' Down Fillmore
15) California Blues

ウェストコーストで今一番勢いのあるブルースレーベル、デルタ・グルーヴの看板バンドであるマニッシュ・ボーイズが新作を発表しました。まず気になるのは主要メンバーの顔ぶれなんですが、前作のライヴ盤「Live & In Demand」でのメンバー8人が引き続き参加してます。それに、T-バーズに加入したギターの名手、カーク・フレッチャーが再び参加しているのは嬉しいですね。スペシャル・ゲストには奇蹟の復活を遂げたジョディ・ウィリアムス、シカゴのベテランシンガーのボビー・ジョーンズ、ウェストコーストのギタリストでリック・ホームストローム、デルタ・グルーヴでアルバムも出してるハーピストのミッチ・カシュマー、ピアニストのロブ・リオなどの8名。総勢17名が入り乱れてのスタジオ録音となってます。メイン・ヴォーカルのフィニス・タスビーは5曲、ジョニー・ダイヤーにおいては2曲しか歌ってなくて、あとは他のメンバーやゲストが交代で歌っております。バンドも曲ごとにキャスティングが代わり、2曲と同じ面子での演奏はない位複雑な組み合わせです。レギュラー・メンバーというのにあまり拘ってないんでしょうね。しかし1作目の「That Represent Man」とは少々趣の異なるサウンドも聴けるが、全体的に1作目と変わらないマニッシュ・ボーイズのサウンドになってるのは流石に凄いと思いますね。ほんとに面白いバンドです。サウンドはOld Schoolと言っていいヴィンテージなシカゴサウンドが基本で、ウェストコーストのカラッとした音や泥臭いダウンホームな音、テキサスなどを混ぜ合わせた感じ。アリゲーターのような派手派手ではなく、カラーでもモノクロでもないセピア色のような温もりのあるサウンドが特徴的で、本当に気持ち良く聴けますね。

オープニングはロング・ジョン・ハンター作で、これぞマニッシュ・ボーイズと思わせるような軽快なノリのシャッフル。ヴォーカルはフィニス・タスビー。とぼけた様な歌口は味があっていいんですよね。そして、リードギターがカーク・フレッチャーでサイドがフランク・ゴールドワッサー。これは1作目のラインナップ(ドラムとベースは違いますが)。カークの切れ味の良い流暢なソロとフランクのエディ・テイラーを思わせる職人芸の渋いサイド。たまらんです。2曲目はローリン&タンブリン調で、ハウンド・ドッグ・テイラー流儀のロッキンなブギ。これは完全にフランク・ゴールドワッサーの趣味ですね。フランクが歌いギターを弾いてますが、このスライドのカッコいいこと、痺れます。カークのカッティングがいいアクセントになってます。3)ではフィニスとキッド・ラモスの組み合わせで、渋いスローブルースをやってます。キッド・ラモスのT-ボーン・ウォーカーを彷彿とさせるギターは、とても渋く味わい深いですね。6)はジョニー・ダイヤーがヴォーカルとハーモニカで参加。マディも録音したダウンホームな曲。ジョニーの得意とする分野で、流石にこのディープな歌声はほんといいです。8)ではフィニスの深みのあるヴォーカルとキッド・ラモスのテキサス流の枯れたギターの絡みは渋すぎ。9)でいよいよジョディ・ウィリアムスが登場します。スワンプ・ポップぽい曲調で、ほのぼのとしてて和みますね。ジョディは11)でもヴォーカルとギターを担当しますが、ここではジョディらしい深みのあるヴォーカルとクリーントーンのギターが堪能できます。10)のロッキン・ブルースでは、キッドがスライドを弾きますがこれもなかなかイケテます。13)はジミー・ロジャースのとびっきりダウンホームな曲。コテコテです。ミッチ・カシュマーのアンプリファイド・ハープがとてもカッコ良くって痺れますよ。そして、これだけスカスカだとアップライト・ベースも活きてきますね。T-バーズの元ギタリストのキッド・ラモスと新ギタリストのカーク・フレッチャーが顔を合わせるのは、このアルバムの中でも12)と14)だけ。特に14)では1stソロをカーク、2ndソロをキッドと言う具合にソロを分け合います。こんな競演は滅多に聴けるものではありません。一聴の価値ありです。最後はボビー・ジョーンズがハウリン・ウルフナンバーを歌いますが、意識した歌い方に思わずニヤッとしてしまいました。カークのギターも最高です。

デビューアルバムが出た当初、あまりに役者が揃ってたので企画物みたいな感じがして、単発で終わりだろうなと思ってました。でも、こうやって3作目が出たとなると、メンバーは変われど継続してくれると確信しました。嬉しいことです。次はどんなスペシャルなゲストが参加してマニッシュ・ボーイズを演じてくれるか、楽しみになりました。

2007年5月10日木曜日

Carey & Lurrie Bell / Gettin' Up


『Carey & Lurrie Bell / Gettin' Up』 (P-Vine PCD-23915)
At Rosa's Lounge July 27,2006
1) What My Mama Told Me
2) Gettin'Up
3) Baby Please Don't Go
4) Bell's Back
At Buddy Guy's Legends October 21,2006
5) One Day
6) Leaving In The Morning
7) Last Night
8) Low Down Dirty Shame
At Lurrie's Home July 28,2006
9) Broke And Hungry
10) When I Get Drunk
11) Short Dress Woman
12) Stand By Me


『Carey & Lurrie Bell / Gettin' Up』 (P-Vine PVDV-31)
At Rosa's Lounge July 27,2006
1) What My Mama Told Me
2) Gettin'Up
3) Baby Please Don't Go
4) Bell's Back
5) Hard To Leave You Alone
6) I'm A Fool
At Buddy Guy's Legends October 21,2006
7) One Day
8) Leaving In The Morning
9) Last Night
10) Low Down Dirty Shame
At Lurrie's Home July 28,2006
11) Broke And Hungry
12) When I Get Drunk
13) Short Dress Woman
14) Stand By Me

キャリー・ベルが5月6日、心不全で亡くなりました。享年70でした。
キャリーが活動できる間にと、デルマークが急遽セッティングしたのがこのライヴ・レコーディングだそうで、これが遺作となってしまいました。なんとも皮肉なことで残念なのですが、今となっては本当に貴重な映像となりました。

キャリーは軽い心臓発作で倒れ、お尻の骨を折って入院しており、退院後間も無くして行われたのがこのローザス・ラウンジでのライヴだそうです。体調は万全じゃないようで終始椅子に座って演奏してますが、流石にキャリー・ベルですね、貫禄十分です。ジュニア・ウェルズ作で適度にノリの良いシャッフルの曲から始まります。「ディープ・ダウン」の頃のようにブリブリという訳にはいきませんが、ベテランの味と言いましょうか、いぶし銀のハープと深みを増した歌声、痺れますね。そして、もう1人の主役ローリー・ベル、近年はテイル・ドラッガーやミシシッピ・ヒートなどのライヴに出演したりと活躍目覚しいですが、久しぶりに親父さんとのライヴ録音ということで気合入ってます。切れの鋭い鋭角なギター、冴えてますね。最近のローリーのギターの中では本当に最高の出来ですよ。2曲目はキャリーがこの日の為に用意した新曲。スローなシャッフルで結構いい曲です。3)ではローリーがヴォーカルを担当します。4)はノリノリなインスト。キャリーも元気に吹きまくってくれて、まだまだやれるよと思ったのですが。そして、5)はオリジナルのスロー・ブルース。ここでキャリーの年季の入ったクロマチック・ハーモニカが登場しますが、イントロのフレーズ、この音、メチャクチャ痺れます。歌も感情入ってて涙腺に響いてきました。また、ローリーの切れの良いギターソロがゾクゾクするんですよ。もう痺れぱなしで最高です。

11)からはローリーの自宅でのセッションが収録されてます。親子二人でダウンホームな演奏をしてます。アットホームでリラックスした雰囲気がとても良く和みました。最後にローリーがゴスペル調で「スタンド・バイ・ミー」を熱唱しますが、家族思いが伝わってきて心温まりました。

キャリー・ベル、そしてローリーの愛妻スーザンのご冥福をお祈り致します。

2007年5月7日月曜日

Chuck Higgins / Pachucko Hop


『Chuck Higgins / Pachucko Hop』 (Ace CDHP-024)
1) Pachuko Hop
2) Blues 'N' Mambo
3) Iron Pipe
4) Boyle Heights
5) Blue Sax
6) Papa Charlie (Vocal : Daddy Cleanhead)
7) The Duck Walk
8) The Rooster
9) Tortas
10) Big Fat Mama (Vocal : Daddy Cleanhead)
11) Stormy (Vocal : John Watson)
12) Just Won't Treat Me Rite (Vocal : John Watson)

ウェストコーストで活躍してたサックス奏者、チャック・ヒギンズの52年に発表された名盤中の名盤です。92年にスペシャルティがCD化したことがありましたが、今回のはジャケットの表裏や収録曲もオリジナルを忠実に再現し、紙ジャケでリイシューされました。オリジナルLPは超レア盤で、1000ドル位はするらしいです。

オリジナルでは1)~6)がA面、7)~12)がB面で、根本的にジャンプ・ブルースなのですが、A面とB面ではちょっぴり曲調が違ってて、A面ではまだジャズ寄りで、ジャイブ的な雰囲気を見せつつも、ワイルドでアグレッシブなブローサックスが結構クールだったり、ラテンのリズムを取り入れたジャンプ・ナンバーなんかもヒップでいいですね。B面はロックンロール旋風が吹き始めた頃のサウンドらしく、ロッキンなリズム&ブルース色がぐっと強くなってきてますね。より以上にヒップになった感じです。そして、なんと言っても注目すべき点は、ジョニー・ギター・ワトソンがピアニストとしてバンドに参加してることで、11)と12)では作曲とヴォーカルを担当しております。11)はブルース・バラード、12)はジャンプ・ブルースで、他の曲とは一線を欠くブルース色の強い曲調になってます。ブルースファンとしてはこの辺りも聴き所の一つですね。また、7)と8)だけギターが入ってて、クレジットはないのですが、このギターは間違いなくジョニー・ギター・ワトソンだと思います。ロッキンなリズム&ブルースで、ジャイヴな雰囲気もありとても楽しい曲ですね。ギターも痺れる位カッコ良くて、アルバム全体通してこの2曲が最高です。

2007年4月30日月曜日

Koko Taylor / Old School


『Koko Taylor / Old School』 (Alligator ALCD-4915)
1) Piece Of Man
2) Gonna Buy Me A Mule
3) Black Rat
4) Money Is The Name Of The Game
5) You Ain't Worth A Good Woman
6) Better Watch Your Step
7) Bad Avenue
8) Bad Rooster
9) Don't Go No Further
10) All Your Love
11) Hard Pill To Swallow
12) Young Fashioned Ways

シカゴブルースの女王、ココ・テイラーが7年ぶりに新作を発表しました。大ベテランがアルバムを出して、元気なところを見せてくれると嬉しいものですね。タイトルからもイメージできる通り、古き良き音を、重心の低いサウンドに乗せて豪快にシャウトしてます。一曲目からのこの迫力、自信が漲ってて貫禄ですね。このジャケットが物語っております。バックのサウンドもとてもカッコ良くて、ギターはいつものクリス・ジョンソンがメインで弾いてますが、この人はどうしても外せないようですね。ゲスト参加のボブ・マーゴリンもカッコいいスライドを決めてくれてます。ハーモニカはビリー・ブランチ。そして、ココのバンド、ブルース・マシーンの一員でもある菊田俊介さんが、一曲ですが参加してるのは嬉しいですね。
どっしりとした腰のある濃いシカゴ・サウンドを堪能できますよ。

ココ・テイラーも参加する今年のBLUES & SOUL CARNIVALですが、他の出演者にローリー・ベル、吾妻光良&スウィンギン・バッパーズ、マダムギター長見順という、"& SOUL"を外してもいい位、濃いラインナップとなっておりますね。特に、ローリー・ベルの参加は良かった。奥さんを亡くされて、また逆戻りなんてことにならなくて。見に行きたいけど見に行けない。こういう時に東京から田舎に帰ってくるんじゃなかったとつくづく思います。

2007年4月24日火曜日

Cleo Page / Leaving Mississippi


『Cleo Page / Leaving Mississippi』 (P-Vine PCD-23893)
1) Leaving Mississippi
2) Red Nigger
3) I Got A Girl
4) Wine
5) Roll Your Belly Slow
6) You Know You Wrong
7) California Prison Farm
8) Boot Hill
9) California Style
10) Guitar Lullabye
11) Don't Tear My Clothes
12) Goodie Train

この前書いたウォッシュボード・ウィリーは、デトロイトのコンピで聴いた事があったのだが、このクレオ・ペイジは名前すら知らない初めて聴くブルースマンでした。こんな得体の知れない(そう思ってるのは自分だけかも)ブルースマンを出すP-Vineてよくやるなぁと感心してしまいます。それに、bsr誌のリヴューでの評価は星2つ半なんだもん。でも、こんな評価の低いアルバムが、意外と当りってことがあるんですよね(笑)

タイトルからミシシッピのデルタスタイルをイメージしてしまうが、実際はテキサス~ウエストコーストに近い音で、めちゃくちゃダウンホーム。1)や5)はずばりライトニンで、このギターはもろだもんなぁ。スローブギの1)は力の入った迫力のヴォーカルに圧倒されるが、サウンドはロウダウンでスカスカ。これがいいんですよね。3)はもろ「ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー」で、このアルバムの中では比較的モダンな音になってます。4)ではぶっきらぼうな歌が、後のブロークンブルースに通じる所があるし、ずっと同じリフを弾くチープなオルガンも印象的ですね。6)や11)では、フルソンの「リコンシダー・ベイビー」のギターソロが出てきたりするのですが、特別達者というわけではないけれど、割と味のあるギターを弾くと思います。9)は「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」をロッキンにやってる曲で、ギターが結構カッコいい。11)はフェスの「ベイビー・レット・ミー・ホールド・ユア・ハンド」をアップテンポにアレンジした曲。スネアの音がとても面白く、これは楽しいですね。最後はシスター・ロゼッタ・サープの「ディス・トレイン」。ハーモニカがカッコいいが、ワンコードで刻むリフや女性のコーラスがとってもユニークで、これも妙に耳に残ってしまう面白い曲です。
B級ガレージのブルース版みたいなサウンドがね、これが一度ハマっちゃうと抜け出せなくなるんですよね。本当に癖になりそうな音です。

2007年4月20日金曜日

Rusty Zinn / Reggaeblue


『Rusty Zinn / Reggaeblue』 (Bad Daddy 659428-0023-27)
1) She Comes From Nothing
2) The World Is In Rewind
3) Just Take Your Time
4) Pushin' Towards A Dream
5) Everytime I See A Rainbow
6) Reggae My Blues Away
7) Can't Take My Eyes Off Of You
8) My God
9) You Got To Show It
10) A Song Of My Own
11) The Day After
12) Heaven Is A Place Called Zion

ラスティ・ジンの今年出た新作ですが、これには驚きました。タイトルが「レゲエ・ブルー」だったもんで、レゲエぽい曲でもやってるのかな位に思ってたら、ここまで純度の濃いレゲエアルバムを出してくるとは思いもよりませんでした。大まかに言って、レゲエのグルーヴをベースにソウル、R&B、ブルースを歌うというミクスチャー的な趣旨で、曲は7)を除いて全てオリジナル、バンドはソウル・シンジケートやビッグ・マウンテンのメンバーだったTony Chin、Santa Davis、Fully Fullwoodを12曲中6曲に起用するといった力の入れようで、本気度が見て取れます。

収録曲を少し紹介しますと、1)はソウルな歌い出しから始まりレゲエにという流れで、構成も良く出来た曲ですね。バンドはブルース畑の人達が担当してます。2)は古典的な70年代のレゲエ。バックはソウル・シンジケートのメンバーによるもので、流石にジャマイカのトップクラスだけあって良いグルーヴしてます。3)はクラシックなソウルバラード。いい曲を作るもんですね。クロッパーを思わせるようなギターも味があっていいです。5)はアコースティックギターを使ったフォーキーな曲。シンガーソングライター的な一面も持ってたのですね。曲自体もとても良く、しんみりと聴かせてくれます。6)はコンテンポラリーなブルースとレゲエをミックスしたような、なかなか良い曲ですね。ラスティらしいブルージーなギターをやっと聴けました。7)はフランキー・ヴァリが最初に歌った、邦題が「君の瞳に恋してる」いう超有名曲。どれだけ多くの人がこの曲をカヴァーしただろうか、だけど、レゲエバージョンで歌ったのは、多分ラスティが初めてだろう。ラスティは歌が弱いとずっと思ってましたが、ラスティの中性的な声がこの曲とぴったりマッチしてて、結構聴かせてくれてます。
ラスティはこれからもこの方向性で行くのだろうか?ベタなブルースが聴けないのはちょぴり残念だが、レゲエ・ブルースをもっと発展させるのもいいかもしれません。

2007年4月17日火曜日

Washboard Willie / Motor Town Boogie


『Washboard Willie / Motor Town Boogie』 (P-Vine PCD-23894)
1) C.C. Rider
2) Move After Hours
3) Summit Ridge Drive
4) Dupree Blues
5) Struttin' That Stuff
6) 10-20 Special
7) Calvin's Blues
8) Shake Your Moneymaker
9) No Name Blues
10) Fool On A Mule

ウォッシュボード・ウィリーはデトロイトで活躍してたウォッシュボード奏者で、このアルバムは56年から64年に録音された曲をまとめられたものです。

デトロイトはご存知のように自動車工場の町ですから、いろんな所から人が集まって来る。だからだろうか、多様なスタイルのブルースを聴くことができる。一つの枠で形容できないのもデトロイト・ブルースの特徴の一つであり、却ってそこに面白さを感じるところでもあると思います。それは、過去に限った事ではなく、最近のコンピを聴いてみても、いろんなバンドがいるもんだなとつくづく思います。

それで、ウォッシュボード・ウィリーですが、1909年にアラバマ州ラッセル郡で生まれコロンバスで育ち、48年にはデトロイトに移って来たそうです。ウィリーの最大の特徴はウォッシュボードを演奏することで、ザディコやケイジャンでは無くてはならない程ごく一般的なこの楽器も、ブルースでとなるとあまりにも馴染みが薄く、特異な存在にも見えますよね。しかも、バスドラとかスネア、シンバルまで自分で演奏してたそうですから面白い。ウォッシュボード掻き鳴らしながらバスドラを刻む姿を映像で見てみたいものですね。

そんなウィリーが醸し出すサウンドは本当にアーシーで、1)や4)ではルイジアナ・ブルースの雰囲気が漂うダウンホームな音で、このゆるさ加減はたまんないですね。歌声もおおらかで、もさっとした感じが良くて、なんか落ち着くな。と思いきや5)はノリの良いブギウギで、ブギ・ウギ・レッドの良く転がるピアノとリズミカルなウォッシュボードの絡みは最高なのですが、後半あれっと思ったら、ウォッシュボードを止めてスネアをパコパコ叩いてるんですから面白いですね。6)でもそうですが一曲の中で、ウォッシュボードとタイコをとっかえひっかえ忙しなくやってるんですよね。益々映像が見たくなります。そして、7)や9)ではカルヴィン・フレイザーのダウンホームなんだけどモダンなギターが冴えてていいです。8)は歌は語り、リズムはアフリカン。これもなかなか楽しい曲です。最近はこればかり聴いてたのですが、ちっとも聴き飽きないですね。

2007年4月11日水曜日

Papa Grows Funk / Mr. Patterson's Hat


『Papa Grows Funk / Mr. Patterson's Hat』 (Buffalo LBCY-507)
1) Gorillafaceeugmopotamus!
2) My Man
3) John Brown
4) Walkin' In Our Own Shoes
5) Gone Gonzo
6) Tootie Montana
7) Go!
8) Mafungo
9) Ride On
10) Slapjack
11) Rite Rite
12) Stanky
13) They’re Callin’
14) Walkin' In Our Own Shoes (radio edit)

パパ・グロウズ・ファンクの新作は、なんか音がマイルドになったね。軽快なファンクビートの上にキャッチーなメロディーラインが乗っかると言った感じで割と聴き易くなり、メインパートをサックスが担当する曲も多くなって、比較的にジャズよりの音になったと感じます。その分、以前のようなガツ~ンとくるものがなく、インパクトに欠けるかなと最初思ったんだけれども、何度か聴いてるうちにボディブローがじわじわと効いてきちゃって、バンド全体のうねり具合が益々いい感じになって、結構気に入りました。

冒頭からのギターのカッティングとか、相変わらず冴えてるしカッコいいんですが、僕はアルバムの後半が気に入ってて、まずは7)ですね。思いっきりタメの効いた重心の低いリズム。これがたまりませんです。10)はこのアルバムで唯一の軽快なシャッフルの曲。ギターもブルージーでなかなかいいですね。13)ではゆるいノリの、これはレゲエですよね。レイドバックした雰囲気がとてもいいです。
このバンドはニューオリンズ最強のジャムバンドと思ってますが、メッセージ色も強くなってきてるし、もう単なるジャムバンドではないなと感じました。